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平成 22 年度事業報告書
自 平成 22 年 4 月 1 日
至 平成 23 年 3 月 31 日 1.事業概況
平成 22 年度は、
3 月 11 日の東日本大震災とそれに引き続く福島第一原子力発電
所の事故が発生するまでは「中長期ビジョン」の実現に向けて、自ら確固たる技
術力を保有して基幹事業の質的向上を図ること及び会員からの支援要請に対して
も当協会の実力を発揮して対応し会員の自主保安の向上に貢献することに注力し
た。
具体的には、ピアレビュー・安全文化アセスメントの改善及び質的向上、トラ
ブル情報の傾向分析の充実と事業者への提示、民間規格では優先度の高いものか
ら整備・策定迅速化に向けての支援、保全に関する電力共通技術基盤では「情報
ライブラリ」閲覧の可能化、
「現場技術者ネットワーク活動」での保全最適化に係
る基盤情報の提供、更に保全技量認定業務での認定制度の本格運用の開始など、
着実に事業活動を推進した。
また、会員からの個別の支援活動として、中国電力島根原子力発電所の点検不
備問題に係る原因分析に対する支援活動、中部電力浜岡原子力発電所に対する防
火管理レビュー等の支援活動を実施した。 このように、平成 22 年度事業活動は所期の計画をほぼ実施していた状況で、冒
頭の福島第一原子力発電所事故が発生した。直ちに協会内に支援・検討委員会を
設置して情報収集を図り、技術的視点からの正確な情報発信を行ってきた。
また、電気事業連合会(電事連)及び電力大での活動への協力や支援を実施す
るとともに、マスコミ対応についても出来る限り協力する姿勢のもとで対応して
きた。
海外への対応としては、ホームページ(HP)の内容を英文でも掲載した。更に、
国際原子力機関(IAEA)
、世界原子力発電事業者協会(WANO)
、米国原子力規制委
員会
(NRC)、米国原子力エネルギー協会
(NEI)
及び米国原子力発電運転協会
(INPO)
等の国際的・海外の原子力関係機関と情報の共有化を図ってきた。
今後もこれまで以上に国内外の関係団体等との連携を強化し、上記の事態収拾
に向けて総力を挙げて対応することとする。 2.事業の経過及び成果
(1)安全文化の推進
1ピアレビュー活動
a.特別ピアレビュー
平成 22 年度は、2 回(東北電力女川原子力発電所及び北海道電力泊発 2
電所)実施し、原子力安全に係るリスク低減の取り組みの体系的実施や
地震・火災時に物品仮置きによるプラントへの影響を最小限とする配慮
等の提言を行った。
b.ピアレビュー
平成 22 年度は、5 回(三菱マテリアル那珂エネルギー開発研究所、日
本核燃料開発、東芝府中事業所、電力中央研究所原子力技術研究所及び
日揮)実施し、火災発生や長時間停電等までを考慮した安全リスク低減
活動の活性化や汚染拡大のリスク低減措置等の改善提案を行った。
c.改善支援活動
ピアレビューで提案した改善の具体的活動の支援を目的に 3 発電所を
訪問し、主に「マネージメントオブザベーション」について良好な発電
所の取り組み事例を共有するとともに訪問先発電所での対応策について
意見交換を行った。また、発電所の業務改善活動を支援するセミナーを
開催し「放射線防護(被ばく低減)
」について良好な発電所の取り組み事
例を共有するとともに、各発電所での課題と今後の取り組みについて議
論・意見交換を行った。
d.ピアレビューの質的向上への取り組み
ピアレビューの質的向上を目的としたシニアエンジニアの技術的知見
の活用として、プロパー職員 2 名を採用し、延べ 10 名の電力 OB のテク
ニカルアドバイザーとしての参画を得た。
e.WANO との相互協力
WANO 東京センターとの相互協力として、ピアレビュー実施計画の調整
やレビューワの相互派遣等を行い、平成 22 年度は、国内外 4 原子力発
電所に対する WANO ピアレビューに延べ 6 名の職員が参加した。
2安全文化の浸透・向上活動
会員の自主的な安全文化醸成活動を外部評価の位置づけで支援する現場
診断と安全文化アンケートからなる安全文化アセスメントを実施している。 a.現場診断
平成 22 年度は、東京電力柏崎刈羽原子力発電所、中部電力浜岡原子力
発電所、関西電力美浜発電所、四国電力伊方発電所の 4 発電所で実施し
た。
現場診断の実施プロセスはほぼ確立しているが、
平成 21 年度に設置し
た WG の提言を反映するとともに、平成 22 年度は、安全文化アセスメン
トに係る専門家を実際の評価作業に加え、客観性を高めるための事前情
報分析の充実化、
当協会の安全文化 7 原則に沿った各部署の分析のほか、
安全文化の各原則について組織横断的な評価を行う等の改善を行った。
また、現場診断の分析員の教育カリキュラムを制定した。
更に、設計・解析部門に対する現場診断手法については、平成 22 年度 3
は、プラントメーカからの委員を加えた新たな WG を設置し、技術者倫理
及び企業倫理等の専門家からの支援、助言を得て、これを反映し、日立
GE ニュークリア・エナジー日立事業所に対して現場診断を試行した。平
成 23 年度は、
診断手法の妥当性評価等を行い、
手法の確立を図っていく。
b.安全文化アンケート
第 3 回安全文化アンケート調査結果について、平成 22 年度は、全体概
要を NS ネット会員に説明し、会員ごとに個別報告書を提示した。あわせ
て要望のあった 16 事業所に対して結果の詳細説明を行った。
c.安全キャラバン
平成 22 年度は、6 事業所で実施した。実施に当たっては、第三者評価
委員会の提言を踏まえて、事前準備の充実、より各会員のニーズに沿っ
たテーマと柔軟なプログラムの設定、事後評価によるフィードバック等
による改善を行っている。
一例として第 120 回の関西電力大飯発電所では、
講演会と意見交換会に代えて、協力会社員を加えた現場でのコミュニケーショ
ンに関するワークショップを行った。
d.管理者セミナー
平成 22 年度は、
鉄道業界の研修施設を活用した体験型セミナー及び航
空業界で実績のある「CRM(Crew
Resource
Management)研修」を原子力
用に改良した演習型セミナーを各 1 回実施し、
それぞれ 29 名、
22 名の参
加があった。
e.安全文化セミナー
安全文化醸成活動の実効性を向上させる活動の一環として、各会員の
安全文化を担当する課長クラスを対象にした安全文化セミナーを実施し
た。本セミナーは、講演とグループワークを通して参加者自らがアクシ
ョンプランを策定する研修と、半年後に達成状況の自己評価、プランの
見直しなどを行うフォローアップとで構成されており、平成 22 年度は、
安全文化の要素の中で重要なコミュニケーションとリーダーシップをテ
ーマに実施し、17 名の参加があった。
f.教材の作成・配付
原子力安全に関する教材として、安全キャラバン、各種セミナー、安
全文化アセスメント等で得られた具体的な事例の中から、安全文化醸成
に重要な内容を選定し、その事例に関する解説等を加えた小冊子「事例
とともに考えよう!安全文化の醸成ってどう進めるの?」を作成、配付
した。 (2)情報収集・分析・活用
1共有すべき情報の提供と勧告等文書の発行
国内外の原子力発電所に関する事故・故障情報等を収集し、分析・評価 4
を行うとともに、原子力の安全確保、信頼性に影響を及ぼす類似事象の発
生防止に資するため、これまでに発行した「勧告」等の文書に対する実施
状況をフォローした。
平成 22 年度は、国内情報 272 件、海外情報 3,428 件(INPO、WANO、NRC、
IAEA)を分析した。このうち、運転情報検討会を通じて電力会員に共有す
べき情報として国内情報 68 件、海外情報 97 件を、参考情報として国内情
報 22 件、海外情報 38 件を提供した。
これまで発行した文書については、文書の概要、半期毎に電力会員の検
討・実施状況を調査しその集約結果を HP に掲載している。
2ニューシア(NUCIA)の活用、充実
平成 22 年度に発生し NUCIA に登録されたトラブル情報等は 273 件で、累計は 5,170 件となった。これらの情報のうち、他プラントへの水平展開が
必要な情報のスクリーニングを行うとともに、電力会員各社の登録状況や
水平展開の実施状況を定期的に確認し、HP に掲載するとともに各社へ報告
し、水平展開を図った。なお、登録情報の活用に関する利便性の改善等を
目的として、平成 22 年 5 月 31 日に NUCIA 設備を更新した。
NUCIA に投稿されたトラブル情報等(平成 16 年度〜平成 22 年度上期)につ
いて、発生事象の原因や対象設備毎等の傾向分析を実施し、東日本大震災
により訪問できなかった東京電力柏崎刈羽原子力発電所を除く全ての発電
所を訪問し、発電所長等に報告し、協力を依頼した。
3電力会員の自主保安体制推進の支援
電力会員の保安検査、
定期検査、
安全管理審査に係る保安情報について、
保安情報データベースシステムに収集・一元管理を行っている。発電所の
品質保証体制の充実支援のため、収集された保安情報の共有化を図るとと
もに、これらの情報を基に電力共通の指摘事項の抽出及び対策の要否等に
ついて横断的に分析・評価し、電力会員参加の自主保安体制推進会議等で
情報提供を行った。今後は、主に品質保証面での課題に対する活動を行っ
ていく。
また、電力会員が品質保証活動を行っていく上での共通課題である「原
子力発電所の安全のための品質保証」(JEAC4111‐
2009)で要求されている
「プロセスの監視および測定」及び「データの分析」の実効的な実施方法
について検討を進め、ガイドライン案を策定し、電力会社に提供した。現
在、電力のニーズに合うよう内容の精査を行っている。
4根本原因分析(RCA)の推進支援
電力会員等における社内での RCA 実施及び普及推進の核となる人材を育
成するため、
RCA 研修会
(RCA 手法の講義、
事例演習等を延べ 6 日間で実施)
を1回実施し、38 名が参加した。また、電力会員の分析能力の向上のため
に各会員が実施した RCA 結果を相互に発表し、意見交換を行う RCA 事例検 5
討会を 2 回実施した。検討会では RCA 研修会の講師も参加し、分析結果に
対する指導を行った。
更に RCA の理解促進と分析者の育成を目的に RCA 導入研修会を実施した。 5PI(パフォーマンス指標)等の活用の検討
民間 PI である WANO‐
PI を活用して、
世界水準からみた日本の各プラント
の状況を整理し、各発電所を訪問して改善すべき重点項目を提示し、今後
の PI の活用に向けて意見交換を行った。
平成 22 年度から試運用が開始された保安院の保安活動総合評価について
は、第一回目の結果を受けて見直しが行われている。引き続きプラント保
安活動総合評価検討会等に参画し、科学的かつ合理的な制度になるよう検
討を進め、提言を行う。
6ヒューマンエラー分析
NUCIA に登録されたトラブル情報からヒューマンファクターの観点でト
ラブルの発生要因を抽出して、再発防止に結びつくようなデータを提示で
きるよう分析を進めている。
また、電力中央研究所ヒューマンファクター研究センターが行っていた
安全啓発資料(Caution
Report)作成業務を当協会が引き継ぎ、トラブル
事例のヒューマンエラー分析に基づいた啓発ポスターを作成し、電力会社
に配付した。
7INPO・WANO 等との連携活動
a.INPO との連携
INPO とは、常時ウェブサイトから情報入手するとともに、駐在エンジ
ニア等を通じて情報交換を行った。平成 22 年度は、当協会主催で「放射
線管理、埋設配管(トリチウムによる地下水汚染問題)
」をテーマに INPO
との技術交換訪問(TEV)を実施した(平成 23 年 1 月 25 日〜28 日)。有益
な情報交換を行うために、開催前に各電力から入手したい情報を聞き、
それを INPO へ事前送付するなどの工夫を行い、TEV 前半に玄海発電所訪
問を行い INPO 側参加者の日本の現場管理状況の確認と理解促進に努めた。
国内電力関係者約 80 名が参加した TEV 後半の東京会場での技術交換会議
では、活発な意見交換が行われ、INPO 側及び国内事業者双方が現場に活
用できる有益な情報を提供することができた。
平成 22 年 11 月開催の国際参加者諮問委員会(IPAC)会議において、
国際参加プログラムが、従来と基本的には大差はないものの「基本+メ
ニュー選択方式」に変更となる説明を受け、その後外為法に基づき経済
産業省及び日本銀行等との調整を実施後、平成 23 年 3 月 1 日に INPO と
の新協定書の締結を行った。
b.WANO との連携
WANO には、
平成 22 年度に軽微な情報も含め 107 件の国内情報を投稿し、 6
国際レベルでの情報共有活動にも積極的に対応した(平成 21 年度は 123
件)。
また、CEO 会議等に招聘され今後の国際協力の在り方に対する議論に
参画する等、WANO との連携強化及び当協会の理解活動に努めた。
c.EDF との連携
EDF とは、平成 22 年 1 月に「原子力発電所トラブル情報に関する情報
交換協定」を締結し、これまで 33 件のリストを受領したが、このうち 2
件の追加情報を EDF から受け、和訳して国内事業者へ提供した。また、
情報・分析部担当理事が、国内事業者上層部へ、米国での至近の重要事
象とあわせてフランス EDF プラントでの事象の一部を提供し、情報の活
用の向上に努めた。
d.原子力安全基盤機構(JNES)との連携
JNES との情報交換会をほぼ定期的に開催し、トラブル情報等に対する
意見交換を進めるとともに、重要事象に対しては当協会の技術的見解を
提示し、科学的・合理的な課題対応に貢献した。 (3)民間規格の整備促進
1民間規格の整備促進
当協会は、原子力の課題に基づいて優先的に整備すべき規格分野を体系
的に整理し、5 ヵ年計画を策定することとしており、平成 22 年度も 5 ヵ年
計画を最新の知見、情勢を踏まえてローリングし、優先度の高いものから
重点的に民間規格制定活動を支援した。
原子力産業界において早急な対応が必要とされている課題として、新潟
県中越沖地震における教訓事項を受けた耐震関係の規格類の整備、運転中
保全実施前のリスク評価、保全活動における機器の重要度判断等のリスク
情報の実用化に対応した規格類の整備及び廃棄物分野における低レベル廃
棄物に係る規格の体系的な整備がある。当協会は、これらを優先的課題と
して民間規格整備支援を進めるとともに、在籍する職員の個々の専門性を
活かせる分野では、学協会での規格審議組織の幹事等の役割を担い、学協
会の規格制定活動における主体的役割を高めた。
具体的には、プラント関係の規格 63(21 年度:83)
、サイクル・廃棄物
関係の規格 12(同 11)の計 75 の規格(同 94)について、調査、素案作成、
学協会審議等の規格整備に係る原子力産業界の専門家支援を行った。この
うち、学協会での審議素材として、45 の規格素案を作成した。また、分科
会等において当協会の職員が主査・幹事を務め、審議促進に努めている。
2構造関係規格業務
a.日本機械学会・日本電気協会
日本機械学会での「設計・建設規格」、「維持規格」、「溶接規格」等は、
1 年毎の定期的改定が軌道にのり、性能規定化された省令 62 号を受けた 7
詳細規程となる民間規格として、重要な位置を占めるようになってきて
おり、これらの規格の改定素案を作成し、日本機械学会に提案した。ま
た、
定期改定以外でも、
改定が急がれていた
「発電用原子力設備規格 材
料規格」の改定素案を提案し、平成 23 年 3 月に公衆審査段階まで進展す
る等、規格制定の促進に貢献している。一方、日本電気協会でも、各種
の規程、指針が一定の期間毎に改定されて出版されており、主に、高経
年化対応での検査、評価技術等の技術規程等の規格改定素案を作成し、
日本電気協会に提案した。これら素案提案の成果として、
「原子炉構造材
の監視試験方法」の追補版が平成 22 年 11 月に発行されたこと等が挙げ
られる。
b.米国機械学会(ASME)
日本の構造の規格の基礎となる ASME 動向調査に関しては、
電力会員及
び当協会の職員が定例会議に出席して改定動向を調査したほか、産業界
からの出席者による情報交換会を主催し、情報共有を進めた。また、学
協会における認証制度や技術士活用について検討を進めるため、米国の
ASME と National
Board を訪問し、公的資格者・公的機関の活用に関する
調査を行った。
c.原技協ガイドライン
原技協ガイドラインについては、当協会内に設置した炉内構造等点検
評価ガイドライン検討会を引き続き開催し、炉内構造物点検ガイドライ
ンのうち保全技術の適用プロセスをまとめた「補修・予防保全工法ガイ
ドライン」を平成 22 年 5 月に発行した。また、当協会の解析業務品質向
上検討会において「原子力施設における許認可申請等に係る解析業務品
質向上ガイドライン」を平成 22 年 12 月に発行した。
電気・計装関連では、火災防護指針、安全保護系へのデジタル計算機
の適用等の日本電気協会規程・指針の技術評価の支援やヒューマンマシ
ンインターフェースの指針改定支援を実施した。
3安全設計・安全評価関係規格関連業務
a.リスク情報関連
運転中保全実施前のリスク評価、保全活動における機器の重要度判断
等のリスク情報の実用化に対応した規格類の整備については、当協会が
素案を作成し審議を促進した PSA(Probabilistic
Safety
Assessment)用
パラメータ標準が日本原子力学会で平成 22 年 6 月に、
リスク情報活用標
準が平成 22 年 10 月に発行された。
停止時 PSA 標準も平成 22 年 6 月に制
定された。溢水 PSA について今年度は 7 回の審議への支援を行った。ま
た、当協会の PSA ピアレビューガイドラインについては、昨年度の BWR
に続き、本年度は PWR のパイロットプラントでピアレビューを行い、同
ガイドラインへの反映事項を抽出した。
更に、
機器故障率について NUCIA 8
データを活用した国内一般故障率の更新を平成 23 年度に行うべく分析、
評価を行った。
b.PLM 関連他
日本原子力学会の高経年化対策実施基準については、当協会が中心に
なって、高経年化対策評価が終了した 2 プラントから新たな知見を抽出
し、同実施基準の中の劣化メカニズムまとめ表の更新案を提案し改定さ
れた。また、日本原子力学会の標準化活動の国際化を図る一環として高
経年化対策実施基準 2008 の英訳を支援し完了した。
運用管理関係では、当協会が素案を提供した日本原子力学会の定期安
全レビュー実施基準が平成 21 年 9 月に発行され、
国の技術評価対応の支
援を行った。燃料関係では少数体先行使用燃料導入について今年度は 5
回の審議への支援を行った。また、中央制御室の居住性のうち有毒ガス
にかかる日本電気協会の規程の素案を作成した。
輸送容器の安全設計に係る標準については、最新知見等を反映した改
定素案作成等の支援を行い、平成 22 年度に本報告段階まで進めた。
4低レベル廃棄物関係規格関連業務
a.廃棄体関連
廃棄物分野における低レベル廃棄物に係る規格の体系的な整備につい
ては、日本原子力学会において、余裕深度処分(L1)関連標準素案作成
を優先的に進め、平成 22 年度に L1 対象廃棄体の製作方法と検査方法を
一体化する標準の制定支援を開始した。L2 廃棄体の標準的な製作方法及
び廃棄確認方法は、角型容器を対象にした処分容器について標準素案作
成等の支援を行い、平成 22 年度に中間報告段階まで標準化を進めた。今
後は、L2 全体(角型+ドラム缶)の標準化の制定支援を開始する。L3 対
象廃棄物の取扱い及び検査方法基準は標準素案作成等の支援を行い、平
成 23 年 3 月に制定された。
廃棄物の放射能濃度に関しては、
L1 放射能濃
度決定方法標準が平成 22 年 6 月に制定されるとともに、
L2、
L3 廃棄体等
の放射能評価標準について標準素案作成等の支援を行い、
平成 22 年度に
中間報告段階まで進めた。
b.埋設施設関連他
埋設施設関連標準については、
標準素案作成等の支援を行い、
L1、
L2、
L3 を統合した埋設後管理標準が平成 22 年 6 月に制定され、L2、L3 施設
検査の 2 標準は、
平成 22 年 9 月に制定された。
L1 施設検査標準について
は、新たな安全審査指針との整合化を図り、平成 22 年 12 月に制定され
た。また、L2 処分の安全評価手法標準についても標準素案作成等の支援
を行い、平成 22 年度に中間報告段階まで進めた。
返還廃棄物確認標準については、改定素案を作成し、平成 22 年度に公
衆審査段階まで進めた。 9
5廃止措置関係規格関連業務
日本原子力学会における廃止措置の計画標準の技術評価に対応した改定
については、分科会委員として支援し、平成 22 年度に公衆審査段階まで標
準化を進めた。また、残された廃止措置の実施標準の構成上の改定素案作
成等の支援を行い、平成 22 年度に標準委員会書面投票段階まで進めた。更
に、廃止措置時の耐震安全標準作成等の支援を行い、また廃止措置終了確
認に関する調査を行った。
6学協会技術開発ロードマップ策定作業への参画
学協会で進めつつある原子力分野における技術的課題の研究開発及び規
格制定に関するロードマップ策定に参画し、産業界の規格制定ニーズを反
映するとともに、産業界の規格制定中期計画への反映を進めた。具体的に
は以下のような活動を実施した。 i)各種研究結果を踏まえて、
具体的な規格基準の作成につなげるために関
連研究のロードマップに関して電事連、電力中央研究所と打合せを行い、
今後の連携について協議した。
ii)日本機械学会で取り組みを開始したロードマップ作成のタスクに参加し
て、ロードマップの策定について支援している。 iii)日本原子力学会における高経年化対応技術戦略マップ、
燃料高度化技術
戦略マップ、
熱水力安全評価ロードマップ策定、
水化学ロードマップのロ
ーリングに参画し支援している。 iv)日本原子力学会では、
その標準委員会の活動が 10 年を迎えたことから、
この 10 年の活動を振り返って、
今後の 10 年の活動の方向性、
枠組みの検
討を平成 22 年 8 月から始めたので審議に参加し支援している。
7新潟県中越沖地震後の原子力機器の健全性評価委員会
平成 19 年 7 月の新潟県中越沖地震に対応して設置した
「中越沖地震後の
原子力機器の健全性評価委員会」では、幅広い学識経験者の協力を得て検
討を進めた結果、当初の課題であった点検と解析の組合せによる健全性評
価の枠組み、疲労寿命の評価、塑性ひずみ測定、締結部材の点検・評価、
原子炉圧力容器基礎部への弾塑性解析手法適用等の成果が、東京電力によ
る健全性評価報告や国の様々な審議プロセスの中で活用されたことから、
委員会当初の目的は着実に達成されつつある。
平成 22 年度は、2 回の委員会開催に加えて、傘下の WG(評価基準 WG、検
査 WG、疲労・材料試験 WG、建屋-機器連成 WG、再起動 WG)を計 9 回開催
した。これらの活動の中で、個別技術成果の体系化・一般化を推進し、民
