『全障連』No.58
last update:20220704
■しかく文字起こし
表紙
KSK No.58
全障連
全国障害者解放運動連絡会議
一九八六年三月一日発行(毎月二回一、一五の日発行)KSK通巻四三号 一九八四年八月二〇日第三種郵便物認可
写真省略「母子保健法改悪阻止闘争、厚生省に抗議する(2.15) 」
p1
3月、実力糾弾闘争の総力を静岡へ!
・石川重朗君の飯田中学校入学実現!(3月2日から勝利するまで闘うぞ!)
あらゆる戦術を駆使し、清水市教委徹底糾弾
・赤堀再審―無罪判決を勝ちとれ!(3月2日〜4日に集中闘争)
ハンスト闘争に合流し、3月集会に決起を
写真省略:「飯田東小学校に自主登校する頃の石川重朗君」
闘争スケジュール
三月二日・午後一時〜
・赤堀差別裁判糾弾!再審実現、赤堀さんを生きて奪い返そう全国総決起集会
*青葉公園
↓
三月三日〜四日
・全障連集中闘争期間
*青葉公園(ハンスト・情宣闘争)
三月二日午後六時〜
・石川重朗君の飯田中学校入学実現・全国総決起集会=清水市教委実力糾弾宣言集会
*清水市民会館
↓
三月三日〜
・清水市教委実力糾弾闘争
*清水市庁前=闘争勝利まで断固闘うぞ!=(校正者注:「闘争〜闘うぞ!=」四角囲み)
p2
今年こそ石川重朗君の転校闘争に勝利しよう
挿絵省略
七年間の闘いのすべてをかけ、連続実力闘争にあらゆる力を
7年間続けられた転校闘争に今こそ勝利を!
石川重朗君とその両親が静岡盲学校から地域の飯田東小学校への転校を要求し、闘いを始めてから七年がたっています。この七年間、重朗君は、地域から排除され、教育権を奪われ続けています。そして今年、重朗君は小学を卒業し、中学生になろうとしており、この時にこそなんとしても地域の飯田中学校への入学を実現しようと闘いの決意を固めているのです。
重朗君の闘いは、今、静岡県教育委員会との交渉を続ける中、地域の飯田東小学校へ「訪問教育」の枠組で週二回、六時間通っています。この二学期からは、給食の時間は普通のクラスで共に行い、また体育や遠足などは学校の子供達との交流が実現してきています。しかし、静岡県教委は転校について一切話題にあげさせないなど、あいかわらず強権的に対応し、一九八二年に自らむすんだ「確認書」を守ろうとはしていません。
清水市教委と直接の闘争が始まった
こうして時がたち、重朗君は今年三月に小学生を卒業します。そして四月からは中学生になるのですが、重朗君と両親はこの機会を逃せば地域の学校への転校はできなくなると、今年こそ「全国で一番長い就学闘争に勝利したい」と支援をよびかけています。
この中学校入学については、これまで重朗君の学籍が盲学校にあるからと県教委しか交渉に応じなかったものが、清水市教育委員会の判断に移ることになります。したがって、私たちが一貫して本来の交渉相手と考え交渉を要求してきた地域の教育委員会を相手に闘いを作りだすことができるのです。
そこで、私たち全障連は一月一七日に、清水市教委に交渉を申し入れました。ところが、清水市教委は、「まだ中学校の問題については考えていない」と、まったく無責任にも逃亡を決めこんでいます。その後も市教委に再三交渉を要求していますが、いまだに責任を持った対応をしてきていません。
清水市教委の考えは、「中学生でも、盲学校に籍を置かせて飯田中学校との関わりは現状(週二回の『訪問教育』)で充分だ」としています。重朗君は闘いの中で就学過年児になってお
p3
り、「それでも配慮してやっているのに、盲学校を拒否するなら、どこの学校にも行かせてやらない」と考えているのです。
全障連の実力糾弾闘争の総力を結集しょう!
写真省略「1、・17、清水市教委に抗議のビラまき情宣」
清水市教委はいまだに重朗君の飯田中学校入学について一歩も妥協を考えていません。そればかりか、言葉の端々で「飯田中学校入学は考えない」「言うことを聞かないなら、どこにも行かせない」とちらつかせています。彼等は重朗君の七年間の闘いをつぶしてしまおうと狙っているのです。
静岡現地では、反差別運動が弱い地域の条件もあってきわめて厳しい闘いが続けられています。しかし、金井康治君の転校闘争もまた中学校入学を実現して勝利したように、今年こそ勝利したいと闘いの決意を固めています。
私たち全障連も、重朗君の闘いを支援して六年目です。今年、全障連の実力就学闘嬬全勢力をもって金井・梅谷という歴史的な闘いを再度実現し、なんとしても勝利していきたいと思います。
この闘いは、まさに全障連の実力闘争の力が試されます。清水市教委は、文部省の権力によりそい、全国
資料=清水市教委への要求書
一九七九年三月、石川さん親子が「地域の子供たちや、兄弟と共に学校に行かせたい」と、静岡盲学校から、地域の学校である飯田東小学校を希望して、すでに七年が経過しようとしています。この間私たちは貴職、或は県教育委員会と度重なる話し合いを続け、一九八二年には県教委との間に『石川重朗君の飯田東小学校転校に関する確認書』を交わしたことは貴職も御存知のことと思います。
しかし、その後の県教委の対応は『障害児』が地域で生きる権利をも無視するような状態であり、事態を重視した県教職員組合の伊藤委員長が仲介に入り、八十三年十一月から飯田東小での重朗君に対する「訪問指導」が開始されました。その際、重朗君が飯田東小で他の児童との関係づくりや給食参加など、貴職の配慮に対し、一定の評価をしております。
さて、両親あるいは私たち支援者全ての願いは、重朗君があたりまえの事として、地域の学校に通うことにあります。しかし、重朗君は現在静岡盲学校の小学部六年生であり、この三月には卒業してしまいます。当然、中学校に進学する訳ですが、このことについては、両親が七年間も思い続けてきた「地域の中でみんなで共に学ばせたい」という希望がある限り、当然地域の学校である
p4
飯田中学校に進学することを考えなくてはなりません。
飯田中学校に関する両親の希望は、二月一八日に貴職に提出してあり、また重朗君を飯田中に受け入れる準備に関しての要望は、八月二四日県教委との話し合いの際貴職にも伝えております。したがって、当然貴職としては、重朗君を飯田中学校に受け入れるべき体制を準備されていることと思います。
しかし、その受け入れ体制の検討に際しては、「両親、実現する会と共に行ってもらいたい」と要望したにもかかわらず、今だに貴職からなんら相談もありません。
したがって、私たちは左記の質問をします。
一、重朗君の飯田中受け入れ体制は現在どの程度進んでいますか。
二、重朗君が飯田中に通学するにあたってなにを準備すればよいのでしょうか。
また、併せて、重朗君の飯田中進学に関して貴職との話し合いをここに申し入れます。
重朗君の就学問題に関しては、いままでの経過からして両親あるいは私たち支援者のいない場で決定することは厳に慎まなくてはなりません。そのことを貴職が理解されておられるなら、重朗君の受け入れ体制の準備に関しては早急に私たちと話し合いを行うべきことでほないでしょうか。
以上
一九八五年一二月二六日
清水市教育委員会
教育委員(教育長) 又平明殿
石川重朗君の飯田東小学校転校を実現する会 (校正者注:前頁「資料=〜実現する会」四角囲み)
(校正者注:以下、前頁「この闘いは、まさに全障連の実力闘争の力が試されます。清水市教委は、文部省の権力によりそい、全国 」から続く文章)
の就学闘争を押し潰そうとする最先端にいます。だからこそ交渉要求にも応じず、転校を絶対認めようとしないのです。この強権的な、差別に満ちみちた教育行政を打ち砕だくのは、障害者が先頭になった糾弾の実力闘争です。
三月二日の全国総決起集会と、三月三日から予想される実力闘争(あらゆる闘いを、期限を限らず連続して闘いぬきます)に決起すべく準備を始めてください。
いよいよ、DPI日本会議結成に(校正者注:「いよいよ〜結成に」大文字)
八代英太の策謀を打ちくだき、障害者解放運動の新たな砦を
*DPIは、障害者自身による、障害種別と国境を越えた国際連帯組織です。...日本国内では、有志による「DPIを創る日本委員会」から「世話人会」を経て、1984年7月1日に「DPI日本会議準備会」が発足。...DPI日本組織の正式発足のための、第2回目本会議を開催することにいたしました。
長い間、産みの苦しみをつづけてきたDPI日本が、いよいよ本式に名乗りを上げ、出発を告げる会議です。(よびかけ文から)
時・3月30日(午前10時〜午後5時・午後6時からのレセプションは自由参加)
所・後楽園会館(東京・飯田橋)
参加費・3000円
*参加希望者は全国事務局に連絡してください。(校正者注:「いよいよ〜してください。」四角囲み)
p5
赤堀差別裁判糾弾闘争
再審実現=無罪判決を実現し、赤堀さんを生きて奪い返せ!
