秋 1 110句
緋縮緬噛み出す箪笥とはの秋 三橋敏雄 眞神
相老ゆる?~馬二頭や宮の秋
月坂桂子
ホトトギス
199509
中世の秋やひとりのけものみち
藤原月彦
王権神授説
194800
先づ日本海の秋見て旅心
稲畑汀子
ホトトギス
199808
犀川のほとりに秋の懐古あり
稲畑汀子
ホトトギス
199909
秋の句をしるしての筆なよやかに
能村登四郎
沖
199809
「出航」の水尾あきらかに秋の水尾
能村登四郎
沖
199809
秋の気に目覚めてここは湖の宿
能村登四郎
沖
199809
秋に思ふあの人もかの人もよき人なりし
能村登四郎
沖
199809
遠嶺・七周年へ向けて
秋航や心の綱を強く張る
小澤克己
遠嶺
199810
一行の来ては去る茶屋古都の秋
稲畑汀子
ホトトギス
199810
活けられし秋の心でありしかな
稲畑汀子
ホトトギス
199810
臥すころをふと掠めたる秋意かな
能村登四郎
沖
199810
祝はれて老の意識の秋あらた
能村登四郎
沖
199810
八十八歳この秋以後を何せむや
能村登四郎
沖
199810
戰艦を沈めて秋の水位かな
中原道夫
銀化
199810
風鐸を四方に垂らして塔の秋
三浦美穂
狩
199811
島原の秋や八十路を生きて触る
能村登四郎
沖
199811
甦る老の血島原の秋に立ち
能村登四郎
沖
199811
旅の夜を覚め老の身に気付く秋
能村登四郎
沖
199811
若き日の登四郎ここに秋ひとり
林翔
沖
199811
松風も沖ゆく船も須磨の秋
大崎ナツミ
雨月
199811
もの思ふ秋やはせをの句碑の前
中島知恵子
雨月
199811
戰後また戰前とならむとするや秋
中原道夫
銀化
199811
呼ばずとも秋の脛長影法師
中原道夫
銀化
199811
王樣は秋も裸やひきつづき
中原道夫
銀化
199811
秋の闇鐵輪の赤き衣かな
平橋昌子
槐
199812
秋翳る六千体の兵馬俑
川井政子
風土
199812
暗転の舞台に秋の音を聞く
柳生千枝子
火星
199812
むささび翔ぶ秋は曼珠沙華の森
金子兜太
海程
199812
うしろからハロー青い目の秋が
丸山佳子
京鹿子
199812
征く兄の額白かりし秋の記憶
岡本眸
朝
199811
戦死せりふるさとの秋絵にのこし
宮津昭彦
濱
199811
肱川の支流の秋の五、六人
坪内稔典
船団
199812
秋となるペン持つ拳鼻下に当て
岡本眸
朝
199812
秋はやつぱり淋し鍵束鳴らしても
岡本眸
朝
199812
小窓にも秋色残せ細楓
林翔
沖
199901
秋は逝きやれやれ息を抜くベンチ
丸山佳子
京鹿子
199901
波打ち際のしぶきに戯れ秋を知る
甲田夏湖
船団
199812
砂浜に小さな足跡秋は来ぬ
甲田夏湖
船団
199812
空染めて三千院の秋一途
矢三かつよ
馬醉木
199902
稜線のよじれ戻らぬままに秋
田端賀津子
船団
199902
秋口の洗ひ干したる男下駄
村田みちな
朝
199902
黒く細かく揚げ屋格子に秋はゆく
佐々木峻
船団
199903
大阪の空のどこかがほつれ秋
津田このみ
船団
199903
ハンバーグで食べたい秋の畝傍山
寺田良治
船団
199903
モルジブに秋の泡吹くシュノーケル
能勢京子
船団
199903
ハープ奏者ななめに秋の箱に入る
若森京子
船団
199903
兜太きて芭蕉の匂ひ放つ秋
秋山深雪
船団
199903
港湾の胎動かざる雲は秋
西村和子
火星
199905
ほろほろと秋の穴からチョコボール
黒田さつき
船団
199903
爪を切る秋は僅かに恥を知る
武馬久仁裕
船団
199906
石仏の打ち重なりし秋を行く
倉本美代子
ヒッポ千番地
199905
階きしむ宿なつかしや古都の秋
稲畑汀子
ホトトギス
19990
能登訪ね得しも会へざる人の秋
稲畑汀子
ホトトギス
199908
御陣乗太鼓の浜と聞くも秋
稲畑汀子
ホトトギス
199908
浪の花見たし曾々木の秋訪へば
