寒月をさへぎる雲のなかりけり
稲畑汀子
ホトトギス
199901
寒月や靴音ビルに谺せり
稲畑廣太郎
ホトトギス
199901
しばらくを歩いてゆけり寒の月
竹内悦子
槐
199902
寒月やこりゃ六方で帰るべし
平井奇散人
船団
199902
寒月を見ている迷路の入口で
今城知子
船団
199902
猫の眼の七彩曳けり寒月下
頓所敏雄
沖
199903
寒月に尻を向けねばならぬかな
市堀玉宗
銀化
199903
寒月へ向かふガラスの昇降機
山田禮子
遠嶺
199905
将門の直刀剣や寒月下
山路紀子
風土
199906
しばらくは歩いてゆけり寒の月
竹内悦子
槐
199908
寒月光路面電車のがらんどう
成定紋子
船団
199912
寒月や少し欠けゐて肥後の宵
稲畑廣太郎
ホトトギス
200001
寒月にオリオンの盾力失せ
稲岡長
円虹
200002
墨汁の空寒月の漂へり
橋本弘子
沖
200003
五分後は在るかも無いかも寒の月
山田六甲
六花
200003
岩の上に漢がひとり寒の月
小澤克己
遠嶺
200003
ゑぐられてみたき胸うち寒の月
小澤克己
遠嶺
200003
寒月下北嶺奥にまた北嶺
豊田都峰
京鹿子
200003
寒の月たしかあの字もおんな偏
わたなべじゅんこ
鳥になる
200003
空海の開眼祠に寒の月
中村祭生
ぐろっけ
200003
葬れる古郷川や寒月さす
山田耕子
京鹿子
200004
寒月を背に定年の夫帰る
志方桜子
六花
200004
濡れるもの蒼く染めつつ寒の月
三宅やよい
玩具帳
200004
一村の沈む大湖や寒の月
高橋好温
馬醉木
200005
剥落の船体さらす寒月夜
石本秋翠
馬醉木
200005
看取りの灯小さく落して寒の月
佐保美千子
円虹
200005
寒月や火種のごとき鎮守の灯
稲田眸子
「絆」
200005
一卓を囲みて寒の月を消す
森津三郎
京鹿子
200007
寒月は政治論へと傾けり
川島ひとみ
船団
200007
少女差すまた刺し足りぬ寒月光
三池泉
船団
200008
寒月が煌々僅かなる負ひ目
塩路隆子
精鋭選集
200008
腸が胃につながる不思議寒の月
中原幸子
遠くの山
200010
寒月を仰ぎ過ぎゐし五年かな
稲畑汀子
ホトトギス
200101
遠ざかる記憶近づけ寒の月
稲畑汀子
ホトトギス
200101
寒月の乾ききつたる白さかな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200101
寒月に和して大倉流鼓
稲畑廣太郎
ホトトギス
200101
寒月や雲従へて孤高なる
稲畑廣太郎
ホトトギス
200101
古の足跡残し寒の月
稲畑廣太郎
ホトトギス
200101
寒月や丸ビル跡地黒々と
稲畑廣太郎
ホトトギス
200101
竹林に音一つなし寒の月
小泉晴露
酸漿
200102
寄せありし硝子の屑に寒の月
山尾玉藻
火星
200102
寒月下狂気才気の育つかな
能村研三
沖
200102
寒の月爪立ててゐる大気かな
篠田純子
あを
200102
廃業の店なほ灯し寒の月
前田祐治
狩
200103
寒月や暗きところも美しき
根岸善行
風土
200103
死顔の脳裏に生きて寒月光
谷榮子
雨月
200103
寒月に頬を削がれて戻り来し
海輪久子
円虹
200103
すれちがふ寒月光の径の中
内藤紀子
遠嶺
200103
佇めば影の貼りつく寒月夜
佐山文子
沖
200103
寒月光王道もあるけものみち
華明日香
銀化
200103
あをざめてゆく記憶あり寒の月
海輪久子
円虹
200104
寒月を仰ぎ決めねばならぬこと
福山悦子
円虹
200104
秒針のぶれし処に寒月光
伊藤格
槐
200104
繙くに寒月光の溢れけり
小山森生
槐
200104
寒月光みなとみらいといふ遺跡
結木桃子
銀化
200104
寒月へ出でてさまよふ被災猫
品川鈴子
船出
200104
旅愁なほアルハンブラの寒の月
刈米育子
苑
200105
寒月を噛めばシトラスミント味冬構え
能城檀
船団
200105
寒月のほどこしほどの小径行く
小澤克己
遠嶺
200105
友とせし己の影や寒月夜
尾崎九一
遠嶺
200106
通夜明けてまだ寒月に色残り
佐々木峻
船団
200108
寒月の記憶となりて地震の朝
稲畑汀子
ホトトギス
200201
寒月をともなふ旅の帰路となる
稲畑汀子
ホトトギス
200201
寒月のかがやき増せり大欅
小野ちゑ
酸漿
200201
寒月や天守に鈍き金の鯱
大橋克己
雲の峰
200201
寒月の痩せ切っている通天閣
松山律子
六花
200201
寒の月瀬音を後に森よぎる
渡邉友七
あを
200201
寒月や畦にタオルの忘れあり
山田六甲
六花
200202
寒の月廃寺に光惜しみなく
今瀬一博
沖
200203
寒月光人魚現れさうな海
いしだゆか
遠嶺
200203
捨てたるか捨てられたるか寒の月
小島せつ子
百鳥
200203
舟降りし漁夫寒月へものを言ふ
荒井千佐代
系図
200203
寒月を照り返しをる砂子かな
加藤みき
槐
200204
寒月に訴へやまぬ孤葉あり
干代田葛彦
馬醉木
200204
寒月夜体温失せし京町家
吉田多美
京鹿子
200204
雨上り光彩放つ寒の月
大内恵
酸漿
200204
段畑の或いは屹ちて寒月下
渡邉友七
あを
200204
島そつと眠らせまどか寒の月
新田巣鳩
馬醉木
200205
凛として寒月雲を寄せつけず
佐藤なか
遠嶺
200205
だぶだぶの長靴の音寒の月
岩松八重
六花
200206
悼 宇川紫鳥様
邂逅とならぬ寒月仰ぎけり
稲畑汀子
ホトトギス
200301
寒月光松の葉先と弾き合ひ
堤京子
馬醉木
200302
ひとりでに戻る巻尺寒の月
高橋将夫
槐
200302
千鳥足吾寒月と二人連
小野博志
築港
200302
寒月や松の色濃き海蔵寺
三澤福泉
雲の峰
200303
三山も三輪もくまなく寒の月
中御門あや
雲の峰
200303
寒月や眞珠育む貝の肉
波多洋子
銀化
200303
駅ビルの寒月うつす硝子ばり
那須淳男
馬醉木
200303
帰るさの橙色の寒の月
岡和絵
火星
200304
石敷の寒月光に磨かれぬ
奥田節子
火星
200304
亡き妻の部屋寒月の射すばかり
牧野耕二
ホトトギス
200304
ドアノブに触れれば痛し寒の月
山田禮子
遠嶺
200304
雑踏の夕空にして寒の月
夏目満子
酸漿
200304
一天に細き寒月あるばかり
板倉幸子
築港
200304
寒月や高炉消え人去りし島
片山喜久子
雨月
200304
寒月や老人ひとり庵の中
沼田巴字
京鹿子
200304
寒月やジャックナイフが見当らぬ
塩路隆子
苑
200305
寒月の下黙黙と歩みけり
山本静江
築港
200305
2021年1月29日
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