虚子ここに氷れる筆を噛み住みし
村松紅花
ホトトギス
199810
芦屋の地海風そよぐ砂氷
杉本健司
ホトトギス
199810
氷海を来て一卓の灯かな
小澤克己
遠嶺
199903
水に丶打ちて氷に身を窶す
中原道夫
銀化
199903
翔禽の一閃青し結氷期
小澤克己
遠嶺
199904
吹き晴れて氷塵湖を押し移る
岩崎きゑ子
馬醉木
199905
閼伽桶の氷つまめる雪女郎
関根洋子
風土
199905
ゴンドラの一揺れしたる氷面鏡
山田夏子
雨月
199905
田の氷罅はしる音に跼みけり
能村登四郎
芒種
199911
かたまっているのであなたは氷です
津田このみ
月ひとしずく
199912
若き娘の視線氷を突き抜けて
稲畑廣太郎
ホトトギス
200001
氷らむとして畑土の月の光ゲ
小山森生
槐
200002
頭の氷厚しドン河の鯉元気か
城門次人
海程
200002
出航の砕氷船にしまきくる
山本雅子
馬醉木
200004
海豹を連れて氷の流れ寄る
阿部悦子
酸漿
200004
廊下橋濠の南面氷張る
二瓶洋子
六花
200004
火の山のふところ深く湖氷る
松永唯道
円虹
200005
この船もいのりの形砕氷す
斉木ギニ
海程
200005
氷塊を削り取つたる城現るる
吉村玲子
円虹
200006
厚氷指名手配の顔並ぶ
柴田いさを
船団
200007
篳篥は神の風船結氷期
松山律子
船団
200007
海氷る別れ話にもってこい
児玉硝子
ヒッポ千番地
200007
大幕に大きな氷はこばるる
中井和子
槐
200009
雷鳥や結氷蒼き山上湖
山田春生
春耕
200009
氷る窓の羊歯葉模様に夜明けたり
吉田陽代
沖
200010
先客のコップの氷つぶやきぬ
内山和江
奧嶺
200010
砕氷船修羅場起こしに水尾を曳く
田村すゝむ
風土
200011
中陰や厚き氷の鬆のやうに
中原道夫
銀化
200101
水昏く未完のままに蓮氷
加藤哲也
銀化
200102
空青く桶の丸さの氷面鏡
松村美智子
あを
200102
夜くだちの雁の諸声沼氷る
佐藤国夫
馬醉木
200104
氷雪の国より来たる賀状の朱
柳生千枝子
火星
200104
採氷のはやばや終へてグーを出す
松崎鉄之介
濱
200104
砕氷船斜里岳を率て航くごとし
岡田貞峰
馬醉木
200105
氷張り貯木と貯木筏組む
田中嘉代子
ぐろっけ
200105
氷上の影白鳥となりゆけり
岡本眸
朝
200106
湖氷り川躍りゆく大地かな
岡本眸
朝
200106
老一人氷上も奥の田を植うる
堀田清江
雨月
200107
一貫の氷を運ぶ縄粗し
森谷彰
銀化
200108
ゆつくりと迫りだす屋根の厚氷
岡部玄治
沖
200110
末伏の氷片口にをさまりぬ
城孝子
火星
200111
氷塊を刻めば天女現はれる
永野秀峰
ぐろっけ
200111
白鳥の浮きて結氷ままならず
村上沙央
狩
200112
あくまでも仮説に過ぎず氷面鏡
森景ともね
船団
200112
いつせいに氷花を噴けりしもばしら
阿部ひろし
酸漿
200201
昧爽の氷一枚採りはぐる
中原道夫
銀化
200201
舫ひ網氷りて糶のはじまりぬ
吉田多美
京鹿子
200202
青き檜葉挟んでゐたる厚氷
佐野まさる
百鳥
200202
磨崖佛の目の高さにて月氷る
菅藤良子
銀化
200202
恬淡として氷上をゆかむとす
土井田晩聖
銀化
200202
川波のめくれしままに結氷期
広渡紀子
朝
200202
夢殿のまはり氷りてをりにけり
山田六甲
六花
200202
古人ここに住み腸を氷らせて