挿絵省略
大衆署名・カンパ・決起集会を貫こう
いよいよ赤堀さんを生きて奪い返す大づめだ
写真省略「1・17全国総決起集会に全障連部隊を作る(青葉公園)」
赤堀さんの差し戻し審も先月一七日に結審を終え、マスコミ発表では遅くとも夏までには決定が出されるという。
赤堀中闘委は、この一七日の結審から決定が出るまで、今度こそ絶対に再審開始を勝ちとるべく、ハンストを含む長期闘争を静岡・青葉公園で開始した。
一・一六初めて全障連 独自集会を成功させる
全障連も前日、静岡労政会館において独自集会を行ない、全国から約六〇名の結集をもって、闘いの新たな決意を確認しあった。
仙台の仲間からの近況報告では、最近の宮刑の獄中弾圧がますます強まっていることが明らかにされた。新規の指名面会禁止や、アピール文発送禁止に続き、今年に入ってからは「管理条項都合」として土曜日の面会を一組二人に制限してきている。もちろん今回の集会にも赤堀さん自筆のアピールは届かなかったのである。こうした弾圧は、例年の年賀状にすら及んでいるという、許しがたい攻撃である。
基調報告では、再審開始に向けた署名・情宣活動の強化や、各地で集会等を開く方針を確認するとともに、宮刑の弾圧を許さず、獄中の赤堀さんとの連帯強化の決意を新たにした。
その後、各ブロックの仲間から、赤堀さんとの関わり、今後の闘いについての決意が報告された。ここでは、今再審開始ー無罪釈放に向けて獄中の赤堀さんと獄外の闘う者の団結が訴えられた。そして、改めて全障連の障害者解放闘争の柱として赤堀差別裁判糾弾闘争を全力で闘いぬいていくことを確認しあった。
翌日、午後一時から青葉公園での赤堀中闘委主催の集会、静岡地裁に向けたデモを、全障連は先頭になって闘いぬいた。
p6
一・一七全国総決集会にも独自部隊を形成
十二時時半より独自集会をもって合流したハンスト突入集会は、中闘委の挨拶の後、連帯共闘のメッセージ、仙台の仲間から赤堀さんのアピール内容紹介、そしてハンスト者と各地闘う会の決意表明と続けられた。全障連の車イス障害者の仲間も、まさに自らの体を張って、再審実現―赤堀さん奪還を勝ちとる決意でハンストを行なうことを明らかにした。また、全障連の決意表明に立った、西岡全国事務局長は、母子保健法改悪攻撃に端的な今日の障害者差別・抹殺攻撃の強まりに対し、赤堀闘争とともに全力で闘いぬかなければならないと発言した。
静岡地裁に向けたデモは、結審を終えたばかりの地裁前で抗議のシュプレヒコールを行なった。地裁前には機動隊が防衛線をはり、閉ざされた門の内側には権力やマスコミ関係者がぎっしり。再審棄却は絶対許さないぞと、私たちの怒りの声が高まった。その後に簡単な集約集会を行ない、再び青葉公園にもどっ
写真省略「静岡地裁に糾弾のシュプレヒコール(1・17)」
た。
翌日からは六名のハンスト者を中心に、街頭情宣・署名活動を展開した。地元静岡とあって、市民の関心も強いようで、署名・カンパも多かった。
ハンスト闘争に合流し三月決起集会に決起を
赤堀中闘委では、この長期闘争をやりぬくため、静岡市内に事務所を設置し,連日の闘いを展開している。すべての仲間のみなさん、各地での大量の署名・カンパを訴えます。そして、全障連の集中闘争期間である、三月二日の全国集会と、続く四日までの現地闘争への結集をよびかけます。さらに、宮刑の赤堀さんへの激励・連帯の文通を!
