『全障連』No.67
last update:20220704
■しかく文字起こし
表紙
KSK No.67
全障連
全国障害者解放運動連絡会議
写真省略「『竹中直人の放送禁止テレビよくやった』差別ビデオ糾弾闘争(12・26=喰始氏・WAHAHA本舗との確認会)」
一九八七年三月一六日発行(毎月二回一・一五の日発行)KSK増刊通巻七八号 一九八四年八月二〇日 第三種郵便物認可
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赤堀差別裁判糾弾闘争
3・8全国総決起集会に全力結集を!
検察側の再審つぶし攻撃を許すな!
差別実態を強める精神衛生法改「正」の本質を見抜き、共生・共闘の闘いを強めよう
写真省略(校正者注:人々が結集し、訴えている様子)
昨年五・三〇再審開始決定から九ヶ月が経過し、東京高裁における抗告審も検察側「理由補充書」提出をもって、棄却か再審確定かをめぐる闘いは重要な局面を迎えている。獄中の赤堀さんの、検察側即時抗告への怒りと憎しみ、再審確定への不屈の闘いに対する、宮刑の獄中弾圧は維持・強化され、文字通り「生還」に向けた闘いの強化が法廷―獄中を貫いて決定的に問われている。
また、精神衛生法改悪案の今春国会上程、拘禁二法(刑事施設法・留置施設法)の再上程策動が、「人権擁護」や「処遇改善」等のデマ宣伝をもって強行されようとしている。
こうした中、来る三・八赤堀全国集会が赤堀中央闘争委員会主催により開催される。多くの仲間が結集し、敵の攻撃の本質を見抜き、司法幻想を捨て、デマ宣伝にまどわされることなく、今春期闘争体制を固め、差別裁判糾弾闘争強化を勝ちとろう!
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1? 赤堀さんの近況=赤堀さんの強いよびかけに連帯し 差別裁判糾弾闘争の大衆的高揚を全力で!
赤堀さんは獄中より、「私ヲカナラズシエンシテクダサイ、サイバンニカツウヒマデハ、ムザイハンケツヲカチトルヒマデハマジメニシンケンニ、一生ケンメイニ協力シエンヲシテ下サイ」と、年頭アピールを発している。
獄中状況は再審開始決定後も何も変わっていない。新規文通・面会禁止は継続され、暖房設備や医療処遇改善要求は無視され続けている。五・三〇において「刑の執行停止」が決定されても、赤堀さんは「刑の執行のための拘留」と「死刑囚」処遇から解放されることなく閉じ込められている。
しかし、赤堀さんはとても元気で頑張っている。来たるべき再審裁判に向け、法廷闘争ー無実をつきつけるアリバイ・足取りの整理を再び強め、全国の仲間に傲を発している。今年はしもやけもなく体調もいいとのことだ。とはいえ、長期投獄と老齢で決して楽観はできないし、何よりも即時釈放を実現するのが最重要課題である。
仙台では、闘う会の仲間達が一日も欠かすことなく赤堀さんへの面会を行ない、宮刑を監視し、周辺住民への情宣を行ない、獄中弾圧強化を許さない闘いを展開している。昨年一二・一六には、多くの署名をもって要請と申し入れを行なった。この時に宮刑は「署名の数の力で当局にものを言うのは卑怯だ」と受け取りすら拒否し、処遇問題についても「当局はそのような解釈はしない」と改善の意志がないことを表明している。
ところで、昨年の総面会者数八九五名、今年の年賀状は二五〇で、いずれも一〇〇人程減っているとのことだ。獄中者にとって、外部とのつながりがきわめて大きいことを考えると気がかりである。とりわけ「年賀状がたくさん届いて生への希望がもてた」という「死刑囚」の思いを考えると、シャバとは違う年賀状の重みについて、私達一人一人が受け取めていかなければならない。
一二月八日に、検察側も「即時抗告理由補充書」を提出し、高裁の抗告審が重要局面を迎えている中、何よりも獄中の赤堀さんとの連帯・共闘の強化を軸に、検察側抗告の棄却―再審確定を一日も早く実現するために共に奮闘すること強く訴えたい。
今再び、あの憎むべき三・二決定を思い起こそう!そしてまたもや検察側が、無実の証拠を切り捨て、アリバイを無視し、法医学鑑定を利用して「精薄の赤堀ならやりかねない「自白と犯行順序の食い違いは赤堀の記憶違い」と、差別・予断と偏見で障害者抹殺をもくろむ本質的攻撃をしっかり見据えよう。三・八全国闘争にあたり、障害者差別と対決し、大衆的闘争の高揚を進める全障連の闘いとして、この重要局面を勝利すべく共に闘おう。
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2? 差別に基く『第二の三・一一再審棄却』を断じて許すな!検察側「理由補充書」を糾弾する
昨年五・三〇に再審開始決定がなされ、これに対して六・二に検察側が即時抗告した。いらい半年を費やし、一二・八には九八ページに及ぶ検察側「理由補充書」が東京高裁に提出された。その内容たるや、あの憎むべき七七年三・一一差別棄却を再現しようとする許しがたいものである。
要約すると、前半は五・三〇静岡地裁再審開始決定への「法医鑑定に関する判断は誤りである」と、犯行順序・成傷用器に関する地裁認定を批判し、「自白の信用性」を強調している。後半は、「法医鑑定(古畑)の結果が赤堀の自白と食い違うことをもって再審開始にするのは誤り。他にも赤堀=黒の証拠はいくらでもある」と、第一審以来の審理を繰り返し、再審請求棄却を迫っているのである。
あの憎むべき三・一一決定を思い起こしてみよ!第四次再審請求においてデッチ上げ「自白」を支えてきた古畑鑑定は、大田・上田鑑定によって犯行順序・胸部成傷用器をめぐり完全に崩壊させた。また外川神社の発見により、赤堀さんのアリバイを明確につきつけた。そこで静岡地裁は、古畑鑑定における「自白と犯行順序の食い違い」を認めざるをえなくなりながら
時(とき)の雷鳴(らいめい)
全国副幹事・楠敏雄
22 国際障害者年中間年、この期を戦線拡大のステップに!
正確に言うと、今年は、一九八三年を初年度とする「障害者の一〇年」の中間年にあたる。しかしながら我が全障連の仲間達は総じて「障害者年」に冷ややかである。その原因は「障害者年」に関するキャンペーンが、どちらミと言えば政府やマスコミの側から大々的に行なわれたとの感が強く、それは政府ー支配層による融和と統合のための政策の一環に他ならないとの認識に基いているからではないだろうか。そして少なくとも日本の現状を見る限り、我々のこのような分析は的中しており、しかも政府のこうした意図は残念ながらかなりの効果をあげていることも認めざるをえなところであろう。
しかし仲間達!我々はいつまでもこんな風に無関心を決めこんでいていいのだろうか。もちろん我々は政府ー権力の抹殺攻撃との対決や、障害者の地域・職場・学校などにおける諸権利を取りもどすための課題を数多く抱えている。だが、と私はあえて言いたい。我々は先日の組織強化合宿において、障害者運動に
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(校正者注:以下、p1〜「赤堀差別裁判糾弾闘争」の前頁「そこで静岡地裁は、古畑鑑定における「自白と犯行順序の食い違い」を認めざるをえなくなりながら」から続く文章)
も、「赤堀の記憶違い」「精薄の赤堀の言うアリバイは認められない」「古畑鑑定が崩壊しても『大罪をした』という赤堀の発言等があり、自白は信用できる」として、新証拠を切り捨て棄却したのである。ここで検察側―裁判所は、古畑鑑定という「科学的装い」の内に隠してきた差別裁判の本質を露骨に現わにし精薄の赤堀なら殺りかねない」という予断と偏見のみで「有罪=死刑」とする、障害者抹殺宣言ともいうべき攻撃に出たのである。
私達は、一二・八検察側「理由補充書」が狙っているものが、この三・二棄却の再現であることをしっかり見ておかねばならない。
3? 差別裁判の本質=『障害者抹殺宣言』をしっかり見つめ、再審確定ー即時釈放を勝ち取ろう
そもそも殺人事件という刑事裁判においては、実行行為の有無や、アリバイ証拠こそが争点となるべきものである。しかし、この裁判においては赤堀さんと犯行を結びつけるものは「自白」のみであり、その「自白の信用性・任意性」をめぐってはあたかも法医学鑑定に争点があったか
(校正者注:以下、前頁「時の雷鳴」の「我々は先日の組織強化合宿において、障害者運動に」から続く文章)
おける多数派へと飛躍することを全体の総意で確認した。組織戦に勝利するためには、時には敵のワナを承知の上でそのワナに接近し、あるいはワナにかかったような装いをしてそれを食破り、そこにかかっている仲間を奪還するような危険をも冒さねばならないのである。
障害者の多くは今なむ国障年にかなりの期待を抱いている。それは彼等が依然としてすぐにでも改善を要する厳しい被差別の実態を強いられているからである。確かに国連は帝国主義国のムキだしのエゴと米ソのかけひきの場に成り下っているかの印象を我々に与える。しかし「国障年に関する長期計画」や「世界行動計画」を起草し採択した勢力は、決して帝国主義諸国の政府代表ではない。その内容をよく読んでみると実に的確で、我々の立場と一致する部分が随所に見られる。そして日本政府は、自分達に都合の悪い部分を無視したり、翻訳上のまやかしを行なったりしているのである。