村松紅花
ホトトギス
200203
あざらしを裂き氷上を染める鷲
小西龍馬
ホトトギス
200203
水汲みて氷作りに備う孫
佐藤千都
いろり
200203
人の灯の吹き寄せられて湖氷る
大串章
百鳥
200203
引き上げし竹瓮に氷きらめけり
大串章
百鳥
200203
氷らむとして白鷺の動きけり
大串章
百鳥
200203
刃を入れしごとき日ざしや浮氷
鷹羽狩行
狩
200203
日をつつむ雲のふくらみ浮氷
鷹羽狩行
狩
200203
太陽もたぢろぐ湖の厚氷
伊藤洋子
狩
200203
氷張り同じひかりの最上川
新関一杜
京鹿子
200204
氷面鏡弁天池の穢を封じ
安西可絵
狩
200205
海の色変へ氷山の流れをり
今井久良子
酸漿
200205
池杭に氷突く鳩及び腰
勝野薫
ぐろっけ
200205
杉の実のくろぐろ山の氷るなり
高橋さえ子
朝
200206
嚥下力萎え氷片を舐めてみる
福田李枝子
京鹿子
200209
蝶過ぎてより氷壁の虚空かな
小澤克己
遠嶺
200209
削氷の音のたまりて止まりたる
中原道夫
銀化
200210
氷上の混みゐて人とぶつからず
塩川雄三
潮路
200210
氷上の靴斷崖を行くごとし
中原道夫
銀化
200301
夜明星湖氷の裏を水流れ
鈴木まゆ
馬醉木
200303
銅版に張り付いてをる氷かな
高橋将夫
槐
200303
船倉に氷積み込む冬の月
堀義志郎
火星
200303
白無限砕氷船が海を曳く
泉田秋硯
鳥への進化
200303
廻らねば水車氷らむ二日月
太田昌子
馬醉木
200304
氷紋の窓に鼻当てさやうなら
山田弘子
円虹
200304
厚氷割るや戦争起きるなと
小澤克己
遠嶺
200304
昏れ際の鳥を映すや氷面鏡
砂川せい輝
遠嶺
200304
鳥翔ちて氷上朝の光かな
花島陽子
遠嶺
200304
蹲にぴたりと填る氷なり
土井田晩聖
銀化
200304
結氷が解け新鮮な滝どよむ
泉由秋硯
苑
200305
氷面鏡たたいて渉る石叩
長谷川春
沖
200305
厚氷紐締め直す編上靴
堀義志郎
火星
200305
逆縁の子と目が合へり氷面鏡
伊藤廸代
ぐろっけ
200305
来し方や厚き氷の乱反射
鈴木良戈
沖
200307
結氷の山湖に神の渡り疵
高橋あゆみ
沖
200307
らくばくと氷片舐めり気比神
宇都宮滴水
京鹿子
200308
水神の幣しろじろと結氷期
飯塚雅子
朝
200401
氷美味き地上を脱兎の鼬かな
天野きく江
槐
200402
一斗釜据ゑ影氷る峠口
林裕子
風土
200403
人間に壊すよろこび氷踏む
林昭太郎
沖
200403
音なくて朝は濁らず厚氷
里中章子
空
200403
砕氷の響き全身にて受くる
木村てる代
雲の峰
200404
道化師の胸の奥なる厚氷
近藤喜子
槐
200404
滝行者氷の衣着て横切る
平居澪子
六花
200404
蹲に柄杓浸かりしまま氷る
田中佐知子
風土
200404
閼伽桶の柄杓動かず厚氷
橘沙希
月の雫
200404
瞬時に氷る甲板の波しぶき
林玲子
沖
200405
氷結の湖上に立てり雪けむり
五十嵐暢子
対岸
200406
献氷祭海山のもの神前に
国包澄子
築港
200407
ガスタンクの影のころがる結氷期
山元志津香
八千草
200409
氷砕く足音一歩づつ夜へ
森屋慶基
風土
200411
湖氷る音のなか行く棺かな
内藤ゑつ
ゑつ
200411
2021年12月3日
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