要るときに又見つからぬマスクかな
稲畑汀子
ホトトギス
199812
マスクてふやさしき袋ほの湿り
林翔
沖
199903
マスクして歯の治療中とも云へず
大山文子
火星
199906
マスクして思ひつめたる顔となる
大倉郁子
ヒッポ千番地
199906
マスクして少し寡黙の人となる
稲畑汀子
ホトトギス
199912
病院を出てはづしたるマスクかな
柿沼盟子
風土
200001
けふもまたマスクの中のひとり言
大村美智子
京鹿子
200001
パンを売る店明るくてマスクとる
田中藤穂
水瓶座
200002
土佐水木髪ますぐなる子を愛す
田中藤穂
水瓶座
200002
マスクして口中を切る一語あり
鈴木まゆ
馬醉木
200003
マスクして言葉を口に出すまじく
菅野谷孜子
ぐろっけ
200003
生かされしいのちいたはりゐるマスク
中島真沙
円虹
200003
マスクの人車中にも逢ひ道にも逢ふ
山田千代
濱
200003
マスクして人間弱く見えにけり
堺井浮堂
円虹
200003
マスクして殺人事件読了す
中原幸子
遠くの山
200010
そこそこと指で指されてマスク買う
中原幸子
遠くの山
200010
マスクしてもの言ひたげに画廊守
高木悠悠
狩
200101
訴ふる目差しとなるマスクかな
富田直治
春耕
200101
マスクよりもれてはならぬ人のこと
大場佳子
銀化
200102
マスクして眉のみ強くなる朝
かとうゆき
銀化
200102
翻訳機・耳あて・マスクして潜む
ゆにえす
船団
200103
マスクとるやれやれと言ふ顔を上げ
小林一行
円虹
200104
マスクより洩るる白息たゆたへり
宮津昭彦
濱
200104
葬列の短きに蹤く大マスク
鈴木まゆ
馬醉木
200104
小言皆マスクの中に仕舞ひけり
岡谷栄子
苑
200105
合格す終にマスクを外さずに
伊藤多恵子
火星
200106
マスクより出る声眼鏡くもらしぬ
池田かよ
ぐろっけ
200106
黄金のマスクに酔ひて春の昼
窪田佳津子
雨月
200106
のどけしや金のマスクの片辺
瀬川公馨
槐
200107
瞳かがやきマスク美人と誰が言ひそ
伊藤鯰子
ぐろっけ
200109
大マスク掛けて人目を引いてをり
正木光子
いろり
200112
言ひにくきことをマスクの中で言ふ
木場田秀俊
狩
200201
マスクして飼犬に背を向けらるる
辻雅子
ぐろっけ
200202
マスクより出でぬ鼻唄蒸れてをる
中原道夫
銀化
200202
大マスク掛けて笑ひし歯科医院
柴田美佐子
いろり
200203
マスクして郵便局に待たさるる
代田青鳥
風土
200203
マスクとり早朝会議の始まれり
町野昭人
遠嶺
200203
終電車窓にマスクの顔ゆがむ
木内美保子
六花
200203
他人にも厳しき男大マスク
半澤佐緒里
百鳥
200203
マスクしてその明眸はつけまつ毛
稲森柏郎
狩
200203
電話口マスクのままでタクシー呼ぶ
外岡興子
濱
200204
男われマスクはみ出す無精髭
藏本博美
ぐろっけ
200204
口先のお世辞もマスク越しにして
島崎省三
沖
200204
驚愕のあまりマスクの紐はづれ
高崎武義
狩
200212
会釈して何かもの言ふマスクかな
長谷川守可
百鳥
200302
マスクしてマスクの人を振り返る
安居正浩
沖
200302
薬屋の金看板やマスク買ふ
二瓶洋子
六花
200303
大マスクして助手席に坐りけり
小田道知
円虹
200303
ジョギングのマスク大きく手を振れり
松永晃芳
百鳥
200304
美しき顔を占領してマスク
黒川悦子
円虹
200304
マスクして飼犬に近づきにけり
