『全障連』No.70
last update:20220704
■しかく文字起こし
表紙
KSK No.70
全障連
全国障害者解放運動連絡会議
第12回全国交流大会全体基調(案)特集
国際障害者年・中間年をステップに反差別・共生のネットワークを広げよう。
やっぱり、自分たちの手でかちとるっきゃない! (校正者注:「やっぱり〜かちとるっきゃない!」下線)
権利として自立(校正者注:「自立」大文字)と解放(校正者注:「解放」大文字)をめざした社会変革(校正者注:「社会変革」大文字)を!
■しかく日程/ 7月31日?・8月1日?・2日?
■しかく会場/ 東京町田市(町田市立体育館 町田市立第一中学校)
一九八七年七月二〇日発行(毎月三回、一・一五・二五の日発行)KSK増刊号通巻八九号 一九八四年八月二〇日第三種郵便物認可
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全障連第12回大会実行委員会ニュース?C
7月31日・8月1日・2日/東京都町田市(町田市立体育館・町田第1中学校)
全国の仲間たち、年1回の全障連大会を注目してくれている友人のみなさん! お元気ですか。
見てください。できました、ポスター、そして呼びかけのチラシ。私たち、大会実行委員会はガンガンと準備を進め、ここに大会準備通信の第3号をお届けします。
ところで、東京はこれでいいのかというくらい、雨が少なくて水不足、そして涼しいのです。かわいて、冷えて...。大会はどうなるのか、このまま涼しいのか、反動で灼熱か...。
しかし、我が大会実行委員会は燃えているのであります。隣の韓国の人民・学生の熱い熱い闘いに負けずとばかり燃えているのです。
大会会場と宿泊場所を万端整え、外向けの文章類は全部こなし、支援要請もだいたい進みました。一番うれしいことは、町田市の中で強力な支援グループが生れ、これまで現地実行委員会が作れなかった悩みと不安がふっきれたことです。そう、盛り上がっているのです。
そして、ここに登場する新たな難問。そうです、7月30日〜8月3日(前日の準備から翌日の片付けまで)の綿密な進行表を基に準備する物、係員の配置、そして移送に関するチェックを行なうマニュアル作りなのです。これから1週間はそれに全力をあげます。
次が、マニュアルに沿って、物と人の確保のチェック。もれがないよう、間違いが出ないよう、一つ一つ確認し、整理します。最後が『参加者しおり』の製作。そして...本番だ! 考えても時間がない。燃えるぞー!
一方、全国役員の方では基調案の最終検討が終り、レポートも含めて印刷に回ります。全国出版部では全体基調案の事前配布の準備が行なわれています。別に「障害者差別実態白書づくり」の第1次集約が開始されます。いやはや、めまぐるしく大会にむけて動きが激しいのです。
夏は、熱く全障連大会だ! 今年は東京・町田市だ。あっとおどろく企画も心に秘めてみなさんの参加を待ちに待っています。
私たちの期待に是非応えてください。第12回全障連全国交流大会に、全力結集を!
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第12回全国交流大会いよいよまぢかに!
情宣・オルグ活動を徹底し、動員体制を強め、この夏、東京・町田市に全力結集を!
第12回全国交流大会を前に、例年のように、大会の全体基調(案)をお届けします。
大会実行委員会ニュースでお知らせしていますように、全障連関東ブロック・大会実行委員会の仲間たちの準備活動は連日、打ち合わせ・カンパ・オルグ・物品調達・支援要請と、めまぐるしく展開されています。
そして、全障連は、今年の「国連・障害者の10年」の中間年にあたり、「組織戦」にむけた大胆な方針を提起するとともに、障害者解放の原則的運動基調をも準備しようとしています。
全国各地の仲間たち、差別と闘うすべての友人たち、政治・経済・社会・文化・生活のあらゆる面で、今後の情勢の展開が権力―支配者層に握られていくのか、それとも自立と解放の闘いが展望を切り開いていくのかが勝負所にきている今、全力でこの大会を成功させ、共に未来をになっていきたいと思います。
各地・各団体・個人でこの全体基調(案)を学習いただき、熱のこもった大会にしていただくようお願いいたします。
全国事務局/関東ブロック
東京都豊島区巣鴨3丁目34の3 フラワーコーポ303号 03(918)8572
全国出版部/関西ブロック
大阪市東成区中本1丁目3の6 ベルビュー森の宮215号 06(974)0791
東北ブロック事務所
仙台市小田原2丁目2の43佐幸ビル403号 0222(95)8498
北陸ブブロック事務所
富山市大町1区西部52 0764(91)3385
東海ブロック事務所
岐阜県羽島郡笠松町円城寺600 戸田方 05838(8)1864
中四国ブロック連絡先
岡山市谷万成2の2の45 中川方 0862(55)0099 (校正者注:「全国事務局〜0099」四角囲み)
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全障連第12回大会・全体基調(案)
1、情勢
2、特別基調=国際障害者年中間年評価と我々の課題 (はじめに/「障害者に関する世界行動計画」の概要とその特徴/日本政府の過去5年間の取り組みに対する評価/今後の5年間における行政闘争の課題)
3、運動の総括と方針 (86年度運動の総括/87年度運動の方針)
4、組織の総括と方針 (86年度組織の総括/87年度組織の方針)
?T情勢
いま、戦争の足音がヒタヒタと迫ってきています。「君が代」の斉唱や「日の丸」の掲揚が各学校現場に強制され、一方各地域には町内会を利用した「愛国心」の高揚が流布され、国家主義が強められつつあります。また昨年の「天皇在位」60周年を相前後して皇族の登場が目立ち、今秋には天皇の訪沖も予定されています。戦時下にあっては「福祉不要論」が公然と叫ばれるのが、歴史の常です。政府―支配層にとっては、国際障害者年中間年もしょせんは表面をつくろうための行事の一つにすぎないのです。
さて「戦後政治の総決算」を掲げて登場した中曽根反動政権は自らの政治の集大成として、「売り上げ税導入」「マル優廃止」を強行突破しようとしましたが、国民の大反対により、4月統一地方選挙における自民党の敗北という結果に終わったのです。またさらに、中曽根政権においうちをかけているのが日米貿易摩擦です。これ
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は、世界の覇権国家として君臨してきたアメリカが1985年に債務国(対外純債務1000億ドル)に転落し、逆に日本が最大の債権国(対外純資産1298億ドル)に達したことから、アメリカが日本に対して輸入関税の撤廃・市場開放等の要求をしてきていることに対し、日本政府が全然応えないと称し、「半導体報復関税」等の攻撃をかけてきていることをいいます。そしてレーガンとの盟友関係によってこうした状況を打開し、国内における「失点」をも挽回しようと渡米した中曽根でしたが、何ら効果は上がらず逆に「防衛努力の拡大」を迫られる等、中曽根政権の終えんを迎えているのです。国内においても急速に進む円高不況のもとで、中小企業の倒産が相次ぎ、さらに鉄鋼・造船などの大幅人員削減とも相まって、いまや失業が200万人という空前の規模に達しています。
また現在、自民党では「中曽根後」をにらんで派閥の再編成と政権争いが激化してきていますが、たとえどのような政権が登場しようとも軍事国家への道を歩むかぎり、刑法・拘禁二法・精神衛生法の改悪やスパイ防止法新設等、治安弾圧の強化がもくろまれるに違いなく、私達は一時たりとも闘いの手をゆるめることはできないのです。
私達障害者を取り巻く状況に目を移してみても、その厳しさは日に日に増すばかりです。政府―厚生省は、日本型福祉社会をより一層進める形で地域福祉に名を借りた障害者のいわゆるライフサイクル化をおし進め、管理体制を一層強化してきています。また「赤字財政」を理由にして、最も抑圧的状況に置かれている施設障害者からの費用徴収や、各種補助金カットを強行し、さらには福祉の商品化を進めてきているのです。とりわけ今通常国会において成立した社会福祉士・介護福祉士法は、その典型といえましょう。これは公認会計士や税理士等と同様に、福祉士・介護士の資格制度を導入し、利用者に対する「サービス提供」業務として位置付けるものですが、やはり受益者負担を押し進める動きです。金で「福祉サービスを買う」といういわゆる「福祉の商品化」が進行すれば、当然金を持っている者とそうでない者との間に、受ける「福祉サービス」の量・質の違いが生みだされてくるのであり、まさに公的責任の回避に他ならないのです。
政府―厚生省は、昨年4月より実施した国民年金法改正によって年金額が大幅に上がったことを理由に、このような受益者負担の考えをますます正当化しようとしていますが、現実にはこの程度の受給額では、「生活できる年金」とはいえず、しかも
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生活保護を受けている障害者からは従来通りの収入認定が行なわれているため、実質的には所得は何ら上がっていないのです。