稲畑汀子
ホトトギス
199908
火も水も鎮めて秋の二月堂
金國久子
青葉潮
199907
秋きても忘れられない啄木忌
尾形不二子
遠嶺
199909
揺れそめし秋の船路を楽しまむ
稲畑汀子
ホトトギス
199909
大橋の見ゆれば返す秋の航
稲畑汀子
ホトトギス
199909
一時間四十五分秋の航
稲畑汀子
ホトトギス
199909
海の風集め抜けゆく路地の秋
稲畑汀子
ホトトギス
199909
ミュンヘンの秋はいかにと問ふ日かな
稲畑汀子
ホトトギス
199909
ドイツ語は分らなくともホ句の秋
稲畑汀子
ホトトギス
199909
草原の秋に咲くもの鳴けるもの
稲畑汀子
ホトトギス
199909
一人づつ秋の気配へ踏み込みぬ
配藤和子
円虹
199909
ゆで卵てらてら秋が来ているよ
宇都宮滴水
京鹿子
199909
大秋や机も椅子も不用品
中林明美
ヒッポ千番地
199905
百回の秋を無口の刀傷
児玉硝子
ヒッポ千番地
199905
嵌め殺しという窓により秋借しむ
夏秋明子
ヒッポ千番地
199905
蕎麦啜る山中を秋急ぎおり
吉田透思朗
海程
199909
秋を恋ふおんながひとり旅に居て
熊谷みとり
いろり
199908
夏負けもせずに胸中秋を待つ
熊谷みどり
いろり
199908
秋を待つ旅のプランを早さうに
熊谷みどり
いろり
199908
一望といふ正面に城の秋
稲畑汀子
ホトトギス
199910
さりげなく身に添ふ風のすでに秋
田口泡水
風土
199910
牛の糞が乾びてつづく道の秋
岡井省二
槐
199910
けふもまた秋の来てゐる葛の叢
山尾玉藻
火星
199910
二の腕の重さもう秋すでに秋
吉田悦花
海程
199910
秋の戸々横一列に並びけり
村越化石
濱
199910
山ホテル出づれば秋を早む雨
大橋敦子
雨月
199910
秋口の六甲に泊つ一と夜かな
大橋敦子
雨月
199910
白絹に包まれ素龍本の秋
大橋敦子
雨月
199910
種のなか暗しと出でて外は秋
中原道夫
銀化
199910
目薬のあふれ崩るる山の秋
利根川博
銀化
199910
混沌を秋の象と為す曙光
土肥屯蕪里
俳句通信
199910
襖入れ心己にむかふ秋
斎藤道子
馬醉木
199911
書をくるも時を刻むも秋の音
斎藤道子
馬醉木
199911
擤んで捨てたる紙に秋の音
林翔
沖
199911
風の端に秋はや匂ふ樹下にあり
岩瀬操舟
円虹
199911
樹の奥に秋の来てゐし白馬村
杉浦典子
火星
199911
磯波のさびしさ秋の地平かな
奥田節子
火星
199911
蜻蛉みな番ひて秋もなかばなり
藤原たかを
馬醉木
199912
灯のために闇が濃くなる里の秋
鷹羽狩行
狩
199912
刃の声を湖に放ちて鵙の秋
鷹羽狩行
狩
199912
釣人を岸にとどめて湖の秋
小野麻利
狩
199912
汐満ちてとろりと暮るる島の秋
中村祐子
槐
199912
七宝の秋しののめとなりにけり
小形さとる
槐
199912
凛秋の景早池峯を要とす
能村研三
沖
199912
浴後ふと無口になりてとみに秋
大牧広
沖
199912
玉入れの幼き抛物線の秋
上谷昌憲
沖
199912
秋見せて風湿原を過ぎてゆく
屋代孤月
遠嶺
199912
能衣火色重ねて秋を舞ふ
斎藤珠子
遠嶺
199912
岩のいろ深めて秋の気配濃し
金國久子
遠嶺
199912
お互いに病む事話す秋きびし
山本潤子
いろり
199911
富士五湖を巡りし秋も半ばかな
小倉恵都子
風土
199912
鳶の笛のびやかなりし島の秋
高濱朋子
円虹
199912
無人島秋が小さく棲むでゐる
宇都宮滴水
京鹿子
199912
珠数繰れば無口の秋がたたずまふ
宇都宮滴水
京鹿子
199912
銀座の灯遠くて近し鯊の秋
本山車日子
京鹿子
199912
2021年10月22日
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