1年 頭 ご 挨 拶
一般社団法人日本産業車両協会
会長 御子神 隆
令和6年の年頭に当たりご挨拶を申し上げます。
昨年の日本経済の状況を振り返りますと、物価の上昇や海外経済の減速の
影響もあり、7〜9月期に実質GDPが前期比で減少に転じましたが、12
月の日銀短観では幅広い業種で景況感の改善が見られ、再び成長軌道に戻る
兆しが示されました。しかし、同時に雇用人員は大幅な不足という結果も現
れており、回復の足を引っ張りかねない材料となっております。
産業車両の国内生産額については、1〜10月の累計で約2%の増加とな
っておりますが、これは前年まで2桁の伸びが2年続いた反動という面もあ
ると考えております。
協会では、今年度も「物流の効率化」、「安全の向上」、「環境負荷の低
減」を事業の三本柱として、様々な取り組みを行ってまいりました。
まず「物流の効率化」に関しましては、人手不足が顕在化しており、とり
わけ"物流の2024年問題"によって荷物が運べなくなるのではないかと
の懸念から、政府では「物流革新政策パッケージ」を打ち出し、物流生産性
向上のため、施設の自動化・機械化の推進のため、令和5年度補正予算でも
関連施策の予算が計上されました。
私ども協会も主催団体の一員となっている、昨年9月の「国際物流総合展
イノベーションエキスポ」では、目標を大きく上回る4万5千人近い来場者2をお迎えすることができましたが、そこでは物流生産性を向上させたいとい
うお客様のご期待に応える、新たな製品やソリューションをご覧いただくこ
とができました。また、協会でも一昨年以降、無人搬送車(AGV、AGF、
AMR等)に関わる事業を行っている12社が新たに入会され、物流現場の
自動化の促進に向けた活動を強化しております。
2030年度には生産年齢人口が2023年度に比べて10%減少、さら
に2040年には20%減少すると予測されており、間近に迫る2024年
問題のみならず、こうした将来の大きな変化も見据えて、自動化や機械化に
よって、社会・経済を支える物流を支えていけるよう努めてまいります。
次に「安全の向上」に関しましては、3回目となる「フォークリフト安全
の日」を昨年7月5日に開催しました。約120名の来場者をお迎えして、
フォークリフトを実際にご利用いただいているお客様の安全の取り組みのご
紹介や、フォークリフトの安全な使用に役立つ機器やサービス等の紹介コー
ナーも設けて、来場いただいた方からも大変参考になったとの評価をいただ
くことができました。
物流現場における荷役作業の機械化、さらには自動化の推進に当たっては、
安全の確保を欠かすことはできません。労働力不足の解消のためにも、ぜひ
安全な現場作りが広がっていくことを期待しており、協会としても働きかけ
を続けてまいります。
3つ目の「環境負荷の低減」に関しましては、昨年3月に産業車両製造業
のカーボンニュートラル行動計画を改定し、製造過程で排出されるCO2を、
2030年度に2013年度比38%削減することを目指していくとの努力3目標を新たに策定いたしました。また2022年度の産業車両製造工場から
のCO2排出量を約14%削減することができました。
業界ではかねてより電気車、さらには水素を燃料とする燃料電池車の開発
と普及促進による、スコープ3におけるCO2排出削減に取り組んでおりま
すが、こうした製造・製品の両面での脱炭素化の取り組みをしっかりと進め
てまいります。
また、フォークリフトを含む特殊自動車に対する排出ガス規制の強化に対
応し、今年の10月から導入予定の新たな規制にも円滑に対応していくと共
に、その次の規制の検討を行っている環境省等と協議を重ねているところで
す。
以上、事業の三本柱に加えて、長年取り組んでおります業界のグローバル
化への対応に関しましては、20年以上に亘り継続実施している日欧米中の
業界による「アライアンス業界首脳会議」を4年ぶりに、日本がホストを務
めて京都で開催することができました。これは世界的な新型コロナ感染拡大
のため3年間中止せざるを得ない状況でしたが、昨年10月、4年ぶりに日
本、欧州、アメリカ、中国の業界代表が一堂に会する場を設けることができ
たものです。カーボンニュートラルや安全に関する各国の取り組みや、自由
で公正な貿易の実現、さらには物流の自動化の方向性といった課題について、
世界各国・地域の業界トップが率直な意見・情報の交換を行って、業界全体
のバージョンアップを図っていく貴重な機会とすることができたことを嬉し
く思います。今年も9月に中国で開催の予定ですので、ぜひ議論を深め、業
界の国際連携を図ってまいりたいと思います。4ここまで私ども協会の今年度の活動の一端をご紹介させていただきました。
今年の9月には国際物流総合展を東京で開催する予定です。テーマは「持
続可能な道、物流の明日を育む」としており、過去最高の規模で、新たな製
品、サービス、ソリューションを広く紹介してまいりますので、ぜひご期待
下さい。
"物流の2024年問題"への対応もきっかけとなり、機械化・自動化、
デジタル化といった物流DXの推進という大きな流れが生まれております。
このように日本の物流が大きな転換期を迎えている中で、産業車両業界とし
ましても、物流の結節点や構内物流、イントラロジスティクスにおいて重要
な役割を担っておりますので、これからも製品の単なる提供にとどまらず、
ソリューションの提案による課題解決へという業界のミッションを広く提示
して物流の発展に貢献してまいりたいと考えております。
会員の皆様のご協力ご支援を引き続きよろしくお願い申し上げます。
そして経済産業省、国土交通省、厚生労働省、環境省をはじめとする関係
御当局におかれましても、協会の活動に関しまして、より一層のご指導ご支
援を賜わりますようお願い申し上げます。
最後になりますが、本年が皆様にとって素晴らしい一年となりますよう心
より祈念して、年頭のご挨拶とさせて頂きます。