寒灯下眼こりこり洗はるる
山川涛石
築港
199805
寒灯下救命装置外しけり
中沢三省
風土
199901
寒燈下過ぎし校廊闇重く
盛良孝
朝
199904
寒灯の綺羅となるより濃き闇に
宮地玲子
円虹
199905
妻のみて寒灯繭のごとく点く
神蔵器
沖
199905
焼却炉あり寒燈の夜もすがら
岡本眸
朝
199905
終の王だり寒灯に銀の皿
品川鈴子
ぐろっけ
199912
寒灯や家居の時間経ち易く
稲畑汀子
ホトトギス
200001
寒灯に息整へて弾きはじむ
志方桜子
六花
200003
寒燈や人ぬつと出る異人館
酒井多加子
雲の峰
200003
整はぬ寝息窺ふ寒灯下
佐保美千子
円虹
200005
寝る前の旅のくつろぎ寒灯
稲畑汀子
ホトトギス
200101
寒燈を消す紐すこし足しておく
柴田雪路
沖
200101
寒灯や村に一つの診療所
森脇恵香
俳句通信
200102
寒燈のひとつに数へ観覧車
小林一行
円虹
200104
寒燈の塊として列車過ぐ
山下由理子
狩
200105
寒灯は凭れてくれる人を待つ
坂本敏子
京鹿子
200110
寒灯下独身通す弟よ
稲畑廣太郎
ホトトギス
200201
神将は秘仏におはす寒灯
乾フジ子
雲の峰
200202
絶望の淵に立ちたる寒灯下
西美知子
円虹
200203
夕潮の江は寒燈を弓なりに
閑田梅月
馬醉木
200204
寒燈下幼なじみの通夜に坐し
山田由利枝
雨月
200204
寒燈の届かぬ四隅久女の忌
華明日香
銀化
200204
地震七年寒灯愛しと見ゆるまで
北畠明子
ぐろっけ
200204
寒灯を暗く点じて商へり
塩川雄三
潮路
200210
結局は歌つてしまふ寒灯下
稲畑廣太郎
ホトトギス
200301
寒灯下馬鹿になり切り酒を酌む
稲畑廣太郎
ホトトギス
200301
寒燈下長靴ひそと集ひ寄る
鈴木まゆ
馬醉木
200303
紐引きて寒燈点すとき独り
大庭三千枝
沖
200303
寒灯を引き寄せ句集編み始む
小澤克己
遠嶺
200304
寒燈下獺祭書屋とぞ遺墨
熊岡俊子
雨月
200304
寒燈のおのれを點すのみの闇
佐藤喜孝
靑寫眞
200304
オペラ「ドン・カルロ」観劇
七色の声七色の寒灯下
稲畑廣太郎
ホトトギス
200312
それぞれに巣立つ子の部屋寒灯
阿部一彦
築港
200402
すき間なき一寒灯の舟溜り
蓮尾あきら
風土
200403
河口堰寒灯連ね瞬けり
梶島邦子
築港
200403
寒灯の杯は小ぶりに禁酒解く
有島夛美
河鹿
200406
寒灯すこし脚色する自伝
山元志津香
八千草
200407
寒灯や喪中の家のにぎやかな
堀内一郎
あを
200501
寒灯を消して漁船の朝となる
稲畑汀子
ホトトギス
200501
寒灯を消して仕事の山残す
稲畑汀子
ホトトギス
200501
東京の寒灯消して家路かな
稲畑汀子
ホトトギス
200501
誤字見つけ又読み返す寒灯
稲畑汀子
ホトトギス
200501
遅れ来し人に点さん寒灯
稲畑汀子
ホトトギス
200501
H氏追悼
寺暗し寒灯いくつ連ねても
岡本眸
朝
200501
寒灯のかたまるところ門司と呼ぶ
鷹羽狩行
狩
200502
寒灯や机上の観世百番集
金子慶子
遠嶺
200503
寒燈や木喰仏に鑿の跡
蓮井崇男
対岸
200504
寒灯の一つが岸に戻り舟
梶浦玲良子
六花
200504
日にいちど向かふ机や寒灯
石啓子
築港
200505
寒灯の光の翼張りにけり
粟津松彩子
ホトトギス
200506
寒灯下ハープフルート賀を奏で
稲畑廣太郎
ホトトギス
200601
寒灯下「JAPAN」の黒き栞紐