間自主ガイドラインの形態に整備することにより関係者の利便性を高める
こととし、地震動の大きさと損傷の状態に応じて点検・評価方法を定め、プ
ラント再起動への合理的な対応を可能とするための「地震後の機器健全性
評価ガイドライン」案を作成し、発行に向けた最終審議の段階まで、検討 10
を進めた。 (4)電力共通技術基盤の整備
当協会は、電力共通技術基盤をステアリングするため、電力共通技術基盤推
進委員会及び電力共通保全基盤検討会を基に、現場技術者ネットワークとして
の 4 つの会議体を運営し、ユーザーズグループの支援業務について的確に実施
した。
1情報ライブラリ
情報ライブラリは、情報管理に係る覚書に基づき、保全計画書等の新検
査制度に係る許認可図書をベースとした基盤情報の事業者間の共有化を計
画通り推進した。また、平成 22 年度は、情報ライブラリのシステム化を終
了し関係者が必要な場合に閲覧可能となった。この情報ライブラリには平
成 22 年度に構築したエキスパート会議情報共有システム、
保全活動管理指
標(PC)実績管理システムが利用可能となり、現場技術者ネットワーク活
動を支援している。
また、各社のベンチマーク活動を支援するため、保全計画書や PLM 評価
書等に記載される保全情報や機器仕様を類似機器毎に集約し、比較可能な
検索ツールを作成した。
2現場技術者ネットワーク活動
現場技術者ネットワーク活動については、経年劣化判定会議、エキスパ
ート会議、ベンチマーク支援検討会、PC 連絡会等の会議体を運営要領に基
づき円滑に実施し、状態監視技術等に関するユーザーズグループの活動を
支援した。その成果は、劣化メカニズム整理表の改訂版、ベンチマーク支
援情報等多くの保全最適化に係る基盤情報として現場技術者に提供した。
3理解活動、将来展開検討
電力共通技術基盤のこれまでの活動成果について電力各社に対し説明を
行った結果について 198 名からアンケートを得た。評価として、
「十分理解
できた」は約 55%、
「ある程度理解できた」は約 44%で、合計約 99%の方から
理解された。また、4 つの会議体の有益度については、
「有益」との回答は
約 46%、
「ある程度有益」との回答は約 52%で、合計約 98%の方から有益であ
るとの回答を得た。
更に、電力の保全活動の最適化を支援するために米国・欧州の海外事例
等を参考にして保全活動の将来展開の在り方の検討を始めた。 11(5)原子力技術者の育成・維持
1運転責任者判定業務
平成 21 年度から当協会が運転責任者判定業務を実施することとなったこ
とから、運転責任者諮問委員会、運営委員会等の運営を通して、制度の透明
性、客観性を確保しつつ、年 4 回の判定業務を実施してきており、平成 22
年度実績は、新規申請者 48 名(合格者 46 名)
、更新申請者 97 名であった。 2保全技量認定業務
保修業務従事者を対象とした保全技量認定制度については、
平成 22 年度
下期から本格運用を開始し、試験組織として 10 電力 12 ヶ所を指定し、試
験及び移行措置の受付を開始した。また、本格運用の開始に当たり、対象
者の受付、申請条件の適合審査、試験実施、合否判定、認定証発行等の手
順を定めた要領書類の整備及び認定者情報の管理システムを構築するとと
もに、筆記試験問題用テキストの更なる充実を目指して調査を行った。
3原子力アカデミー
原子力発電所の技術者の標準的な教育・訓練プログラム等の構築を目的
として、
平成 22 年度より各電力会社の人材育成についての調査に着手した。 また、セミナー等については、平成 20 年度から継続実施している、発電
所の上級管理職を対象とした
「原子力安全セミナー」
を 10 月に開催、
更に、
平成 22 年度から運転員のソフトスキル向上を目的とした
「ソフトスキル向
上訓練」について、上級運転員向けは 12 月に、中級運転員向けは 1 月にそ
れぞれ実施した。 (6)協会運営の活性化
1原子力産業団体との連携強化
a.原子力産業団体におけるトップの懇談会
電事連、電力中央研究所、日本原子力産業協会及び当協会等のトップ
同士が、政策・規制課題に関わる情報共有や改善の方向性について意見
交換を行うトップ懇談会が、平成 22 年度は 2 回開催され、原子力発電所
の稼働率向上、原子力産業の国際展開等について議論し、今後の取組み
の方向性について意識を共有した。
また、電事連とは、当協会の活動全般に関する意見交換の場を設け、
相互理解を図った。
b.電力中央研究所との意見交換
原子力発電及び核燃料サイクル事業の発展に資するために締結した技
術協力協定に基づき、平成 22 年 10 月に技術協力会議を開催し、電力中
