国際交流・支援活動
【プロフィール】
津島 直樹(つしま・なおき)
1954年12月12日生まれ。東京都渋谷区出身。
都立秋川高校卒業後、東京学芸大学に進学。大学では硬式野球部に所属し、全日本大学野球選手権大会に出場。サッカーは原宿オーバーライダーズFC(東
京都社会人リーグ)でプレーした。上越教育大学大学院修了、2009年3月よりJICAシニア海外ボランティア(シリア・ダマスカス、都立江東特別支援学
校教諭として現職参加)。
知的障害者サッカー東京都選抜チームU-18監督、知的障害者サッカー東京都選抜チーム監督、INAS-FID サッカー日本代表チームコーチを歴任。東京
都知的障害者サッカー連盟技術委員長。公認B級コーチ、サッカー3 級審判員、フットサル3級審判員。
安住 建志(あずみ・けんし)
1987 年3月11日生まれ。宮城県大崎市出身。
仙台育英学園高校在学中には、宮城県新人大会優勝、東北新人大会優勝、第53 回全国高校総体出場(ベスト16 )、第83 回全国高校サッカー選手権
大会に出場(ベスト16 )した。その後、順天堂大学に進学。2 年時に同大学蹴球部を退部し、千葉県立船橋二和高校サッカー部外部コーチとして大学卒
業時まで指導にあたる。また、同期間中にNPO 法人スマイルクラブ運動教室スタッフとして、知的障害や肢体不自由の子どもたちの運動指導を行った。
2009 年6月にJICA 青年海外協力隊サッカー隊員としてシリアへ派遣。公認C級コーチ、サッカー3 級審判員。
〜派遣国・地域の紹介 : シリア〜
シリア・アラブ共和国は、中東・西アジアの共和制国家。北にトルコ、東にイラク、南にヨルダン、
西にレバノン、南西にイスラエルと国境を接し、北西は地中海に面する。古代より文明が栄えた土地であり、
各文明の交流地点のため高度な文化が発達した。アッシリア帝国時代の遺跡が国内各地に点在する。
面積は日本の約半分にあたる18.5 万平方km。人口は1,990万人(2007年世銀)。首都はダマスカス。人種・民族はアラブ人85%、
クルド人10 〜 15%、ほか。公用語はアラビア語で、宗教はイスラム教が85%、キリスト教が13%である。
FIFA 加盟は1946 年、FIFAランキングは98 位(4月28日発表時点)。
アラブ・イスラム圏のサッカー
アジア圏におけるサッカーの勢力図としては1980年〜2000年代にかけて西アジア(アラブ・イスラム圏)の国々が
盟主として活躍していました。潤沢なオイルマネーの力を利用した施設設備や指導者等の充実が選手の強化につながっていました。
現在では東アジアの国々が力を伸ばしており、リーダーシップを奪われつつありますが、
彼らには長い歴史に支えられた、彼ら自身のサッカー観があり、そのことに対して高い誇りを持っています。
実際、彼らの体格、パワー、スピードは高いレベルに位置しており、
気持ちの上ではいまだにそれぞれが他アジア圏のどこの国にも後れを取っている考えはないでしょう。
オイルマネーの国々と比べるとシリアの社会体制や経済状態はだいぶ異なりますが、
やはりサッカーが人気ナンバー1のスポーツであり、彼らの大きなアイデンティティーです。
シリアサッカー協会は1936年に設立された競技団体であり、これまで約70年間という活動の歴史を誇っています。
The Syria Football Academy
「The Syria Football Academy」は、2008年にJICA(国際協力機構)、シリアサッカー協会、
日本サッカー協会による協力の下に設立されました(本誌vol.23参照)。
その目的は幼少年期からのサッカーの普及・振興であり、「世界基準」「長期的視野」を基本的なコンセプトとしての選手の育成や将来的な強化です。
おおむねシリアにおけるサッカー選手の育成は13〜14歳ごろから各クラブチームの下部組織によって始められます。
早期からの育成という概念がないため、残念ながらカテゴリーとしてのU-12 年代での活動はほとんどありません。
つまり、シリアの子どもたちはプレゴールデンエイジ・ゴールデンエイジ世代での取り組みが存在しないため、
技術習得に関して一番大切な時期にボールに触れる機会がないのです。
この点を改善すべく始められた活動が「The Syria Foot ball Academy」です。
首都ダマスカス市のファイハー競技場において、私たち2名の日本人コーチが週3 回、Academy 開校時に選抜された選手を中心に
U-12、U-10の2グループに分かれて「サッカーを楽しむ」「サッカーの基本技術の習得」に重きを置いたトレーニングに取り組みます。
また、日曜日には、サッカーの普及や選手の発掘を目的にしたサッカー教室を開いており、毎回多くの子どもたちが参加してくれています。
シリアのユース年代の選手は、サッカーへの取り組みが遅いにもかかわらず、世界的に高いパフォーマンスを発揮していますので、
ぜひわれわれの活動が今後のシリアサッカー界のさらなる前進につながってほしいと思っています。
シリアサッカーの底辺からの発展を願って
何事にも細かく対応する日本人の生活習慣から比べるとシリア人のそれは大ざっぱであり、
時にはいい加減に感じることもしばしばです。特に時間や約束事などは「また明日...」的な対応が多く、
何事にも「ゆっくりと...」または「簡単に...」が基本のようです。
また、自制心や協調性に注意を払うわれわれから見ると、彼らのサッカーは「自分が、自分が...」の意識が強く、
練習中に度々順番をめぐって選手同士でけんかになったり、極端な例では味方からボールを奪ってドリブルで突進していくことも
見られます。
しかしながら、その辺りが彼らにとっての計り知れない長所であり、
生活やプレーする上でのエネルギーにつながっているように思われます。
改善すべきではないかと感じる点も目に付きますが、とにかく彼らの良いところ、ストロングポイントを消さないこと、
そしてそれらをさらに伸ばすように心掛けています。特にサッカーは彼らの高いプライドの上に成り立っています。
彼らの興味をくすぐり、彼らの目をこちらへ向けさせるようにできれば良い方向に進めると考えています。
まだまだ大きな畑の一部に種をまいている段階ですが、U-12 世代の活動が徐々にシリア全土へ広がり、
多くの才能溢れる選手たちが育ち、活躍することを願っています。