国際交流・支援活動
【プロフィール】
松原 啓(まつばら・ひろむ)
1983年8月25日生まれ。愛知県瀬戸市出身
福岡大学在学中にNPO 福岡ドリームスで指導者としての活動を始める。所属クラブからの派遣で福岡市内の複数のクラブでジュニアコーチとしての
経験を積み、大学卒業後はイングランドに留学。
イングランドではThe FA International Coaching License を取得。帰国後、国際協力機構(JICA)青年海外協力隊員として2009 年9 月
よりバングラデシュ国立スポーツ学院に派遣され、ユース育成コーチを務める。
〜派遣国・地域の紹介 : バングラデシュ〜
バングラデシュ(正式表記:バングラデシュ人民共和国)
面積は、14 万4 千平方k m(日本の約4 割)。人口は1 億4,450 万人(外務省ホームページより)、
人口密度982人/ km2。首都はダッカ。バングラデシュは国境の一部をミャンマーと接する他はインドに囲まれており、
気候は高温多湿、日本の約4 割の土地に1.5 億人が暮らす人口密度が世界一と言われる国である。
公用語はベンガル語と英語。宗教はイスラム教徒89.7%、ヒンズー教徒9.2%、仏教徒0.7%、キリスト教徒0.3%である
(2001年国勢調査)。繊維産業が盛んで近年ビジネス界でも注目を集めつつある。
2010年バングラデシュで開催された南アジア大会ではサッカー男子代表が金メダル、女子代表が銅メダルを獲得した。
FIFAランキングは152位(8月11日発表時点)。
育成年代の現状 独自に試合を企画・実施 U-12 年代の育成にも着手
国立スポーツ学院(Bangladesh Krira Shikkha Protishtan: BKSP)は、
オリンピックなどの国際大会に出場できるバングラデシュ代表選手を輩出することを目的とした全寮制の学校です。
バングラデシュには6つの行政区画があり、全県にこの学院の地域トレーニングセンター(TC)があります。
2010年8月現在で運営されているのは首都ダッカのセントラルTC と北部のDinajpur 地域TCだけですが、
そのほかのTCも運営を開始するべく、指導者のリクルートメントが進んでいます。
私の任地であるセントラルTCではサッカーのほかにクリケットやホッケー、陸上競技や体操競技に加え、
柔道やボクシングなど全部で12 種目が実施されています。私と同じように青年海外協力隊員が外国人指導者としてテニス部門、
水泳部門、バスケットボール部門に派遣されており、そのほかにはインドや韓国からも指導者を招聘し、選手育成を行っています。
サッカー部門の生徒は13 歳から20 歳までの74 名。指導は現地人指導者2 名にインド人指導者と私の4 名体制で行っています。
練習は朝(6 : 30〜)と午後(16:00〜)の2 部で、生徒は練習の合間に施設内で学校教育を受けています。
赴任した当日から指導を始め、毎日の練習を質の高いものにできるように努めてきましたが、
私が赴任してから10カ月が経過した現在に至るまでに、試合や大会に出場する機会は一度もありませんでした。
日本サッカー協会が資金面で援助しているU-15の大会(JFA CUP)も2 年間開催されていないのが現状です。
そういった状況下では選手のモチベーションが下がってしまうのも無理はなく、この問題は練習の現場だけでは解決できないと感じ、
グラウンドの外で行う活動も必要であると考えたのが赴任して半年が経ったころでした。
当初は小規模でも育成年代でのリーグ戦を設立することができればと考えていましたが、
現在バングラデシュ国内にはプロサッカーリーグ(Bangladesh League)のクラブも含め、
育成年代で日常的に活動しているチームがないことが分かり、リーグ戦を設立するのは現状にそぐわないと判断しました。
そこでBFF(Bangladesh Foot ball Federation)が管轄する試合を待つのではなく、独自に練習試合を定期的に企画・実施することから始めました。
また、もう一つの解決するべき大きな課題はU-12 の子どもたちに対する指導がないことです。
当地の選手育成は13 歳から始まっていますが、彼らのほとんどがU-12 までに指導を受ける機会がなかった初心者です。
それについてはトレセン制度を見本にして、地域TCを利用したU-12年代の指導も含めた選手育成制度を提案し、当地の責任者とも話し合いを持っています。
巡回サッカー教室を開き、普及活動を実施
任地外での活動としては、まだまだ子どもたちがサッカーをする機会が少ないバングラデシュのサッカー普及活動の一環として、
休日を利用して2 時間ほど離れた農村部にあるNGO(非政府組織)が運営している小学校で巡回型のサッカー教室を行っています。
対象は4、5年生で5月に開始してから8月現在で回った学校は6校、参加者は約300名になりました。
女性がスポーツをする機会が極めて少ないバングラデシュにあって、サッカー教室の女子生徒の参加者は半数以上の181名を数えています。
小さな小学校なので校庭と呼べる広場はありませんが、ある時には収穫期を終えた田んぼで、
またある時には牛を飼うためのちょっとしたスペースで、外国人である私はもちろんサッカーボールすら初めて見る子どもたちとサッカーをしています。
サッカー教室では時間通りに来る、人の話を聞くなどの道徳教育の一面や、サッカーをした翌日にそのときのことを絵に書いて表現させるなど、情操教育の一面も持たせています。
残りの任期もグラウンド内外で、任地内外で、自分のできることを探しながら活動していきたいと思います。