央研究所の研究開発を通じた技術協力の進捗状況を確認した。
2海外機関との連携強化
a.米国安全規制動向の調査、NEI との情報交換 12
NRC 主催の規制情報会議に参加し、
原子力安全規制の動向について調査
した。また、NEI を訪問し、戦略的規制リスクに関する情報交換を基本と
して、今後継続して情報間を実施していくこととした。 (7)業務運営の活性化・適正化
1組織力の最大限の発揮
a.日本原子力発電東海第二発電所トラブル低減に対する協働による支援
活動
本活動は、日本原子力発電のトラブル低減活動の支援の一環として、
日本原電と協働して実施したもので、東海第二発電所を対象に、至近の
NUCIA 登録情報を分析してその背景要因を把握、
更に課題抽出のための現
場調査を行い、これらをもとに、異常兆候への対応、発電所各部門の役
割や協力会社との関係の見直し等、トラブル低減に向けた具体的な提言
を行った。
b.中国電力島根原子力発電所の点検不備問題に係る原因分析に対する支
援活動
同発電所では、計画通りに点検がなされていなかったことから、中国
電力から当協会に対して原因分析及び再発防止対策に関する支援要請を
受けた。このためタスクチームを設置し、中国電力が行う原因分析や策
定する再発防止対策に対して助言を行うととともに、当該再発防止対策
が現場に即した実効的なものとなるように当協会の有する知見や発電所
の管理・保修部門の経験に基づく評価・助言を実施した。
c.中部電力浜岡原子力発電所に対する防火管理レビュー
同発電所 5 号機タービン建屋で火災が発生し、再発防止対策等に取組
んでいる中、中部電力から当協会に対して再発防止対策の実施状況を含
む防火管理についてのレビューの依頼を受けた。このためタスクチーム
を設置し、現地でレビューを実施した。その後、3 号機原子炉建屋で火災
が発生したことから、この火災に対する再発防止対策等について追加レ
ビューを実施し、評価及び助言をとりまとめた。
d.GNFJ におけるガドリニア焼結炉の過加熱インターロック動作に係る根
本原因分析の支援
ガドリニア焼結炉の過加熱インターロック動作に係る原因究明、再発
防止対策の過程において、GNFJ から当協会に対して RCA 等に係る支援要
請があった。このためタスクチームを設置し、RCA に関するレビュー、助
言を開始した。 (8)産業界の課題を把握し、協会の活動に反映
原子力安全・保安院が平成 22 年度に開始した安全規制ラウンドテーブルにお 13
ける規制課題に関する議論に資するため、米国を訪問し、安全上の重要度に対
応して規制が関与する度合いを変化させる NRC の原子炉監視プロセス(ROP)の
運用状況を確認した。また、米国と同様に発電所が高い稼働率を維持している
韓国も訪問し、定期検査等の規制の状況について調査した。 (9)先手管理課題への対応
民間の主導のもと安全技術上の課題を先取りし、問題解決に繋げていく「先
手管理機能の強化」のため、豊富な情報・データを有する協会内各部門との情
報の共有化を図るなど連携を強化するとともに、NEI の「戦略的規制リスク課
題(四半期ごとに改訂)
」に関する情報を継続して入手し、規制課題に対する米
国産業界の戦略的対応に関する調査を行った。
これまで抽出した先手管理課題のうち、
平成 22 年度は、
「火災防護対策」、「埋
設配管劣化問題」
について当協会内に会議体を設置して活動を進めた。
「火災防
護対策」では、自主保安対応能力を高め、火災防護対策をより充実させること
を目的に、協会内に事業者及びメーカからなる「火災防護展開 WG」を設置し、
各社の火災防護担当者による事業者相互確認、火災防護の専門知識を持った対
応者育成のための教材作成等を実施した。また「埋設配管劣化問題」では、先
手管理としてプラント寿命を通じた健全性維持の観点から必要な対応を検討す
るため、米国産業界の対応状況等について調査を行い、国内の調査計画を立案
した。 (10)広報・情報発信活動
1会員への原技協事業内容の理解促進
当協会活動に対する会員の理解促進及び会員からのニーズを発掘するた
め、大阪及び東京において「技術セミナー」を開催し、原子力を巡る国内外
の諸情勢、保全技量認定制度、安全文化醸成活動等について紹介するとと
もに意見交換を実施した。また、会員からの意見・要望聴取の新たな試み
として、青森地区の一般会員 4 社を対象に意見交換会を実施した。
更には、当協会活動成果の理解を得るため、年間の協会活動を取り纏め
た「平成 21 年度 事業年報」を創立以来初めて発行し、会員へ配布すると
ともに、会員専用 HP に掲載した。今後も継続して毎年発行していく。
2HP を活用した情報発信
