枯 野 1 100句
よわよわと日の行きとどく枯野かな 堀麦水
亂聲は枯野を墓所として久し
中原道夫
銀化
199812
腹中に太陽入りぬ枯野かな
神蔵器
風土
199901
白磁ともちがう死が在り枯野かな
行川行人
藍の刻
199901
大枯野スローモーションに槍投げて
緒方敬
槐
199902
大枯野見ゆコッペパン、メロンパン
山尾玉藻
火星
199902
化粧具かかえ余儀なく枯野入口に
阿辺一葉
海程
199902
墨染の衣を颯颯と枯野行
小澤克己
遠嶺
199902
枯野割る九頭竜川のながれかな
柿沼盟子
風土
199902
大枯野とぶ一枚の新聞紙
吉田登子
風土
199902
枯野バス遥かに銀の水平線
柳生千枝子
火星
199903
見はるかす枯野は夕日畳みつつ
川口襄
遠嶺
199903
織田いくど兵進めしやこの枯野
柴田良二
雨月
199903
落暉へと駆け込む子等よ大枯野
藤原たかを
馬醉木
199904
枯野より枯野へ道の真直に
今木偉郎
槐
199904
何ゆえか枯野の彼方に笑う月
大谷昌弘
海程
199905
渚行くごとく枯野の端を踏む
神蔵器
沖
199905
新しき靴はき行かむ大枯野
小宮山勇
青胡桃
199905
カメラ下げ枯野に漠と在るわれは
倉本美代子
ヒッポ千番地
199905
枯野よりあおあおと来る誕生日
今城知子
船団
199907
継ぎ足しの電車の過ぐる枯野かな
金國久子
青葉潮
199907
雲早し枯野過りて行くときは
稲畑汀子
ホトトギス
199912
まん中に忘れ物めく枯野の駅
川島真砂夫
沖
199912
広辞苑の重さで枯野の頭陀袋
阿辺一葉
海程
199912
大枯野切り絵のように体かな
津田このみ
船団
199912
大枯野白洲正子があぐらかく
津田このみ
船団
199912
丸腰で枯野に入りてしまいけり
津田このみ
船団
199912
足先が最初に染まる枯野かな
津田このみ
船団
199912
よくできた体を放置大枯野
津田このみ
月ひとしずく
199912
枯野来し油紙の小包なりにけり
山尾玉藻
火星
200001
頬白のながむる枯野日の当る
阿部ひろし
酸漿
200001
串刺の木馬枯野の贄とせり
中原道夫
銀化
200001
大枯野指を丸めて覗きたる
田畑幸子
火星
200002
少年のピアスまぶしき枯野かな
谷口道子
火星
200002
枯野来てしばし佇む月の庭
関戸国子
酸漿
200002
仰ぐたび星の大きくなる枯野
長山あや
円虹
200002
枯野来て大きな息を吐きにけり
雨宮照代
風土
200002
望郷や枯野にことば繋ぎ合ふ
宇都宮滴水
京鹿子
200002
宮趾の枯野護りもし究史の府
奥村鷹尾
京鹿子
200002
髪つめて枯野の人になりに行く
田中藤穂
水瓶座
200002
いっときの道連れありし枯野かな
田中藤穂
水瓶座
200002
枯野背に人の焚く火をおそれけり
田中藤穂
水瓶座
200002
正確に電車来て発つ枯野駅
久崎富美子
朝
200002
見渡せば枯野の向こうに君の朝
尾上有紀子
わがまま
200002
吾に深き淵あり枯野行くときも
小澤克己
遠嶺
200003
夕闇の風ざわめきて大枯野
有山光子
遠嶺
200003
鳥群れて風と遊びぬ大枯野
府川房江
遠嶺
200003
塔頭の跡にはじまる枯野かな
塩田博久
風土
200003
温羅の怪を負ひて枯野へ深入す
武久昭子
風土
200003
つぶらなる鹿の瞳に枯野かな
田中よしとも
酸漿
200003
走り寄る犬に枯野の日の匂
野中ちよこ
馬醉木
200003
嘘ひとつ舌の枯野を転げゆく