全国事務局/関東ブロック
東京都豊島区巣鴨3丁目34の3 フラワーコーポ303号 03(918)8572
全国出版部関西ブロック
大阪市東成区中本1丁目3の6 ベルビュー森の宮215号 06(974)0791
東北ブロック事務所
仙台市小田原2丁目2の43佐幸 ビル403号 0222(95)8498
北陸ブロック事務所
富山市大町1区西部52 0764(91)3385
東海ブロック事務所
岐阜県羽島郡笠松町円城寺600 戸田方 05838(8)1864
中国ブロック連絡先
岡山市谷万成2の2の45 中川方 0862(55)0099 (校正者注:「全国〜0099」四角囲み)
p7
「竹中直人の放送禁止テレビよくやった」
糾弾闘争が始まる
これまでの経過と今後の闘い関西ブロック・Q
挿絵省略
【これまでの経過】
既にご存知の方も多いと思いますが、右記のビデオに対する差別糾弾闘争が、昨年末より関西ブロックを中心に取り組まれています。一一月二九日に、関係六者に対し「質問並びに話し合い申し入れ書」を送付したところ、六者連名の「回答文」らしきものが、一二月一六日に届きました。しかし、全く回答になっておらず、電話にて再抗議を行なうと共に、話し合いに応じる様、強く要請したのです。
その時の対応ですが、JVD社(販売元)平尾氏は、「販売元として取り扱ったこと自体まちがっていた。全障連から指摘されて『これはまずい』と思った。私は障害者差別意識等持っていない」と言ってきました。また、青年座・金井氏は、「役者は『やれ』といわれたらやらざるをえ
資料?@=『竹中直人の放送禁止テレビよくやった』の内容
?@松葉づえをついた10人位が踊り、最後に手を上げる為倒れる「ミュージカル」 ?A白い杖を持った人たちが横断歩道を集団で渡る「ミュージカルその2」 ?B「車イスの正しい使い方」といって車いすをもてあそぶ ?C「松葉づえの正しい使い方」といって松葉づえをもてあそぶ ?D手話をおちょくったモノマネ ?E「放送禁止しりとり」なるものを4人の男女が行い〈かたちんば〉〈めくら〉〈つんぼ〉〈らい病患者〉〈バセドーシ病〉などの言葉を差別的形容詞句つきで述べるが、ワザと「ピー」という音声をかぶせごまかしている ?F「僕の家族」なる場面で、指、足、下半身、鼻、目、頭等々が無い家族を紹介する ?G「楽しき家族」なる場面で突然父親が家族を殺し、笑いながら出勤する ?H「精神病院」を想定したシーンで「精神病者」の姿を偏見に基き誇張・歪曲 ?I「核と人間」」なるNHK放送の場面で難聴者のものまねとおぼしき動作 ?J脳性マヒ者のまねとおぼしき動作(体を振るなど)の人達が集団で横断歩道を渡る「ミュージカル」 ?K先頭に車イスに乗った人、その後ろに白い杖を持った人が数人並んでいるところへ、別の白い杖を持った人がぶつかり、白い杖を持った人は全員ひっくりかえり車イスに乗った人は壁にぶつかるという「ドミノたおし」なる場面(校正者注:「?@松葉づえ〜なる場面」下線、「資料?@=なる場面」四角囲み)
p8
(校正者注:以下、前頁「また、青年座・金井氏は、「役者は『やれ』といわれたらやらざるをえ」から続く文章)
ない。しかし今回のビデオは、後で見て『これは具合悪い』と思った。回答文もあれでは回答にならないと思ったが、とにかく判を押すように制作者の方から言われたので押した」と、いずれも責任逃れと、表面的な「反省」を繰り返すだけでした。しかし、一応話し合いについては応じる姿勢を見せました。
最も対応が悪かったのは、スマイリーオハラーズ・カンパニ―(制作者・脚本)の川田氏で、「ギャグがテレビでできないので、ギャグをちゃんとやりたかった。また車イスだってアイロンと同じモノなんだ、という意識で作った」と述べ、我々の抗議を何とも思ってない様子でした。
その後、創映新社や、木次氏(演出家)から独自の回答文が届き、スマイリーの川田氏を窓口に糾弾会の日程調整を行なう段まできたのですが、川田氏が不在で連絡がつかないため、再度文章で申し入れました。すると、二月一二日に電話があり、「川田は『一切話し合いに応じない。会わないと言っています」と、ワハハ本舗のメンバーなる者が、伝言として伝えてきたのです。このワハハ本舗は、実は表に出ていなかった第七の関係者で、彼等は雑誌のインタビューで「テレビじゃできないギャグってのもあるんですよね。ちょっと差別的になつちゃうのとかね。そういったネタをカラッと明るくビデオとか...作ってみたい。去年、竹中直人のビデオにぼくたちも参加して...もっともっとバカをやりまく