我々はもっと積極的にこれらを活用すべきである。少なくともその内容で一致できる団体や個人とは大胆に共闘を組み、運動の広がりを図るべきではないだろうか。もちろんいかなる差別を許さず、現代社会の根本的変革をめざす我々の立場と闘いは断固堅持しなければならないし、また共闘する相手に過度の幻想を抱くべきでもない。しかし、とにもかくにも敵の先手を打つ積極的方針が今求められているのである。そしてこの一〜二年はその絶好のチャンスだと私は確信しているのである。
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(校正者注:p1〜「赤堀差別裁判糾弾闘争」の前頁「その「自白の信用性・任意性」をめぐってはあたかも法医学鑑定に争点があったか」から続く文章)
のごとく、歪曲し、赤堀さんの訴えは全て「精薄の赤堀の言うことはあてにならない」お切り捨ててきた。そして、確定死刑判決以来、裁判所の「赤堀=黒」との認定は予断と偏見ぬきには考えられないにも関わらず、その本質を隠すために法医学を持ち出してきたのであり、その構造は貫き通されているのである。
八三年五・二三「差し戻し決定」は、「自白を裏付けていた古畑鑑定が新鑑定によって揺らいだ」、だから「自白の信用性・真実性につき検討すべき」と、差し戻し審の争点を法医学に切り縮める方向を与えた。だからこそ五・三〇再審開始決定は、これを引き継ぎ、より巧妙に悪質に、しかし追いつめられたが故の「灰色無罪」路線をもつ再審開始としたのである。
つまり、犯行順序・成傷用器をめぐってのみ「自白に疑問あり」と、法医学論争において弁護側に軍配をあげ、それ以外については三・一一棄却と同様なのでである。凶器とされる『石』の発見経過=石沢証言に対しては「捜査方法」の問題にすりかえ、拷問については「不当な取り調べはなかった」と切り捨て、アリバイ主張については「教唆の疑い」とまでまで言ってのけた。そして、五・二三でも五・三〇でも、「自白が食い違うのは精薄の赤堀のせい」と、矛盾は差別で乗りきるという構造を貫いているのである。
これは第一審いらいの一貫した、精神鑑定に基く差別的人権規定によるものであり、「赤堀=黒」の心証形成(判断)を支えてきたのだ。ところが、この精神鑑定は昨年五月、鈴木喬鑑定人自身によって「差別的であり無効である」との上申書が提出されている。そしてあろうことか、これについても一言だに触れずに、意図的に抹殺しているのである。なぜなら、この精神鑑定が差別裁判強行に大きな役割りを果たしてきたがゆえに、「無効化」は敵にとって決定的痛手となるからである。
このような裁判の構造と経過を見るなら、高裁抗告審において逆転決定の恐れも充分にあることを考慮しなければならない。そして、デッチ上げの全体を暴くアリバイ、足取り、強制ニセ「自白」=拷問をめぐって、赤堀さんと共に法廷内外の差別裁判糾弾闘争で徹底して明らかにし、裁判所にも社会的にも突き出して、早期再審確定―即時奪還を実現しなければならない。
4? まやかしの精神衛生法改「正」反対!
「精神障害者」の差別実態を強化する新たな攻撃を許すな!
昨年一二月二三日、公衆衛生審議会・精神衛生部会は 「精神衛生法改正の基本的の方向(中間メモ)」を発表し、同審議会は今月中にも厚生省に「答申」を行なおうとして
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いる。そして政府―厚生省はこれを受けて、精神衛生法改悪案の今国会への上程へと一挙に進もうとしているのだ。
現行精神衛生法の差別=治安法的本質が問題
この「中間メモ」が発表されて以来、その評価をめぐって様々な意見・論議がでている。そこで、私達が評価する上で基本としなければならないのは、差別を生みだし固定化する現行精神衛生法を限りなく撤廃へと向けていく視点にたって、いかなる内容になっているかという分析である。
ところで現行精神衛生法が?@強制入院規定、?A「精神障害者」を見つけだし監視する規定、?B収容所=精神病院を確保する規定と、「精神障害者は危険な存在」という前提のもとに予防拘禁・強制医療を合法化し、「病」者を差別の極に陥れているものであることは今更言うまでもない。であるなら、少なくとも「改正」を語るのであれば、これらの最も基本的・原則的な問題点に手をかけねばならない。ところが「中間メモ」はこれについて全く欺瞞的に打ち出しているのである。
「中間メモ」は「指定医」制度・行動制限を始め差別実態の維持・強化をめざす
「中間メモ」の『第二・基本的な考え方』では、「患者の個人としての尊厳を尊重しその人権を擁護し」や、「生活の場に密着したところで適切な医療」「できるだけ本人の意志に基く入院医療」「社会復帰、社会参加の推進」など、なるほど言葉としては出されている。しかしこれは、この間の日本の精神医療に対する国内―国際的批判に応えざるをえない状況があったからである。これらの美辞が、では具体的にはどう扱われていくかを見ていく。
そこで問題は、『第三・当面改正すべき事項』で、実態としてその内容を実現しうるものとなっているかである。まず、『入院形態の見直し』では、「自由入院の法制化」を唄っているが、「病状によっては他の入院形態へ移したり」「七二時間程度の退院制限」を設け、また「医療または保護のために行動制限を行なう」としている。つまり、「自由入院の法制化」とはいうが、「強制入院への移行」も可能であり、「行動制限」の明文化により自由入院においてすら強制入院同様の拘禁・強制医療を可能にできるという落し穴がある。むしろ法制化することで、本人の自由意志に反する強制力を持つものですらあるのだ。
*『同意入院の見直し』では「指定医の診断を要件。定期的チェックを制度化」して存続させる。また「早期治療の観点から、扶養義務者の同意で一定期間の入院を認める措置」と、むしろ同意入院の措置化をも狙っている。
*『措置入院の適正化』においても、「措置の解除にあたっても指定医の診察を要件とする」と、措置解除をより厳格化している。さらに『精神科救急への対応』として、「指定医の判断により七二時間程度の入院が可能となるような制度を設ける」ということ
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は、「救急」を名目に知事・保護義務者の要件なしに強制入院を拡大するという治安的強化を推し進めようとするものに他ならない。現在は主治医と患者の信頼関係で判断されてもいる入退院についてすら、指定医の介入が行なわれることになり、これまでの解放医療の運動に圧力をかけてくるだろう、きわめて権力的・強制的体制を強めるものである。
*さらに『入院患者の人権確保』においては、「定期的な病状報告の実施」や「都道府県知事に対する患者・保護義務者からの調査請求の規定」が、あたかも入院患者の人権を保障するかのように出されている。しかしかえって『行動制限規定の明確化』によって人権は犯されかねないのだ。これは信書の発受信以外は面会・電話などの連絡・交通が明文化されておらず、厚生省「ガイドライン」すらをも後退した内容になっている。こうした状態で入院患者はいったいどうやって院内の人権侵害の実態を訴え、自らを守れるというのか。つまり言葉だけの「調査請求」であり、同時に外からも監視し告発する方法も閉ざされているのである。したがって行動制限撤廃を前提にしてこそ「調査請求」の意味があるのであり、その逆はごまかしでしかないことを知っておこう。
*この問題は次の『審査期間の設置』についても同様のことが言えるのである。つまり「入院継続の要否に関して審査機関を都道府県に新たに設ける」としているのだが、患者の人権が保障されてない中では、「審査機関」が設けられても実態が変えられようはずがない。
*『精神衛生鑑定医制度の見直し』では、「精神科医実務経験の見直し」「研修の要件」が新たに加えられている。これは、今の鑑定医業務に加え「行動制限・退院制限・同意入院についての判断」という権限の拡大を打ち出したものだ。そしてこの本質は、研修の名によって医師の国家統制を強化し、「精神障害者」の立場に立った医療をめざす医師を排除していくことを狙っていると考えねばならない。
*また最後の『その他』の項においても、「大都市特例」の設置をもって、現在の山谷や釜ケ崎のよせ場労働者に対する強制入院の実態をより強め、今後の大量失業時代にそなえた治安管理―地域管理網
精神衛生法撤廃!全国連絡会議の結成集会に参加して
二月一四日・東京
(報告文・K)
政府―厚生省による精神衛生法改「正」案の国会上程がもくろまれている中で、先日二月一四日、東京で「精神衛生法撤廃全国連絡会議」の結成集会がおよそ二〇〇名余りの結集で勝ちとられた。
「撤廃連」の中軸部隊は、これまで赤堀差別裁判糾弾の
