女子サッカーレポート | ファンゾーン | JFA











垣根を越えてユース年代の活動の場を広げる〜女子の特別指定選手制度を開始〜 (07.07.06)

サッカー選手として最も成長するユース年代の選手に「能力に応じた環境」を提供することを目的とした特別指定選手制度。男子のユース選手を対象にした本制度は1998年度から導入されたが(当時「強化指定選手制度」)、JFAは今年から女子にも同制度を適用することとし6月6日、大学の女子サッカー部に所属する4名の選手がこれに認定された。
この制度は、なでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)に加盟していないチームに所属する各年代の代表選手、またはそれに準ずるレベルの選手の中から日本サッカー協会女子委員会が指定するもので、特別指定選手に選ばれた選手は、所属するチーム登録のままなでしこリーグのチームで活動できる。もちろん、なでしこリーグの試合に出場することも可能だ。
選手の選定にあたっては、ナショナルコーチングスタッフ等からの推薦をもとに女子委員会が評価し、選出する。この選定で最も重要な場となったのが、4月に行われたなでしこチャレンジプロジェクトだ。このプロジェクトにはなでしこリーグに所属していない選手が数多く参加しており、ここでのパフォーマンスが大きな選定材料となった。
女子では初めての制度ということもあり、今回認定を受けたのはいずれも大学のサッカー部に所属する天野実咲(早稲田大学ア式蹴球部)、大友麻衣子(日本体育大学)、菅原未紗(吉備国際大学女子サッカー部)のゴールキーパー(GK)3名とフィールドプレーヤーの佐藤衣里子(早稲田大学ア式蹴球部)の4選手。
天野は、大学2年でフィールドプレーヤーからGKへ転向し、高いポテンシャルで成長を続けており、今回の特別指定選手制度で浦和レッズレディースでプレーする。また、なでしこチャレンジプロジェクトでその能力を高く評価された大友はアルビレックス新潟レディースで活動、スーパー少女プロジェクト経験者で、U-16〜U-17日本女子代表を経てU-19女子代表候補に名を連ねた菅原は湯郷Belleでプレーする。そして今回の特別指定選手の中で唯一のフィールドプレーヤーとなった佐藤は、レフティとしてのテクニックとタレント性が買われ、東京電力女子サッカー部マリーゼで活動することが決定。佐藤は「なでしこリーグのチームの練習に参加できるというのは光栄なこと。学ぶところはきっと多いはずです。それを頭と体で感じ取って自分のモノにしてこようと思っています。不安より期待の方が大きいですね」とその意気込みを語った。「この制度はいわゆる一つのナショナルプロジェクト。将来の日本女子サッカーにとって、若い年代の選手の可能性を伸ばすことは重要です。そこの部分で協力していきたいと思っています。また、マリーゼ自体もまだまだ新しいチームで、特別指定選手がチーム練習に参加することによってほかの選手も刺激を受けるでしょう。ともに切磋琢磨して成長していってくれればとも思っています」と語るのはマリーゼのゼネラルマネージャーの小野俊介氏だ。選手側にとっても、受け入れるチーム側にとってもこの制度は一種のチャレンジなのである。
「なでしこジャパン監督時代からこういった制度の必要性を感じていた」と上田栄治女子委員長も語るように、この制度は女子サッカーにとっては画期的な制度となるはずだ。チームの垣根を超えた活動には今後様々な課題も生まれてくるだろう。それでも、そこから得るものは困難よりも大きいものであるに違いない。各方面の協力と理解なしには成功はあり得ないこの制度。日本女子サッカーがまたひとつ新しい一歩を踏み出した。


(文/早草紀子)

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /