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経済を素朴に考えてみる

立岩真也 2008年11月08日 『朝日新聞』2008年11月8日朝刊・京都:31 コラム「風知草」4
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経済がおかしなことになっているというのだが、そんなときには「現物」でまず考えてみるとよいと思う。つまり、原料があって、人がいて、働いて、ものが作られる。それぞれを見てみようということである。
原料の枯渇や生産や消費が与える環境への負荷の問題は大きな問題だ。このことは、代替的な技術開発の必要とともに、ゆっくりめにものを作って消費した方がよいことを示す。
人はどうか。すくなくとも世界的には人は十分にたくさんいる。それはいわゆる途上国の、とても高い割合の失業率が示している。日本にしても、失業統計には現れない、けれど働くことができ、その気のある多くの人たちがいる。
とすれば、資源や環境のことを考えながら、適当に働き、必要なものを作って消費していければそれで、すくなくともしばらくは、うまくやっていけるだろう。
にもかかわらず不安定で不透明なことになっているのだとすれば、それは、経済・社会の仕組みの方に問題があるということだ。
むろん、投資・金融が自由にできることの利点はある。その利点を強調し、自由化された市場に委ねていってもうまく行くはずだというのがこの間ずっと言われ、そしてなされてきたことなのだが、結局うまくはいかず、様々な対応をせざるをえないことになった。
ただ、うまくいくはずだと宣伝されていたものがうまくいかず、政府の介入がなされざるをえないということ自体が、不安を増長させている。また、いつものように行なわれるちょっとした減税による景気の維持・浮揚といったもくろみも、たぶんたいして効かないのだろうと思われてしまう。
金融のこと投資のこと、とくに国境を超えてのそれをどうしたらよいのか。それはその筋の方々によくよく考えて、言ってもらいたいものだと思う。私は不勉強でよくわからない。ただ、きちんとした専門家であれば、そんな素人にもわかる説明、可能な代替案を示すことができるはずだと思う。
そして、まかせるところはまかせた上で、こちらとしては、ごくごく基本的なことを考えていくことにしよう。そしてそれは前回に記した高齢者や「終末期医療」を巡る困難・不安を減へらすことにもなるはずだと私は思う。具体的には税の仕組みについて、考えなおすのがよいと思っている。次回はそのことを書くことにする。

だいやまーく2008年10月04日 「社会経験生かす大学院」
『朝日新聞』2008年10月11日朝刊・京都:31 コラム「風知草」1
だいやまーく2008年10月11日 「「障老病異」個々で探究」
『朝日新聞』2008年10月11日朝刊・京都:31 コラム「風知草」2
だいやまーく2008年10月18日 「良い死?」
『朝日新聞』2008年10月18日朝刊・京都:31 コラム「風知草」3
だいやまーく2008年11月08日 「経済を素朴に考えてみる」
『朝日新聞』2008年11月8日朝刊・京都:31 コラム「風知草」4,
だいやまーく2008年11月22日 「税金の本義」
『朝日新聞』2008年11月22日朝刊・京都:31 コラム「風知草」5
だいやまーく2008年12月13日 「「税制改革」がもたらしたもの」
『朝日新聞』2008年12月13日朝刊・京都:31 コラム「風知草」6,
だいやまーく2008年12月20日 「愚かでない「景気対策」」
『朝日新聞』2008年12月20日朝刊・京都:31 コラム「風知草」7,
だいやまーく2009年01月10日 「前に行くために穿り返す」
『朝日新聞』2008年1月10日朝刊・京都:31 コラム「風知草」8


UP:20081029 REV:
立岩 真也Shin'ya Tateiwa
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