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闘いや、保安処分粉砕闘争を進めてきた諸戦線であり、「撤廃連」の主要目的はその名の示す通り現行精神衛生法の撤廃と新たな改悪案の国会上程を阻止することである。
この日の集会は、全国「精神病」者集団の大野さんと八王寺・赤堀さんと共に闘う会のメンバーの司会で進められ、まず最初に事務局からの基調報告が行なわれた。基調においては、現行精神衛生法のもつ治安法的性格、および「精神障害者」に対する差別的内容が暴露され、さらに昨年一二月に精神衛生審議会から出された「中間メモ」の欺瞞性が鋭く提起された。すなわちこの「メモ」は、一見患者の意思を尊重し人権を守るかのようなポーズをとりながら、実際には「精神障害者」自身の意見に耳をかそうともせず、また患者の入退院の決定をいわゆる「指定医」に委ねることや、患者の行動制限を合法化せんとしていることなど、患者にとってはこれまで以上の強制医療を強いられると規定している。
基調報告の後、「病」者集団・赤堀中闘委・宇都宮病院を告発し解体する会などの主催団体からの発言がなされたが、中でも宇都宮病院をめぐる闘いの報告は、病院当局および厚生省・県などに対する参加者の怒りをよりいっそうかきたてる内容であった。休憩後は仙台を始めとする各地の闘う会や、「病」者自身からの決意表明がなされ、最後に事務局からの行動提起と大会宣言が採択された。とりわけ行動提起においては、この会が単に法律の粉砕の課題を取りあげるにとどまらず、「精神病」者が地域で生きていける共生・共闘の実践をいかにして作りだしていけるかが問われているとの訴えがなされた。
集会を通して、政府―厚生省の差別性や、「中間メモ」の欺瞞的本質が余すところなく暴露され、闘う決意が明確に打ち出されたが、行動提起の中で言われた内容が今だ不充分に感じられた。権力の攻撃と地域住民の差別と偏見、そして自らの病状に呻吟する「精神障害者」をどのように支え防衛しうるのか、この課題を明らかにしえぬ限り精神衛生法体制を真に打ち破ることにはならないであろう。我々全障連としてもぞうした点をふまえつつ早急に明確な方針を打ち出し、具体的取り組みに着手することが求められている。
(校正者注:p1〜「赤堀差別裁判糾弾闘争」の前頁「今後の大量失業時代にそなえた治安管理-地域管理網」から続く文章)
の強化を狙っていることが見てとれるのだ。
障害者全体を貫く分断―体制内統合の攻撃と闘い、自立と解放の戦線を強めよう
このように「中間メモ」は強制入院(医療)や監視・通報制度・行動制限など、現行精神衛生法の差別に基く治安管理の本質にはなんら手をつけないばかりか、その維持―強化を狙ったものであることが明白である。したがって、「今よりはよくなる」という幻想は持てず、返って実態は患者にとって厳しくなると考えなければならない。「人権保障」や「自由意志に基く入院医療」などの美名のもと、逆に反保安処分―現行精神衛
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資料=厚生省が公衆衛生審議会に諮問した精神衛生法改「正」案要網 (二・二五、朝日、朝刊)
厚生省が公衆衛生審議会に諮問 した「精神衛生法改正案要綱」の要旨、次の通り。
第一法律の名称、目的
1 精神保健法に改める。
2 精神障害者の医療、保護を行い、その社会復帰の促進、発生の予防、その他国民の精神的健康の保持、増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進、国民の精神保健の向上を図る。
3 国、地方公共団体の義務に、社会復帰施設の充実、精神保健に関する調査研究の推進、国民の精神保健向上のための施策を講じることを加える。
第二入院制度
1 入院形態
(1)精神病院の管理者は精神障害者を入院させる場合、本人の同意に基づいて入院が行われるよう努めなけれはならない。
(2)自らの入院を同意する精神障害者の入院形態として任意入院を法律上位置づけ、次の事項を規定する。
ア 精神病院の管理者は、入院に際し、任意入院者に対して退院などの請求に関することを書面で知らせ、自ら入院する旨を記載した書面を受けなけれはならない。
イ 任意入院者から退院の申し出があった場合は、その者を退院させなければならない。
(3)措置入院
ア 指定医は、措置入院の必要があるかどうかを判定するに当たっては、厚生大臣が定める基準によらなければならない。
イ 措置の解除、仮退院に当たっては、指定医の診察を要件とする。
(4)同意入院
ア 呼称を医療保護入院に改め、指定医による診察を要件とする。
イ 家庭裁判所による保護義務者の選任がなされるまで、扶養義務者の同意により四週間を限り入院させることができる。
2 入院手続き
入院を行う場合、精神病院の管理者は患者に対し、次の3−(4)の退院などの請求に関する事項を書面で知らせなければならない。
3 入院患者の処遇
(1)信書の発受、都道府県その他の行政機関の職員との面会、その他の事項で厚生大臣の定めるものについては行動の制限はできない。患者の隔離その他の著しい行動制限であって厚生大臣が定めるものについては、指定医が必要と認める場合でなければ行うことができない。
(2)厚生大臣は、精神病院に入院中の者の処遇について必要な基準を定めることができることとし、精神病院の管理者は、この基準を順守しなければならない。
(3)精神病院の管理者は、措置入院者、医療保護入院者の症状を、定期に都道府県知事に報告しなけれはならない。
(4)精神病院に入院中の者、またはその保護義務者は、都道府県知事に対し、退院または処遇の改善のために必要な措置をとるよう命ずることを求めることができる。
第三 精神医療審査会
1 都道府県に、精神医療査会を設置する。
(1)審査会の委員は五人以上十五人以内とし、精神障害者の医療、法律、その他の学識経験を有する者のうちから、都道府県知事が任命する。
(2)審査会は、精神医療学識経験者から任命された委員三人、法律学識経験者から任命された委員一人、その他の学識経験者から任命された委員一人をもって構成する合議体で審査の案件を取り扱う。
2 知事は次の場合には、審査会に審査を求めなければならない。
(1)定期の報告、医療保護入院者に関する入院時の届け出を受けた場合。その入院の必要があるか否かに関する審査。
(2)退院または処遇の改善のための請求を受けた場合。その入院の必要があるかまたはその処遇が適正であるかどうかに関する審査。
3 審査会は、必要があると認めるときは関係者の意見を聴くことができる。また前項2ー(2)の審査をするに当たっては、審査の請求者と入院している精神病院の管理者の意見を聴かなけれはならない。ただし、審査会が必要ないととくに認めた場合はこの限りでない。
4 知事は、審査結果に基づき、その入院が必要でないとされた者を退院させ、または精神病院の管理者にその者を退院させることを命じ、もしくはその者の処遇の改善のために必要な措置をとることを命じなければならない。退院などの請求を行った者に対しては、審査の結果、これに基づきとった措置を通知するものとする。
第四 精神保健指定医(略)
第五 精神病院に対する監督
(校正者注:以下、前頁「「人権保障」や「自由意志に基く入院医療」などの美名のもと、逆に反保安処分―現行精神衛」
生法撤廃を闘う戦線の分断ー解体攻撃であり、日本の精神医療に対する世界的批判をかわすためのまやかしにすぎないことをしっかりとふまえておこう。
一方、政府ー厚生省も今年に入ってから、「差別欠格条項見直し」や、身体障害者雇用促進法における「精神障害者」を含む対象拡大など、「精神障害者の人権保障、社会参加のために努力しています」とばかりのキャンペーンをしているが、差別の禁止・撤廃のための強制力を持たない限り実態は改善されないのだ。このように「精神障害者」対策全体を通して、それはまた障害者全体に貫かれている攻撃でもあるが、さわりのいい理念を出しながらも実態としては差別・管理・支配の強化がもくろまれている。
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5? 三・八赤堀差別裁判糾弾! 全国総決起集会に結集し、今春期闘争を闘い抜こう
赤堀さんの状況も、精神衛生法体制下での「病」者の状況も、きわめて厳しい実態におかれている。政府ー支配層は戦時体制の確立を急ぎ、差別糾弾闘争そのものを真っ向から否定し、「改正」という名の新たな攻撃を次々と打ち出し、被差別者の闘いを孤立に追い込もうとしている。こういう中でこそ差別を許さぬ共生・共闘の内実が問われ、それ抜きには闘いの前進もありえない。「病」者・障害者の主体を奪い・無視した立場と運動ほ、必ずや差別攻撃にからめとられ、その攻撃に屈服してしまうことをしっかりふまえ、共生・共闘ー三社共闘の原則を貫き、闘う陣型を固めよう!
三・八赤堀全国総決起集会に結集し、差別を見抜き、差別を許さぬ立場から敵の攻撃をはねかえす全障連の今春期闘争の強い意志統一を勝ち取ろう!
集会要綱(校正者注:「集会要綱」下線)
日時=3月8日(日)
午前11時〜集会
午後三時〜デモ
場所=日本橋公会堂(東京都千代田区)*地下鉄「茅場町」「人形町」
主催=赤堀中央闘争委員会
〈注意〉?@昼食持参で参加してください。?Aデモがありますので防寒・雨の対策をしてください。
地図省略(校正者注:各地下鉄から集合場所までの説明が入った地図)(校正者注:「集会〜地図」四角囲み)
(校正者注:以下、前頁「資料=厚生省が公衆衛生審議会に諮問した精神衛生法改「正」案要網」の「第五 精神病院に対する監督」から続く文章)
規定
1 厚生大臣または知事は、必要があると認めるときは精神病院の管理者に対し、入院中の者の症状、処遇に関し報告を求め、立ち入り調査を行うことができるとともに、管理者または入院についての同意をした者に対し、その入院のための必要な手続きに関し、報告を求めることができる。
2 厚生大臣または知事は、精神病院の管理者に対し、第二ー3ー(2)の厚生大臣が定める処遇の基準に適合しないと認めるときは、その処遇の改善のために必要な措置を命ずることができる。
第六 精神障害者の社会復帰
1 精神病院の管理者は、入院中の者の社会復帰の促進を図るため、その者の相談に応じ、必要な援助を行い、その保畿義務者らとの連絡調整を行うように努めなければならない。
2 精神障害者社会復帰施般
(1)精神障害者の社会復帰の促進を図るため、地方公共団体、社会福祉法人は、次に掲げる精神障害者社会復帰施設を設置することができる。
ア 精神障害者生活訓練施設
イ 精神障害者授産施設
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重朗君 6中のみんなが待ってるぞ!(校正者注:「6中のみんなが待ってるぞ!」二重下線)
石川重朗君の転校闘争(静岡)
昨年40日間の闘いて勝ちとった『合意書』の実現にむけ清水市教委闘争を強めよう!
挿絵省略
はじめに
昨年の四十日間のテント闘争によって、私達は、次のような内容の合意書を市教委との間に交わしました。
「だれでも、共に生き、共に学び、そしてみんななかよく助け合い、はげましあっていくそんな社会をつくりあげなければならない。」ということを前文に、
一、六中特殊学級等で学ぶ。
二、六中特殊学級への転籍について検討する。
そして、その検討の時期は今年三月をメドにするというものでした。
重朗君の六中生活は
重朗君が昨年の五月、六中での中学生活をスタートしてから、すでに半年以上を経過しました。盲学校の先生がついての授業ですが、六中の先生方、とりわけ特殊学級の先生と生徒たちが重朗君を受け入れる姿勢を示してくれました。授業は主に体育と作業です。同じクラスで関わることを通して、一緒に作業をしたり重朗君の出来ないところを自然に手伝うといった、あたりまえの関係が積み上げられています。
この結果、昨年三月まで飯田東小で学んだときとはまったく違う集団生活を、しかも、いわゆる「障害の程度や種類」(市教委が出来ない理由としてよく言う言葉です)が違う六中特学という集団の中で過ごしてきたのです。
このことは、重朗君と彼らが一緒にいることによって、お互いが学びあった事実をひとつひとつ確実に創り上げてきました。
たとえば、ダンボール型ぬきの作業や、学校行事に参加したときの重朗君と特学の生徒達の対応を見れば、同じクラスの仲間としての意識がめばえ始めているといっても過言ではありません。そして特学の生徒達は重朗君を受け入れようという姿勢をもち、指導内容や方法に工夫をすれば、自分達と一緒に学校生活が過ごせるということを身をもって証明してくれました。
さあ、あとは転籍だ!
昨年のテント闘争のとき、市教委は重朗君の飯田中入学を認めない理由として、重朗君の障害の種類と程度のことを問題にしました。ところが、重朗君が六中の特学に通うことによって、集団の中で学ぶとき障害の種類や程度は問題にはならなかったのです。むしろ、集団というものには障害の程度を乗り越える力があったのです。
一方、先生がたはどうでしょうか。六中特学の先生
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写真省略「六中(特学)で段ボールの型抜きをしている重朗君」
は、今よりもっと重朗君がかかわれる場面を増やそうとしているようです。盲学校の先生は、言われたことをやるといった具合であまり積極的には見えません。
先日、お父さんが盲学校の先生に「これまでの指導の場面でどうしても盲学校の教師でなければならないと言うことはあったのか」という質問をしたそうです。そうしたら「どうしても盲学校の教師でなければならないということはない」と答えています。
このように、重朗君が六中で学ぶときにどうしてもいわゆる専門的な指導が必要ではないということが明らかになりました。もはや、市教委に重朗君の転籍を拒否するようなものは何もないのです。
地域で「共に生きる」ことをめざして
昨年のテント闘争は、市教委に共生・共育の論理を認めさせただけではありません。地域の中で「障害者も健常者も共に生きる」ことをめざす人達が集まって、清水「共に生きる家」建設をめざす会(仮称)も発足しました。
すでに、牛乳パックの回収、手すきハガキ(牛乳パックを利用)の製造・販売古着の販売などの活動を開始し、今までのつながりの中から、定期的な出店も行なうようになりました。特に手すきハガキについては市内の喫茶店等にも置かせてもらうようになったため、製造がおいつかない状態です。
今後さらに活動を展開していくためにいろんな人が自分の出来る範囲でかかわれるようによびかけ、会員を募っています。
重朗君
六中のみんなが待ってるぞ
石川さん親子が「近所の子供達や弟と一緒に学校にいきたい」と静岡盲学校から地域の飯田東小学校へ転校を希望してから八年が経過しようとしています。
この八年間の闘いは、静岡県の教育行政が障害児に対しては、差別・選別の行政であったことを明らかにしてきた闘いであり、同時に共生・共育を認めさせる闘いでもあったわけです。そして、私達は昨年、市教委に共生・共育の論理を認めさせました。
ところが、市教委はすでに転籍の準備に取りかからなければならない時期にもかかわらず、いまだ私達と転籍に関する話し合いすら行なおうともしません。
重朗君を受け入れるのに困難な理由は昨年の闘いの
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中で明らかになりました。その困難な理由は全て受け入れる市教委の側にあることも明らかになりました。したがって、市教委はこの一年間でその課題を解決し、重朗君を『受け入れる』という決断さえすればよいのです。もし解決していないのならば、重朗君を受け入れてみてから解決すればよいことなのです。
一方、重朗君と六中の生徒達との関係はこの一年間で驚くほど自然なものとして積み上げられてきました。私達は、この事実を市教委につきつけ六中転籍を獲得し、さらには地域の飯田中への転校を勝ち取っていかねばなりません。
各地の取り組み?@
広島県で共育・共生を考える県民集会を企画
昨年、広島では『共育・共生をすすめる広島県連絡会議」が作られ、第一回目の集会では浜根一雄氏に講演していただきました。私達の会もこれに関わり、問題提起を青い芝の会、「障害児の就学・転学を考える会」とともに行ないました。広島では初めての試みでもあり、参加者も一〇〇名くらいを予定していましたが、当日は二五〇名を越える人々が集まり大盛況でした。
この「共育・共生を考える広島県集会」の二回目を、三月八日に予定しています。今回は金井康治君のお母さんに講演いただき、康治君や会のメンバーとの交流を予定しています。また午後からは県内各地から五団体の代表を招きパネルディスカッションを行なう準備をしています。
これとは別に、今年一月二一日から「豊かさと繁栄の中で、差別は今」という視点で、『いのち、愛、人間展』を実行委員会で行ない、私達も参加しました。県内二ヶ所で(広島市・福山市)、二回に分けて市内のデパートで開催し、マスコミ関係でも取り上げられて、一一日間で一万人を越える参加者を得ることができました。
こうした広がりの中で、私達は赤堀さんの再審開始にむけて署名集めに力を入れています。昨年は一万一千名もの署名を集めることができたので、今年はそれを越える署名をと頑張っています。三・八全国集会では全国のトップになろうと考えています。全国の仲間へ...広島を抜くつもりで署名活動に頑張り、何としても再審を開かせ、赤堀さんを一日も早くシヤバへ迎えるため、共に障害者解放・赤堀奪還にむけて様々な広がりを作り共に闘いましょう。
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三・八 共育・共生を考える広島県集会(案内)
地域で共に生きる
さまざまな子供や人々が寄り、集い、生活することは、人間にとってごくあたり前の本来的に楽しいものである筈です。
