シンポジウム S09 3月5日 17:00-20:00 Room C
2018年10月に発表されたWWFのLiving Planet Report 2018では「過去40年間で野生生物の個体数が60 %減少」と報告され、2019年5月には国際機関IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)によって「100万種が絶滅の危機」という衝撃的なメッセージが発表された。今回、環境省生物多様性センターが実施する「重要生態系監視地域モニタリング推進事業(以下、モニタリングサイト1000)」において、これまでに得られた約10年間の全国データを解析した結果、世界的な生物相の減少と同様に、日本においても、身近な生物種の多くが減少傾向にあることが示された。
この危機的な状況を受けて、研究者、行政、そして市民やNGOがより一層積極的に保全に向けて取り組んでいく必要があり、その上でもこれまでに得られたデータの活用推進が求められる。しかし、現実的な課題として、これまでのデータ使用例は一部の研究者や行政担当者のみと限られていた。さらに、現場の保全を実現するためには、モニタリングサイト1000で得られる生物多様性の状態(Status)のみのデータだけではなく、減少に対する圧迫要因(Pressure)の解明や効果的な保全策(Response)の評価も明確にしていく必要がある。
本シンポジウムでは、まずモニタリングサイト1000のこれまでのデータから捉えられた日本の生物多様性の変化について報告する。そして、こうした結果を受け、現場での保全の実現に向けて、どのようにデータから保全にアプローチできるか、NGO・行政・研究者のそれぞれの立場から、現場のニーズや現実における障壁も踏まえて講演し、会場とともに議論する。
コメント:
天野 達也(クイーンズランド大学)
曽宮 和夫(環境省自然環境局生物多様性センター)
[S09-1]
全国の市民調査がとらえた里山の普通種の急激な減少 *藤田卓(日本自然保護協会)
Crisis of common species in SATOYAMA ecosystem in Japan revealed by nationwide citizen science "Monitoring sites 1000 SATOYAMA program" *Taku FUJITA(NACS-J)
[S09-2]
広域調査から見えてきた鳥類の変化 *植田睦之, 守屋年史(バードリサーチ)
Changes in bird abundance in Japan - patterns emerged from national surveys *Mutsuyuki UETA, Toshifumi MORIYA(Bird Research)
[S09-3]
データ活用の可能性1 鳥類の種数・個体数と景観特性の解明およびトレンド推定 *片山直樹(農研機構)
Understanding the relationships between bird diversity and landscape-scale factors and population trends of birds *Naoki KATAYAMA(NARO)
[S09-4]
データ活用の可能性2 生物種の動態と保全策をつなぐ *赤坂宗光(東京農工大学)
Connecting large-scale monitoring and conservation implementation *Munemitsu AKASAKA(TUAT)
[S09-5]
科学情報を踏まえた生物多様性政策の推進 *中澤圭一(環境省)
Science based Biodiversity Policy and implementation *Keiichi NAKAZAWA(Ministry of the Environment)
[S09-6]
現場の保全とデータをいかにつなげるか:地域の現場で求められるデータ活用とは *後藤なな(日本自然保護協会)
Connecting conservation activities and monitoring data -How to apply the data to local activities- *Nana GOTO(NACS-J)