にもかかわらず一般大衆の間には、障害年金の増額が自らの負担によって行なわれているとの反発も高まりつつあり、しかも自らの生活の苦しさや税に対する不公平感が増す中で、被差別者に対するねたみ意識や排外主義が強められることとなってきています。現在、政府―自民党が売り上げ税に代わるものとして導入をもくろんでいるいわゆる「福祉目的税」もまた、このような一般民衆の障害者に対する反発を助長することになるのは明らかです。現に、この間私達が差別糾弾闘争を行なってきた「竹中直人の放送禁止テレビよくやった」なるビデオや「よい子の匪歌集(ひかしゅう)」なる替え歌集は、まさに下からの差別煽動としての位置を持つものなのです。
さらには、政府―権力による「行政改革」に名を借りた労働運動への攻撃、地対協意見具申に代表される「公正行政」に名を借りた部落解放運動に対する糾弾権の否定等、労働者・被差別人民の闘いを体制内統合していこうという策動が、ますます強まってきています。中でも国鉄の分割・民営化に代表される労働運動への切り崩しはすさまじいものがあり、労働運動の側もこのような攻撃に抗し切れず、後退につぐ後退を強いられています。しかしながら、こうした厳しい情勢にもかかわらず、それぞれの地域や職場から労働者の新たな闘いのうねりがつくられつつあります。また部落解放同盟や在日朝鮮人民等の被差別大衆の闘い、さらには三里塚農民等の人民大衆の闘いも不屈に展開されています。
そしてまた既に周知のように、赤堀さんの不屈の闘いと多くの仲間のねばり強い支援により、ついに東京高裁は検察側の即時抗告を棄却し、静岡地裁の再審開始決定を支持する決定を出し、ようやく赤堀さんの再審が確定したのです。私達は今大会においてこのことを共通の喜びとして確認しつつも、この再審開始決定の中に含まれている差別性を糾弾し、さらに赤堀さんを生きて奪い返す日まで闘いを強化していこうではありませんか。そして、この間提起してきた体制との組織戦に勝利するためにも、より多くの障害者仲間との団結を固めていきましょう。障害者解放基本要求要綱の深化、障害者差別実態白書づくりの具体化と、それらを武器にした行政闘争の展開、あるいは生きる場・作業所ネットワークづくり、さらには露骨な差別思想・事件に対する障害者の生き方をぶつけた糾弾の取り組み等、これらの方針を一層深めるための討論を今大会において行なっていきたいと思います。また今年は、国際障害者年中間年
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に当たる年でもあり、私達は政府―支配層のぎまん的政策を見抜き、対決する闘いの陣型を構築していく必要があります。まさにその意味において、今後の障害者解放運動の未来を切り開く大会に、年にしていこうでありませんか。大会参加者の皆さん!大会成功を勝ち取るべく、ぜひ熱い討論と団結の強化をお願いします。
?U 特別基調=国際障害者年中間年評価と我々の課題
はじめに
国連は1981年の「国際障害者年」の初年度の翌年に、完全参加と平等が進んでいないことを理由に、「障害者に関する世界行動計画」を発表し、改めて1983年度を初年度とする「障害者の10年」を定め、各国政府に取り組みの強化を求めました。今年(1987年)は、そのちょうど折り返し点に当たっており、日本においても政府や各自治体、更には様々な障害者団体がそれぞれの立場での「中間年評価」を行なっています。特に今年の5月に中央心身障害者対策協議会が発表した「『障害者対策に関する長期計画』の実施状況の評価及び今後の重点施策」は、これからの政府の障害者対策の方向を示すものであり、私達としても徹底した検討と批判を行なう必要があります。私達全障連は、既に81年の第6回大会において国障年に対する私達としての見解を明らかにし、中央レベル及びいくつかの地方において他団体との共闘の形で、それに関連する取り組みを進めてきました。言うまでもなく全障連としては国障年に幻想を抱いたり、政府―支配層の体制内統合に組み込まれたりすることなく、むしろこの機をとらえて運動の拡がりを実現することを目指してきました。
しかしながら情勢の項でも述べらているように、政府―自民党による障害者差別抹殺の攻撃は、激烈の度を増しつつあります。しかも国民年金法の「改訂」や身体障害者雇用促進法の改正、更には精神衛生法改悪策動等は、いずれも障害者自身の要求や運動を切り崩すために巧妙にたくまられたぎまん的政策と言わざるを得ません。それは障害者の自立と解放はおろか、国連の出した世界行動計画の勧告にすら反する極めて反動的なものと言えるでしょう。
この項においては世界行動計画の概要、及びその特徴的な内容をいくつか紹介し、
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次に日本政府の政策に対する私達としての具体的評価を明らかにした上で、世界行動計画に照らした今後5年間の課題を提起したいと考えます。
1.「障害者に関する世界行動計画」の概要とその特徴
「障害者に関する世界行動計画(World Program of Action concerning Disabled Persons)」は1982年の第37回国連総会において採択されたものです。目的・背景・及び概念、現状、障害者に関する世界行動計画実施のための行動提案の3つの章で構成されていますが、中でも行動提案中の「機会の平等化」の項目の中では、私達解放運動が主張してきた内容と共通する部分が数多く見られます。「障害者を持つ人の多くは地域社会の通常の社会生活から閉め出されているばかりでなく、施設に閉じ込められているのが事実である。過去のハンセン氏病患者のコロニーはほとんど無くなり、巨大施設もかつてほど多くはなくなったが、未だあまりにも多くの人々が、正当な理由も無く施設に収容されている」は行動計画中の現状分析について述べられている一文ですが、まさしく私達の分析と一致している内容と言えます。
「機会の平等化」の項では、法制・物理的環境・所得保障と社会保障・教育と訓練・雇用・宗教・スポーツ・文化・リクリエーションの9つのテーマに分けて具体的提案が為されています。まず、aの法制における提案中、特に評価できる提案は、次の2項です。「109.加盟各国は障害者に関する差別的慣習を除去するために必要な方策を取らなければならない」「111.教育の権利、仕事をする権利、社会保障を受ける権利、非人間的または屈辱的扱いから保護される権利等、特に重要な権利については個別に焦点を当て障害者側の視点から検討を加えることが必要である」。これらはいずれも日本政府が意図的に手をつけず、放置してきた方向に他なりません。
また障害者の自立生活のあり方についてはbの物理的環境で述べられている次の指摘に注目する必要があります。「115.加盟各国は障害者がコミュニティー(地域社会)の中でできる限り自立して生活できるような支援サービスを進めていくべきである。そうする中で現在、いくつかの国々で行なわれているように障害者が自らのためのサービスを自らの手で開発し、管理していけるような機会を持てるようにすべきである」。因に1982年3月に日本政府が発表した「国内長期行動計画」では自立生活に関して、上記の提案と全く相反する方向が打ち出されています。即ち「サービスの形態としては金銭給付・現物給付・負担軽減等の措置があるが、これらのバラン
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スは障害者のおかれている状況、社会的サービス供給体制を勘案して最も効率的なサービスの組み合わせを考慮すると共に、その内容や水準については、常に一般市民との均衡に留意するものとする。(中略)また、これらの施策の実施に当たっては、社会の成因として当然求められる自立・自助の努力、おうのう負担等は障害者に対しても妥当な範囲で求めるものとする」。まさに日本型福祉社会構想=福祉切り捨て宣言そのものと言って良いでしょう。
一方障害児教育について、世界行動計画に示された立場は私達の方向と一致しています。すなわち、「120.加盟各国は障害者が他の人々と均等な教育の機会を持つ権利を認める政策を取るべきである。障害者の教育は出来る限り一般の教育制度の中で行われるべきである。(後略)」とした上で、教育の基本原則として、?個別化すること、?地元で受けられること、?統合的であること、?選択ができること、の4点を明記しています。しかしながら日本政府―文部省の姿勢は、相も変わらず障害者を隔離・選別する姿勢でこり固まっています。「昭和54年度から養護学校教育の義務制が実施され、我国の心身障害児に対する教育は制度的な整備が行なわれると共に、その諸条件の整備が行なわれた。(中略)心身障害児に関わる就学指導は、その障害の種類・程度、能力、適正等についての専門的検討結果を基礎として、その子供の可能性を最大限伸ばすためには、いかなる教育措置を講ずることが最も適切か問う観点に立って行なうものとする。(後略)」。ここには障害児や親の願いを受け取めようとする姿勢はひとかけらも見えません。
次に雇用に関する提案でも、積極的かつ具体的な内容が述べられています。
