門火焚く利尻の海霧に一家族
柴田良二
雨月
199901
雨上る娘と門火いそいそと
大平保子
いろり
199909
五十年同じ坂立て門火焚く
神蔵器
風土
199910
あたま数七つ揃ひて門火焚く
武内美津子
狩
199911
雲に乗り来ませと二師に門火焚く
西山胡鬼
京鹿子
199911
門火焚きかの世への旅思ふべし
岡本まち子
馬醉木
199911
軒ぞひに門火の煙流れけり
松田裕子
六花
199911
門火焚くひとりの影の濃かりけり
代田青鳥
風土
199911
門火見ゆかすかに軋む舟溜
諏訪一郎
遠嶺
199912
門火燃ゆ泣けとごとくに赤々と
大橋淳一
雨月
199912
母のせし如くに妻や門火焚く
土永竜仙子
「朝月夜」
199912
商ひの裏口に焚く門火かな
大橋淳一
雨月
199912
門火焚くやあまたの父ら濡れて立つ
中村苑子
「水妖詞館」
200008
門火焚く一人に迎ふ多勢かな
神蔵器
風土
200009
父母迎ふ門火真砂を山盛りに
鈴木夢亭
春耕
200010
満月に坂立てかけて門火焚く
神蔵器
風土
200010
霧染めて門火増えゆく麓村
和田和子
馬醉木
200011
泣き虫の母の門火となりにけり
関根洋子
風土
200101
梢なる鳥のこころで門火見る
能村登四郎
沖
200108
水音やよべに門火の燃えしあたり
豊田都峰
京鹿子
200110
稜線に残る明るさ門火焚く
岡本明美
俳句通信
200111
門火焚きいくさの記憶よみがへる
山本喜朗
雨月
200111
ひと束の藁の門火のすぐに尽き
鈴木ゆき子
風土
200111
母であり姑でありし門火焚く
田中武彦
六花
200112
濁世より少し離れて門火焚く
松本圭司
沖
200112
ひとり焚く門火や灯蛾のまつはりて
塩谷はつ枝
馬醉木
200112
不意の客招じて門火ひとしきり
千田敬
沖
200112
片頬はこの世の灯かげ門火たく
坂本俊子
沖
200201
母逝くも泣けぬ男が焚く門火
朝日彩湖
船団
200201
門火焚くかかる夕ベも二人きり
辻口静夫
ホトトギス
200202
思はざる独りの門火焚きにけり
白岩三郎
馬醉木
200209
ちちははが畦連れ立つと門火焚く
廣畑忠明
火星
200211
二次会へ日の差す門火焚きてより
柴田久子
風土
200211
帰りくる人を恋ひをり門火焚く
大井昌
京鹿子
200212
山国の山より暮れて門火燃ゆ
飯塚久美子
対岸
200310
後れ毛の少し吹かれて門火焚く
香月公恵
朝
200310
昨夜の雨門火の屑を流しけり
中和田洋美
万象
200409
雨上り門火のほのほ其所此所に
鎌倉喜久恵
あを
200410
門火焚くうしろの闇の風うごき
水谷芳子
雨月
200411
路地の風少しありけり門火焚
小山漂葉
酸漿
200411
児の背丈ほどに焚きたる門火かな
山形悦子
万象
200411
のりくらの白樺の皮門火とす
加地芳女
雨月
200412
今もなほ恋しと思ふ門火焚く
増田久子
酸漿
200509
夕映の空の残れる門火かな
坂本幸子
酸漿
200510
階住まひ門火焚くこと憚られ
石橋万寿
狩
200511
もんぺはいて母まゐりませ焚く門火
近藤てるよ
酸漿
200511
団地族ビル屋上に門火焚く
三浦如水
ぐろっけ
200511
われは寡婦四半世紀門火焚く
汐青子
四葩
200512
白樺の皮燃す門火古里や
藤原りくを
八千草
200602
門火焚く新装なりし庭に焚く
谷榮子
雨月
200610
遠年忌小さき門火を焚きにけり
石原光徳
酸漿
200611
民宿の門火の端にゆくりなく
出来由子
鴫
200611
生涯の地として門火焚きにけり
鈴木政子
朝
200611
心にも棲む人殖ゆる門火かな
中村恭子
鴫
200611
門火焚く父母よ筑紫に罷れかし
竹内喜代子
雨月
200611
現し世をひとり歩きの門火焚く
鈴木政子
朝
200611
焙烙の素焼を染むる門火かな
秋場貞枝
春燈
200612
ことしから兄さんも来る門火焚く
千田百里
沖
200612
竹垣をきれいに洗ひ門火かな
武井美代子
万象合同句集
200703
門火焚く夫の屈背のつぶやけり
隅田恵子
雨月
200703
誰がための門火や更けし路地の家
岡本眸
朝
200708
ひとすぢの雲の紅らむ門火かな
鷹羽狩行
狩
200709
風呂も飯も準備よろしく門火焚く
高根照子
苑
200711
門火焚き紫煙に父祖を迎へけり
村上美智子
雨月
200711
去りがたく残火を見る門火かな
中村昭子
酸漿
200810
ねんごろに燃えさし重ね門火焚く
東芳子
酸漿
200810
呼びあひしことなき吾子に門火焚く
安立公彦
春燈
200811
門火焚くおうと声あり見えねども
天野みゆき
風土
200811
路地奥のほのと明るき門火かな
戸田稀字子
狩
200811
門火焚く八重山垣の只中に
守屋井蛙
酸漿
200811
風立てり今し門火を焚きし跡
中西咲央
炎環
200812
今在りて門火の炭を拾ひけり
黒杭良雄
ホトトギス
200812
門火焚く息子の背に亡夫の影
森下康子
璦
200909
最終の船の汽笛や門火焚く
藤本一城
笹
200910
父母たちの記憶をきざみ門火焚く
渡辺安酔
峰
200910
門火焚き軒灯つけて亡き子待つ
渡辺安酔
峰
200910
あれそれで通じし妻へ門火焚く
久保田嘉郎
酸漿
200910
月淡きうちに門火を焚きにけり
池田忠山
狩
200911
亡き妻の里に住み古り門火焚く
山本康夫
苑
200911
かにかくに一門集ひ焚く門火
平賀扶人
馬醉木
200911
それぞれの思ひの門火でありにけり
布川直幸
峰
200911
門火焚く父母よ夫よと声に出て
細川コマヱ
雨月
200911
子のひとり待たず門火を焚きにけり
坂場章子
鴫
200911
五十余年同じ石にて門火焚く
羽生きよみ
はらから
200911
門火焚くはらからといふしがらみに
和田照海
京鹿子
200912
はらからの手の甲老いぬ門火焚く
金原登志子
馬醉木
200912
憂きことの多き余生や門火焚く
岩谷丁字
春燈
201007
門火焚く人の真顔を見逃さず
稲畑汀子
ホトトギス
201008
雷鳴の過ぐるを待ちて門火焚く
中村洋子
風土
201011
小さく燃ゆ平家の里の門火かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
201102
東京に真の闇なし門火焚く
加茂達彌
面
201105
門火焚く会ひに来て下さいますか
稲畑廣太郎
ホトトギス
201108
門火焚く衆生を少し遠ざけて
稲畑廣太郎
ホトトギス
201108
あかあかと真黒き海へ門火焚く
神蔵器
風土
201109
門火焚くひとりの膝を深く折り
辻直美
沖
201110
気の急いて亡父に早目の門火かな
中山静枝
峰
201110
遺愛なる紙燐寸もて門火焚く
能村研三
沖
201110
面影のいまだ新し門火焚く
西川春子
春燈
201111
三世代揃へば門火焚きにけり
平居澪子
六花
201112
美しく人を語りて門火焚く
雲所誠子
風土
201211
門火焚く仏の知らぬ異郷にて
片山喜久子
雨月
201211
半世紀経し花街の門火かな
古沢幸次
ろんど
201212
ちちははと夫に門火を煙らせて
今井千鶴子
ホトトギス
201212
その走り火をためらはず門火焚く
呉文宗
春燈
201301
漆黒の海へあかあか門火焚く
斉藤マキ子
末黒野
201304
独り焚く門火の煙に囚れて
平居澪子
六花
201311
歳とらぬ父祖一統へ門火焚く
阪本哲弘
璦
201311
門火焚くどこかで生きてゐる魂に
山崎青史
ろんど
201311
門火焚く能登福浦の船溜
阿部眞佐朗
沖
201311
桑根榾燃え尽くるまで門火焚く
小松敏郎
万象
201311
門火焚く母に告げたき事幾つ
吉永すみれ
風土
201411
あるか無き風もて門火焚きにけり
今澤淑子
火星
201411
在すごと語りかけつつ門火焚く
大橋伊佐子
末黒野
201411
一生を母は生家に門火焚く
吉武千束
太古のこゑ
201411
俤の闇に残れる門火かな
小田嶋野笛
末黒野
201412
門火高く方向音痴なる妻に
木村享史
ホトトギス
201501
暮れ残る秩父の山や門火焚く
鈴木静恵
花こぶし
201508
汚染土に滲み入る底の門火かな
鴨下昭
峰
201510
舟揚げのその手で漁師門火焚く
松本三千夫
末黒野
201511
四方より風あり門火焚きにけり
笹村政子
六花
201511
門を出て一人に多勢門火焚く
神蔵器
風土
201511
生者老い亡者は若し門火焚く
杉田春雄
風土
201512
一歩前二歩前進門火焚く
神蔵器
風土
201512
母と言ふ一字の温み門火焚く
吉永すみれ
風土
201512
門火焚くひととき我も照らされて
望月晴美
沖
201512
ささやかな門火なれども夫来ませ
田中珠生
馬酔木
201611
里山の変はらぬ姿門火焚く
上月智子
末黒野
201612
我在らん限り続けん門火焚き
小池みな
末黒野
201612
門火焚くふとむらさきとなることも
今橋眞理子
ホトトギス
201701
水軍の裔に嫁ぎて門火焚く
河野由美
馬醉木
201701
早く来よ遅く帰れと門火焚く
稲畑廣太郎
ホトトギス
201708
門火焚く闇の走つてをりにけり
稲畑廣太郎
ホトトギス
201708
門火焚く庭石に置く素焼皿
古川幸子
春燈
201710
江戸情緒のこる赤坂門火焚く
村上美智子
雨月
201711
門火ふと思ひ立つかに燃ゆるとき
今橋眞理子
ホトトギス
201712
門火焚く山国の日は山に没り
佐津のぼる
六花
201712
見通せるところへ門火焚きにけり
平野多聞
槐
201811
門火いま被災の魂の道しるべ
山中志津子
京鹿子
201811
門火焚く黄泉を繋げてをりにけり
稲畑廣太郎
ホトトギス
201908
庭風に門火のあとの灰のとぶ
佐津のぼる
六花
201911
幼子の魂も門火もぎこちなく
三木亨
槐
201911
残されて父と娘で焚く門火
三上程子
風聴くや
202003
門火焚く見覚えの杖そのままに
鈴木和江
沖
202011
石垣の海水上がる門火かな
江見巌
六花
202011
門火焚く仮設に住まふお婆らと
赤川誓城
ホトトギス
202102
残りたる吾に燃えゐる門火かな
今井千鶴子
ホトトギス
202201
後ずさりしつつ門火を見る小犬
今井千鶴子
ホトトギス
202201
2022年8月24日
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