油 蝉 91句
大地いましづかに揺れよ油蝉 富澤赤黄男 蛇の笛
古文書の匂いの午後を油蝉
佐々木峻
ヒッポ千番地
199905
半島を突き出る松の油蝉
広渡敬雄
遠賀川
199909
退院はいつ頃ですか油蝉
西塚成代
六花
199911
油蝉朝から鳴いてアジアかな
星野早苗
空のさえずる
200002
摺り足で鳴き始めたる油蝉
山尾玉藻
火星
200007
幹のぼるのぼり難きを油蝉
加藤かな文
槐
200010
油蝉ばつかりうらの大きな木
木下野生
槐
200010
では失礼、背に油蝉とめている
中原幸子
遠くの山
200010
生れて早とびざま荒き油蝉
藤田宏
澪
200011
一幹に風熱くなる油蝉
ほんだゆき
馬酔木
200107
甲冑の袖の綻び油蝉
池田光子
風土
200109
無礼なる携帯電話のこゑ油蝉
本河康子
苑
200111
木戸門へ当て身をくれて油蝉
大堀由子
狩
200112
電柱に移りて鳴けり油蝉
久保木千代子
春耕
200112
ここからは胸突八丁油蝉
梅村達子
帆船
200208
油蝉五畿七道を灼きつくす
にいざ蚯蚓
銀化
200209
油蝉泣きやみ恋はゆっくりと
松山律子
六花
200209
樹の裏へ鳴きつつ隠る油蝉
常坂幸次郎
帆船
200210
油蝉ウェストン卿の碑の上に
新福ふく
春耕
200210
本丸を八方攻めの油蝉
斉藤和江
帆船
200301
油蝉かすかに聞こゆ手術中
小田知人
ぐろっけ
200301
見知らぬ地一人歩けば油蝉
小田知人
ぐろっけ
200307
油蝉羽根一枚となり果てし
稲畑廣太郎
ホトトギス
200308
油蝉根限り鳴く降るほどに
土方豊子
酸漿
200311
幹の色だんだん油蝉の色
浅田光蛙
対岸
200311
戰爭に征ける方法あぶら蝉
佐藤喜孝
あを
200401
弥陀尊に向き油蝉こときれぬ
朝妻力
雲の峰
200408
油蝉午後を通して鳴き継げり
蔵澄茂
築港
200409
とびたちてリュックにとまる油蝉
沖増修治
百鳥
200410
油蝉熊蝉分けて持つ子かな
沖増修治
百鳥
200411
捕ふるにあらず鳴き止む油蝉
二瓶洋子
六花
200411
油蝉寝転んで見るヌード集
内藤ゑつ
ゑつ
200411
声閉づは飛び立つ気配油蝉
平山風鳥
河鹿
200501
教会の森より湧けり油蝉
諸冨清子
対岸
200510
ゼンマイに余力のありし油蝉
寺門丈明
あを
200510
油蝉かするる声を続けゐて
丹羽敦子
酸漿
200511
夕映を惜しむかなほも油蝉
赤司美智子
酸漿
200602
油蝉ぢりぢりゐざり幹裏へ
田口たつお
ぐろっけ
200602
石の下祖母を納めて油蝉
出口誠
六花
200607
油蝉をや仰のけに命終ふ
伊藤白潮
鴫
200609
油蝉カウチの欲しき午下の窓
森山のりこ
あを
200609
油蝉川底の草爛れをり
長崎桂子
あを
200610
見通しのつかぬ停電あぶら蝉
篠田純子
あを
200610
教卓の角の手擦れや油蝉
木場田秀俊
狩
200611
気ぜはしく鳴く大阪の油蝉
中村洋子
風土
200611
けふ処暑の庭に来て鳴く油蝉
島崎勇作
酸漿
200611
わあんわあん耳につまりしあぶら蝉
吉弘恭子
あを
200611
朝が来て茶色の翅の油蝉
倉知多美子
八千草
200702
??國に女人はをらず油蝉
佐藤喜孝
あを
200708
法師蝉歌へば油蝉伴奏
小林清之介
風土
200710
油蝉読経に和せり原爆忌
阿部悦子
酸漿
200710
果樹園の網擦り抜けて油蝉
西田たかこ
万象
200711
あぶら蝉波長合ふこと知る異国
伊吹之博
京鹿子
200711
お木曳に鳴くを忘れし油蝉
中村風信子
馬醉木
200711
油蝉鳴かせる風の過ぎゆけり
朝倉富次
酸漿
200711
本堂へちつと鳴き飛ぶ油蝉
山田美恵子
火星
200810
油蝉になり切って鳴き不壊のさま
藤田宏
澪
200810
ひと回りシルエットで捜す油蝉
斉藤裕子
あを
200810
午後の日に気合の入る油蝉
橋本くに彦
ホトトギス
200812
油蝉朝よりさらふ蝉のうた
伊藤敬子
笹
200909
雨の中鳴けるだけ鳴け油蝉
早崎泰江
あを
200909
油蝉呟きみんみん蝉歌ふ
小林清之介
風土
200910
不意に鳴く火の付くやうに油蝉
鈴木榮子
春燈
200910
鳴きながら失速したる油蝉
前川明子
鴫
200910
片方の耳へ棲みつく油蝉
根岸善行
風土
200911
鳴き止みし時の清しや油蝉
小川玉泉
末黒野
200911
学校のプール真平ら油蝉
大山文子
火星
200911
忽ときて序曲で去りぬ油蝉
加藤克
峰
201009
ひと鳴きの後の間をとり油蝉
小川玉泉
末黒野
201010
都の西北と歌ひだし油蝉
遠藤若狭男
狩
201010
耳の奥より鳴き出して油蝉
森下賢一
春燈
201010
オープンキャンパスどの樹にも油蝉
上谷昌憲
沖
201010
広島や夜も鳴きつのる油蝉
佐々木よし子
沖
201010
落日や一気に囃す油蝉
小川玉泉
末黒野
201011
戸袋にぶつかり止まる油蝉
藤田裕子
万象
201011
しゃがむ子の見入る仰向き油蝉
瀬口ゆみ子
ぐろっけ
201011
室内で羽化油蝉動かざる
武智恭子
ぐろっけ
201011
油蝉蛻半ばの眼が光る
安部和子
雨月
201011
油蝉落ちてをりけり登校日
瀬島洒望
やぶれ傘
201101
爪切るや鳴きかけて止む油蝉
岩藤礼子
やぶれ傘
201111
歯ぎしりの釣瓶あふるる油蝉
梶浦玲良子
六花
201111
とりついて木膚の色に油蝉
坂場章子
鴫
201111
逍遙の湖畔しづかに油蝉
有本南陵
ろんど
201112
誰が指揮大合唱の油蝉
上辻蒼人
風土
201201
油蝉泣けばなくほど土渇く
佐藤喜孝
あを
201207
全集の背文字も見飽き油蝉
細野恵久
ぐろっけ
201208
雨のあと陽射す木立に油蝉
丸山酔宵子
かさね
201209
一本の松を陣取る油蝉
大信田梢月
万象
201209
絞りつつ鳴きあげてゆく油蝉
山田六甲
六花
201209
鳴ききつてまだ余力ある油蝉
上谷昌憲
沖
201211
逃げ惑ふ油蝉追ふ雀かな
高柳正幸
やぶれ傘
201301