「129.加盟各国は様々な方策を実施することにより、障害者の一般労働市場への統合を支援することができる。例えば奨励を目的とした割り当て雇用制度、指定または特定職種、小規模事業所や共同組合に対する貸し付け、または補助金、独占契約または優先製造権、障害のある労働者を雇用する企業に対する税制上の特典、もしくはその他の技術的あるいは財政的援助である。(後略)」。
なおこの世界行動計画には、障害の予防やリハビリテーションにもかなりの力点が置かれていますが、その内容をよく検討してみますと、障害の予防は主として戦争や労働災害、貧困に伴なう栄養不良、麻薬と薬害と言った人為的原因の除去をその課題としています。またリハビリテーションという概念についても、日本の場合のように施設や医療機関における訓練中心の狭いものではなく、むしろ社会環境の改善を重視
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しているのが大きな特徴と言えるでしょう。
2.日本政府の過去5年間の取り組みに対する評価
次に1982年から現在までの5年間に、日本政府が「成果」として宣伝しているいくつかの具体的取り組みに対し、私達全障連としての批判的見解を明らかにする必要があります。
a.法制
?@身体障害者福祉法の「改正」―――政府は1984年にこの法律を30年たって初めて改正しました。しかしながら今回の「改正」は、多くの障害者の期待を完全に裏切る内容でしかありませんでした。すなわち、この法律の2条及び3条に「障害者の社会参加」と言う表現が加えられはしたものの、相変わらず「更生の努力」と言った観点を抜け出ておらず、しかも私達が強く要求した差別の禁止や人権保障の観点、更には政府の責任の明確化は結局ほとんど触れられていないのです。それに加えて今回の「改正」の際、施設利用者及び扶養義務者からの費用徴収が盛り込まれたことは、明らかに福祉切り捨ての具体化に他ならず、私達障害者を「半人前」とみなす「親がかり福祉」の発想に依然として立っていることを端的に示しています。また障害者の範囲についても、欧米諸国と比較してはるかに狭く、「差別はするが保障はしない」と言う姿勢に貫かれていると言えるでしょう。
?A国民年金法の「改訂」―――これまでの複雑な制度から、いわゆる基礎年金を土台とする「2階建て方式」に改めたものですが、その真の狙いは国庫負担の削減のための受益者負担原理の導入と労働者大衆からの収奪の強化にあることは明白です。今回の「改訂」で、一時的には確かに幼い時からの年金額は大幅に上がりましたが、しかし依然として労働者の最低賃金の額には満たず、しかも生活保護受給者からは完全に収入認定がなされるため、何のメリットもないというぎまん的なものです。また無年金者を残す結果を生み出していることも重大な問題と言えるでしょう。
?B身体障害者雇用促進法の改正―――これまで身体障害者のみを対象としていたこの法律が、今通常国会で精神薄弱者をも対象とする「障害者の雇用の促進等に関する法律」へと改められました。もちろんこのこと自体は当然であり、もっと早く実施すべきだったものですが、問題は今回の改正で法定雇用率がわずか0.1%しか上げられなかったことにあります。こんなわずかの引き上げでは、これまで既に就労してい
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る精神薄弱者を加えれば、かえって実態が上がってしまい雇用主側に格好の口実を与えることになります。また今回の改正においても、私達が強く求めてきた「義務雇用制」や雇用納付金の最低賃金程度までの増額等は全く手を付けられぬままに終わってしまいました。
?C精神衛生法改悪作業の進行―――一昨年の宇都宮病院事件が国際的にも暴露され、国連やいくつかの非政府機関からの調査・勧告を受けて日本政府は精神衛生法の見直しを迫られました。しかしながら、昨年12月の「公衆衛生審議会答申」を見ても明らかなように、今回の改悪の動きは「患老の人権擁護」というポーズを取りながら、実際には知事の指定する「指定医制度」の導入等、「精神障害者」に対する管理体制を強める方向で進められていると言わざるを得ません。それ故私達としては、今回の改悪を容認することは断じてできないのです(詳しくは分科会基調参照)。
?Dその他―――総理府は国連に対し、他に162本にのぼる法律から、「不具(ふぐ)」「癈疾(はいしつ)」「白痴者」等の「不適切用語」を除去するための改正を行なったと報告しています。しかし私達に言わせれば、今までこんなにも多くの法律にこのような差別用語が使用されていたことこそ、許し難いことであり、むしろ今早急に求められることは、単に言葉のみを取り去ることではなく、障害者に対する数々の差別や偏見を一日も早く全て取り除くことなのです。
b.物理的環境
?E公共交通機関、公共建築物、道路等の整備・改善に関しては、都市部ではある程度進んできていると言えますが、農村部では極めて不充分なまま放置されているのが現状です。更にせっかく敷設された点字ブロックの上にたくさんの自転車が放置されていることの中に、健全者の無理解と啓蒙の不足がうかがわれます。また公営住宅に関しては、単身者向けの住宅が作られ始めたのに、その数がごくわずかしかないことも大きな問題と言って良いでしょう。
c.所得保障と社会保障
?F特別障害者手当の新設―――政府・厚生省は上に述べた国民年金法の「改訂」によって所得保障が進んだとして、これまでの「福祉手当」を一方的に打ち切り、それに代わるものとして、常時介護を要する重複の障害者を対象に新しい制度を新設しました。確かに支給金額は福祉手当の2倍近くに引き上げられましたが、支給対象者が大幅に制限され、実際に介護を受け、あるいは必要としている障害者が除外されてい
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るのです。年金法「改訂」の狙いと同様、国庫負担の削減のみを意図したものであり、国連が勧告している生活できる所得保障に全く程遠い制度と言わざるを得ません。
?G福祉ホームおよび小規模作業所への援助―――障害者が共同で生活を営んだり、「就労困難な」障害者やその父母が運営している作業所への援助を始めていますが、支給額・対象者ともほんのわずかであり、しかも窓口を育成会や全家連、日身連等の御用団体に限定している点等、全くデタラメなアリバイ的制度となっています。
?Hその他、厚生省は手話通訳・点訳・朗読等の社会参加促進事業や、通産省との協力による福祉・医療機器の開発等、数多くの「成果」を国連に報告していますが、ほとんど目新ししいものはなく、むしろここ数年の福祉切り捨ての中で障害者に対する機会の平等化はまさに単なるスローガンに終わっているのが現状です。また厚生省が82年5月から実施したヘルパー制度の一部有料化は、それまででさえ困難だった障害者の地域での自立生活をより一層厳しいものへと転化させる政策であり、機会の平等化に逆行するもののといわざるをえません。
d.教育と訓練
?I障害児と健全児が共に生き、学ぶ共生教育(統合教育)の否定―――前節でも見たように政府―文部省は、世界各国の実態や国連の勧告に一切耳を傾けず、また障害児・者や親の正当な願いをも無視して依然として盲ろう養護学校義務化体制を維持・強化せんとしています。そして静岡・長崎と言った反動的教育委員会の姿勢を支持しているばかりか、大阪等、私達の闘いによって校区保障が進んでいる府県の教委にさえ圧力をかけ、障害児を普通学級や普通学校から閉め出そうとしている有様です。私達はこのような文部省の姿勢に強く抗議すると共に、これを国際的にも暴露し、世界中の世界中の障害者からの批判を巻き起こさなければなりません。
?J国立身障者短大の認可の強行―――また文部省は、一方において「一般大学の門戸を障害者にも開放するため受験方法の改善を進める」等と言いながら、他方で多くの反対を無視して、今通常国会において国立学校設置法を「改正」し、「国立身障者技術短大」の新設を認可しました。これによってこれまででも障害者の受験を拒む一般大学がある中で、「障害者は身障者技術短大へ行くべきだ」として障害者の受験を拒む大学が増える可能性も予測されます。
e.雇用
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?K障害種別の雇用対策―――労働省は上に述べた「障害者の雇用の促進等に関する法律」の制定や、「特定障害者就職援助特別事業」の実施、更には第3セクター企業の促進等により、障害者の雇用拡大を図るとしていますが、厳しい円高不況や大量失業の中で障害者の雇用はむしろ厳しさを増すばかりです。また第3セクターでは重度障害者は対象にされにくく、政府機関や自治体での障害者雇用も頭打ちの状態です。
3.今後5年間における行政闘争の課題
さて、私達全障連は「国連障害者の10年」の初年度にも当たる、1983年の第8回全国大会において、「障害者解放基本要求要綱・第1次案」を発表し、第9回全国大会においては、それを一層まとめ上げ「同第2次案」としました。この要綱は障害者の仲間の組織化と、その被差別実態の改善を促進を改善するための行政闘争の指針とも言うべきもので、国障年行動計画の掲げる「完全参加と平等」の具体化を目指したものであると言っても差し支えないでしょう。しかしながら、ここ数年この要求要綱が充分実践に生かされておらず、そのことが政府の機会の平等化のための政策のサポタージュを許してきたものとも言えるでしょう。私達は、今後世界各国の闘う障害者との交流・連帯を強めつつ、日本政府の姿勢を厳しく追及しなければなりません。そのためにも全障連としては、改めて要求要綱を再点検しつつ、その一方で国障年の残りの5年間の機会をフルに活用して、行政闘争における最優先の諸課題の実現に向けて、差別糾弾の基本原則をふまえつつ闘いを強めなければならないのです。以下、それらの課題を列挙したいと思います。
?@障害者差別を固定化する法制度及び法律上の差別条項の撤廃、新たな差別・抹殺の法制化阻止―――現行の優生保護法や、精神衛生法、養護学校の義務制を定めた政令339号等は、明らかに障害者の隔離・抹殺を固定化するものであり、私達は一日も早い撤廃を実現させなければなりません。また、刑法改悪―保安処分新設、拘禁2法改悪、母子保健法改悪等も、断じて許すことはできません。更に現行の民法、労働基準法、最低賃金法の他、各種の免許法等に見られる障害者差別・排除の条項については、その改正もしくは撤廃を強く求める闘いを進めます。
?A身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法、心身障害者対策基本法の抜本改正―――これらの法律の改正に際しては障害者の権利保障と、公的責任の明確化、悪質な差別煽動の禁止や偏見の除去等を盛り込ませるよう、広範な闘いを展開しなければならな
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いでしょう。
?B交通機関における利用制限の撤廃、交通機関の安全かつ自由な利用、個々の障害者のニーズに応じた道路・公共建築物等の設備改善―――これらの課題は運輸・建設・通産等の各省・各自治体行政及び、JR(旧国鉄)を始めとする各交通会社に対して粘り強く闘いを進めて行く必要があります。
?C生活できる所得保障制度の確立―――就労している、いない、にかかわらず障害者が地域社会で安心して生活できる所得保障を、国の責任で行なわせると共に、これまでの「親がかり」「家族がかり」の発想を抜本的に改めさせ、障害者の主体性・自己決定権を無条件に認めさせるよう強く働きかけます。
?D介護の公的保障制度の確立―――障害者が地域で自立生活をおくる上で介護保障が最も重要な課題の一つであることは、言うまでもありません。人的給付としてのヘルパー制度は極めて不充分であり、また金銭給付としての特別障害者手当も上に記したように対象者が厳しく制限されたものです。国や自治体の責任性を明確にする介護制度を早急に確立するよう巾広い障害者の闘いをつくりだす必要があります。
?E施設利用者及び扶養義務者からの費用徴収制度の撤廃と施設内処遇の改善―――今なお所得保障が充分でなく、しかも本人の意志と無関係に施設へ来ることを余儀なくされているにもかかわらず、厚生省は昨年7月から施設利用者及び扶養義務者からの費用徴収を強行しました。また施設内でのプライバシーの侵害や日常生活上の様々な制限についても、施設利用者の主体性を認める立場に立ったものとは言えません。従って私達は、施設で生活する多くの仲間の障害者と共に費用徴収制度の撤廃と、施設処遇の早急な改善を強く求めていきます。
?F共生教育の確立と普通学校における条件整備―――あくまで隔離的教育に固執する政府―文部省を様々な分野からの闘いによって包囲し、方針の変更を迫りつつ、共生教育のための新たな制度の確立を強く要求します。また一般学校の普通学級の中での障害児の学習権が保障されるよう、点字教科書や教員の加配等の教育諸条件の整備を求めていきます。
?G障害者雇用の拡大―――就労を希望する全ての障害者に雇用の機械と仕事が保障され、差別的労働条件が改善されるよう、政府・各自治体及び民間企業に強く働きかけます。
?H医療の名による差別処遇の禁止と「精神障害者」を始めとする全ての障害者の立
(校正者注:以下、ページ番号なし。「全障連第12回 全国交流大会要綱」が4ページにわたって掲載されている)
全障連第12回 全国交流大会要綱
◆だいやまーく国際障害者年・中間年をステップに反差別・共生のネットワークを広げよう。
やっぱり、自分たちの手でかちとるっきゃない! (校正者注:「やっぱり〜かちとるっきゃない!」下線)
権利として自立(校正者注:「自立」大文字)と解放(校正者注:「解放」大文字)をめざした社会変革(校正者注:「社会変革」大文字)を!
■しかく日程/7月31日?・8月1日?・2日?
■しかく会場/東京町田市(町田市立体育館 町田市立第一中学校)
地図省略(校正者注:大会会場と宿泊先(オリンピック青少年センター)周辺の路線図が掲載されている)
全障連(全国障害者解放運動連絡会議)全国事務局
全障連第12回全国交流大会実行委員会
東京都豊島区巣鴨3-34-3 フラワーコーポ303号 ?(03)918-8572
(校正者注:以下、ページ番号なし。2ページ目と3ページ目の見開きで「全障連第12回全国交流大会」のスケジュールが記載されている。)
7月31日(金)
開会・全体会〈町田市立体育館〉
AM12:00 受付開始
PM1:00 開会
開会あいさつ、歓迎あいさつ
後援あいさつ、連帯共闘アピール
祝電紹介
基調(案)提起
PM4:00〜5:00
■しかく記念講演 山川暁夫氏(政治評論家)
「激動する政治情勢のゆくえと反差別闘争の意義」
■しかく当日電話連絡先
・大会実事務所 03-918-8572
・町田市立体育館 0427-26-9191
・町田市立第1中学校 0427-22-2420
・宿泊本部(都南荘)0427-22-2464
8月1日(土)
分科会 町田市立第1中学校
AM8:00 受付開始
AM9:00〜PM5:00 分科会討論会 〔交通、生活?@、?A、教育 労働、施設、医療 赤堀闘争、作業所・生きる場〕
特別分科会(理論講座)
?@AM10:00〜12:00
障害者の自主的運動と自治
大下勝正氏(町田市長、個人として)
?APM1:00〜3:00
地対協意見具申批判と差別糾弾闘争
管 孝行氏(評論家)
?BPM3:00〜5:00
障害者差別の歴史を解明する ―主として文化論の立場から―
二日市 安氏(障害者・翻訳家)
障害別・階層別討論会
オリンピック記念青少年センター(宿泊所)
PM6:00〜9:00 視覚障害者・聴覚障害者・肢体障害者・女性障害者・施設 労働者・学生
8月2日(日)
分科会 町田市立第1中学校
AM8:00 受付開始
AM9:00〜 12:00 分科会討論会 〔交通、生活?@、?A、教育 労働、施設、医療 赤堀闘争、作業所・生きる場〕
総括集会〈町田市立体育館〉
PM1:00〜 5:00 各分科会報告
基調(案) 質疑応答採択
会計、役員、全国幹事承認
特別決議提起、採択
大会宣言提起、採択
スローガン唱和
閉会あいさつ
全体会・分科会・案内図
地図省略(校正者注:町田第一中学校と市立体育館までの道のりをJR町田駅から点線で表示)
参加費 3,500円 (基調・レポート集・記念品代込み)
宿泊費 2,000円
7月30日(木)の夜に宿泊される方は必ず大会実に予約して下さい。
☆7月31日・8月1日に宿泊される方は当日受付けます。
☆宿泊場所はオリンピック記念青少年センター(小田急線「参宮橋」歩5分)です。
☆宿泊場所は電話連絡がとれません。
(校正者注:以下、ページ番号なし)
全国各地の、そして地域、職場、施設、学園のあらゆる場でがんばっている障害者の仲間たち。
差別を許さず"ともに生きる"自立と解放の社会をめざし、共に闘うすべての友人のみなさん。
国連の定める「障害者の10年」の中間年にあたる今年、全障連全国交流大会の12回目を東京都・町田市で開催いたします。
今、私たちをとりまく情勢は、国内外の政治・経済・社会の激動のもと、日常生活のあらゆる場面、社会現場で激突の時代に入っていると考えられます。大量失業時代での雇用就労の問題、「福祉切り捨て」攻撃の中での施設費用徴収や有料介護の問題、臨調―行革路線のもとでの国の責任放棄、まさに、私たち障害者の生活の一コマ一コマが管理・支配され、巧妙な手口で"生き様"が圧殺されようとしています。
私たちは、障害者自らが声をあげ、社会に対する異議申し立てを開始してから10年余、自立と解放の社会を実現すべく大きく歩を進めてきました。そして、この厳しい時代に新たに確信をもった展望を打ち出そうとしています。
「障害者解放基本要求要項案」を作り、「障害者差別実態白書づくり」を開始し、「ともに生き働くネットワーク」を手がけ、運動と仲間づくりの方針を掲げてきました。そして今年私たちは全体的な情勢を切り開くために今後の組織運動の大きな展望を提起していきます。
政策と実践――私たちの側から、政府の総括と方針を徹底批判し、自立と解放のためのプログラムを提起する。"ともに生きる"社会――すべての人々の課題に力強く未来を示していきたいと考えます。
すべての仲間・友人たちの参加を心よりお願いします。
◆だいやまーく分科会のテーマのご案内
第1 交通/すべての障害者が安心して利用できる交通機関を。
第2 生活/自立って何だ!