吉田康子
火星
200305
マスクして自分の息に眠く居る
真保喜代子
朝
200305
マスクして人の動きを見てをりぬ
江坂衣代
百鳥
200305
マルキストらしき風貌マスクして
辰巳比呂史
苑
200305
紅少しにじむマスクを慌て折る
山元志津香
八千草
200306
マスクして瞳の熱く語り出す
陶山泰子
ぐろっけ
200307
もの言へばマスクのずれて賀状書く
山田六甲
六花
200312
マスクして一重瞼のなほ細し
楠原幹子
沖
200403
マスクして都合悪しきは黙殺し
塩川雄三
築港
200404
マスク痕取れぬいら立ち朝化粧
辻川錫子
築港
200404
マスクして東京は眼の乾く街
冨村みと
対岸
200404
搬入の絵と学芸員の白マスク
能村研三
沖
200404
表情をすつかり隠す大マスク
塩川雄三
築港
200404
お化粧の仕上げにマスクかけにけり
吉田明子
鴫
200404
日経新聞を持つがファッションマスクして
坂上香菜
苑
200405
マスクして心変わりを知られたか
松山律子
六花
200411
子安神マスクの女来てゐたり
辻恵美子
栴檀
200501
逢ふ迄はマスク外せぬ訳があり
秦恒男
帆船
200503
マスクして無口を通す眼に力
鈴木實
百鳥
200503
マスクして防犯カメラ背にす
迫口君代
河鹿
200503
海潮音マスク干す人マスクして
宮坂幸次郎
帆船
200503
隣人のマスク大きく出勤す
高倉和子
空
200503
看護婦のマスク眼だけを見て話す
吉田眞弓
雨月
200503
きさらぎや夫のマスクの大きさよ
須賀敏子
あを
200505
マスクして目立つ明眸人を魅す
和田照子
苑
200505
林中に嘴めける白マスク
広渡詩乃
朝
200505
電光ニュースに釘付けとなるマスクの目
園多佳女
雨月
200505
帽子とりマスクも取つて笑ひをり
鈴木實
百鳥
200506
マスクして捨てられぬ本捨てにゆく
岡田芳べえ
集
200508
マスクして鼻の形の悪からぬ
杉良介
狩
200512
マスクして刈込み強き垣を出る
田中春生
狩
200512
三猿の一猿めきしマスクかな
下平しづ子
雨月
200602
マスク掛け焔前線のがれけり
小嶋恵美
春潮
200602
回廊の僧もマスクをしてをりぬ
小林優子
酸漿
200602
先生も大きなマスク年の市
水原春郎
馬醉木
200602
父と子のマスク並びし車中かな
山荘慶子
あを
200603
人違ひされてしまひしマスクかな
西村しげ子
雨月
200603
マスク白しこころのどこか病んでゐて
長沼紫紅
朝
200603
マスクして心のよわさかくしけり
長沼紫紅
朝
200603
大マスクして不審者と謗らるる
峰尾秀之
苑
200603
度外れの遅参のマスクはづしけり
久保田万太郎
春燈
200603
マスクして耳の虚空でありにけり
戸栗末廣
火星
200604
マスクして青き瞳でありしかな
椋本一子
雨月
200604
マスクして帰路は人目を忍ぶ仲
安原葉
ホトトギス
200605
マスクしてこの世にピント合はせけり
篠藤千佳子
沖
200605
饒舌に疲れ或る日の大マスク
物江晴子
八千草
200605
マスクして鳥天狗のやうな人
千原叡子
ホトトギス
200606
マスクして視野の欠けたる思ひかな
湯川雅
ホトトギス
200606
外国へ予備のマスクも携へて
小川龍雄
ホトトギス
200607
冬立てりすでにマスクの子を見たり
岡本眸
朝
200611
2021年1月20日
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