朝寒の二人暮しとなりにけり
山田弘子
春節
199503
朝寒の幹を下りくる日影かな
野村泊月
ホトトギス
199509
朝寒の大沢崩れさだかなり
水原春郎
馬醉木
199812
朝寒や紅茶に絹のやうな湯気
ふゆきゆふ
狩
199902
朝寒やゲルに煙の細く立ち
中西和子
船団
199903
朝寒に気づきたるより返しけり
稲畑汀子
ホトトギス
199910
朝寒むや寒さに強いわたしです
熊谷みどり
いろり
199910
朝寒の工事の音を抜けて来し
稲畑汀子
ホトトギス
199911
朝寒の弓道場に的の音
徳丸峻二
風土
199912
朝寒や子のいたづらに胸痛む
福田みさを
いろり
200001
朝寒や猫通りゆく駐車場
土井三乙
風土
200002
閂を外す梵妻朝寒み
古田考鵬
雨月
200012
朝寒のすきとほるまで声出さず
神蔵器
風土
200012
朝寒に夜寒に聞かな湯揉唄
村越化石
濱
200101
朝寒の人々赤葡萄酒色の谺
金子兜太
海程
200101
朝寒のぬくめて使ふ花鋏
うまきいつこ
沖
200101
朝寒や覚めていじめのニュース読む
鎌倉喜久恵
あを
200101
朝寒や身体にこたえる年となる
茂木とみ
いろり
200101
くちびるを出て朝寒のこゑとなる
能村登四郎
沖
200108
朝寒やためらひ癖の身につきて
能村登四郎
羽化
200110
朝寒のとなり男のにほひして
伊藤多恵子
火星
200112
朝寒や高架ホームの明るき灯
山荘慶子
あを
200112
朝寒の碗の丸みの確かかな
中村和江
ぐろっけ
200201
朝寒や白紙答案出す夢に
川合広保
雲の峰
200202
朝寒や鶏のまなこの青びかり
門脇明子
狩
200202
朝寒や磚に水筆もて一詩
渡辺昭
沖
200202
朝寒や手押車の音高し
山荘慶子
あを
200212
朝寒の軒重なりし宿場町
浜和佳子
百鳥
200212
朝寒や粥の梅干突つついて
大村孝
百鳥
200301
朝寒やエンピツ句帳ポケツトに
岩切久乃
帆船
200301
朝寒の公園鴉ホームレス
吉成美代子
あを
200312
朝寒や人のぶつかる始発駅
東亜未
あを
200312
朝寒や寝間着にはおる夫のもの
芝尚子
あを
200312
朝寒や老人送迎バスを待つ
田中藤穂
あを
200312
朝寒や喘息の子を念ひおく
吉弘恭子
あを
200312
朝寒や何か急かるる何ならむ
関口ゆき
あを
200312
朝寒や耳鳴り止みし顔洗ふ
芝尚子
あを
200312
朝寒や夫単身も二年目に
須賀敏子
あを
200312
朝寒に声小さくし走り去る
斉藤静枝
あを
200312
朝寒や受話器の奥のオルゴール
内山千代子
帆船
200312
朝寒やものうく鳴りし洗濯機
後藤志づ
あを
200312
ポストまで朝寒頬に張りつきて
田中藤穂
あを
200312
朝寒や心病む人ドアに寄る
芝宮須磨子
あを
200312
朝寒や昨夜の酒の残りあり
芝宮須磨子
あを
200312
朝寒と挨拶かはし塵すてる
長崎桂子
あを
200312
朝寒やポストへ行くも小走りに
鎌倉喜久恵
あを
200312
朝寒や解せぬ事ある渋茶かな
芝宮須磨子
あを
200312
朝寒やシンビジウムに花芽見ゆ
早崎泰江
あを
200312
朝寒に不漁不作の郷だより
関口ゆき
あを
200312
朝寒の顔を吸ひこむラッシュアワー
東亜未
あを
200312
朝寒の身を方寸にひとりの座
溝内健乃
雨月
200401
朝寒や焼梅干の雑炊を
鵜飼紫生
雨月
200402
朝寒の小石に影のさだかなり
大山妙子
酸漿
200402
朝寒の鍵束提げて修道士
若林杜紀子
百鳥
200402
朝寒の旅に癒えたる自信あり
中村田人
ホトトギス
200406
朝寒に目覚の早き君と僕
稲畑廣太郎
ホトトギス
200410
朝寒や残響の良き西洋館
能村研三
沖
200411
朝寒や家移り近き道掃いて
岡本眸
朝
200411
朝寒や島ふくろふの飛来の地
大川智美
風土
200412
朝寒やビアノの上の庭鋏
大沢美智子
沖
200412
朝寒や地震情報矢継ぎ早
岩波ふみ子
雲の峰
200501
朝寒や魚のはみ出す仕入籠
米沢しげる