?@分散会...公的介護の保障を求めて
?A分散会...生活の中での差別との闘い
第3 教育/盲ろう養護学校義務化体制を打ち破る闘いを強化し、共に生きる教育内容を深めよう。
第4 労働/転機を迎える労働、流れに抗して強固な連帯を。
第5 施設/施設費用徴収問題をテコに設の主人公を障害者(利用者)へ!施設から地域自立を求める自由を
第6 医療/「医療」という名の管理強化を許さず、優生保護法・母子保健法の改悪を阻止しよう。
第7 赤堀闘争/赤堀さんの身柄釈放を実現し、再審闘争に差別糾弾で勝利しよう。
第8 作業所・生きる場/政府・厚生省の3団体助成にみられる地域管理網攻撃を突き破り、情報と職業の共同化を柱とした全国の「共に生きる場」「共に働く場」の自主的創造ネットワークを拡げよう。
◆だいやまーく次の講演も行います。
?@石川善朗氏(親)就学闘争の真ただ中から
?A大谷恭子氏(弁護士)法制度上の問題点
?B石井一三氏(町田第1小校長)教育現場のとり組みと課題
?C二日市安氏(障害者)障害者の立場から教育現場への提起
p14
(校正者注:以下、p13「?H医療の名による差別処遇の禁止と「精神障害者」を始めとする全ての障害者の立」から続く文章)
場に立った地域医療の確立―――現在、精神病院を中心として多くの医療機関に置いて、障害者の人権侵害や差別・抹殺の行為が「医療」を隠れ蓑に繰り返されています。また様々な地域の医療機関が、障害者に対する充分な医療保障を怠っています。私達は厚生省はもとより、各医療機関や個々の医師の差別性を鋭く糾弾し、患者・障害者の立場に立った地域医療の確立を強く要求していきます。
?I生きる場・作業所への助成制度の確立―――障害者自身が進める各地の生きる場・作業所は、財政面で多くの困難を強いられています。また厚生省は自らに都合の良い団体のみにわずかばかりの援助を行なって、お茶を濁そうという差別的対応を行なっています。私達は他の団体とも共闘し、厚生・労働両省に助成制度の確立を強く迫り、早急の実現を目指していきます。
以上の諸課題について、私達は残された5年間の間の達成を目指し、反差別・反権力の視点を貫きつつ、大規模な闘いを展開しなければなりません。またこのような闘いと並行して、政府の軍事大国化―戦争政策と真向から対決し、社会の根本的変革を目指す闘いも忘れてはなりません。何故なら、私達は障害者の真の意味での完全参加と平等、自立と解放は、現在の社会体制の変革無しにはあり得ないことを確認しているからなのです。
?V 運動の総括と方針
1. 86年度運動総括
中曽根内閣による戦争遂行と福祉切り捨てが、ますます強められる中にあって、私達の闘いはどこまで前進し、どのような問題点を残したのか、改めて正しく総括し、来年度の方針に生かしていかなければなりません。
?@ 赤堀差別裁判糾弾闘争と保安処分新設粉砕の闘い
この一年の成果は何と言っても、3月31日の東京高裁における赤堀さんの再審開始確定を勝ち取ったことでしょう。私達は33年間に及ぶ赤堀さんの闘いに改めて敬意を表し、赤堀さんと共にこの喜びを共有したいと思います。警察権力―司法権力の不当な差別と宮刑における獄中弾圧の中で、闘い抜いてきた赤堀さんの苦闘は私達に到底図り知れぬものがあります。しかしもちろん私達はここで手放しで喜んでいるわ
p15
けにはいきません。今後の静岡地検―地裁に対する闘いを、より一層強めるための広範な差別糾弾の闘いを作り上げる必要があります。また静岡現地における獄中支援センターづくりが充分進んでいないことについても、私達は真剣にとらえ返さなければなりません。
一方、保安処分新設に関する動きは、現在のところ一段落していますが、意見交換会粉砕の闘いの地平を更に発展させ、闘う体制を強化することも重要です。また昨年12月に出された「公衆衛生審議会答申」以降、急速に進んできた精神衛生法改悪の動きに対し、充分な取り組みができていないことも深く総括し、体制づくりを急がなければなりません。
?A 石川闘争
昨年の40日間を越える闘いの中で、不充分ながら獲得した合意書は1年たった今なお、清水市教委・静岡県教委の居直りによって実施に移されていません。盲ろう養護学校義務制粉砕の闘いの一貫として、この就学闘争を位置付けてきた私達は教委のこのような居直りを許してきたことに対し、改めて闘いのあり方についてとらえ返さなければなりません。今、地元では、地域の市民団体・個人が結集し、重朗君の転籍と、生きる場の拠点づくりを具体化するための準備が粘り強く進められています。私達は、こうした動きを断固支持し、確認書の完全実施に向けた全障連の支援体制を強めていきたいと思います。
?B 母子保健法・優生保護法改悪阻止の闘い
この1年は、関東ブロックを中心に自治労や女性解放戦線との学習会を数回行なってきましたが、他の地域においては充分な取り組みができませんでした。私達はこれらの団体との共闘を進める上で、各々の立場を改めて出しあい問題点を共有化しつつ、よりしっかりした団結を作らなければなりません。現在のところ母子保健法をめぐる動きは一段落していますが、一方でエイズ(後天性免疫不全症候群)に関する予防法が準備され、患者の届出義務や、医師への罰則が盛り込まれる等、新たな差別が生みだされようとしています。私達は、優生思想を拡大・助長するような一切の動きをチェックする体制をより一層固めていく必要に迫られています。
?C 施設利用者及び扶養義務者からの費用徴収制度に対する闘い
昨年は全国各地で、施設障害者を中心に費用徴収制度に反対する闘いが展開されましたが、私達全障連の取り組みは決定的に遅れてしまいました。私達は闘いの遅れや
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弱さから費用徴収を許してしまったことを深く反省しつつ、再度各々の自治体に対する闘いと厚生省に対する闘いを強めることが必要です。また私達自身、施設利用者とのつながりを充分作り切れていないことも深くとらえ返し、施設内部からの闘いとの連帯の下で、再度費用徴収反対の陣型を構築していく必要があります。
?D 障害者差別実態白書づくり
今年2月に厚生省は、身体障害者実態調査を強行しました。言うまでもなく厚生省による調査は一人一人の障害者の願いに応えるものではなく、むしろ自らの福祉切り捨ての政策を合理化するために利用しようとしていることは明白です。このようなごまかしをはね返すためにも、私達の行なう「障害者差別実態白書づくり」の意義は、ますます大きくなっています。この一年、関西ブロックを中心に調査活動が具体化され、他のブロックにおいてもようやく具体的な計画が立てられました。私達一人一人が障害者のおかれている実態を、自らの日常活動によって把握し、つながりを作り、被差別実態を行政につきつけていくためにも、「障害者差別実態白書づくり」の取り組みはより一層強化されなければなりません。
?E 生きる場・作業所ネットワークの取り組み
この一年ようやく「共に生き・働く全国ネットワーク」が発足し、東日本・西日本に分かれて取り組みが始められつつあります。また今年5月には情報誌「ネットわぁーく」の創刊準備ゼロ号も発刊されました。この結果徐々にではあれ、各地に点在する作業所間のつながりが作られ、様々な情報を基により良いものをい生み出して行ぐ可能性が整ってきました。しかしながら全国にはまだ多くの地道な取り組みがあり、これらの人達に対する呼びかけが今一つ充分とは言えません。情報誌を武器に一層の拡がりを作らなければなりません。
?F 竹中直人の差別ビデオに対する糾弾闘争
この「竹中直人の放送禁止テレビよくやった」と言う障害者差別ビデオに対する闘いは、足掛け3年にも渡って続けてきていますが、その中で主演の竹中直人氏及び所属する青年座代表については、一昨年から昨年にかけての闘いの中でかなりの前進を見ることができました。またこの間、一貫して逃亡してきたビデオ制作者の喰始(たべはじめ)〈本名=川田耕作〉氏、及び彼が主宰しビデオにも多数出演している劇団ワハハ本舗は、昨年になって公然とマスコミ界に登場し、週間誌等でも「差別ネタ得意のワハハ本舗」と言うふれこみで、差別を売物にする姿勢を露骨に示してきまし
p17