淵脇護
河鹿
200602
沖暮れて船の寒灯すれちがふ
小嶋恵美
春潮
200602
手話の子のまなこ耀く寒燈下
渡邉友七
あを
200602
寒燈を引きよす妻の返し針
田上昭夫
四葩
200605
空に備へ寒燈に芭蕉七部集
瀧春一
常念
200606
寒燈に海より激し女の頭髪
八田木枯
晩紅
200606
寒灯も星に紛れてをりし村
小西龍馬
ホトトギス
200607
寒灯を賞でし宗旦欠灯篭
林日圓
京鹿子
200702
ていねいに手を洗ひをり寒燈下
山田暢子
風土
200702
けふ生きて一寒燈にねまりけり
福地初江
朝
200702
一人には惜しき眺望寒灯
鈴木石花
風土
200704
寒灯のやうにぽつんと旅ごころ
小山徳夫
遠嶺
200705
海峡や市の寒灯列なりぬ
安原ときこ
遠嶺
200705
拓本は「銀河の序」なり寒燈
橋本良子
遠嶺
200705
寒灯やいまも使ひて糸切り歯
長沼紫紅
朝
200705
君の過去聞けば寒灯潤みたる
稲畑廣太郎
ホトトギス
200707
寒灯の消ゆることなき丸の内
稲畑廣太郎
ホトトギス
200801
寒灯の文字となりゆくビルの窓
稲畑廣太郎
ホトトギス
200801
寒灯下序の舞といふ華やぎに
稲畑廣太郎
ホトトギス
200801
祝「ひげ増」再開
寒灯の眩き中に再開す
稲畑廣太郎
ホトトギス
200801
鏡中にはたと母居る寒灯
岡本眸
朝
200801
寒灯下父の死顔のやすらけく
峰尾秀之
苑
200802
寒灯の点滅ビルの鼓動かな
古屋元
沖
200802
ゐるはずの人居ぬ椅子や寒灯
松岡隆子
朝
200803
寒灯もひくく星神司る
豊田都峰
京鹿子
200804
寒灯の沼を隔ててちらほらと
出木裕子
鴫
200804
例の物見たさに集ふ寒灯下
稲畑廣太郎
ホトトギス
200901
ものらみな影をもちゐし寒燈下
吉田空音
炎環
200902
寒灯や一座を占むる老いの席
吉田とよ子
春燈
200902
寒燈下摺り師のゆるぎなき手業
金田美恵子
ぐろっけ
200902
小走りに次の寒灯までの距離
北川英子
沖
200903
執刀医成功告げる寒燈下
辻口八重子
ホトトギス
200905
全身麻酔の手術は果てて寒灯
北村香朗
京鹿子
200905
貨車とほくとほく寒燈運び去る
柴出良二
雨月
200905
寒灯下伝統を守る百二人
稲畑廣太郎
ホトトギス
201001
恋の数ほど寒灯の潤みけり
稲畑廣太郎
ホトトギス
201001
甦れ友よ寒灯明うせよ
稲畑汀子
ホトトギス
201001
寒灯の一つ動くは着陸機
泉田秋硯
苑
201004
寒灯に浮く千体の陶狐
小山徳夫
遠嶺
201004
寒灯の己が微動も灯すかな
小山繁子
春燈
201004
寒灯や暖簾を掛くる音すなり
遠藤和彦
遠嶺
201005
寒燈の天へ天へと街更けず
倉橋あつ子
京鹿子
201005
寒灯の中のひとつは葬の灯
柴田久子
風土
201005
寒灯下音なく過ぎる通夜を守る
湯川雅
ホトトギス
201006
寒灯を消し活字より解かれけり
山田弘子
ホトトギス
201006
献杯に寒灯潤む宴かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
201011
寒灯下少女のやうな伴明子
稲畑廣太郎
ホトトギス
201011
こころぼそくて寒灯をひとつ足す
辻美奈子
沖
201101
寒灯下ひたすら水の流れ過ぐ
北川英子
沖
201102
じんわりと寒燈ともる富貴楼
築城百々平
馬醉木
201103
セーヌ河寒燈曳きゆく船の道
濱谷和代
万象