資料?A=抗議並びに話し合い申し入れ書
私達は障害者に対する差別や偏見をなくすためのとりくみを進めている障害者の団体で、全障連(全国障害者解放運動連絡会議)といいます。この度「竹中直人の放送禁止テレビよくやった」なるビデオがあることを知り、視聴したところ、私達障害者を明らかにあざ笑う「ものまね」が繰り返し繰り返し演じられており、言い知れぬ怒りと深い絶望感すら抱いたものです。
私達障害者は長い歴史の中で「役立たず」として殺され、またある時は「じゃま者」として家庭や学校・仕事の場からも排除され、人間として生きる最低限の権利すら奪われてきたのです。さらに小さい頃から「きたない」とか何をしでかすかわからない」と言った予断や偏見、「悪いことをするとあんな風になる」などの迷信を嘲笑と共に投げつけられてきました。
そういった差別と抑圧の歴史を打ち破る為、私達は自ら立ち上がり、障害者を排除する社会のあり方や人々の意識を変え・どんなに重い障害を持っていても地域の中で生き生きと暮らして行ける世の中を目指して運動を進めてきたのです。
しかるにこの度のビデオは、私達障害者のかっこうや差別故のしんどい場面をそこだけコマ切れ的に取り出し、ことさら誇張しまねて見せたり、私達が生きるために無くてはならない車イスや松葉杖、手話などを愚弄したりと、差別と必死で闘っている無数の障害者仲間への挑戦としか思えぬ内容を持っています。また「放送禁止しりとり」なる場面では、障害者や社会的偏見のある病院に対する敵意とも言える表現が、意図的に笑いの対象としてなされていま
p9
(校正者注:以下、前頁「去年、竹中直人のビデオにぼくたちも参加して...もっともっとバカをやりまく」から続く文章)
ります」と、差別を売物にすることを公然と明らかにしていた者達だったのです。
【二・一四、直接抗議行動を展開―権力の導入を断固糾弾!】
翌々日の二月二四日に、母子保健法改悪阻止の闘いの合い間をぬって、全障連メンバー一六名は、このワハハ本舗とスマイリーの共同事務所がある渋谷の第二本間ビルへ出向きました。するとワハハ本舗(二〇名位)は中から錠をかけ、「一切話しあわない」と宣言してきました。この日、我々が出向くことは川田氏にも内容証明郵便で伝えていたにも関わらず、不在。そして、あろうことか、ワハハ本舗は我々の抗議から逃れんと、渋谷署に一一〇番をかけ、制服四人・私服五人の権力の導入をかけたのです。しかし権力も、我々の整然とした抗議行動の前に為すすべもなく帰っていきました。
我々はワハハ本舗に対し、権力導入を抗議するとともに、彼等に対しても他六名と同文の抗議文を渡し、二月二〇日までに回答文を寄せることを確認ざせたのです。一方、青年座やJVDに対しては、窓口たるスマイリーの問題性を伝え、関係者間での内部調整を要求しました。
【差別事件糾弾闘争の強化に、三・八結集を】
この様な状態ですから、流動的ではありますが、何としても川田氏をつかま
(校正者注:以下、前頁「資料?A」の「意図的に笑いの対象としてなされていま」から続く文章)
す。私達は「言葉狩り」的に抗議をしているのではありません。ビデオでわざとらしくカモフラージュされつつ使われている言葉をどんな思いと痛みを持って障害者や他の被差別者が聞き、苦しんできたのか、その言葉の持つ背景・歴史性があればこその抗議なのです。
この他にも多くの問題を含むこのビデオは、作られたこともさることながら、市販されることにより不特定多数の人々に対し差別的な笑いをあおり、誤った障害者観を植えつけるという、極めて重大な事態をも引き起こしているのです。
私達はこのビデオに関係した全ての人に、心の底からの抗議をすると共に、以下の質問および話し合いの申し入れをします。私達の声に真摯に耳を傾け、社会的立場と責任を自覚され、誠意ある対応をされますよう強く訴えます。
質問
(関係者全員へ)
1.このビデオをどのような意図で、誰が発案・企画したのですか。