それを、例えば母子保健法の改悪に見られるように、障害児の出生予防に力を入れたり、「障害児が普通学校で学ぶことは、教育の根幹を揺るがす大事件である」などと、さらに差別と選別を推し進めていこうとする体制があります。
このような中で、一方、共に育ち共に生きる運動も、着実に広がってきています。金井康治君親子とその仲間達の運動は、普通校への就学権闘争に大きな弾みをつけるものでした。
今回は、午前中を東京の金井律子さんの講演、午後を県内各地からのパネラーを中心としたディスカッション、又就学・教育相談コーナーを設けるなど多彩な集会と致します。
託児所も広く用意します。みなさん、共に語り合いませんか。
時=三月8日(日)一〇時〜一五時
所=広島県社会教育センター
(電話=〇八二・二六二・二四一一)
参加費=三〇〇円
連絡先=広島市東区戸坂くるめ木一ー七ー五 吉川あて (校正者注:「三・八〜吉川あて」四角囲み)
2月13〜15日、
施設小委員会からの報告
合宿会議・施設労働者交流会を開き、年度方針を確立
施設小委員会が去る二月一三・一四・一五日と、大阪市内・部落解放センターで開かれました。今回の施設小委員会では、一五日の施設労働者交流会を中心に、費用徴収問題に対する取り組みや、全障連『障害者差別実態白書づくり』の施設部門の検討などが議論されました。
施設労働者交流会は、事前連絡の遅れなど取り組みの不充分さもあって、労働者側の参加が六名と少なく、今一歩白熱した議論とまではいたりませんでしたが、五月中に京都で予定されている「施設障害者と福祉労働者の施設問題を考える全国集会」への参加を始め、次回一〇月の東京での交流会設定に向けて話し合いが行なわれました。この交流会については、参加労働者が「児」「者」[壱」「ろう」「肢体」「知恵遅れ」など様々な施設からで、微妙なところでの話しのまとめが難しく思われました。
交流会に先だって一三・一四日に行なわれた施設小委員会会議では、各地の報告の後費用徴収問題について議論が進められ、?@前回の奈良会議で確認した厚生省への白紙撤回要求行動を、全障連全体の協力を求めながら今秋頃
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写真省略(校正者注:会議している様子)
をメドに行なう。?A施設小委員会としての徴収金問題に対する見解を出す形で、現在の徴収金反対運動の問題性を明らかにする。?B徴収金制度撤回へ向けて「不払い」運動を広範囲に呼びかけることにしました。
福岡コロニーや清瀬療護園などの一部入園者はすでに「不払い」を行なっており、「不払い」者が多くなればかなり効果的な抗議になると思われます。現在、厚生省内部でも扶養義務者からの費用徴収には見直し論が出ており、いっそう闘いを強化し、徴収制度そのものを廃止するまで頑張る考えです。
『差別白書づくり』の施設部門については、家族の賛否も含めて論議が進み、各地の状況によって賛成・反対があり、内容項目についても多い・少ないなど、多数の意見が出ました。また、この『白書づくり』の?@意図、?A集約のし方、?B発表の形態などについて全国幹事の説明を求めました。その上で、?@施設内障害者との関係づくり、?A調査員を限定し調査手順を徹底する、?B調査票は内部資料として使う、?Cこの調査を通じて施設内の実態をより把握し取り組みの強化を図ると確認しました。そして調査は各地の状況にあわせ、調査項目も各地にあわせて巾広くすることにしました。
その他、今回の会議では、今年の全障連全国大会の基調の担当、分科会の方針(今年は分散会をなくす)も決めました。そして役員体制として代表・李(福岡)、会計・河本(山口)、機関紙編集・水口(松山)を選出しました。
施設小委員会ニュース(年三回発行)の定期購読者を募集しています。年間一〇〇〇円で、資料・会議の案内も送ります。
次回施設小委員会は、五月六・七・八日、京都で行ないます。
*連絡先=松山市中村町五丁目九の二五 水口方
電話=〇八八九−三三−三七八六
各地の取り組み?A
静岡県で『障害者と労働者の連帯集会』開催される
去る二月八日、ひまわり労働センター労働組合、静岡障害者自立センター、自治労静岡県本部の主催(静岡県評後援)で、『障害者と労働者の静岡連帯集会』が八〇名の結集で行なわれました。
この『障害者と労働者の連帯集会』は、中央で行なわれている『障害者と労働者の全国連帯集会』(全障連も加盟)の趣旨にそった静岡版と
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して開催されたのです。
集会は、主催者紹介の後、来賓の挨拶として『障害者と労働者の連絡会議』が「連絡会議は八一年の国際障害者年に総評・障害者団体の呼びかけで、政府主催の『お祭さわぎ』ではなく、障害者問題を労働者の課題として取り組んでいく中で障害者と労働者が連帯していくために結成された。毎年一回の全国連帯集会を開催するとともに、労働・所得保障・福祉サービス・教育・移動の各課題別に学習討論・シンポジュームを行なってきた。静岡においてもこの集会をステップとして障害者と労働者が連帯して運動を進めていただきたい」と発言しました。
続いて、ひまわり労働センター労働組合、労働金庫労働組合、自治労静岡県本部から職場での障害者問題の取り組みの報告がなされました。そして、渡辺鋭気氏(季刊「福祉労働」編集長)から「全国連帯集会の趣旨に即して」をテーマに講演を受け、後活発な質疑応答がなされました。
続いて、静岡県障害者連絡「センター(県内一一団体が参加)から、身体障害者(児)全国実態調査に反対する県交渉に結集が呼びかけられる特別アピールが行なわれ、全体の拍手で確認されました。最後に自治労静岡県本部から閉会の挨拶を受けて集会を終了しました。
今回の集会は初めての試みとはいえ、多くの参加者と内容的にも充実したものだったと思います。とりわけ、昨年の石川重朗君の普通学校転校闘争に結集した多くの仲間の参加がありました。その意味では、静岡の障害者解放運動の着実な前進を感じました。
全国事務局/関東ブロック
東京都豊島区巣鴨3丁目34の3 フラワーコーポ303号 03(918)8572
全国出版部/関西ブロック
大阪市東成区中本1丁目3の6 ベルビュー森の宮215号 06(974)0791
東北ブロック事務所
仙台市小田原2丁目2の43 佐幸ビル403号 0222(95)8498
北陸ブロック事務所
富山市大町1区西部52 0764(91)3385
東海ブロック事務所
岐阜県羽島郡笠松町円城寺600 戸田方 05838(8)1864
中四国ブロック連絡先
岡山市谷万成2の2の45 中川方 0862(55)0099 (校正者注:「全国〜0099」四角囲み)
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呼びかけ?@
第三回 DPI日本会議の案内
昨年三月三〇日、東京・後楽園会館で開かれた第二回・DPI(障害者インターナショナル)日本会議において、組織体として正式にDPI日本会議が発足して一年になります。
「われら自身の声」を合言葉にしたDPIは、障害者自身による、障害種別と国境を越えた世界規模の連帯組織です。世界各国に国内組織ができていますが、日本はその有力な一翼として注目されつつあります。
日本会議はこの一年、国際交流、運動のネットワーク化など、幅広い活動をめざしながら、女性のグループづくり等も進めてきました。もちろん、規約の作定など課題も多く、広がりもまだ十分ではありませんが、一方、事務局機能の強化を始め、各種の努力が着実につづけられています。
とくに今年は、国連計画による『障害者一〇年』の中間年に当たり、DPIは、障害者に対する機会の平等化推進を訴えていますが、日本会議では国内の現実にそくして、この平等化を図る要求に取り組む方針です。そしてそれの実行に向けて、沢山の仲間による討議・交流を行ない、合わせて日本組織をより強いものにするため、来る三月二九日(日)、東京・戸山サンライズにおいて、第三回日本会議を開催することにいたしました。
発足二年目の今年は、日本会議にとって最初の正念場です。団体・個人を問わず、一人でも多数の障害者ご自身、そしてDPI運動をご支援いただいている皆さんのご参加・ご出席をお願いいたします。
第三回・DPI日本会議(プログラム)
日時=三月二九日・午前九時半(受け付け)、一〇時(開会)
午前一〇時〜第一部・開会式および議事(報告と提案)
午前一一時一〇分〜第二部・検証=「機会の均等化」
*パート1、「率直にいって、私自身の場合...」
*パート2、「女性障害者の場合...」
*パート3、「例えば、住宅の問題では...」
午後三時四五分〜第三部・議事(質疑・討論と決定)および閉会式
午後六時〜八時・レセプション(参加希望者による=会費二〇〇〇円)
参加費=三〇〇〇円
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呼びかけ?A
共生・共働、共同連学習会の案内
政府―厚生省は昨年、障害基礎年金導入と共に、社会福祉施設への国庫補助金大幅削減に続いて、施設利用の費用徴収制度の導入を強行してきました。行財政改革に名を借りた福祉切り捨てはますます急ピッチで進んできているといえるでしょう。
一方、小規模な作業所や生活の場は、全国のどこかで一日一ヶ所を上回るスピードで増え続け、今や一五〇〇ヶ所を越えています。それらの動きに対しても、政府―厚生省は従来の「知恵遅れ」の障害者を対象にした精神薄弱者育成会所属の作業所のみの助成から、更に「精神障害者」・身体障害者へと枠を広げ、それぞれ全国精神障害者家族会連合会・全国身体障害者団体連合会所属の作業所のみ助成を与えるなど、民間運動への選別・管理を行なってきています。行政と二人三脚の団体を優遇し、わずかの金で福祉行政の肩代わりをさせることで、「自助努力」・福祉サービスの有料化・ボランティアの奨励などを柱とする、行政責任放棄の「日本型福祉社会」に向けて着々と歩を進めているのです。
労働行政においては、一般企業への就労はいっこうに伸びず、八六年六月の雇用率は前年比で全く変わっていません。「知恵遅れ」の障害者の雇用促進のための小委員会もかけ声だけで、せいぜい雇用率の計算に際して身体障害者同様カウントするといっているにすぎません。また五年に一度の雇用率見直しも、雇用率未達成企業が圧倒的に多い中で八八年四月から〇・一%の引き上げを予定しているだけで依然として多くの障害者を福祉施設や作業所へと追いやっているままです。
そして我が共同連は結成三年目、春・秋と年二回のペースで進められてきた対政府交渉は、昨春の交渉でいったんピリオドをうち、自らの体制立て直しと要求案の練り直しを迫られ、結成から更に一段と飛躍が求められています。昨夏、熊本での第三回大会は一二〇名を結集し、事務局体制の確立を始めとした自らの力量を高めていく出発となりました。
そしてその大会の確認に沿って、全障連や各地の共に働く場・生きる場の仲間と手を結び、モナミ基金運営委員会を作り、ゆっくりとしかし着実に障害者みんなと共に働く場の応援基金のネットワークは広がっており、今また情報のネットワーク誌の発行に向け着々と準備が進められています。
第三回学習討論集会では、関東から二人の方を招き、就労と働く場の現状と、自主的な生活の場づくりについての学習を深め、春の第五回対政府交渉へ
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の陣型を整えていきたいと思います。是非ご参加下さい。
開催要綱
日時=三月二一日午後一時〜二二日午後三時
場所=大阪府同和地区総合福祉センター(大阪環状線「芦原橋」)
宿泊=西成労働文化センター
内容=講演?@ 大野智也(国障年日本推進協・広報部長)
講演?A 矢田竜司(神奈川ふれあいの家)
コンサート 共に生きる運動−元気印!コンサートスケジュール
二一日=一時・受け付け/二時・講演?@/三時半・討論/五時・休憩/六時・コンサート/八時〜交流会(移動)
二二日=八時・朝食/九時・移動/一〇時・講演?A/一一時・討論/一二時・昼食/一時全体会議
参加費=参加費・二〇〇〇円(コンサート・交流会費含む)/食費・二二日朝二〇〇円・昼四〇〇円/宿泊費・一〇〇〇円/*全日参加・三六〇〇円
申し込み=大阪市東淀川区東中島一−二一−二新大阪ハイツ一一〇九共同連事務所・電話=〇六〜三二四〜一一三三
BooKあんない
写真省略:(校正者注:「KSK 共生の理論」冊子表紙の写真)
KSKノーマライゼーション研究会・機関誌No.6
共生の理論
障害者解放研究会 略称:N研
ノーマライゼーション研究会
会長・山下栄一/事務局長・楠敏雄/編集長・牧口一二
連絡先・大阪市東淀川区東中島1丁目21-2 新大阪ハイツ1109号電話(06)324-1133 または市同教(伊瀬知)電話(06)561-9121
郵便振替・大阪7-3494(ノーマライゼーション研究所 代表・山下栄一)
◆だいやまーくも・く・じ
◆だいやまーく
巻頭エッセイ「いつも見おろされる視座から」
●くろまる森 修
特集《バイオテクノロジーを問う》
障害者として生きる時
●くろまる河上千鶴子
バイオテクノロジーと障害者
●くろまる野辺明子
"バイオ社会"は住みよいか
●くろまる福本英子
※(注記)(校正者注:穴あけパンチで穴が開いていて判読不能)号特集《自閉症"新薬"を問う》
親の立場から...補助酵素問題をめぐって
●くろまる渡辺信邦
シリーズ・時・おりおり《障害者のひらめき》
◆だいやまーく人々の目、そして心
●くろまる町田茂雄
◆だいやまーく飛べない私
●くろまる辻本伊公子
◆だいやまーく障害者教師として思うこと
●くろまる稲葉通太
シリーズ《ザ・論文&研究発表》
心理治療と共に生きる知恵
●くろまる山下栄一
N研各部会の紹介と活動報告
第1部会(法律・制度)から
第2部会(差別と歴史)から
第3部会(障害者と科学技術)から
第4部会(教育・保育)から
コメントの会(ヒトビト的雑談)から
編集委員会からのひとこと
B5版 40ページ価格 600円 研究会に参加を(校正者注:「B5版〜参加を」手書き。また「研究会に参加を」は吹き出しに記載)
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全障連・第12回大会実行委員会ニュース?@
7月31日・8月1・2日/町田市立体育館・ほか/国障年中間年を解放運動のステップに!
今年の冬は暖かい冬となっていますが、皆さん元気でお過ごしのことと思います。町田市は東京の西の方にあり、都心よりも気温は2〜3度低く、雪が降ると2〜3センチ多く積もることも珍しくありません。
さて大会まであと6ヶ月と迫りました。関東ブロックの仲間は毎日忙しく活動しています。12回大会実行委員会では、昨年11月5日、大下・町田市長に大会の協力要請をしてから、実行委員会が結成され、月2回・火曜日(第2・第4)に実行委員会を開くことにしました。また、東京都および25市に後援名義申請を提出し、大会の援助金の協力要請をしています。
また、大会準備にあたって要となる学生実行委員会結成に向けて、文章を作成し各大学に配布しました。そして1月27日に学生実行委員会が結成され、約15人の学生の皆さんと今後の大会準備の内容に関して話し合いました。その話し合いで確認されたことは、第一に学生実行委員会は関東ブロックとともに行動すること、第二に大会までに事務作業および学習会を何回か重ねていくことです。
これからの予定としては、労働組合まわりと、障害者団体のオルグまわりに着手することです。特に労働組合に対しては早急にまわる必要があります。それは春闘や統一地方選挙などが重なっており、一日も早くまわることが求められていると考えられるからです。次に障害者団体のオルグまわりについて考えているのは、東京および関東にどのくらい障害者団体の数が存在するのか、そのリストを作り、その中からリストアップした所を手分けしてまわりたいと思っています。なおその際、多様な障害者団体があるため、それぞれの団体の性格によって要請の内容の違いをつかんでいきたいと思います。
さらに、町田市を中心にした地域の住民団体に対して、大会の成功に向けての協力要請にあたることに努力していきたいと思います。
最後になりますが、大会に向けての決定および予定は以下の通りです。
(1)開催場所
東京都町田市内
全体会=町田市立体育館
分科会=市内の小中学校を予定
(2)参加費・宿泊費
参加費=3500円(基調・レポート集込み)
宿泊=2500円(朝食付き・予定)=宿泊場所は代々木オリンピック青少年センター(予定) (校正者注:「(1)開催〜(予定)」四角囲み)
写真省略(校正者注:口元にマイクを向けられて話をしている人の写真)
実行委員長に就任してから月日のたつのは早いもので、はや大会まで後6ヶ月。毎日気持ちばかりが先行して行動がなかなかついていかない今日このごろです。「女性には手が早い僕だけど」、こういうことになるとなかなかニブくなってしまいます。
これからも大会の成功のため頑張っていきたいと思います。皆さんのご支援・ご協力よろしくお願いします。
文・藤沢由知
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学習論文
写真省略「宇都宮病院全景」
ひとをいつまでも いつまでも 拘禁できる国―「精神病者」らの告発― 長野英子(世界・11月号から)
挿絵省略
*精神衛生法改「正」の本質と、私達の運動の基本姿勢を学習するため、前号からこの論文を掲載しています。
なお前号で『世界一〇月号から』と記しましたが『一一月号から』の誤りです。お詫びし訂正いたします。
前号の目次は次の通りです。
?@精神衛生法とはどんな法律か?