201104
寒灯下妻のひときは小さかり
小川玉泉
末黒野
201104
寒灯の棚の砿石彩あはき
伊藤希眸
京鹿子
201104
寒燈やことんと小さき駅に着く
柴田良二
雨月
201104
一寒灯吊るす馬房の藁匂ふ
相沢有理子
風土
201105
寒灯の青果市場に早荷置く
齋藤博
やぶれ傘
201106
寒燈を振つてベル押す発車かな
有本勝
ぐろっけ
201106
寒灯を消してDVD佳境
稲畑廣太郎
ホトトギス
201111
寒灯を足して祝はる聖家族
稲畑廣太郎
ホトトギス
201112
寒灯に筆柔らかきガラシャの書
伊東和子
璦
201202
寒灯に囲まれてゐる燧灘
山田六甲
六花
201202
寒灯の点りて日本一の塔
神戸やすを
沖
201203
キャンドル二本点火寒燈明るさ増す
松橋利雄
光陰
201203
寒燈や染糸醂す沢の水
田中由喜子
馬醉木
201204
江の島へ寒灯続き海平ら
松本三千夫
末黒野
201204
寒灯下季寄せに残る母の文字
藤井啓子
ホトトギス
201205
寒灯や長押にのこる刀疵
倉谷紫龍
万象選集
201205
寒灯に人悼む色ありにけり
稲畑廣太郎
ホトトギス
201211
寒燈の影身じろがずひとり刻
塩路隆子
璦
201301
寒灯を出で星空といふ灯
稲畑廣太郎
ホトトギス
201301
寒灯下セシールセリーヌタイガース
稲畑廣太郎
ホトトギス
201301
寒灯の消えて夜明の旅立に
稲畑汀子
ホトトギス
201301
一つづつ消えて寒灯なりしかな
稲畑汀子
ホトトギス
201301
母の家の寒灯ひとつ残りをり
辻美奈子
沖
201301
かぎろひの丘へと続く寒灯り
塩路隆子
璦
201303
我ひとり寒灯ひとつ風ひゅうと
大橋晄
雨月
201304
寒燈下目薬双つ的中す
佐藤山人
鴫
201304
寒燈下靴音堅く女連れ
丹後みゆき
ぐろっけ
201304
時として人を拒みて寒灯
竹田ひろ子
ろんど
201305
山姥の影動くかに寒灯
竹田ひろ子
ろんど
201305
寒灯に躍り出したる刃文かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
201311
寒灯下虚子寛ぎしままの部屋
稲畑廣太郎
ホトトギス
201311
寒灯を浴びて真つ赤な六健さん
稲畑廣太郎
ホトトギス
201401
寒灯下鏝の存問ありにけり
稲畑廣太郎
ホトトギス
201401
寒灯に闇のすばやく後退る
有松洋子
槐
201403
寒燈や賽銭函をのみ照らし
定梶じょう
あを
201403
白き便箋犯すごと書く寒灯下
松本三千夫
末黒野
201404
寒灯や小舟のごとき老夫婦
竹田ひろ子
末黒野
201404
祝ぎ心胸に響きて寒灯下
稲畑廣太郎
ホトトギス
201501
寒灯を点す誰かの影一つ
有松洋子
槐
201502
寒燈や考が手帳の気骨文字
藤井寿江子
馬醉木
201502
寒燈や怒れば今も怖き父
藤井彰二
馬醉木
201503
過疎村のひとり暮しや寒灯下
呂秀文
春燈
201503
寒燈や塾の講師の淡き影
高野春子
京鹿子
201504
我包む真夜の寒灯丸くあり
竹田ひろ子
ろんど
201504
寒灯に急く足音の二・三人
山田佳子
槐
201504
亡き母にまゐらす写経寒灯下
高橋照子
雨月
201504
拡大鏡に頼る齢や寒灯
西村しげ子
雨月
201505
寒燈を帰り来る子の部屋に満たす
押田裕見子
空
201506
寒燈に能舞の影立ち上がる
ほんだゆき
馬醉木
201510
寒灯下幸若舞は回るまはる
稲畑廣太郎
ホトトギス
201512