2.このビデオの制作に当り、障害者関係の資料・写真・映像や人の話など、参考にしたものがありますか。あれば、全て挙げて下さい。
3.あなたの障害者観を述べて下さい。
4.このビデオの内容が障害者差別につながるとは考えませんでしたか。
(販売元である株式会社JVD社長・株式会社創映新社社長へ)
5.このビデオを販売するに当って、どのような検討をしましたか。
6.このビデオを売れば儲かると思いましたか。またそれ
p10
(校正者注:以下、前頁「この様な状態ですから、流動的ではありますが、何としても川田氏をつかま」から続く文章)
え、三月八日の糾弾会に全関係者の出席を勝ちとるべく、闘争を継続させていきたいと思います。また、既に大阪府には事の重大性を申し入れており、今後、人権養護局等への提訴も考えています。
行政や大企業と違って、小さいグループ相手の糾弾
写真省略「2・14、直接抗議行動を展開」
闘争はなかなか難かしい面もありますが、現在そういったアングラ的なグループによる差別文化が、かなりの勢いで根を広げつつあり(障害者をモノ笑いにした歌集も売られている)、大衆意識への影響力も決してあなどれないのです。
私たちは、真に人間らしい生き生きとした文化を創っていくためにも、このような障害者をアザ笑ったビデオと、それを売ってもうけている企業を絶対に許すことができません。ぜひ多くの皆さんがビデオを視聴して、怒りを共にされるよう訴えます。
三・8糾弾集会の詳しい段取りは、各ブロック事務局に問い合わせしてください。(校正者注:「三・8〜ください。」四角囲み)
(校正者注:以下、p8〜「資料?A」の前頁「6.このビデオを売れば儲かると思いましたか。またそれ」から続く文章)
は何故ですか。
(出演している竹中直人氏・青年座代表者へ)
7・障害者のものまねをこのような形ですることをどう思いましたか。
以上、12月15日までに文書にて回答されたい。
話し合い申し入れ(校正者注:「話し合い申し入れ」大文字)
出演している竹中直人氏・青年座、企画構成のスマイリーオハラーズCOMPANY・木次ともたか氏、販売元である株式会社JVD・株式会社創映新社他、関係者全員の出席の下、私達との話し合いに応じる様、要請します。
1985年11月29日
全国障害者解放運動連絡会議関西ブロック
代表幹事 楠 敏雄
竹中直人殿
青年座代表者殿
株式会社JVD社長殿
株式会社創映新社社長殿
スマイリーオハラーズCompany社長殿
木次 ともたか殿
資料=?B回答文
拝復
貴殿発弊社等に対する大阪中央郵便局昭和六〇年一一月二九日付書留内容証明郵便による質問並びに話し合い申し入れ書(以下貴申し入れ書という)に対し御答えいたします。
弊社等が制作し、販売した「竹中直人の放送禁止テ
p11
レビ」なる題名のビデオ(以下本件ビデオという)によって貴殿及び貴団体に御不快な念を与えたことを深く御詫びいたします。
弊社等は、貴申し入れ書記載の御指摘の諸事項につき障害者の方々や車椅子等に対しあざ笑ったり、愚弄したり若しくは差別したり又は病気に対して敵意若しくは偏見等を抱いたりして制作し、販売したものではありませんが、既に本件ビデオの販売を中止すると共に、誌上に存する本件ビデオ全てを回収すべく作業中です。
今後は、貴申し入れ書の意を体し、障害者の方々等に御迷惑又は御不快の念を抱かせぬ様一層の注意をいたす所存です。
右御詫び傍々御知らせいたす次第です。
末筆ながら呉々も御自愛下さいます様祈り上げます。
昭和六〇年一二月二二日
・スマイリーズオハラーズカンパニー 代表 川田 耕作
・青年座映画放送株式会 社右 代表者代表取締役 金井彰久
・竹中直人
・木次ともたか
・株式会社ジェイ・ブィ・ディー右代表者 代表取締役 平尾忠信
・株式会社創映新社 右 代表者代表取締役 吉田敞
全国障害者解放運動連絡会議関西ブロック
代表幹事 楠 敏雄殿 (校正者注:前頁「資料=?B〜敏雄殿」四角囲み)
資料=?C 1月25日着・ 木次ともたかの回答文―
前略
私は「竹中直人の放送禁止テレビ」に対する抗議・並びに質問を受けました、木次ともたかであります。