春燈
200501
朝寒や喪主となりたる顔晒す
嶋崎茂子
百鳥
200502
朝寒の小石に影のさだかなり
大山妙子
酸漿
200502
朝寒の味噌汁の香に夫婦かな
江崎成則
栴檀
200503
朝寒や南部鉄瓶唸りだす
福山至遊
集
200505
青空の誘ふ朝寒なりしこと
稲畑汀子
ホトトギス
200509
朝寒に生れし句心なりしかな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200510
朝寒やユリノキ伐つてはいけません
東亜未
あを
200511
朝寒やぺージ折られし時刻表
岡崎真子
百鳥
200601
朝寒やヴアチカンに入る列の中
神田惣介
京鹿子
200602
朝寒の着る服プラスしマイナスし
嶋田摩耶子
ホトトギス
200603
朝寒や空まる見えの藏の中
瀧春一
常念
200606
朝寒や東京は又今日も雨
稲畑汀子
ホトトギス
200610
朝寒の家居ほどきて旅に発つ
稲畑汀子
ホトトギス
200610
朝寒に仕事の手順ととのへり
稲畑汀子
ホトトギス
200610
朝寒の一番電車待つホーム
矢崎暉文
酸漿
200612
朝寒や空の青さを降り注ぐ
根岸善行
風土
200701
太極拳朝寒を掌に掬ひける
岡本敬子
万象
200701
朝寒の草葉が濡らす牛の鼻
廖運藩
春燈
200702
朝寒の肩の波よす丸の内
宮島宏子
沖
200702
朝寒の庭にきのふの竹箒
野沢しの武
風土
200703
鶺鴒のちらつく岩の朝寒み
瀧春一
萱
200706
朝寒を心地よしとす目覚かな
稲畑汀子
ホトトギス
200710
朝寒の木洩日ふやす枝を剪る
稲畑汀子
ホトトギス
200710
快晴といふ朝寒のありにけり
稲畑汀子
ホトトギス
200710
朝寒をいとふことなく早出して
稲畑汀子
ホトトギス
200710
受話器より朝寒貰ふ耳朶と頬
長谷川鉄夫
沖
200712
朝寒や六腑に喝の酸素水
千田敬
沖
200801
朝寒やシナゴーグヘと黒帽子
安永圭子
風土
200801
朝寒の駅を出で来る弓袋
大山文子
火星
200801
朝寒や駅舎に並ぶ鉄の椅子
吉沢陽子
峰
200801
朝寒やなほ星座ある湖畔宿
千原叡子
ホトトギス
200804
朝寒や汽鑵車ぬくゝ顔を過ぐ
富安風生
朝
200809
朝寒や竹刀打ち合ふ体育館
都丸美陽子
春燈
200812
朝寒の手の甲からの目覚めかな
赤座典子
あを
200812
朝寒や両掌に挟む犬の貌
中田みなみ
空
200812
朝寒や岬を回りゆく小舟
宇佐美ゆき
酸漿
200901
朝寒や卓にぽつんと醤油さし
安本恵子
璦
200901
朝寒や結びなほして靴の紐
三代川玲子
春燈
200901
朝寒に御包引き寄せ稚の足
河村武信
ぐろっけ
200902
新聞を取りに朝寒覚えつつ
松尾緑富
ホトトギス
200902
朝寒や振り子時計に遅れなし
KOKIA
六花
200903
朝寒の大気震はす鳥の声
中山静枝
峰
200903
朝寒や白髪増え来し髭を剃る
松尾緑富
ホトトギス
200903
朝寒の雀はづめり孔子廟
呉屋菜々
万象
200905
朝寒の摺り足歩き師に似るも
千田敬
沖
200911
朝寒の巴里にパン買ふ藤村忌
大崎紀夫
やぶれ傘
200911
朝寒や夕爾の句碑に射すうす日
藤村達江
春燈
201001
朝寒や庫裡に湯釜のたぎつ音
森ひろ
馬醉木
201001
朝寒の鏡の顔を笑ひけり
白石正躬
やぶれ傘
201101
朝寒のくろがね耕地に煙立つ
鈴木とおる
風土
201101
朝寒の空気震はすヘリ三機
泉秀行
璦
201101
朝寒や早口言葉むぴょこぴょこ
平田恵美子
ぐろっけ
201102
朝寒や水道水のほのぬくく
山崎稔子
末黒野
201102
朝寒に気息ととのへ万歩計
大松一枝
璦
201104
朝寒を発ちて近江といふ出会ひ
稲畑廣太郎
ホトトギス
201110
朝寒の江戸温もりの三河かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
201111
朝寒や舌に纏はるミルクの膜
川崎真樹子
春燈
201112
朝寒や喉に貼付く粉ぐすり