柴田朱美
京鹿子
200003
骨抱き枯野行く影軽すぎる
柴田朱美
京鹿子
200003
枯野来て鬼籍の人に出くはしぬ
柴田朱美
京鹿子
200003
もののけに先を越されし枯野道
柴田朱美
京鹿子
200003
枯野来てこんなところに魚屋が
柴田朱美
京鹿子
200003
着陸のための枯野を探しをり
青山茂根
銀化
200003
枯野より雪野に変る刻静か
村越化石
濱
200003
神山へ登る道なき枯野かな
中杉隆世
ホトトギス
200004
牛ごゑの洩れくる牧舎枯野道
善積ひろし
遠嶺
200004
夜深き枯野に自販機発光す
三宅やよい
玩具帳
200004
石枕して天仰ぐ枯野かな
隆世
ホトトギス
200005
枯野原埴輪のひとつ売れのこり
秋野火耕
船団
200006
枯野にて犬も私も同じ色
甲田夏湖
船団
200007
大枯野意地の一句の出来るまで
吉野のぶ子
八重櫻
200008
枯野原われら回送電車のよう
本田ひとみ
海程
200012
背負ふべき星輕からぬ枯野行
中原道夫
銀化
200012
杖信じ妻信じ月の枯野道
木村風師
馬醉木
200101
昨日見し枯野の景の未だ去らず
能村登四郎
沖
200101
木の橋を繋ぐ大釘大枯野
甲州千草
沖
200101
日翳りてたちまち枯野なりしかな
朝妻力
俳句通信
200101
それぞれに見るものありて枯野見る
宮津昭彦
濱
200101
萬歳して枯野の方へ駆けてゆく
堀内一郎
あを
200101
たたずめば頬白の鳴く枯野なり
阿部ひろし
酸漿
200101
脱輪の鳶枯野へまつしぐら
新井竜才
銀化
200101
枯野行く身を削ぐことの叶ふまで
林裕子
風土
200102
行く果ての枯野となるも漂泊す
小澤克己
遠嶺
200102
ふつ切れて枯野の道のはるか見ゆ
小澤克己
遠嶺
200102
鳥翔つて枯野の月となりにけり
小澤克己
遠嶺
200102
枯野舟遊行の影を運びをり
小澤克己
遠嶺
200102
舟影の離れ枯野の星ひとつ
小澤克己
遠嶺
200102
露天湯に星の墜ちくる枯野宿
山田弘子
円虹
200102
悼 安江緑翠君
突如逝きし君に枯野の家残る
松崎鉄之介
濱
200102
遠目きく友と枯野に来て居たり
村越化石
濱
200102
一体の風化仏より枯野なる
豊田都峰
京鹿子
200102
大枯野硬きものから折れゆけり
宇都宮滴水
京鹿子
200102
是よりはしばし枯野の遊山かな
亀田愚風
銀化
200102
枯野ゆく一輌車輌灯のともり
藤村美津子
春耕
200102
傷つきし尾をひき帰る枯野みち
堀内一郎
あを
200102
老犬と気のあふ散歩枯野道
長島恵吉
遠嶺
200103
枯野来て輪切りに頭撮られけり
大熊庸介
濱
200103
地図にては海へほどなき枯野かな
田村はじめ
銀化
200103
下り来し処すなはち枯野なり
伊藤格
槐
200103
あかね雲はなさぬままに枯野暮る
豊田都峰
京鹿子
200103
見わたせば枯野内むいても枯野
竹貫示虹
京鹿子
200103
韋駄天の日を見送つてゐる枯野
竹貫示虹
京鹿子
200103
飄々と風の風研ぐ大枯野
渡邊友七
あを
200103
枯野来て痰壺見たり戦後の死
和田あきを
風土
200104
一遍とふるさと同じ枯野行
品川鈴子
船出
200104
風狂に生き風狂に死ぬ枯野
小澤克己
遠嶺
200105
十哲の影かがやかせ枯野径
小澤克己
遠嶺
200105
2020年12月12日
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