櫻桃子忌の寒灯一つ道を成す
安立公彦
春燈
201602
寒灯余呉の湖畔の無人駅
辻由紀
雨月
201602
寒燈やウインナワルツに長湯する
赤座典子
あを
201602
福祉所の寒灯畳むごとく消え
荒井千瑳子
沖
201604
寒灯のひとつふたつと過疎の村
小山繁子
春燈
201604
万年筆走る便箋寒灯
松本三千夫
末黒野
201604
寒灯を潤ませてゐる四季の歌
稲畑廣太郎
ホトトギス
201701
寒灯下ワインは己が色忘れ
稲畑廣太郎
ホトトギス
201701
微酔も泥酔も寒灯下かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
201701
百人の句座一人づつ寒灯下
稲畑廣太郎
ホトトギス
201701
仕事場の寒灯明る過ぎるかも
稲畑廣太郎
ホトトギス
201701
寒灯を消して旅路の一歩かな
稲畑汀子
ホトトギス
201701
寒灯を消して旅路の一歩かな
稲畑汀子
ホトトギス
201701
寒灯下活字の大き書を選ぶ
藤井美晴
やぶれ傘
201703
読み止しの句集歳時記寒灯下
松本三千夫
末黒野
201704
縁日や筮竹鳴らす寒灯下
川田好子
風土
201705
寒灯下ミディアムレアに近江牛
稲畑廣太郎
ホトトギス
201711
寒灯を揺すり長崎ぶらぶら節
稲畑廣太郎
ホトトギス
201712
一本の寒灯醸す暗夜かな
大日向幸江
あを
201802
寒灯の机上もの音絶ゆるかな
安立公彦
春燈
201803
寒灯や天金くすむ智恵子抄
松本三千夫
末黒野
201804
鈴の音の澄みし輪となる寒灯下
山内碧
空
201806
寒灯の赤く潤みて美酒進む
稲畑廣太郎
ホトトギス
201901
故郷の地震の記憶や寒灯
稲畑廣太郎
ホトトギス
201901
寒灯ホットミルクを飲めば膜
小山よる
やぶれ傘
201903
柿右衛門皿寒灯をはみ出して
稲畑廣太郎
ホトトギス
201912
碗琴の音色寒灯潤ませて
稲畑廣太郎
ホトトギス
201912
よく見ても何かわからぬ寒灯下
小山よる
やぶれ傘
202002
歳時記の古き書込み寒灯火
小原紀子
末黒野
202004
玉垣の内の祠に寒燈
善野行
六花
202005
寒灯下教皇ミサといふ奇跡
稲畑廣太郎
ホトトギス
202011
背をまるく豆選る嬶座寒燈下
石井美智子
風土
202011
終電の尾灯寒灯離しゆく
稲畑廣太郎
ホトトギス
202101
寒灯下八十路最後の母の愚痴
稲畑廣太郎
ホトトギス
202101
寒灯下カーテン越しに影二つ
稲畑廣太郎
ホトトギス
202101
寒灯下チェロはバッハの無伴奏
稲畑廣太郎
ホトトギス
202101
寒灯下恋文のペン走る音
稲畑廣太郎
ホトトギス
202101
寒灯下八掛の色ちらと見え
西本花音
春燈
202102
五六基の寒灯の守る小路かな
土井三乙
風土
202104
日記書く指がこわばる寒灯火
石川東児
集
202105
寒灯の飛び跳ねてゆく通過駅
森田明成
空
202107
聖櫃の赤き寒灯てふ孤高
稲畑廣太郎
ホトトギス
202201
寒灯下音潤みゆくノクターン
稲畑廣太郎
ホトトギス
202201
寒灯の一つ一つにあるたつき
青柳雅子
春燈
202203
寒灯の死角の隅に何か居る
小張志げ
春燈
202203
控室一寒灯を分け合ひぬ
亀井福恵
京鹿子
202203
寒灯や天金褪せし考の聖書
安田優歌
京鹿子
202204
寒灯に映ゆホトトギス創刊号
稲畑廣太郎
ホトトギス
202212
寒灯の燭一本といふ祈り
稲畑廣太郎
ホトトギス
202212
2022年1月10日
作成