稿債の増ゆるばかりの余寒かな
稲畑汀子
ホトトギス
200602
温泉の素たつぷりと余寒風呂
島谷征良
風土
200602
余寒なほ引く旅予定通りかな
稲畑汀子
ホトトギス
200603
グラタンに細心の舌余寒なほ
金子孝子
沖
200604
流木に波たたみ寄る余寒かな
菊地光子
沖
200604
句作ままならず余寒の籠り居に
大橋敦子
雨月
200604
山祇の供物ひからぶ余寒かな
大畠政子
雨月
200604
余寒なほ飴になだめて咳こらふ
大畠政子
雨月
200604
掌に包む子の拳かな余寒なほ
森永敏子
河鹿
200605
身半分ままならぬ姉余寒なほ
沢田清子
苑
200605
盛り塩に指の痕ある余寒かな
上谷昌憲
沖
200605
お湯割の寸胴グラス余寒かな
菊地光子
沖
200605
立ちてすぐ余寒の座るパイプ椅子
代田幸子
沖
200605
古書店の奥行き深し余寒なほ
上村葉子
風土
200605
羽二重にかはく手を置く余寒かな
村本真由美
遠嶺
200605
命との対話余寒の中に居り
村越化石
濱
200605
雲甍の左右に余寒の避雷針
黒田咲子
槐
200605
余寒なほマーガレットを羽織りけり
岩下芳子
槐
200605
白黒と鳴きゐる鴉余寒かな
天野きく江
槐
200605
語部の長き眉毛の余寒かな
廣畑忠明
火星
200605
余寒風命ある故心細き
鈴木ヒサ子
四葩
200605
鮊子の脂のりきらざる余寒
溝内健乃
雨月
200605
再会の約束延びし余寒かな
上藤八重子
酸漿
200605
校廊の一直線の余寒かな
生方ふよう
朝
200605
白鷺の嘴に余寒の水ひかり
佐藤いね子
馬醉木
200606
出棺の鉦遠ざかる余寒かな
大泉伸
遠嶺
200606
寺余寒うす暗がりの長廊下
荒木治代
ぐろっけ
200606
春月のくつきりとある余寒かな
佐原正子
六花
200607
垣結ひの濡れ縄きしる余寒かな
杉山真寿
朝
200607
あさつての余寒なきこと願ひつつ
稲畑汀子
ホトトギス
200702
手抜かりのなきことせめて余寒かな
稲畑汀子
ホトトギス
200702
掃き清められし庭面にある余寒
稲畑汀子
ホトトギス
200702
朝の間の余寒忘れてをりしかな
稲畑汀子
ホトトギス
200702
残されし今日の稿債余寒かな
稲畑汀子
ホトトギス
200702
引きずりて余寒に対しをりにけり
稲畑汀子
ホトトギス
200702
糸底の切り込み深き余寒かな
高崎武義
狩
200702
後ろ手に歩く余寒の鴉とも
杉良介
狩
200702
駅降りて余寒の衿をたて直す
稲葉ちよこ
風土
200703
蹄鉄の高く響ける余寒かな
ことり
六甲
200703
雲形定規余寒の灯影廻し描く
小野恵美子
馬醉木
200704
久慈川の吊橋渡る余寒かな
水井千鶴子
風土
200704
余寒なほ土を啄む日の雀
横田初美
春燈
200704
余寒なほ波のひねもす城ヶ島
山川好美
春燈
200704
歌碑よみて風に身さらす余寒かな
久永淳子
春燈
200704
名を呼ばれ歯科医の椅子にある余寒
仁平則子
峰
200704
夕鐘の一打一打に余寒なほ
本藤みつ
峰
200704
燧道へ迫る余寒や天城越
刈米育子
苑
200705
検診の眼科病棟余寒なお
後條さと子
苑
200705
単線の駅みな似たる余寒かな
白井友梨
馬醉木
200705
蔵出しの麹のにほふ余寒かな
上柿照代
馬醉木
200705
針穴の二重に見ゆる余寒かな
池田光子
峰
200705
天竺の破風作に余寒暫し
小倉綾子
ぐろっけ
200705
どの石も余寒の貌をもてるかな
長沼紫紅
朝
200705
沖波の重なつてくる余寒かな
長沼紫紅
朝
200705
余寒なほ月明に澄む深空あり
長沼三津夫
朝
200705
癌の句のマンネリ恐れゐて余寒
小林昭
春燈
200706
土間余寒酒気の漂ふ蔵屋敷
荒木治代
ぐろっけ
200706
余寒まだ去らず孤独の医師われ
岡有志
ぐろっけ
200706
嫁威しの謂れを縷々と越余寒
西村しげ子
雨月
200707
人住まぬ土間黒光る余寒かな
内山弘幸
八千草
200708
竹炭に罅入る音や余寒なほ
森田節子
風土
200801
一本のマストの先の余寒かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200802
旅になほ余寒に備へ置くものも
稲畑汀子
ホトトギス
200802
掻き出す灰に籠れる余寒かな
ことり
六花
200803
開け閉めの門扉のきしむ余寒かな
大橋晄
雨月
200804
チャルメラの音透き通りゐる余寒
大橋晄
雨月
200804
いつまでも余寒肺炎ぶり返す
松崎鉄之介
濱
200804
きざはしにから足を踏む余寒かな
能村研三
沖
200804