・まず社会防衛
・市町村長の同意だけで
二、宇都宮病院を成立させているもの
宇都宮病院の入院患者殺害が、どのように行なわれたかみてみよう。閉鎖病とうの男性患者Aさんが、食事の内容に不満をもらしたところ、看護人と口論になった。この職員は、Aさんを小ホールに連れだし、看護室から持ち出した鉄パイプを両手で振り上げ、背後から腰、背中などを殴りつけた。約二〇分間殴り続けられた後、ようやく解放されたAさんは、仲間の患者たちにより病室に運びこまれたが、約四時間後、亡くなった。もう一件の事件は、入院患者Bさんが見舞人に対して、「こんなひどい病院から退院させてくれ」と訴えたところ、その日の午後、看護人三人により、腰から脚にかけ棒でめった打ちにされ、翌日亡くなった。
看護人が入院患者を殴り殺す。精神病院を知らない人には信じられないことだろう。しかし、私たち入院体験のある「精神病者」にとっては、「またか...」「やはり起こるべくして起こった」という感想が出るのである。
最近、厚生省は、医師過剰時代、看護婦過剰時代と宣伝しているが、日本の全科の人口一万人に対する病床数は欧米並みででも、そのスタッフ数は圧倒的に少ないのが真実なのである。精神病院の場合はさらに、一般科と比べて、医師は三分の一(入院患者五〇名に一人)、看護人は三分の二で良いと医療法の特例で認められている。日本の精神病院が、医療のための病院ではなく、単なる収容所であるといわれるのも当然であろう。
人件費は節約でき、しかも地域、家庭、職場から排除された人々が、警察や福祉事務所を経由して自動的に送りこまれてくる。そして、医療費は公費(生活保護費や措置入院の場合は措置費として)から確実に入ってくる。実にうまみのある商売が精神病院なのである。
宇都宮病院は、こうした、国や地方行政の手厚い保護の下で、急成長し、事件発覚時に
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は、入院患者九四四名に対し、医師三名、看護人六六名で運営されていた。この職員数は、医療法特例に照らしても、医師で一五人、看護人九八人の不足であった。
入院中も、診察と呼べるものは週一回の「回診」で、一人三〜五秒ほどのものだけだった。四年間で二二二名の死亡者が出ていることをみても、宇都宮病院の「医療」のなかみがわかろうというものである。
また人手不足は、入院患者の院内での処遇にも大きく影響し、「院内秩序」を維持するために、看護人は暴力により患者を恐怖支配し、薬づけや閉鎖病とう・保護室が、入院患者管理のために使われていたことは、よく知られている。
宇都宮病院は今も存続している
厚生省を始め行政は、宇都宮病院事件に対しどういう対応をしたのだろうか。驚くべきことに、事件発覚後も、県は宇都宮病院に対して、医療法人認可取り消しどころか、措置指定(措置入院は、行政に適切と認められた措置指定病院しか受け入れられない)も取り消さず、事件発覚後にも新規措置入院患者が送りこまれている。
たとえば、医療ミスで、何人もの患者を死亡させた外科病院があったとしよう。行政は何らかの処分をするであろう。実際、厚生省は、昨年保険の医療費を不正請求したとしてある病院を二年間の業務停止処分に課した。ところが、宇都宮病院では、ミスではなく、暴行の末二名が殺されたにもかかわらず、厚生省を始め県行政も、何の処分も行なっていない。そして、「措置入院患者の受けざらがない」として、宇都宮病院存続を支持しているわけである。
精衛法が本当に「精神病者」の「医療と保護」のためであるなら、人殺しのあった「病院」、そして、事件後も同じ職員で運営され何の改善もされていない「病院」、病院とは呼べない「病院」に強制入院患者を収容することは、矛盾としか言えない。強制入院制度が本人の「医療と保護」のためではなく、社会を「危険な精神病者」から守るための制度であるからこそ、宇都宮病院は権力から「病院」と認められ続けているのである。
宇都宮病院はまた、市民の「精神病者」に対する差別意識によっても支えられていた。一般科の病院で宇都宮病院のような事件が起これば、たちまち患者は寄りつかなくなり、つぶれてしまうだろう。しかし長期入院者は、様々な行動制限のある病院生活に適応を強いられた結果、社会生活能力を奪われてしまい、その上「精神病者」差別のため、地域で生きられなくなってしまっている。
身寄りがない長期入院者の場合、アパートで一人で暮らすことは不可能といえるだろう。かりに一人で暮らすことが可能だとしても、この差別社会で、アパートを借りることは難しい。「精神病者」であることがバレたら、まずアパートは借りられない。アパートを借りられたとしても、差別のため職にはつけない。
家族がいる場合でも、地域住民の差別的なまなざし(何をするかわからない危険な「キチガイ」を野放しにするな)ゆえに、家族が引きとりたくても引きとれない状況にある。一方家族も地域で孤立したままでは「精神病者」を引きとって、共に生きていく余裕を失ない、「精神病者」を「やっかい者」「家庭の平和を乱す者」とみなし、病院に閉じこめておきたがるのである。このことは、事件発覚後、マスコミで大々的に宇都宮病院の名が報道されるや、全国から「家の息子を一生閉じこめてくれ」「親を死ぬまで入院させたいが」という問い合わせが、宇都宮病院に集中したことをみても明らかである。こうしたことは悪徳精神病院告発のたびに起こることだそうだ。
弧立した「精神病者」はこの差別社会の中
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で、宇都宮病院でしか生きられないところにまで追い込まれているのである。
小林厚生省精神保健課長は、八五年八月、国連人権委員会において、「宇都宮病院事件は少数の例外的不祥事件であり、日本の約一五〇〇の病院はほとんどが満足すべき状態にあり、患者に対し最善のケアを行なっている」という趣旨の発言をした。はたして宇都宮病院は例外であろうか。断じてちがう。
私達「精神病者」はみな身をもって「宇都宮病院」を体験してきた。看護人に殴られた体験をもっていない者の方が少ない。殴られないまでも、保護室行きを筆頭として様々な行動制限におびえ、電気ショックや薬づけといった強制医療におびえ、また看護人の暴力におびえ、何の自己主張もできずに、じっと忍耐の毎日をおくっているのが、私達「精神病者」の入院生活である。
「病者は怒ってはならない?」
私が一八歳の時に入院していた病院は、国立で相対的には「よい」病院であった。そこでは確かに、肉体的なむきだしの暴行は受けたことはなかった。しかし、精神的暴力、心理的拷問は体験したし、強制医療もうけた。
入院手続きの一環として、イスに座らされ顔写真をとられた。逃亡した時の手配用であった。病院は監獄と同じなのである。「よく効く注射があるから」とだまされて電気ショックがやられた。ある機会があってカルテをみると、そこには、看護婦によって病室での私と友人の入院患者との会話が報告され、書かれていた。きちんと「ナースコールで聞いたら」と書かれてあった。看護婦はナースコールを使って病室を盗聴していたのである。「何かあれば保護室に入ってもらいます」とおどされていた。
私は当時、「ベトナムで子供達が殺されているときに、ベトナム特需でもうけている日本人の私が生きていることを正当化できるものは何もない」など、深い罪悪感と自己否定にとらわれており、自分は不幸でなくてはいけない、苦しまなければならない、罰せられなければならないと思い込んでいたため、こうしたひどい処遇に対して何の抗議もしなかった。が、もししていたら、保護室にぶちこまれていたことだろう。ここで重要なことは、これらの医療従事者たちは、「熱心」であり、「良心的」であり「こうすることが患者のため」と思いこみ、精神医療とはこういうものと信じこんでいたことである。
診察室で行われた精神医療もまた一方的断罪に終始したものだった。「世界が私を拒否している」という孤立感のなかにいる私に対し、権力者としての医師は「劣った人格だから、ダメな人格だから、病気になったのだ」と決めつけた。罪悪感に苦しむ私にとってこの言葉は傷口に塩をこすりつけるようなものだった。こうした精神医療は病院生活の抑圧とあいまって一切の自己主張を奪い、「右のほおを打たれたら左のほおを出し」、「なんじの敵を愛す」聖者となることを要求した。怒りも哀しみも恥じらいまでもが、全て「症状」としてしかとらえてもらえなかった。その結果、私にとって一切の感情・思考・感覚が、「症状」として相対化されていった。私の出した結論はこうだった「健常者は皆聖者のごとき完成された人格だから病気にならない、私は聖者でないから病気になった。一切の自分の内からの思考・感情・感覚は否定せよ。徹底して健常者にならえ」
何年間も医者と家族以外口をきいたことがない生活を続け、孤立した私は、入院中の全生活を支配する医師の言葉を絶対化せずにはいられなかったのである。その後何年もたって、全国「精神病」者集団の仲間に出会うまで、私は「病者は怒ってはならない」と思いこんでいた。差別的な健常者に徹底してこびて生きてきた。今も私を苦しめるうつ状態は、こうした精神医療によってうけた傷の後遺症
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ではないかとさえ考えている。
強制医療を合法化している精衛法下では、だまそうが、暴力を使おうが、「医療」を施すという大義名分さえあれば、全てが合法化されるのである。暴力や脅迫が正当化、合法化されている以上、「宇都宮病院」は常に生まれる。精衛法こそが宇都宮病院事件を引き起こしたのである。「良心的」医療従事者も私に対したように、「熱心」に人権侵害を行なったのは、やはり「精神病者」の人権を否定している精衛法が原因といえるだろう。「精神病者」の人権否定の下で、絶対的権力の上にあぐらをかく医師は、それゆえに腐敗してしまっている。
三、精神衛生法は撤廃を
ある日突然、あなたの家にズカズカと男たちが入ってきた。男たちはあなたを抑えこみ手錠をかけ、車でどこかに連行する。注射をされ気づいてみると独房にいれられ、いつでられるか、なぜぶちこまれたのか誰も説明してくれない。
こんな目に会ったら、「精神病者」でないあなたでもパニック状態になり、発病するのではなかろうか。これが「精神病者」の強制入院の実態である。強制入院によって精神医
例えば、マスコミは「分裂病男殺人!」などとセンセーショナルな見出しをつけて、このように「精神病者」は危険だ。だから皆予防拘禁して強制医療を行なえと主張する。しばしばこの種のキャンペーンが行なわれるが、私は今まで「胃腸病男殺人!」とか「虫歯男殺人!」といった見出しを見たことはない。私たち「精神病者」にとってみれば、「分裂病男殺人!」というキャンペーンは、これらと同じく人権侵害であり、何の根拠もないヨタ記事なのである。
また別の反論もあろう。たしかに精衛法には治安主義的・社会防衛的強制医療が合法化されている。それは撤廃されなければならないだろう。しかし社会防衛のためではなく、本人のためのやむをえない強制医療は必要ではないだろうか?。「精神病者」は「病識」がなく、医療の必要を理解できない状態になることがあるから、本人を救うためやむをえない強制医療は必要ではないか?、自由入院を原則として、強制入院制度が乱用されないために、その要件を厳密に絞り、同時に人権保障の規定をきちんとおき、チェック機関をおくように、精衛法を「改正」したらよいのではないか?こうした反論は、一般からだけでなく、一部の弁護士や精神科医からも出されている。
療と出会った「精神病者」は、必ずそれによって病状を悪化させられている。これでは、医師との信頼関係は成立しようはずがない。強制入院制度は、反医療的であり、全否定されなければならない。
こう述べると読者の中には反論が出るかもしれない。「精神病者」のなかには、他に迷惑をかけたり、違法行為に出たりする人がいる。そのために社会防衛的な強制医療は必要なのではなかろうか?確かに、「精神病者」のなかには違法行為をする人がいる。しかし、健常者のなかにも犯罪を犯す人がいる。一般的にどんな人でも犯罪や他害行為をする危険性、可能性をもっているということと同じレベルで、「精神病者」もまた危険性をもっているというだけのことである。
「精神病者」と他害行為が因果関係にあるという証拠は統計的にはもちろんないし、それを科学的に証明したものもない。犯罪者の中に胃腸病患者も虫歯の患者もいるように、「精神病者」もいるだけの話である。精神科医青木薫久は保安処分制度批判として、「健常者」は犯罪を犯す危険性をもちながら社会で生きることを許されるのに、なぜ「精神病者」は危険性のみを要件として予防拘禁されなければならないのか?、という問題提起をしているが、その通りである。
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だが「病識」などという言葉は、日本の精神医学にしかない言葉で、世界中どこでも使われていない概念なのだ。私たち「精神病者」は、ときに「自分は病気じゃない。医者には行きたくない」と言うことがある。しかし全く苦痛がないのではなく、だれもが症状の苦痛は自覚しているのである。しかし、あの恐ろしい精神病院には近づきたくない、一生差別を受ける「精神病者」のラベリングをされたくない、という理由で、精神医療を拒むのである。
悲惨な精神医療の実態、差別社会こそが、「病識がない」ことの原因なのだ。それを解決することなく、問題をすりかえ、あたかも「精神病者」の「症状」のひとつであるかのように、「病識」という言葉をつくり上げているのが、日本の精神科医である。これを根拠に、「精神病者」の人権剥奪を正当化し、強制入院制度を合法化しようとすることは許されない。
たしかに「精神病者」には意識がない状態になることがある。しかし「精神病」でなくとも。たとえば交通事故で頭を打って意識不明で病院にかつぎこまれる場合がある。また高熱にうなされ、暴れて医療を拒否することもある。こうした場合、外科医や内科医は本人の同意がとれるまで放っておくだろうか?命を救うため何らかの医療を施している。ある時は、押さえつけて注射をすることもある。これも強制医療のひとつである。ところが外科や内科には精衛法に相当するような、強制医療を保障する法律は存在しない。「精神病者」に対してだけ、なぜ法によって強制医療が保障されなければならないのだろうか?