石田康明
春燈
201112
朝寒や大書きされし寺案内
能村研三
沖
201112
朝寒や通過列車に人の貌
蘭定かず子
火星
201201
朝寒や地下四階の駐車場
岡佳代子
璦
201201
朝寒や音のかそけき棕櫚箒
三輪慶子
ぐろっけ
201201
朝寒し消毒済の小俎
三輪慶子
ぐろっけ
201201
それぞれの朝寒を来て診療所
城台洋子
馬醉木
201201
朝寒の腓返りや黙に堪へ
呉文宗
春燈
201201
朝寒や言ひ争ひて勝ちし夢
田尻勝子
六花
201206
朝寒の消ゆると信じ出掛け来し
稲畑汀子
ホトトギス
201210
忌心は朝寒の駅発ちてより
稲畑廣太郎
ホトトギス
201210
席埋めてゆく朝寒の失せてをり
稲畑汀子
ホトトギス
201210
朝寒や幸せな和田誠の字
山田六甲
六花
201211
朝寒や願ひ光りの百度石
布川直幸
峰
201211
朝寒の誤報謝罪は二行なり
能村研三
沖
201211
朝寒や雪平鍋に粥の沸き
山田六甲
六花
201212
朝寒や満たして陶の砂糖壷
安田とし子
ぐろっけ
201301
納豆を解く朝寒の厨妻
田中臥石
末黒野
201301
朝寒のうぐひす廊下鳴きにけり
有賀昌子
やぶれ傘
201304
朝寒や路行く人の咳多し
後藤克彦
かさね
201312
朝寒の靴紐きつく結びけり
安立公彦
春燈
201312
朝寒をものともせずに体操へ
市橋香
ぐろっけ
201401
朝寒や遠しと思ふポストの距離
大橋晄
雨月
201401
朝寒や駅舎にかかる竹箒
太田佳代子
春燈
201401
朝寒や嬰の為ならば粥を炊き
竹内悦子
璦
201401
朝寒やビル解体の音響き
竹内悦子
璦
201401
朝寒の珈琲ぴぴと湯沸器
田中臥石
末黒野
201401
朝寒の旅や昂るあずさ号
山下健治
春燈
201401
朝寒の膝に畳める宿のもの
根本ひろ子
火星
201401
窓開けてより朝寒の流れ来る
湖東紀子
ホトトギス
201403
朝寒や忌心連れて乗る列車
稲畑廣太郎
ホトトギス
201410
朝寒の東京駅といふ活気
稲畑廣太郎
ホトトギス
201410
日の出前てふ朝寒を発ちて忌へ
稲畑廣太郎
ホトトギス
201410
朝寒は苦手と詠みし佳人かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
201410
朝寒の仏間心経まゐらする
佐藤淑子
雨月
201412
朝寒や群れを解かざる鴉どち
生田作
風土
201501
朝寒や金泥壁にコンセント
大山文子
火星
201501
朝寒の鏡に声を出してみる
土井ゆう子
風土
201501
朝寒や二階の窓の明けの星
白石正躬
やぶれ傘
201501
朝寒や身にいくつかの蝶番
村上千紫
京鹿子
201501
朝寒や早起き出来ぬ居候
水谷直子
京鹿子
201501
朝寒や形ばかりの会釈せり
大日向幸江
あを
201501
朝寒や散歩まだかと犬の待つ
今野明子
末黒野
201502
朝寒や鯛焼き店の列に入り
小池一司
やぶれ傘
201502
朝寒の厨に新た火伏札
宮本加津代
万象
201505
朝寒の森に吸はれてゆく佳人
稲畑廣太郎
ホトトギス
201510
朝寒や夢の狭間に亡夫残し
高村令子
風土
201511
朝寒やマトリョーシカは頬染めて
奥田茶々
風土
201512
朝寒や朝刊届く日本国
安永圭子
風土
201512
朝寒の江ノ島とほく濤に座す
安達公彦
春燈
201601
朝寒や遠山思ひ身じたくす
戸辺信重
春燈
201601
朝寒の振り向かぬ子に手を振りて
松田泰子
末黒野
201602
朝寒やケトルの笛の音高し
三橋玲子
末黒野
201602
朝寒を発ちて山気を纏ひ着く
稲畑廣太郎
ホトトギス
201607
朝寒に集へば和む一句会
稲畑廣太郎
ホトトギス
201610
朝寒や玻璃戸の端に破れ蝶
山田六甲
六花
201610
朝寒も喜びおりし退院日
遠野あきこ
船団
201612
朝寒の慌て着換へる下着かな
宮崎他異雅
末黒野
201612
2020年10月6日
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