国際交流・支援活動
【プロフィール】
吉岡 大介(よしおか・だいすけ)
1976年5月17日生まれ。埼玉県春日部市出身。
高校時代は堀越高校(東京)でプレー、道都大学(北海道)在学時に単身でドイツへ渡り、プロ、セミプロ選手としてドイツ、イギリス、アメリカで7シーズンの海外選手生活を経験。
2003年C.B.F ブラジルサッカー協会公認プロライセンス、2004年イングランドサッカー協会公認Level 1コーチングライセンス、
2005年JFA公認B級コーチ、2006年NSCAA プレミアディプロマ(アメリカサッカーコーチング協会最上級指導者)ライセンスを取得。
2003年〜2004年に浦和レッズレディースU-18、U-15コーチ(旧さいたまレイナス)、埼玉県女子U-15選抜コーチ。
2005年JFA公認S級コーチ養成講習会通訳。2006年〜2007年に大分県日本文理大学テクニカルディレクター兼監督。
2008年〜2009年大分FC VALENTE(社会人リーグ)の監督。全国クラブ選手権大会で2年連続で九州チャンピオン、
全国第3位に導く。2010年12月よりU-16カンボジア代表監督兼ユースディレクターとして活動中。
〜派遣国・地域の紹介 : カンボジア〜
カンボジア王国。インドシナ半島に位置する東南アジアの立憲君主制国家。
東にベトナム、西にタイ、北にラオスと国境を接し、南は南シナ海に接する。首都はプノンペン。
面積は日本の約2分の1弱の181,000平方キロメートル。1,340万人の人口の90%がカンボジア人(クメール人)であり、
公用語はカンボジア語。宗教は、一部少数民族(イスラム教)を除き仏教を信奉する(以上、外務省ホームページより)。
FIFAランキングは176位(2011年8月24日現在)。
カンボジアサッカー
私は、2010 年12 月からU-16 カンボジア代表監督兼ユースディレクターとして
FFC(カンボジアサッカー連盟)で活動をしていますが、この国のメインスタジアムであるナショナルオリンピックスタジアムの周りでは、
驚くほどの光景を見ることができます。
うまい下手は関係なく、ここはブラジルか?と思うほど年齢を超えて小さな子どもから大人までたくさんの人々が集まり、
夕暮れまでボールを追いかけ楽しむ姿が見られます。
ストリートサッカーの本場ブラジルやアルゼンチンと比べてもプノンペンのサッカー人口は確実に増えており、
ナショナルチームへの関心、そして私が指導するU-16 代表がAFF(アセアンフットボール連盟)
U-16 ユースチャンピオンシップでフィリピンに2-1 の劇的勝利を収めた直後も、連日取材が入るなど、各メディアからの注目度も非常に高まっていると感じます。
「One For All」「All For One」「一人はチームのために」そして「チームは一人のために」
この言葉をチームスローガンに掲げ、U-16 カンボジア代表チームは未来へ向かってまぶしいくらいに、
今この一瞬一瞬にベストを尽くし、夢へと強く輝き走り出しています。
チームが本格的に始動して8 カ月。私が初めて選手たちと出会ったとき、子どもたちの顔からは、
代表チームへ選出された喜びよりも、自信をすでになくし、目標も夢もない諦めの悲しいまなざし、
彼らは明らかに他国と戦うことを恐れていました。
昨年までのカンボジアユース代表は、勝利の経験もなく、去年、タイ・バンコクで行われたAFC U-16 選手権予選で、
朝鮮民主主義人民共和国に0-11、韓国に0-5、ベトナムに1-7、ミャンマーに1-3、タイに0-8 と何もできず、
サッカーとは思えないほどの大敗の連続でした。身体の差や環境などいろいろな問題はあるにしろ、何もできないのであれば、
何も変えられないのであれば、正直プロとして、指導者としてピッチの上に代表監督としている意味がありません。
言い訳は誰にでもできるし、負けをそのままにすることも、何かのせいにしてそのままにしておくこともできます。
過去の歴史とそのレポートに目を通した瞬間に、自分自身の心の中に火がつきました。
そこで、自信を失い、夢のない選手たちに「変わらなければ何も始まらない」「始めなければ何も変わらない」という2 つの言葉を使いました。
「みんなが変わりたいのなら、必ず変えてみせる。自分を120%信じてついてきてくれ」と伝えました。
そして子どもたちは、「カンボジアの未来を自分の大好きなサッカーで頑張って変えたい」
「7月に行われたAFF U-16ユースチャンピオンシップ、9月に日本代表と戦うAFC U-16選手権予選でも必ず勝ちたい、
今までのリベンジを果たしたい」「歴史は自分たちの努力から変える」と、私に強く約束してくれました。
Be Open Mind
代表とは何か? プライドと誇りとは何か?
常に彼らはカンボジアという国を意識し、出たくても出られない選手の気持ち、
母国というものを背負い戦う意味をかみしめ、今というこの二度と戻ることのできない日々を頑張っています。
常に話すときに大切にしていることがあります。それは、説得、納得の関係をつくり出すことです。
人は、ただ「走れ」「頑張れ」と言われても走れないし、100%で頑張れません。なぜなら納得していないからです。
人は目標を持って学び、納得できたときに、自分の中から全ての迷いが消え、フロー現象を起こします。
フローは、心と体のモチベーション、集中力を自分自身の最大値へと上げ、選手たち、人間の持つベストパフォーマンスを呼び起こします。
「私の戦術は心の戦術です」
人は、誰でも必ず変われます。いつ、どこで、誰と、どのように頑張るかを考え、自分で夢を見つけ持つことができれば。
2月12日、プノンペンで行われたアジアチャンピオンである強豪の朝鮮民主主義人民共和国代表(昨年のAFC U-16 選手権予選で
0-11 の大敗)を相手に90 分間の激闘の末、変わることを選んだ彼らはカンボジア代表選手であることの誇りとプライドを胸に、
足がつっても最後まで走り抜き、声も出なくなるまで仲間を助けるためにしゃべり続け、
最後のホイッスルが鳴り響くまで全ての選手が諦めずに、見事2-1 の逆転勝利で歴史的勝利を収めました。
7月のAFF U-16 ユースチャンピオンシップでも彼らの快進撃は続き、フィリピンに2-1 で勝利。
アセアントップ3 の強豪・ミャンマーを相手に1-1 の引き分け、初の勝点4 を国際舞台で挙げ、シンガポールとベスト4 を懸けて、
最終戦まで死闘を演じることができました。9月のAFC U-16 選手権予選で日本、韓国といった世界のトップ15を相手にどこまでやれるのか、
夢を抱きまなざしの変わった少年たちの戦いが今からとても楽しみです。
「人は自分の限界を超えて頑張ったときに何かを起こすことができます」
カンボジアでの今この一瞬一瞬を大切に、これからも悔いのないように努力して頑張っていきたいと思います。