た。私達は彼等が昨年の12月にプレイガイドジャーナル社主催の公演を大阪で行なうことを知り、直ちに主催者等に質問状を送り問題性を指摘しました。また私達の闘いを受けて、一部のマスコミが彼等の出演を中止したため、これにあわてた彼等はしぶしぶ私達との話し合いに応じてきました。昨年12月8日に開かれた喰始氏との確認会において、彼は一貫して「差別する気はなかった。ギャグを追及しただけだ」と居直り、全く反省の姿勢を示しませんでした。しかし、ワハハ本舗のメンバーをも含めた糾弾会を積み重ねる中で、彼等の固くなな姿勢にも少しづつ変化が現われ、「障害者の厳しい状態をもっと知っていきたい」と自ら発言するようになりました。しかし、彼等に本当の意味での障害者差別に関する自己批判と正しい認識を持たせるには、まだかなりの時間が必要です。相次ぐ差別事件に対してするどく、しかも粘り強い糾弾を続ける必要があるでしょう。
?G 共闘関係
障害者団体との共闘については、実態調査阻止闘争や母子保健法改悪阻止闘争、赤堀闘争等、各課題毎の共闘を継続してきましたが、団体間の交流・討論が今一歩不充分でした。また共闘がややもすると中央レベルに止まってしまいがちで、地域毎の日常的な共闘が充分作られていないことを総括しなければなりません。DPI(障害者インターナショナル)日本会議は、この一年ようやく正式結成にこぎつけましたが、まだ具体的な行動を展開し切れていないことが大きな問題と言えるでしょう。
反差別共闘では、部落解放同盟との関係が継続されていますが、狭山闘争や地対協意見具申に対する学習や闘い等を、私達としてももっと強める必要があります。
また労働運動との関係については、運動が様々な困難を強いられている中で、充実した関係が充分作られていません。障害者差別の実態や方向性をより明確に提起していかなければならないでしょう。ただ自治労との関係は施設利用費の問題や母子保健法の課題等で具体的な関係が発展してきています。
反戦・反核・反権力の闘いについては、中曽根の戦争政策や三里塚二期工事着工が進む中にあって、一部を除いては全体的取り組みが十分できていないことを総括しなければなりません。戦時体制の下で私達障害者の存在が決して認められないものであることは歴史的にも明白であり、その意味でも私達はこの闘いを軽視すべきではないでしょう。三里塚農民を始めとする人民自身の反権力実力闘争の実践に学びつつ、私達にとっての闘いのあり方を十分論議することが早急に求められます。
p18
2. 87年度運動方針
今年度は私達にとって単一組織化をめざしたより強化な闘いが求められる年です。昨年度の総括をふまえ重点課題を明確にした上で、よりち密な方針を打ち出す必要があります。
?@ 赤堀差別裁判糾弾闘争
今年3月31日、赤堀さんの再審開始が確定し、闘いはいよいよ本格的段階ともいえます。まず何よりもいまだ赤堀さんが拘留されている事実を許さず、身柄釈放に向けて全力を尽くすことです。面会・文通等の獄中支援を軸に身柄釈放の社会的運動を作り上げ、裁判所・法務省を追いつめていくための署名・情宣活動を強めていかなければなりません。
また来たるべき再審法廷では赤堀さん自身の決意にもあるように、拷問やデッチ上げ、アリバイ等を赤堀さん自身の声でつきつけ、33年の長きに渡る差別裁判そのものを糾弾していく、そうした法廷闘争を支えていかなければなりません。
そしてこれらの闘いを進めていくためにも静岡現地における体制作りが早急に求められており、私達全障連としても全力で現地障害者や労働者等、多くの人々に働きかけを行ない、強固な闘争体制を築き上げていきたいと思います。
?A 精神衛生法改悪阻止闘争及び反保安処分の闘い
精神衛生法は「精神保健法」に名を変えた上で国会での継続審議扱いになっています。これまでの闘いを引き継ぎ、この法案の持つぎまん性を明らかにし、改悪阻止への大衆的闘いを強めていかなければなりません。そのためにもより学習を深め共闘を強めつつ、この精神保健法案が何ら差別の実態を改善するものではないことを認識し闘いを盛り上げていきたいと思います。
また現在の「精神障害者」差別体制を維持している現行精神衛生法(体制)の撤廃に向け、「精神障害者」をはじめとした共闘・連帯を強めていかなければなりません。同時に宇都宮病院に代表される精神病院や地域における「精神障害者」に対する人権侵害を糾弾し、「精神障害者」が安心して生きられる地域体制作りと開放医療の確立に向けた取り組みを進めていきたいと思います。
そしてこうした闘いを通じて、政府―法務省の保安処分新設の国会再上程を決して許さぬ反保安処分の内実と闘いの体制を強化していかなければなりません。
p19
?B 母子保健法改悪阻止・優生保護法撤廃に向けた闘い
母子保健法改悪をめぐる政府の動きは、今国会の売り上げ税問題で表面には出てきていませんが、厚生省が再度上程をねらっていることは間違いありません。したがって私達は決して手をゆるめることなく、中央段階や各地域ごとに集会や学習会を行ない、その中で障害者・女性・自治体労働者それぞれの立場と問題意識を共有化していかなければなりません。また優生保護法撤廃のためには、まず個人個人が持つ優生思想を問い直すための日常的な教宣や個別の討論の積み重ねがもっとも問われているといってよいでしょう。
?C 石川闘争
現在、教育委員会側の障害者差別にもとづく強健的居直りの中で困難を強いられている状況を突破するためにも、私達全障連としてもあらる戦術を駆使して、再度闘いの盛り上がりを作り出さなければなりません。石川さん親子の思いを一日も早く実現させるために、そして障害児をあくまで隔離・選別しようとする政府―文部省を追いつめるためにも私達は何としても重朗君の六中普通学級への転籍を勝ちとらなければならないのです。
?D 施設利用者及び扶養義務者からの費用徴収制度撤廃と施設改善の闘い
厚生省に対する闘いについては、障害者の完全参加と平等をめざす全国共闘委員会等の他団体と共闘しつつ、巾広い運動の力でこの制度の見直しと撤廃を迫る必要があります。また、各施設の入所者との関係を深めながら一人一人に費用不払の闘いを提起することも重要です。また今施設省委員会等が中心となって検討が進められている「施設入所者権利宣言」を全面的に支持し、その方向にそって施設改革のための闘いが進むよう日常的な支援体制を作っていきたいと思います。
?E 障害者差別実態白書作りと行政闘争の強化
10回大会より提起してきた「障害者差別実態白書作り」は、昨年調査項目の整理を終え、関西ブロックを中心に予備調査を行ない、いよいよ全国レベルでの本調査に入ります。私達はこの取り組みを、単に調査データを集約するだけのものとして提起しているのではないことを再度確認しておく必要があると思います。私達はこの10数年、地域における目立生活の取り組みを、露骨にかけられてくる差別攻撃との対決として闘ってきたことは言うまでもありません。しかしながら一方で、全障連の組織体制のあいまいさが、日常活動の弱さとなって出てきていることも指摘されてき
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たことです。
私達は今、そうした闘いの強化をめざし、これまで行なってきた自立生活のあり方や自立の原則を再度点検する時期にきていると思います。そしてまだ私達が出会っていない多くの障害者、とりわけ家や施設の中で日々差別と苦闘している障害者のおかれている実態を、まさに共有化し、手を結び、政府―支配層のかけてくる障害者解放運動の体制内化あるいは孤立化攻撃と対決する組織戦を闘いぬかねばなりません。
すなわち、この障害者差別実態白書作りは、一つには体制との組織戦に打ち勝つためのものとして、二つめには全障連運動の日常活動の確立へ向けて、三つめにはこれまでの自立生活運動について点検・総括していくためのものとしてあります。そしてさらには、新たに出会った障害者と日常的に切り結ぶ場として、この間提起してきている地域拠点=障害者解放センター作りへと発展させ、その中からより多くの障害者の要求に根ざした政策の共有化と、それにもとづく行政闘争を押し進めていきたいと考えます。白書作りから日常活動の確立と地域拠点建設へ、そしてその拠点を砦に差別攻撃と闘い共に生きる実践を練りあげ、多くの障害者と団結を固め要求を共有し、行政闘争へと発展させていこうではありませんか。
?F 生きる場・作業所ネットワーク
