苺紅らむ狼谷戸の入口に
神蔵器
風土
199807
狼をりゆう神と呼びしわが祖
金子兜太
海程
199812
暁闇を猪やおおかみが通る
金子兜太
海程
199902
おおかみがの村を歩いていた
金子兜太
海程
199902
おおかみに目合(まぐわい)の家の人声
金子兜太
海程
199902
おおかみに蛍が一つ付いていた
金子兜太
海程
199902
狼生く無時間を生きて咆哮
金子兜太
海程
199904
山鳴りに唸りを合わせ狼生く
金子兜太
海程
199904
山鳴りときに狼そのものであった
金子兜太
海程
199904
月光に赤裸裸な狼と出会う
金子兜太
海程
199904
狼や緑泥片岩に亡骸(なきがら)
金子兜太
海程
199904
山陰に狼の群れ明(あか)くある
金子兜太
海程
199907
狼の往き来檀の木のあたり
金子兜太
海程
199907
狼墜つ落下速度は測り知れず
金子兜太
海程
199907
海嘯やかの狼の共鳴きも
岡井省二
槐
199912
うらないのわれは狼耳立てる
川島ひとみ
船団
199912
狼もこの蒼き星見つらむか
長山あや
円虹
200001
いはれなくてもあれはおほかみの匂ひ
青山茂根
銀化
200001
狼に転がり墜ちた岩の音
金子兜太
海程
200001
狼を龍神と呼ぶ山河かな
金子兜太
海程
200001
狼が消えて大野のはげしい尿意
山田緑光
海程
200004
占いのわれはおおかみ一人好き
川島ひとみ
船団
200007
狼のこゑの谷をり脛腓
岡井省二
槐
200101
追随を許さぬ證おほかみに
中原道夫
銀化
200101
大年の一匹狼などを思ふ
中原道夫
銀化
200102
狼の曠野に啼きて世紀継ぐ
斉藤静枝
あを
200102
狼に似し野犬行く埋立地
篠田純子
あを
200102
東京砂漠おほかみを飼ひ馴らす
堀内一郎
あを
200102
山から村へ狼がくる携帯電話
堀内一郎
あを
200102
灰色の帳の向かふおほかみ来
村上瑪論
銀化
200103
狼が嗤ひ山家の灯が燃ゆる
後藤志づ
あを
200103
狼の出てくる童話子を寝かす
芝尚子
あを
200103
狼の滅びし谿に紅葉狩
品川鈴子
船出
200104
狼の顔して川を渡りけり
川島ひとみ
船団
200108
狼の背の語りたる叙事詩かな
堀川夏子
銀化
200203
狼のやうにさみしがる遠ざかる
山崎未可
銀化
200204
狼の出てくるはなし日本たんぽぽ
梶浦玲良子
六花
200208
狼の桃に火の香や送り盆
宮京子
銀化
200210
狼と化すか月光浴びし犬
島谷勲
狩
200212
狼の祭や地鳴りせし夜明け
石原歌織
銀化
200212
おほかみの薔薇色の舌夜に垂らす
山崎未可
銀化
200301
風の夜の狼のこゑ聞きたくて
加藤みき
槐
200303
隣人の祖は狼を絶せり
佐藤喜孝
青寫眞
200304
おほかみの足跡昨夜に向きしまま
村上瑪論
銀化
200305
狼も朱鷺も絶えたる国に生く
伊藤白潮
鴫
200311
狼の住みたる森で茸狩
足立陽子
濱
200401
狼のこゑ森の気の集まり来
近藤喜子
槐
200403
赤頭巾は狼が食ぶ手鞠唄
木村みかん
鴫
200404
狼の生涯じつとしてをれぬ
富沢敏子
鴫
200404
短夜のやまんば狼のこゑ忘れ
中島陽華
槐
200410
狼の合ひの仔犬を連れ歩く
須佐薫子
帆船
200502
狼に古墳の月の上がりけり
柴田佐知子
空
200503
むらさきの闇に聞きしは幻狼よ
加藤みき
槐
200504
影の濃き山狼もまた影に
豊田都峰
京鹿子
200504
狼の眠れる時は己身抱く
瀬下るか
鴫
200504
狼になりたき一夜ありにけり
原田達夫
虫合せ
200506
導きの星追ひゆくや餓狼の目
後藤眞由美
春燈
200603
狼と羊の絵本花は葉に
竹中一花
槐
200606
日本狼守りしめとす奥の宮
服部早苗
空
200608
海鳴りの遠のく中に狼も
片山タケ子
鴫
200704
火を囲み人狼を懐かしむ
湯浅夏以
樹も鳥も
200806
狼撮るももいろの携帯電話
田島健一
炎環
200902
狼の声うしなひし木霊かな
近藤喜子
槐
200903
山巓に現れし狼月と和す
山田富朗
遠嶺
200904
遠吠えは檻の狼寒夕焼
沼澤石次
馬醉木
200904
狼よ還りこよ羊皮紙の本ひらく
沼田巴字
京鹿子
201001
狼の消えてしまひし神の黙
水野恒彦
槐
201002
おほかみの護符ふところに山眠る
服部早苗
空
201003
おほかみの毛皮着てゐる人と話す
伊藤敬子
笹
201003
ふさふさのおほかみ毛皮の毛の太し
伊藤敬子
笹
201003
狼に顎佳人に斑気あり
柳川晋
槐
200902
狼の声に鎮まる鐘の音
吉村摂護
空
201104
狼の終焉の地や山桜
谷岡尚美
槐
201106
中天に月蝕耳底に狼
成田美代
鴫
201203
狼の滅びし闇の弛みけり
近藤喜子
槐
201203
朱鷺・狼・日本獺浮いてこい
石崎和夫
沖
201211
狼の血を引く犬と猟夫行く
笹倉さえみ
雨月
201303
狼や吉野に深き星の色
竹中一花
槐
201403
狼を心待ちして年明くる
鴨下昭
峰
201504
狼を探し疲れて山眠る
大木清美子
峰
201602
狼の眼のなかにある月明り
坂本徹
沖
201603
我は狼人に頭は撫でさせぬ
有松洋子
槐
201603
狼は童話の中に生き不滅
松田明子
空
201604
読み聞かす狼の声雪の夜
平野みち代
鴫
201703
凩や狼祀る木の家に
北川美美
面
201707
狼となるまで髪を逆立てる
有松洋子
槐
201802
猛りたる山火は狼の墓標
深川淑枝
空
201807
群狼の離別の地なり萩揺れて
能村研三
沖
201810
昏き眼に狼檻をひた巡る
浅田光代
風土
201904
人滅ぶ一線のあり狼よ
中田禎子
槐
202001
狼のいまも去りゆく奥嶺かな
藤生不二男
六花
202002
凩や狼連れて来るごとし
美昌二郎
沖
202003
笹子鳴くかの狼の句碑近く
松田那羅生
鴻
202003
野分雲狼滅びたる山に
平居澪子
六花
202101
狼を信じつづけて男老ゆ
森岡正作
沖
202201
2022年12月19日
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