会員に対しては、各事業の活動成果を HP で紹介するとともに、希望され
た会員に対して HP を更新した旨を通知する「更新情報メール」の提供を実
施した。
更に、
原子力産業界にとって安全上重要な技術課題が発生した場合には、
社会的理解を促進するために情報発信を行うこととしており、
平成 22 年度
は、2 件の事例に対する解説を協会の HP に掲載した。 14
HP については、
平成 22 年 12 月に一般公開用 HP のデザインを全面リニュ
ーアルするとともに、
会員専用 HP もアクセス性向上を図りリニューアルを
実施した。なお、両 HP ともサイト内検索機能を付加させた。
3マスメディアへの対応
当協会の活動及び原子力を巡る課題の理解を得るため、設備利用率向上
への取組み、原子力発電所保安活動総合評価、原子力安全規制ラウンドテ
ーブル等をテーマに
「記者懇談会」
を 2 回開催し、
一定の評価を得られた。 4NUCIA システム及び情報インフラの整備更新
情報・分析部と協力し、
登録情報の活用に関する利便性向上等を目的に、
NUCIA システムの再構築に取組み、
平成 22 年 5 月 31 日から本格運用を開始
した。運用開始後もフォローアップを適宜実施し、円滑な運用を図ってい
る。また、情報インフラのサイバーセキュリティに関し、第三者によるシ
ステム評価を受け、必要な対策を実施した。 (11)理事、顧問の選任について
平成 22 年 6 月 17 日、定時社員総会において、理事として伊藤裕之を選任し
た。また、同日、理事会において、顧問として石川迪夫最高顧問を再任、また
河島弘明を選任した。 (12)組織改編について
当協会のミッションの実現及び 5 つの基幹事業の遂行のために機能的な組織
とするため、更には、組織横断的に職員の能力や知見の有効活用を図ることを
目的に、下記の通り組織改編を行った。
1企画室を新たに設置し、技術企画グループ及び先手管理グループ(従来の
安全技術推進室)を配置し、組織横断的に職員の能力や知見を活用する事
業運営の強化を図ることとした。
2技量育成部を新設し、技術基盤部で行ってきた「原子力技術者の育成・維
持」を担務することとした。
3NS ネット事業部を安全文化推進部に改称し、NS ネット事業部会員だけで
はなく当協会会員を対象として安全文化の推進活動を行うことを明確に
した。
4情報・分析部の「保安情報評価グループ」
、NS ネット事業部の「評価グル
ープ」、「計画グループ」は、業務実態に即してそれぞれ「運営評価グルー
プ」、「ピアレビューグループ」、「安全文化評価グループ」
に名称変更した。 153.法人の概況
(1)事業内容
原子力に関する下記の事業を行う。
・安全文化の推進
・情報の収集・分析・活用
・民間規格の整備促進
・技術力基盤の整備
・原子力技術者の育成・維持
・上記の事業に付帯又は関連する事業 (2)基金の拠出状況
基金 3 億円(平成 23 年 3 月 31 日現在) (3)理事及び監事
理事
藤江 孝夫 (再任)
百々 隆 (再任)
大部 悦二 (再任)
中村 民平 (再任)
成瀬 喜代士(再任)
伊藤 裕之 (新任)
五十嵐 安治(再任)
諸岡 雅俊 (再任)
横山 速一 (再任)
監事
大山 潤一
野中 洋一 *なお、理事及び監事の兼務の状況は以下の通り。
五十嵐 安治(株式会社東芝
執行役上席常務
電力システム社社長)
諸岡 雅俊 (九州電力株式会社
取締役常務執行役員
原子力発電本部長)
横山 速一 (財団法人電力中央研究所
理事
原子力技術研究所長)
大山 潤一 (三菱原子燃料株式会社
執行役員
東海工場副工場長)
野中 洋一 (日本原子力発電株式会社
取締役
企画室長) (4)会員数
122 会員 16
(5)会 議
1定時社員総会開催日
平成 22 年 6 月 17 日 第 6 回
2理事会開催日
平成 22 年 5 月 13 日 第 33 回
平成 22 年 6 月 7 日 第 34 回
平成 22 年 6 月 17 日 第 35 回
平成 22 年 10 月 6 日 第 36 回
平成 23 年 2 月 4 日 第 37 回
平成 23 年 3 月 25 日 第 38 回
3評議員会開催日
平成 22 年 5 月 27 日 第 11 回
平成 22 年 11 月 26 日 第 12 回
4運営委員会開催日
平成 22 年 5 月 26 日 第 11 回
平成 22 年 11 月 24 日 第 12 回 (6)職員の状況
職員 91 名(平成 23 年 3 月 31 日現在) 以 上

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