まず、このビデオに於ける私の役割について申し上・げます。ビデオ制作上、作家から集まった台本をどう映像化するかというディレクティングの仕事、及び撮り上ったものをどう並べるかという仕事。つまり撮影から編集までの映像・音声の処理の仕事であります。
では、ご質問に答えて参りますが、拙文による誤解がなければと願っております。
このビデオは、竹中直人で何かビデオを作ろうというところからスタート致しました。私はこの段階で映像ディレクターとして参加しております。
「放送禁止テレビ」というタイトルで台本を集めようという案がスマイリー・オハラーズ・カンパニーからあり、それで行こうという事になりました。最初に集まった台本の中に『銀座のどまん中で「〇〇〇〜」と、ひわいな事を大声で云うとか、こえだめの中でシンクロナイズドスイミングをやる』とか、お茶の間のテレビでは出来ないようなもの。つまり不特定多数の視聴者を対象とした番組としては成り立たないものが集まって来ました。その中に、ご指摘の松葉杖を使ったものとか、車椅子を使ったものとかがあったわけです。これを映像化するに当たり、身体障害者を差別して面白がるという事は、全くなく、道具のひとつとして扱ったに過ぎないのです。...と云うと「なんて無神経なヤツだ」とお思いでしょうけど、以前から考えていた事を私なりに参加してみようと思ったわけです。というのは、今となっては思い上がりもいい加限にしろ!と云われてもしょうがないのですが、私個人の持論として、身体障害者をあわれむのが目的であわれんではいけないし、
p12
暗いものとしたりしてはいけないと、常日頃から思っていたからです。これだけの説明ですと、まるで身体障害をネタにして何か面白いものを作って何が悪いと思われそうですが、それは誤解です。私が思って来たことは、身体障害者を舞台に上げてスポットライトを、あてようという事ではないからです。みんなと一緒に太陽の下に出ようじゃないか、という事なのです。
身体障害者のボランティア活動をやっている永六輔が、こんな事を書いています。『サリドマイドの子供に「君達、寒いのに、半袖シャツでいられていいね」と云ったところ、云われた子供連はそのジョークに大笑いをしてた。しかし、その後で、母親達に「永さん!なんてひどい事を云うんですか」と抗議をされた』そうです。
その子供達は、自分の欠陥に目をそむけられるのが一番いやなんです。その事を、そういう形で冗談として云われても苦しんでいないのです。しかし、これは、道を歩いていて「やーい
○しろまる○しろまる△しろさんかく△しろさんかく」等と体の欠陥をはやしたてたりする邪悪な心とは全く違います。
BBCという英国の国営テレビ局で作った物語の中で、数人のグループの中に手のない人が一人居て、ある物事を決めるのに「じゃ、ジャンケンで決めよう!」と云って、その人が大笑いするシーンがありました。これほテレビ東京で放送されましたので、印象に残っているのですが。
先程、思い上った考えかも知れないが...と申し上げたのはこの事なのです。テレビでは不特定多数の、何百・何千万の人が見るわけですから、中には私の趣旨に必ずしも賛同してほくれないと思われますし、また大きな誤解を招く恐れがあるわけです。今回のビデオでは、タイトルを見てお店でお金を出してビデォテープを買うという、特定少数のものですから(数百本発売されたと聞いております)、誤解による不快感は与えないだろうと思い込んでしまった事です。
しかし事実として、この様に抗議の文書が届いたと云う事は、私の思い上がりであった事がはっきりしたわけですし、もしたった一人でも不愉快な思いをした方がいらっしゃるなら、そして、その時の怒りを思えば、ただただ謝まるのみです。心から深くお詫び申し上げます。
ただ、言い訳がましくなってしまいますが、私本来の人間性は信じて頂きたいのです。ご質問条項3の答にもなりますが、なんらかの形で身体障害者の方々にお役に立とうといつも思って参りましたし、事実、行為としても行なって参りました。
ごく親しい人に車椅子生活の子供もおりますし、私自身、いまは治っておりますが、二年ほど足が不自由だった事があります。また外見上の欠陥ではありませんが、私自身、心臓病という爆弾をかかえ、常に死の恐怖と隣り合わせに生活しておりますので、身体障害者の方々の苦しみに比べれば、何万分の一ですが、その苦しみは解っているつもりですし、これからも解ろうとして行くつもりです。
