女子サッカーレポート | ファンゾーン | JFA











ドイツが、大会史上初となる2連覇を達成!〜FIFA女子ワールドカップで見えたもの〜 (07.10.05)

FIFA女子ワールドカップの決勝が9月30日、Shanghai Hongkou Football Stadiumで行われ、ドイツがブラジルを2−0で下して史上初となる大会2連覇を果たした。
決勝戦にふさわしい名ゲームだった。立ち上がりから両チームの激しいぶつかり合いとなった。先にペースを掴んだのはブラジル。卓越した個人技と磨きのかかった組織力で初の決勝に駒を進めたブラジルは、先攻逃げ切りを目論んでいた。とはいえ、コンディションを上げてきているドイツの守備陣を崩すのは容易ではない。互いに攻防を繰り返すも、スコアレスドローで前半を終了する。
後半に入り、今度はドイツが積極的に仕掛ける。52分、Sandra SMISEKが相手DFを引きつけ、フリーとなったBirgit PRINZへラストパス。これをしっかりと決めてドイツが先制する。しかしその10分後、ブラジルは決定的な場面を作り出す。CRISTIANEが倒され、PKを得たのだ。蹴るのは大会得点王を狙うMARTA。しかし、このPKをMARTAは外してしまう。さらに66分にはDANIELAのFKがポストに跳ね返されるなど、ブラジルはことごとくチャンスを潰してしまう。そして86分、CKをピタリと合わせたSimone LAUDEHRのゴールによってドイツが2点目を挙げ、試合を決定づけた。最後まで諦めないブラジルの攻撃に対し、必死の守備で対抗したドイツが史上初の大会2連覇に喜びを爆発させた。
今大会、最も印象的だったのは"番狂わせ"が多かったことだ。女子にとっては好ましい現象と言える。最近、女子の世界大会の決勝トーナメントに進出するチームはほぼ同じ顔ぶれで、そういった強豪が順当に勝つパターンが多い。しかし、今大会では前回大会準優勝の実力派であるスウェーデンを筆頭に、デンマーク、ナイジェリアといった古豪が予選グループで姿を消しており、これまでのような力の偏りはなくなっていた。巧妙に組織力を使い分けたドイツ、スピードある展開力を見せつけたブラジル、決定力に秀でたアメリカといった実力派に加えて、イングランド、オーストラリア、朝鮮民主主義人民共和国といったチームが、初の決勝トーナメント進出を果たした。新たにトップへと食い込もうとするチームの躍進に、女子サッカーのレベルの向上を見た気がする。
そしてもう一つ。どこか"女子"のサッカーであった前回までの大会に比べ、"男子同等"のサッカーへと変化してきていることも特徴にあげられる。戦術、個人技のレベルアップに伴い、それを生かすために取り組んだフィジカル強化が、このFIFA女子ワールドカップという舞台で見事に実を結んでいると感じられた。スピード、パワー、そして組織力・・・全てのベースとなるフィジカルを徹底的に鍛えたことで実現したサッカーであるように思う。
再び世界のトップが顔を揃える場所は北京オリンピックとなる。そのとき、決勝トーナメントの一角に日本が入り込むことができるかどうかは、ここから1年の強化にかかっている。険しくはあるが、道が閉ざされているわけではない。今大会でそれぞれが抱いた悔しさ、そしてそれらが指し示す課題は、必ず次への布石となるはず。北京オリンピックまでカウントダウンは1年を切っている。立ち止まっている時間はない。自分の進むべき道をしっかりと見据えて、進んでほしい。

(文/早草紀子)

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /