断層を見てや炎暑の地がゆらぐ
大橋敦子
雨月
199810
鍬入れて炎暑やはらぐ思ひあり
田原憲治
ホトトギス
199810
炎暑中大氷柱の起工式
柴尾こなみ
ホトトギス
199810
街炎暑赤い喪服の女の子
桐木榮手
船団
199811
コルク樫剥かれ炎暑に耐へてをり
中里信司
酸漿
199908
炎暑来て秋野不矩館下足札
金子里美
船団
199909
街灯の狂ひ点きせし炎暑かな
三澤福泉
俳句通信
199910
聞き込みの刑事炎暑の空家にも
犬飼陽子
狩
199910
稻魂もうだる炎暑や加賀詣
中原道夫
銀化
199910
炎暑午後仇のようにコップ洗う
後藤とみ子
ぐろっけ
199911
ロケ隊の裸武者行く炎暑かな
小林光美
春耕
199911
うからみな老いて炎暑の寺に坐す
田中藤穂
水瓶座
200002
触角に今日も昨日もなき炎暑
保坂加津夫
いろり
200009
八ツ橋に釘の浮きたつ炎暑かな
下村志津子
銀化
200009
炎暑なんぞものかは裸蚯蚓這ふ
市場基巳
槐
200010
石の貌石の貌なる炎暑かな
西村純
槐
200107
ガウデイのモダンが溶けていく炎暑
秋尾敏
火星
200109
乳牛の搾乳落ちし炎暑かな
保坂加津夫
いろり
200109
高架橋釘の浮き立つ炎暑かな
中尾杏子
沖
200110
通院の身となり炎暑つづきけり
松崎鉄之介
濱
200112
教会を尋ね炎暑の港町
上原カツミ
帆船
200209
象の鼻水ふき上げる炎暑かな
山崎ミチ子
帆船
200209
百選の棚田の匂ふ炎暑かな
朝妻力
雲の峰
200209
トンネルへ汽車が縮んでゆく炎暑
寺田千代子
京鹿子
200209
ゆらゆらと深吐息して炎暑の樹
田中藤穂
あを
200209
炎暑のバス横顔ばかり乗せてゆく
蔵持柚
銀化
200209
自づから口開けてゆく炎暑かな
小山田子鬼
沖
200210
雪蔵に炎暑の老躯憩ひけり
伊沢山?ウ瓏
酸漿
200210
半眼に炎暑の街を歩きけり
金森教子
雨月
200210
出棺や炎暑に喪服並びける
大野ツネ子
酸漿
200210
ゴーギャンの女逞し炎暑の日
田下宮子
苑
200210
沢音のまぢか炎暑の下山道
中薗道子
遠嶺
200211
「あずさ」降り高層群の炎暑かな
浜中雅子
遠嶺
200211
林間に入るとも炎暑免れず
岡本直子
雨月
200211
自転車を降りて炎暑に捕まりぬ
西宮舞
狩
200212
逆縁に炎暑の巷踏み迷ふ
滝青佳
ホトトギス
200301
炎暑の日岩を眺めて小一時間
篠田大佳
あを
200310
神戸港沖から見ても炎暑なる
山田六甲
六花
200310
宛名書き筆滞る炎暑かな
松木清川
ぐろっけ
200310
御塩焼く炎暑七斗の釜滾り
密門令子
雨月
200311
健脚の父を倒せし炎暑来る
佐野まさる
百鳥
200311
みほとけの朽ちて鬼相に炎暑来る
青山悠
空
200311
雲も風も映さず炎暑の川廣む
佐藤喜孝
あを
200402
ガウデイの聖堂出でし炎暑かな
田中重子
雲の峰
200408
大使館通りの炎暑摂氏華氏
佐渡谷秀一
春燈
200409
木洩日に鶏腹這へる庭炎暑
和田一
雨月
200409
目覚めれば炎暑の中にゐたりけり
鎌倉喜久恵
あを
200409
艦載機炎暑に耐へず発進す
泉田秋硯
苑
200410
四脚門へ男消えゆく炎暑かな
柴田久子
風土
200410
師やはるか炎暑の道の続きをり
小澤克己
遠嶺
200410
雄牛のゆばり眩ゆき炎暑かな
高野清風
雲の峰
200410
炎暑とてイコンは影を持たざる絵
泉田秋硯
苑
200410
炎暑なり脳細胞が溶けて行く
池本喜久恵
苑
200411
炎暑なる栓噴き上ぐる果実酒
渡辺清子
濱
200411
砂丘炎暑遠見に駱駝いと凛々し
浜田南風
苑
200411
塵袋かじる鴉を追う炎暑
藤田京子
ぐろっけ
200411
動くとも見えぬ炎暑の観覧車
大沢絹代
狩
200411
炎暑歎く左右対称ならぬ貌
泉田秋硯
苑
200411
ジェットコースター金属音の炎暑かな
加地芳女
雨月
200412
鳥も木も君も語らぬ坂炎暑
山元志津香
八千草
200502
炎暑行く平衡感覚狂ひつつ
石垣幸子
雨月
200510
炎暑来て両手に重き火縄銃
栗城静子
沖
200510
炎暑なか広島市電軋みゆく
藤原浩
栴檀
200510
タラツプを島の炎暑へ逸りゆく
得田武市
河鹿
200510
炎暑ゆく吾が影一尺花雁皮
吉田多美
京鹿子
200511
屋上に人の働く炎暑かな
山下青坡
苑
200511
お願ひの選挙かきたつ炎暑かな
岩井桂子
四葩
200601
シャッター街炎暑渦巻き始めけり
有働亨
馬醉木
200601
六の弥陀吐きて炎暑の空也像
松村多美
四葩
200608
ビルは樹に樹はビルに添ふ炎暑かな
篠田純子
あを
200609
人間も獣の吐息炎暑なり
伊藤憲子
苑
200611
糸杉の影がけものとなる炎暑
清水晃子
遠嶺
200611
四週の炎暑余生もただならず
泉田秋硯
苑
200611
再入院約し炎暑の中帰宅
山田をがたま
京鹿子
200611
炎暑来る夫と娘のゐて恵みの刻
山田をがたま
京鹿子
200611
炎暑の夜三度も覚めて漠々と
大橋敦子
雨月
200709
吸ふ息の詰って了ふ炎暑かな
篠田純子
あを
200710
風少しありと炎暑の水道屋
田中藤穂
あを
200710
粛然と炎暑の兆し原爆の日
木村茂登子
あを
200711
百日紅炎暑の空のつめたさに
金井充
百日紅
200711
炎暑来てそつとベツドに近寄る娘
山田をがたま
京鹿子
200711
あつさりと炎暑終りぬ砂漠の地
伊吹之博
京鹿子
200712
一つ覚え二つ忘るる炎暑かな
金田美恵子
ぐろっけ
200808
歓喜天そこにありたる炎暑かな
中島陽華
槐
200809
自販機の感度も鈍る炎暑かな
坂上香菜
璦
200809
十字路に人の消えたる炎暑かな
神蔵器
風土
200809
何事ぞ炎暑の犬に胴着着せ
塩田博久
風土
200809
サイレント映画の如き炎暑かな
浅嶋肇
やぶれ傘
200810
川舟を舫ふ佃の炎暑かな
青木政江
酸漿
200810
俯いて上る炎暑の詣道
金森教子
雨月
200811
懐紙一枚炎暑に燃せば黄のほむら
大畑善昭
沖
200909
ぜいたくと思ふ水音炎暑かな
黒澤登美枝
峰
200909
曼荼羅をつきつけられて炎暑かな
西村純太
槐
200910
列島の時間のゆがみ炎暑かな
藤沢愃
炎環
200910
四つ辻に人一人見ぬ炎暑かな
高橋照子
雨月
200910
炎暑かな遠き車の屋根光る
出口誠
六花
200910
停車位置やや外れたる炎暑かな
渡部節郎
転舵の渦
200911
草むらに缶を蹴り込む炎暑かな
白石正躬
やぶれ傘
200912
フラミンゴ赤のもつれてゐる炎暑
山田弘子
ホトトギス
200912
平成の炎暑に曝す珪化木
船橋とし
笹
201005
これよりの炎暑百日蒜の花
紀川和子
璦
201009
路面より蒸し焼きの刑炎暑なる
石川かおり
璦
201009
清盛の情熱加へ島炎暑
宮田香
璦
201010
音たてて記憶くづるる炎暑かな
さのれいこ
春燈
201010
パンドラの箱を開けたる炎暑かな
さのれいこ
春燈
201010
瓜と爪間違ふほどの炎暑かな
高橋将夫
槐
201010
ひりひりと炎暑の木肌まくれかな
久津見風牛
槐
201011
存へて夫婦傘寿の炎暑かな
小澤正信
峰
201011
炎暑かな郵便局に客ひとり
戸田澄子
末黒野
201011
掛け軸の達磨平然炎暑の日
楯野正雄
苑
201011
私も影も汗ふく炎暑かな
佐々木良玄
春燈
201011
六畳の四隅に籠る炎暑かな
大竹淑子
風土
201011
街炎暑花屋に白き胡蝶蘭
伊藤一枝
酸漿
201011
半蔀も鰐口もまた炎暑かな
有本倍美
ろんど
201011
駅炎暑舟型屋根の尚も反る
鈴木浩子
ぐろっけ
201011
電話なし客なし炎暑のしじまかな
吉沢秀ひろ
ろんど
201011
恐龍の卵かへるか秋炎暑
延広禎一
槐
201012
散歩嫌う犬の肉球炎暑かな
福田漣
苑
201012
裸婦像の身をくねらせて炎暑来る
紀川和子
璦
201107
仰ぎたる眼を的に炎暑光
布川直幸
峰
201108
炎暑の日麻布更級蕎麦湯かな
篠田純子
あを
201109
人を見ず炎暑干し物さへも見ず
定梶じょう
あを
201110
針治療終へて炎暑の町へかな
菅野日出子
末黒野
201110
褒められし髪も切りたき炎暑かな
清水量子
空
201110
木道の下の水音炎暑かな
山路紀子
風土
201110
蛇口より声の出さうな炎暑かな
山本茂子
末黒野
201110
日々炎暑地底に埋める燃料棒
田中藤穂
あを
201110
炎暑いま三時仁王が忿怒せり
定梶じよう
あを
201110
折鶴の嘴きりり炎暑かな
中村江利子
京鹿子
201111
炎暑なかバーコードはずし退院す
福田かよ子
ぐろっけ
201111
ラケットの一撃炎暑散らしけり
中島玉五郎
峰
201208
目つむりて炎暑の中の風にあう
木村茂登子
あを
201209
風向計物憂くまはる炎暑かな
高橋あさの
沖
201209
石あれば炎暑の中に道祖神
北村香朗
京鹿子
201210
人生はプラス思考よ炎暑とて
千田敬
沖
201210
白菜を見ずに炎暑の故宮去る
福島せいぎ
万象
201210
五臓六腑重たきままの炎暑かな
大橋晄
雨月
201210
町中の音の途絶ゆる炎暑かな
中村美代
末黒野
201211
足の指炎暑に跳ねるベビーカー
福田かよ子
ぐろっけ
201211
壺の耳さはつてゐたる炎暑かな
佐藤凉宇子
ろんど
201211
きらきらと隣家光れる炎暑かな
長島清山
かさね
201211
不機嫌の向けどころなき炎暑かな
木村茂登子
あを
201310
炎暑の夜救急サイレン又も過ぐ
吉田光子
ぐろっけ
201310
炎暑来て荷崩のごとへたり込む
石橋萬里
ぐろっけ
201311
終日をごろ寝で過す炎暑かな
松木清川
ぐろっけ
201312
絵本展炎暑忘るる別世界
坂根宏子
野山の道
201404
炎暑とて出掛ける若さ羨しとも
稲畑汀子
ホトトギス
201407
炎暑このひらひら遊ぶ犬の舌
布川直幸
峰
201408
喪服吾れ炎暑影なき塀に沿ふ
定梶じょう
あを
201409
どの影も地を這ってをり大炎暑
大日向幸江
あを
201409
干物啣へ猫ゆうゆうと炎暑道
斉藤裕子
あを
201409
口数の少なく炎暑つづくなり
田中藤穂
あを
201410
鬼瓦炎暑無言の面構へ
荻龍雲
峰
201410
炎暑来て菩薩の眼すがすがし
藤本節子
万象
201410
をんをんと雲ひとつなき炎暑かな
辻美奈子
沖
201410
炎暑来て熱中症に気を遣ひ
難波篤直
璦
201411
殊更にしやつきり歩く炎暑かな
佐藤弘香
ろんど
201412
キャッチャーの膝が物言う炎暑くる
ねじめ正一
船団
201508
真紅の花活け炎暑の厨かな
中貞子
槐
201509
炎暑の日「生き延びましょ」とジムの友
須賀敏子
あを
201509
眉引きの左右揃はぬ炎暑かな
須藤美智子
風土
201510
体温でサドルを冷ます炎暑かな
成宮紀代子
沖
201510
省略をしすぎし地図の街炎暑
大矢恒彦
沖
201510
玻璃一枚隔て炎暑の大欅
竹内タカミ
沖
201510
炎暑の路地男言葉の女子生徒
松本三千夫
末黒野
201510
ネクタイを外して窓を拭く炎暑
鴨下昭
峰
201510
好きで出る炎暑の句会苦にならず
松本秀子
峰
201510
つむじ風街を浚ひて炎暑かな
岡山敦子
京鹿子
201511
総論賛成各論反対炎暑かな
中嶋陽子
風土
201511
ひつそりと息殺しゐる炎暑かな
大橋伊佐子
末黒野
201511
氷切る音は空耳街炎暑
高木嘉久
沖
201608
終刊号ごくろうさまと書き炎暑
渕上千津
沖
201609
水かけ地蔵炎暑の街を練り歩く
田代民子
空
201609
砂漠の地続く炎暑に風死なず
伊吹之博
京鹿子
201609
われは何者炎暑の海にただ浮かぶ
有松洋子
槐
201610
わが十字架背負いて行くやこの炎暑
犬塚李里子
槐
201610
ふるさとが城が崩れてゐる炎暑
岩岡中正
ホトトギス
201611
色強く藤狂ひ咲く炎暑かな
飛高隆夫
万象
201611
ダンプカー静かに止まる炎暑かな
丑久保勲
やぶれ傘
201611
真澄路をたどる炎暑に影ゆだね
工藤ミネ子
風土
201612
正論の溶けてゆくさま炎暑かな
杉井真由美
京鹿子
201612
道問ふに人つ子一人居ぬ炎暑
苑実耶
空
201612
ビル街に炎暑の壁の厚さかな
吉村摂護
空
201612
両足に鉛の重さある炎暑
木暮陶句郎
ホトトギス
201702
音たてて林間に入る炎暑かな
赤坂恒子
船団
201702
爆音の過ぎたるあとの炎暑かな
芝田幸惠
末黒野
201704
摘芯の指に炎暑の闇宿る
吉武美子
沖
201708
炎暑はや地割れ田んぼの息乱れ
岡崎郁子
馬醉木
201710
熊蝉の鳴いて炎暑を煽りけり
大森道生
春燈
201710
塩飴を味方にしのぐ炎暑かな
福澤聡子
末黒野
201810
豪雨炎暑生きる工夫の今日暮るる
長崎桂子
あを
201810
炎暑なか羽を広げて蝶の飛ぶ
江口九星
集
201904
肉好きの人の群がる炎暑かな
佐藤日和太
船団
201910
電線の影さへ恃み炎暑行く
森脇貞子
雨月
201910
ひとひとり通らぬ今日の炎暑かな
秋川泉
あを
201910
炎暑の日銀歯の人の尋ね来る
中西厚子
槐
201911
炎暑かな蟻は将来見据いる
江口九星
集
201912
トースターにフォークさしこむ炎暑かな
十一
船団
201912
阿羅漢の寄せる眉目も炎暑かな
亀井福恵
京鹿子
201912
土塀に影の張りつく炎暑かな
政時英華
京鹿子
202001
2021年8月1日
作成