北東北鶏紀行

第5回「闘鶏の世界」
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「世界中でおこなわれる闘鶏」
手塩にかけて飼育し、筋肉隆々と逞しい軍鶏(シャモ)を手に闘鶏場へと向かい、面構えも不敵なボクサーにも似た相手方のシャモと雌雄を決する。どちらにとっても相手に不足はなし。勝利を目指し、体力が尽きるまで、精神が折れるまで、鋭い嘴で相手を突き刺し、力強い脚で蹴りを喰らわせる。その戦いは人間世界の格闘技がまるでママゴトに思えてくるほどの激しさである

こうした闘鶏の世界はおもしろいことに日本はもちろん、世界の各地で見られる文化のひとつである。元来、雄鶏は激しい闘争心を秘めている。自らの遺伝子を残すために雌鶏を集めてハーレムを形成するといった性質を持っているために、ときにはまだハーレムを持たない他の雄鶏と激しい闘争を繰り広げなければならない。雄鶏にとって、ハーレムを維持するためには、他の鶏には絶対に負けない屈強な肉体と炎のような闘争心が必要なのだ。

原始の闘鶏は、人間に最も身近な家畜である鶏たちのこうした闘争の様子を発見したことに由来しているのであろう。以来、世界の各地で鶏と鶏とを戦わせる闘鶏が連綿とおこなわれてきた。

闘鶏の闘法は主に3パターンに分類されるようである。ひとつがオールド・イングリッシュゲームと呼ばれるもの。これは今でこそ廃れてしまったようだが、それこそ紀元前からイギリスでおこなわれていたとされるスタイルである。

まず闘鶏に使用する鶏は、いわゆるシャモではなく地鶏型。2歳から実戦に用いられた。実戦へと向かう際、あらかじめ若いうちから冠を短く切り縮め、出場前に両足に銀製の細長い人工爪を取り付けた。人工爪とはいえ、その先端に取り付けられるのは、前もって切り取っておいた鶏を爪を鋭く尖らせたものである。この爪を使って鶏たちは勝敗を決したため、フェンシング闘法とも呼ばれたようだ。

次に、東南アジアで広く根付いている闘鶏の闘法は、最も激しい真剣スタイルである。現在も盛んおこなわれているこの闘鶏で使用される鶏はお馴染みのシャモ。屈強に鍛え上げた雄のシャモの左足(あるいは両足)に鋭く研いだ刃を取り付け、斬り合うのだ。まさに一撃必殺。シャモたちにとって生死をかけた戦いとなる。



そして、最後は日本でおこなわれている闘鶏である。日本の闘鶏の歴史は古く、平安時代には「鶏合わせ」という名で闘鶏がおこなわれていたとされる。しかし、この時代に使用されていたのはいわゆる地鶏や日本初の外来種である小国などであり、現在のようにシャモによる闘鶏が始まったのは江戸時代に入ってからと考えられている。

日本の闘鶏スタイルは、今も同じだが、人工爪や刃を取り付けるのではなく、シャモ本来の能力のままに戦わせるスタイルである。後に詳しく述べるとするが、飛んだり跳ねたり、蹴飛ばしたりと多彩な技を仕掛けるその姿は総合格闘技といった趣がある。

このように闘鶏は世界各地で独自のスタイルを生み出しながら今日まで続けられてきたのである。


日本のシャモ。
その屈強な身体が特徴である。


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