次世代を担うゴールデンエイジの育成〜東京都U-12トレセンの試み〜 (2007年02月16日)
ユース年代の強化育成を目標に、2005年、U-15女子ナショナルトレセンが立ち上がった。ここでは地域トレセンからの推薦を受け、招集された選手が、ナショナルトレセンコーチによる指導を受けている。女子のユース強化では最年少の年代となるが、その下には地域トレセン、各都道府県トレセンと、育成の裾野は広がっている。それではU-15につながる若年層の育成はどのようになっているのだろうか。今回は東京都U-12トレセンの育成にスポットをあてた。
U-12における各都道府県トレセンのメンバー招集のスタイルは様々である。一般に募集をかけ、集まった全員を対象にトレーニングを行うところもあれば、東京都協会のようにセレクションを行うところもある。東京都協会では、成長期にある"ゴールデンエイジ"の選手を1回限りのセレクションで判断するには十分ではないとして、セレクションを2度行っている。まず、4月のセレクションで見出された選手は7月までの第1ステップで体力強化を含めた全体的なレベルアップに励む。そして、8月に新たな応募者を加えて改めてセレクションを行い、第2ステップが始まる。この期間ではゲーム内などにおける戦術理解などの能力的強化を目標とした指導を受けることになる。「セレクションで見るのは判断力、基本技術といったところですが、体力測定は行いません。この年代は成長が著しい時期ですし、もっと根本的なところに目を向ける必要があります。例えばムードを盛り上げることができるのも一つの要素です。声を出すことは負けないとか、そういったことも判断材料になります」と語るのは東京都サッカー協会少女部技術部長であり、U-12女子トレセンコーチの中山千恵美氏。「ゴールデンエイジの育成で一番重要なのは一人一人自分で考えさせること」(中山氏)という考えの下、東京都トレセンでは、試合当日もあえて集合時間を設定していない。アップの開始時間だけが選手に伝えられ、各自が試合準備の時間を踏まえて会場入りするのである。当初は戸惑いを見せていた選手たちも、少しずつ変わってきたという。
そのほかにも様々な試みが行われている。関東女子U-12トレセンリーグもそのひとつだ。このリーグは開設されて4回目を数え、今シーズンは10月14日から2月17日の期間で行われている。今季は、東京都の他、神奈川県、埼玉県、茨城県、群馬県、千葉県、栃木県、山梨県の8地域が参加して全7節を戦っている。「5年前に少女年代の全国大会がなくなったんです。せっかくトレセンの場で習得したものがある訳ですから、その発表の場を与えようと発足したのがこのリーグです。全国大会がなくなった翌年の5月に話が出て、5ヶ月後には実施されましたから、関係者の想いは同じだったんですね。各地域のトレセンコーチや関係者の協力は甚大でした。これまでのトレセン活動で各地域ともにつながりができていたのでまとまるのも早かったんです」と中山氏。こうした活動は全国に広がりを見せており、東西対抗戦なども実現するかもしれないと、中山氏も期待を寄せている。
とはいえ、U-12年代が抱える課題は深刻だ。かねてより指摘されているように、中学に上がってから極端に減少する活動の場。これについては各方面で改善がなされているがカバーしきれていない現状もある。そしてさらに深刻なのが指導者不足だ。「時間的な余裕がないということもありますが、女子チームの場合、ライセンスを持っていない人が多いんです」と、中山氏はその問題点を指摘する。選手の活動の場が激減するということは指導者にも同じことが言える。もちろん、指導者の養成は選手の強化・育成にとって不可欠であり、今後取り組んでいかなければいけない課題のひとつである。
次世代の日本女子サッカーを担うジュニアユースの選手たち。関東女子トレセンリーグのピッチでは、確実に成長している姿があった。多感な年頃の彼女らが、新たな仲間と触れ合い時間を共有することによって、選手としてのみならず、人としても大きく成長していく。このトレセン活動で得たものは、今後のサッカー人生だけでなく、彼女たちにとってかけがえのないものとなるに違いない。
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