生きる場・作業所ネットワーク作りは、ついにこの5月第1号の情報誌発行にこぎつけることができました。これまで労働権奪還の取り組みとして作業所運動が展開され、また地域に撃って出る場あるいは生活そのものを語る場として生きる場運動が各地で取り組まれてきました。政府は、これらの血のにじむような思いで取り組まれてきたこれらの活動に対して、1か所70万円の補助金、それも日身連(日本身体障害者団体連合会)・育成会(全日本精神薄弱者育成会)・全家連(全国精神障害者家族連合会)という既成団体を窓口としてしか出さないという方針を決めてきました。これこそまさしく障害者運動の更なる体制内統合化に他なりません。これに対し日共―全障研に主導される共作連(共同作業所全国連絡会)は、日身連へのもぐりこみ戦術をも図らんとしているのです。
このような状況の中で、私達サイドの生きる場・作業所の取り組みは、残念ながら個々の維持・運営に追われ、全体的方針を共有化するに至っていません。ですからようやく情報誌の発行にこぎつけた今、各地の情報の交流に留まらず、取り扱い物品の流通網の確立と既成3団体助成を打ち破る行政闘争を早急に進めなければなりませ
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ん。当面、物品流通網の確立と情勢分析を含めた学習会の開催、さらには生きる場・作業所に参加している人達との交流を推進しつつ、共同連(差別と闘う共同体全国連合)等との連携も一層密にし、日共―全障研・共作連や日身連・育成会・全家連に対抗しうる陣型を確立していきたいと考えます。
?G 共闘関係
障害者間共闘については昨年までの課題別の共闘をより充実させ、状況に応じて新しい団体とのつながりも求めていく必要があります。この際、私達としての原則や方向性をしっかりとふまえておかなければならないのは当然です。またDPI(障害者インターナショナル)関連の動きですが、いよいよ来年東京で世界の「専門家」を中心としたRI(リハビリテーション・インターナショナル)が開かれることになっています。国際障害者年日本推進協等は無条件にRIに協力しようとしており、DPIの内部にもそのような傾向が見られます。私達はあくまで障害者の主体性の確立と反差別・反戦の立場からDPIの発展をめざしていきたいと思います。
反差別共闘については、この間非常に不充分だった、指紋押捺拒否闘争や沖縄民衆の闘い、さらには南アフリカにおけるアパルトヘイトの問題等を積極的に学習し、部落解放同盟との共闘を中心に巾広い連帯を作り出していきます。
一方、反戦・反核・反権力の闘いに関しては、本大会の記念講演をふまえ、日増しに強まる軍事大国化・戦争政策との闘いを広範な人々との連帯のもとに進めていかなければなりません。また今秋予想される三里塚二期着工攻撃に対しては、障害者解放運動の立場をふまえ空港粉砕の闘いに連帯していきたいと思います。
?W 組織の総括と方針
1. 86年度組織総括
?@ 各ブロック活動
昨年の第11回全国大会以降、この1年間の最大の成果は、何と言っても全障連結成以来の闘争課題である赤堀差別裁判糾弾闘争における、赤堀さんの再審決定を勝ち取ったことです。総括に当たりこのことを最大の喜びとして、また今後の私達全障連の闘いの新たな課題を提起するものとして、しっかりと受け取めていく必要があると
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思います。すなわち赤堀さんを生きて奪い返す日が真近に迫りつつあることを確認し、まさにその意味からも地域における反差別・共生の実践と体制づくりが求められているのです。
さてこの間のブロックの動きですが、東北ブロックは赤堀さんと共に闘う会と共同して、赤堀さんへの面会活動を始め、獄中支援・宮刑糾弾闘争を中心に活動を展開してきました。このことは再審決定への大きな力につながったものとして意義多いものです。また昨年から継続して、仙台市心身障害者相談センターへのコンピューター導入に反対する闘いも行なってきました。
関東ブロックではこの1年もまた全国事務局を担い、あわただしい動きでした。今年1月には身体障害者実態調査阻止対厚生省交渉を、原則的立場を持って闘い、次いで対都交渉も行なってきました。またブロック合宿を行ない、ブロック活動の確立に熱心な討論を展開しました。更に、今大会の受け入れ体制と準備を昨年11月より始め、大会成功に向けて全力で取り組んできたことは、今後のブロックの強化・発展につながるでしょう。
東海ブロックはブロック活動の建て直しに向け、着実に成果を上げています。地域キャンプと東海障害者運動交流集会に、それぞれ150人を越える仲間が結集し、更に全障連結成以来、障害者の労働権の課題として作業所運動を共に担ってきた名古屋の「わっぱの会」の結成15周年コンサートには、1000人もの人々が参加したと言います。これらの動きは今後のブロックの活動にも大きな意義があるでしょう。
北陸ブロックは、障害者の共に生きる拠点づくりを目指して、助成金獲得の行政交渉を行っています。更に発展させ、生きる場センター建設へとつながることが期待されます。
関西ブロックでは、他の団体と共同しての職よこせ要求者組合や施設問題交流会の活動が活発に行なわれ、とりわけ施設問題では大阪府・市との交渉を積み重ねています。これらの動きと連動させ、国際障害者年大阪連絡会議に結集する共闘団体と共に、オールラウンド交渉も実現させました。また障害者差別実態白書づくりへの全力の取り組み、日よう会・手話講座・解放講座の開催等により、着実に仲間を増やしつつあります。更には全国課題でもある竹中ビデオ糾弾闘争を始めとする差別事件に対する分析と取り組みも精力的に行ないました。今後は新しい仲間と、どのように共に運動を担っていくかが問われています。
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中四ブロックはこの1年、中国地区と四国地区の分離を目指した意識的取り組みを行なってきました。中国地区では島根において100人、四国地区では徳島において80人の仲間をそれぞれ結集し、地区交流集会を成功させました。この動きを発展させ、念願であるブロック分離を実現させることが期待されます。
最後に九州地区におけるブロック再建ですが、昨年の大会成功の成果を踏まえ、定期的に事務局会議が持たれています。そして九州地区の集いには50名もの仲間が参加するなど、着実な歩みを見せています。
以上、各ブロックともその地方の実情に即して、全障連運動の裾野を広げるべく確実に一歩一歩前進していることを確認しておきたいと思います。
?A 各小委員会活動
小委員会活動では、赤堀・施設・交通の3委員会の動きが活発でした。まず赤堀小委員会ですが、赤堀中央闘争委員会において全国「精神病」者集団と共に、その中心部隊として活動を担い、再審開始を勝ち取ることに大きく寄与しました。
また施設小委員会は定期的に会議を持ち、以前にも増して各地からの結集が増え、まさに全国小委員会としての機能を果たしています。そして特筆することとして、5月に京都で持たれた全国療護施設研究協議会大会へ公開質問状を出し、施設長代表との交渉を実現させたことがあります。更に現在は「施設入所者権利宣言」の準備を中心的に進めており、このことは施設入所者自身の運動として、私達全障連の運動にとっても新たな地平を切り開くものとして大きく評価されることでしょう。
交通小委員会は、大原裁判闘争における最高裁の障害者傍聴制限糾弾の闘いを果敢に闘う等、積極的な動きがありました。しかしその他の小委員会で停滞が見られ、建て直しが求められます。
小委員会ではありませんが、「障害者差別実態白書づくり」推進のプロジェクトチームは、数回の会議を持ち、本調査の計画・分析等を集中的に行なっています。その結果は、別冊報告書を参照下さい。
?B 各機関活動
全国幹事会は昨年より年3回とし内容の充実を図り、他方全国役員会の回数を増やしていくことにしました。全国役員会の機能は、時々の課題の方針論議が今少し不充分でしたが、全体としては定着化がなされたものと考えます。
全国事務局については、引き続き関東ブロックが担ってきました。各ブロックから
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の協力体制の一貫として、今回大会準備も兼ね、関西ブロックから人員を派遣し事務局体制の強化を図るよう試みています。今後の成果が期待されるところです。
全国出版部は関西ブロックが兼任、全国機関誌を年間10号発行し、刻々と変り行く情勢と次々にかけられてくる攻撃を分析し、闘いの指針を提起してきました。また各ブロック連絡員の協力を基に、全国各地の情報を掲載することができました。今後とも、機関誌活動の持つ意義は極めて重要になってくるでしょう。
幹事・活動家組織強化合宿は年々内容が充実してきています。特に1月の合宿においては、全障連の単一組織化に向けた意志統一が勝ち取られ、またこれまで論議が不充分だった「要求闘争と社会変革との関連」について、一定の共通認識がなされる等、意義多い成果を生み出しています。
昨年の大会方針に基き設置された規約改訂委員会は、3回の会議が持たれ、全障連の単一組織化へ向けた方針案が策定されました。これについては以下の方針の項において提起したいと思います。
理論強化委員会も再開され、全障連運動の理論的検証、更には運動綱領づくりに向けた研究・討議が活発になされつつあります。更に発展させ今後の規約改訂、単一組織化の作業において重要な任務が果たされるよう期待されます。
?C 財政
財政は相変わらず厳しい状況におかれています。ブロック活動の強化と合わせ、分担金の納入をきっちり行なうことが急務となっています。
2. 87年度組織方針
今年度の組織方針は、後に述べる「単一組織化に向けた規約改訂作業」について、各ブロック・各機関で討論を行なうことが第一と考えます。よって、各々の方針は簡潔に記し、規約改訂委員会で検討された内容を詳しく提起していきたいと思います。
?@ 各ブロック活動・各小委員会活動・各機関活動・財政
各ブロック活動は、総括事項を踏まえ、とりわけ中四ブロックの分離と九州ブロックの再建をぜひとも成し遂げたいと考えます。また個人会員制を積極的に導入し、将来の単一組織化へ向け、準備を進めます。
各小委員会活動は、赤堀・施設・交通の小委員会は引き続き活動の活性化を図り、その他の小委員会でも可能なところから再建を行ないます。今年は「障害者差別実態
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白書づくり」がかなり具体的に展開されますので、プロジェクトとの共同作業も強化します。
各機関活動については、いずれも「単一組織化に向けた規約改訂作業」を目的意識的に遂行します。また理論強化委員会の成果を全障連運動の発展に結びつけられるよう、討議内容を各ブロックにおいても学習していきたいと思います。全国出版部は継続して月1回発行を目指します。
財政については、各ブロックが完全納入し、また全国事務局としての財源確保のあり方を検討します。
?A 単一組織化へ向けた規約改訂作業について
この間、規約改訂委員会で論議されてきた内容を以下に提示していきたいと思います。
(1)単一組織の必要性
私達全障連の運動形態は、結成以降11年間で大きく変化してきたと言えます。結成時には、全国青い芝の会と関西障害者解放委員会が呼びかけ団体になり、数多くの個別闘争を担う団体が、全障研を乗り越え政府―支配階級と対決する障害者解放運動の全国潮流形成のため、一同に会しました。このことはまさに障害者解放運動の歴史上、画期的なできごとだったのです。
その後の各団体の闘いの中で、勝利的に解決を勝ち取ったり、あるいは更に新たな展望を求め組織形態を変更していった個別闘争も多々あります。これらはもちろん闘いの成果なのですが、その一方で団体連合としての全障連の構成要素が減少してきていることも残念ながら事実です。この現象は真剣に見ておく必要があるのです。各ブロックの報告にも明らかなように、ブロック活動の中心は結成時のように個別闘争を担う団体ではなく、むしろ個人個人の障害者であり、それも地域交流集会等にはこれまでの活動家層とは異なる巾広い層の結集が見られます。すなわち、全障連を担う新たな障害者の立ち上がりが生まれ、グループ・団体を通した参加から障害者一人一人の直接的な関わりに、形態が大きく変化してきていることが明らかです。
このように、全障連運動の組織的実情からしても、団体連合から諸個人が参加する単一組織への変更は急務なのですが、その必要性は単にそういった主体状況にのみあるのではなく、私達を取り巻く客観情勢からも要請されています。つまり、この間基調でも提起してきている日本型福祉社会―地域管理体制との対決、そして勝ち抜く組
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織戦の展開のためには、まさに各地域の特性に応じた運動が担える、柔軟かつ責任体制の明確な組織づくりが不可決になってきているのです。これこそ文字通りの地域に根ざした組織づくりです。
以上簡単に触れたように、私達の組織実情が団体連合と言う枠ではもはや展開し切れなくなっていること、更には体制との組織戦に備え地域に根を張った組織づくりが必要なこと等から、従来の団体連合から諸個人の結集する単一組織への転換が今、求められているのです。以下に述べる規約改訂案はこのことを大前提としており、不毛な「組織いじり」では決して無いことを確認しておきたいと思います。
(2)単一組織へ向けた基本的立場
では次に、単一組織へ向けた基本的立場について、もう少し突っ込んで提起したいと思います。
その第1は、全障連の活動に何等かの形で参加していた、あるいは現在関わっている障害者の再登録と言ったことに終わらせるのではなく、全障連運動の全体的方針の基、運動の強化・発展につながるものでなくてはならない、ということです。
第2は、全障連に結集する障害者一人一人が運動に責任を持ち、反権力・反差別の地平を堅持しつつ日本型福祉社会と徹底対決し、地域に点在する多くの障害者仲間と固く結びつき、地域変革の主体として存在し得るものでなくてはなりません。その為には、地域の実情・実態をしっかりと把握し、全障連の方針ときちっと結びつき実践できる組織体制が求められます。その単位は行政区とするのが妥当と考えますが、当面都道府県支部とし、支部構成人数の最低単位は5名とします。
第3は、運動に責任を持つということと、各地域の実情を全障連全体に反映させていくという趣旨から、代議員制をとります。支部毎に、構成員5名に1名の割で代議員を選出し、選出された代議員の大会を、これまでの全国交流大会と別に開き、そこで運動方針の論議と決定を行ないます。また代議員の中から中央執行委員を選出し、中央執行委員会を開きます。
第4は、現在他の団体やグループに所属している場合、そことの2重加盟を原則として妨げないものとします。
第5は、全障連結成以降この間論議を続けてきた健全者の位置付けに関し、一定の整理を図ります。健全者と障害者との差別―被差別の立場性の違いをふまえた信頼関係を築きつつ、共生・共闘を相互に目指しまた点検します。その上で健全者につい
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て、運動主体の問題として代議員・執行委員の被選挙権を認めない、意志決定権の問題として支部構成員の過半数を越えることはできない等の、一定の条件をつけ参加を認めることとします。
第6は、財政基盤確立の為、会費を支部毎に会員個人から徴収し、その半額を支部構成員数に比例して、中央執行委員会へ納入することとします。
以上の基本的立場を踏まえ、次に規約改訂案を提起します。今大会及び各ブロックに持ち返っての充分な討議を御願いします。私達は、今まさに全障連運動の新たな飛躍・発展を勝ち取る歴史的段階にある、そのことを皆さんに強く訴え、単一組織化へ向けた作業を共同したいと思います。
(3)規約改訂案の骨子
ア)参加資格は個人とし、各人は自分の居住する行政区(都道府県)の支部員となる。
イ)各支部は5名以上を単位とし、5名につき1名の代議員を選出する。
ウ)最高議決機関は代議員大会であり、通常は毎年全国交流大会前に1回開き、その他臨時大会を開くことができる。
エ)これまでの全国交流大会は各地の実践と運動の交流・討論、及び解放理論の研究・協議の場とする。
オ)中央執行委員会は代議員大会で選出され、3役及びその他の執行委員からなり、年数回開く。
カ)中央執行委員会の役職は委員長、副委員長若干名、書記局長、同次長、総務・財政・組織・教宣・共闘の各部長からなる。また別に監査委員を2名おく。
キ)会費は各支部毎に徴収し、その内の半額を支部員数に比例して、中央執行委員会へ納入する。
ク)健全者及び親に関しては、一定の条件をつけて参加を認める。具体的には代議員・中央執行委員の被選挙権を認めないこと、及び支部構成員の過半数を越えないこと。
編集人=全国障害者解放運動連絡会議 全国出版部
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作成:
山口 和紀