やむをえない強制医療が必要だという反論は、強制医療が必要な場合があるということと、強制医療を法制度として保障する必要があるということ、この二つを無自覚に、あるいは意図的に混同している。
私は、法制度としての強制医療、強制入院制度は一切撤廃されるべきだと考えている。それは、医師に、強制医療ができるという権力を持たせるからである。権力者との間には対等な関係は存在しない。対等な関係のないところで、信頼に基づく医療的関係は存在しないからである。
強制入院制度が撤廃されれば、全て自由入院となり、精神病院からかぎと鉄格子は消える。どうしてもかぎの必要な、そうでないと不安な人には、本人にかぎを持たせればいいのだ。イタリアではそうしている。あとは人手不足さえ解決すれば行動制限は撤廃されるだろう。そうなれば、精神病院は他科の病院と同じになり、今まで精神病院を恐いところと思い、受診を拒んでいた人も早期に精神科へ来るようになり、早期治療が行われるようになるだろう。
また、病院の周囲の人たちも、今まではかぎと鉄格子ゆえに、「精神病」は他の病気と違う、動物のようにおりが必要だという偏見を持っていたが、かぎも鉄格子もなくなり他科と同様の病院になり、また周辺を自由に「精神病者」が歩き回り、地域の人と接するようになれば、周辺の人も「精神病」も他の病気と同じだと考え「精神病者」も特別に恐い人ではないことを知っていくだろう。
こうして地域の偏見がなくなる。差別が解体されていけば、「精神病者」が地域で生きていくことが可能となり、遂にはイタリアのように精神病院解体の日が訪れるであろう。
問題は、精衛法の姑息な「改正」ではなく、その撤廃であり、それに基づいた現精神医療体制の解体であることが、これでおわかりいただけたであろうか。
現在進められている厚生省の「改正」に向けた動きは、決して「精神病者」の人権回復をめざそうとするものではなさそうである。
いままで伝えられたところによると、同意入院の名称を変えたり、六ヶ月チェック期間を設ける。といった程度のことしか考えられ
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ておらず、逆にそれと抱きあわせて「保安処分」の新設といった、これまで刑法改悪の動きの中で何度も浮かび上がり、日弁連などの強い反対で消えていった人権抑圧の法的措置を導入しようとさえしているらしい。何よりも、ここには、当事者である「精神病者」の声を聞くという姿勢がない。むろん体制もない。
「精神病者」の隔離・拘禁、強制医療という精衛法の基本思想は、ヨーロッパ等で行なわれている精神医療の動きとはまったく逆行しているというのみならず、「健常者」の市民的自由や権利をも危うくするということを、私は強く訴えたい。
ナチス・ドイツが、「民族の花園を荒らす雑草」として、「障害者」「精神病者」に断種を強制し、そして虐殺を行なっていったことはよく知られている。「精神病者」の扱われ方は、社会全体の人権の危機を、先端的・象徴的に示しているといっていい。読者が、まず私たち「精神病者」の声に耳を傾け、地域・職場の仲間として、生き、支えあっていけるような道を、共に探っていただくよう願ってやまない。
(ながの・えいこ、全国「精神病」者集団)
出版物・映画の案内
全障連結成大会報告集 2500円−
第2回大会報告集 2000円−
第4回大会報告集 2000円−
第6回大会報告集 うりきれ
第7回大会報告集 1000円−
第8回大会報告集 1500円−
第10回記念大会報告集 2000円−
79年1・26〜31養護学校義務化阻止!
文部省糾弾連続闘争報告集 200円−
障害者解放教育・保育研究会シリーズ
養護学校義務化阻止闘争総括集 600円−
養護学校義務化防止!学習パンフ 600円−
自立生活シリーズ?A「地域福祉」政策糾弾!学習パンフ 200円−
労働権シリーズ?@
障害者職よこせ要求者組合結成集会報告集「みんなで力を合わそう」 400円−
点字学習 200円−
富山市差別行政糾弾闘争報告集
?@第1回確認会報告集 うりきれ
?A第2回確認会報告集 400円−
?B第3回確認会報告集 400円−
?C第1回・第2回糾弾会報告集 500円−
KSK全障連(全国機関誌)月刊 200円−
年間定期購読(送料込み) 2500円−
KSKP全障連関西ブロック ニュース・月刊 150円−
年間定期購読(送料込み) 1900円―
SSKP全障連関東ブロックニュース(ブロックに問合わせ下さい)
SSKP全障連東北ブロックニュース (ブロックに問合わせ下さい)
映画『養護学校はあかんねん!』=文部省糾弾連続闘争の記録(全国事務局に問合わせ下さい)
「障害者解放運動の現在(いま)」 現代書館発行=全障連・編 1500円−(校正者注:「出版物〜1500円−」四角囲み)
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取り組み紹介(校正者注:「取り組み紹介」下線)
3月7日=全国幹事会(東京)
3月8日=赤堀差別裁判糾弾!全国総決起集会(主催=赤掘中央闘争委員会)
*午前11時〜決起集会(日本橋公会堂)
*午後3時〜デモ
3月21〜22日=共同連学習会(大阪府同和地区総合福祉センター)
3月29日=第3回 DPI日本会議(東京・富山サンライズ) (校正者注:「取り組み〜サンライズ)」四角囲み)
挿絵省略
編集後記
精神衛生法改「正」の動向と案要綱を見ると、身体障害者福祉法改訂の時と全く同じ観を持たざるをえない。口先サービスと実態は新たな差別。目をこらし学習しよう(Z)
挿絵省略
目次 (校正者注:「目次」下線)
赤堀差別裁判糾弾闘争 1
3.8全国総決起集会に全力結集を!
*検察側の再審つぶしを許すな!差別実態をを強める精神衛生法改「正」の本質を見抜き、共生・共闘の闘いを強めよう
精神衛生法撤廃!全国連絡会議結成集会に参加して 7
資料=厚生省が諮問した精神衛生法改「正」案要綱 9
石川重朗君の転籍闘争 11
昨年40日間の闘いを成果に、清水市教委との闘いを強めよう
各地の闘い=
?@広島=共有・共生を考える広島県集会の案内 13
?A静岡=静岡・障害者と労働者の連帯集会が開かれる 15
全障連施設小委員会からの報告 14
よびかけ(寄稿)
第3回・DPI日本会議の案内 17
共生・共働を考える、共同連学習会の案内 18
第12回全障連大会実行委員会ニュース?@ 20
学習論文 ひとをいつまでも、いつまでも拘禁できる国―「精神病」者からの告発― 長野栄子 21
時の雷鳴 楠 敏雄 3 (校正者注:「目次〜敏雄 3」四角囲み)
全障連
全国障害者解放運動連絡会議
No.67
全国機関誌 発行日/1987・02・28
連絡先/ 大阪市東成区中本1丁目3-6 ベルビュー森の宮215号
?п@06−974−0791
月1回発行 頒価 200円
年間定期購読 2500円(郵送料込)
郵便振込 大阪6−57342 全障連全国出版部
作成:
山口 和紀