マラソンが大路の余寒おどろかす
秋葉雅治
沖
200804
衿立てて急ぐ家路や余寒なほ
岡佳代子
璦
200805
追ひ越してハザードランプにある余寒
瀬下るか
鴫
200805
街灯の直列長き余寒かな
峰幸子
沖
200805
白樺の樹皮はためける余寒かな
神山志堂
春燈
200805
余寒の灯ひとつ増えたり人戻り
宮津昭彦
濱
200805
干し物を吊したるまま余寒なほ
白石正躬
やぶれ傘
200805
老猫にくさめもたらす余寒かな
小池一司
やぶれ傘
200805
内陣を点し余寒の読経かな
細川コマヱ
雨月
200805
余寒のみ残し搬出展覧会
奥田妙子
ぐろっけ
200805
余寒顔コーランとなヘ地に伏せり
大阪河村泰子
ぐろっけ
200805
海際に家のはりつく余寒かな
田口紅子
狩
200806
選択の時の迫りて余寒かな
岩崎慶子
狩
200806
間道を来たる余寒の人のあり
島谷征良
風土
200806
牛百頭搾り終へたる余寒かな
佐藤哲
万象
200806
星空の通夜となりけり余寒なほ
赤堀洋子
万象
200806
壁鏡の揺れに手をやり余寒なほ
柴崎英子
絹の波
200806
ひと枝をきる手鋏や余寒なほ
白石正躬
やぶれ傘
200806
目つむりて眼鏡の縁にある余寒
鶴岡加苗
狩
200807
箒目の波に影さす余寒かな
小泉貴弘
筑波の道
200811
心音を野の風と聴く余寒なほ
伊藤希眸
京鹿子
200901
白きもの連れて余寒の都心かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200902
独り言呟く人に余寒かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200902
ただならぬ余寒の旅となりしこと
稲畑汀子
ホトトギス
200902
あなどりてをりし余寒につかまりし
稲畑汀子
ホトトギス
200902
大会の近づく余寒心して
稲畑汀子
ホトトギス
200902
大会の済みて余寒のとどまれる
稲畑汀子
ホトトギス
200902
会場にせめて余寒のなきことを
稲畑汀子
ホトトギス
200902
孤高とは猫の瞳にある余寒
稲畑廣太郎
ホトトギス
200102
夭折の耕二浩一余寒雲
能村研三
沖
200203
鹿鳴いて余寒厳しうなりにけり
ことり
六花
200903
沼はまだ覚めてはをらず余寒なほ
能村研三
沖
200903
流浪とは余寒の浜に着きし壕
ことり
六花
200903
リハビリを受けてベッドの余寒かな
塩千恵子
峰
200904
一灯を点し余寒の中にをり
黒澤登美枝
峰
200904
絵馬堂の算額解けじ余寒かな
道坂道雄
炎環
200904
見たくないもの見てしまふ余寒かな
芝宮須磨子
あを
200904
吾が杖の倒れし音す余寒なほ
宮崎左智子
璦
200904
垂れつけぬ団子の並ぶ余寒かな
和田政子
峰
200904
日の当たる塀沿ひの道余寒かな
三村八郎
炎環
200904
母にバイバイエレベーターのドア余寒
篠田純子
あを
200904
母の葬終へし機内や余寒なほ
小嶋泰家
炎環
200904
余寒この色の未熟の草木染
和田政子
峰
200904
余寒なほ夫リハビリに通ひをり
高橋幸子
峰
200904
エレベーター余寒の空気分ち合ひ
内山照久
沖
200905
つまづきし缶を蹴る身の余寒かな
中野英伴
春燈
200905
つまづきし小石蹴り上げ余寒かな
羽賀恭子
峰
200905
つまづきて喝入れらるる余寒かな
水田壽子
雨月
200905
嘘の裏くぐる紅引く余寒かな
中野英伴
春燈
200905
更けて夜の余寒ひとりの厨ごと
橋爪隆
春燈
200905
朱の鳥居百をくぐりて余寒かな
鈴木鳳来
春燈
200905
錠剤の掌のくぼすべる余寒かな
門伝史会
風土
200905
人形の口元締まり来る余寒
田原陽子
鴫
200905
禅僧の背へ余寒の湖あかり
横松しげる
遠嶺
200905
片減りの墨に父恋ふ余寒かな
佐藤信子
春燈
200905
本堂の大きしじまの余寒かな
佐治奈津
雨月
200905
明日発たす子を囲む灯の余寒かな
佐藤信子
佐藤信子集
200905
免許証更新通知来し余寒
近恵
炎環
200905
余寒なほ樹はその姿くつきりと
後藤とみ子
ぐろっけ
200905
余寒なほ張子の耳の真くれなゐ
米澤光子
火星
200905
落款に色紙息づく余寒かな
布川直幸
峰
200905
甲冑になほ反骨の余寒かな
柴崎英子
沖
200906
釣針に返しありける余寒かな
栗栖恵通子
槐
200906
天心に月魂とどむ余寒かな
西村純太
槐
200906
襟もとのこころもとなき余寒かな
白石紀子
狩
200907
電球の忽と切れたる余寒かな
高橋英子
狩
200907