実際行為として、身体障害者に対する理解として、(偽善者と思われるのがいやで、誰も話したことがありませんが)色々な団体(愛の小鳩...など)に寄付という形で援助を行なっております。昨年暮れ一二月九日(身体障害者の日)にも匿名で致しましたし、数年前からの銀行に振り込んだ用紙が残っておりますので、即席の慈善行為でない事はお解り頂けると思います。以上申し上げた事は、ご質問があったからお答えしたもので、他人に宣伝するものではありませ
p13
1・19〜22
日教組教研集会に連続行動を行なう
第5回、障害児と共に生きる
全国親の交流会に250人結集
日教組教研修会で全障研教師グループの腐敗ぶりを改めてみる
目教組教研が、一月一九日から二二日の四日間、大阪で行なわれ、毎年の取り組みとして全障連も参加していきました。大阪で開かれるというので、一昨年の神戸集会を上回る行動をとろうと、共闘する教育労働者・親・全国青い芝の会を始めとした障害者団体と協議し、四日間を貫いて抗議と要請、さらに分科会での発言を勝ちとっていきました。
まず、今年の障害児教育分科会(第一三分科会)に初めて入場制限(リボンと入場証チェク)が行なわれる事態があったのです。これは、私たち障害者団体が
(校正者注:以下、p11〜「資料=?C」の前頁「以上申し上げた事は、ご質問があったからお答えしたもので、他人に宣伝するものではありませ」から続く文章)
(*前ページからの続きです。)
ん。
とにかく今回のご抗議に対しては、深く反省しております。謝ってしまえば済むという甘い考えではない事をお解り頂ければ...と祈るのみです。
今後、絶対にこの様な過ちをおかさないと誓うと共に、同じ目的に向って進む企画があった時は、ご相談にのって頂きたくお願い申し上げます。
一層寒くなって参ります。皆様のご健康とご活躍をお祈り申し上げます。 (校正者注:「資料=?C」四角囲み)
資料?D=創映新社からの 回答文
前略
昭和六〇年十二月月十三日付書留内容証明郵便で連名にて御答えいたしました内様は、弊社について、先般十二月月一七日K様との電話でお話した通りです。
弊社は本件ビデオの販売には一切関わっておらず、ビデオパッケージ上の弊社名記載については、弊社の配慮不足をお詫びすると共に、発売元のJVD社に対し厳重なる抗議を申し入れております。
もとより弊社は、障害者の方々に対し、何ら偏見等を抱くものではありません。今後、弊社の制作及び営業活動の中で、文化的社会的な配慮を充分に行なっていく所存です。
末筆ながら呉々も御自愛下さいます様祈り上げます。
敬具
昭和六〇年一二月二〇日
株式会社・創映新社 吉田敞
全国障害者解放運動連絡会議関西ブロック
代表幹事 楠敏雄 殿 (校正者注:「資料?D〜敏雄 殿」四角囲み)
p14
(校正者注:以下、前頁「1・19〜22 日教組教研集会に連続行動を行なう」の「これは、私たち障害者団体が」から続く文章)
写真省略「「排除のピケットに講義を続ける(1・20)」
この一〇年をかけて全障研=日共(発達保障論者) を批判し、障害者自身や親の発言を取ってきた実績を奪い、またもや差別君たちの発言を自由にしてしまう結果を生むものです。しかも、開会直前まで「入場制限はない」と公言していた、日教組中央本部の見解を引っくりかえしての暴挙でした。
これに対し、私たちは、一月一九日の全体会で、四〇人の障害者が中心になって情宣・抗議ビラを配布しました。そして、日教組が「共学」の方針を確立してきていることを評価しつつも、最近また後退していることを批判しました(「時の雷鳴」一五五号1参照)。
二〇日には、朝七時から会場前に結集し、入場制限
資料=抗議文
私たちは、障害者に対する差別や偏見に対し、障害者自らが闘っている障害者解放運動団体の全障連(全国障害者解放運動連絡会議)です。貴組合におかれましては、日頃よりの私たちの運動への御支援・御協力に感謝しております。
さて、私たちは結成以来、障害児と健常児を切り離し教育する、盲・聾・養護学校の義務制に反対し、共に生きる教育の重要性を訴えてきました。そして私たちは、自らの隔離され、差別されてきた生の体験を、一人でも多くの現場の先生力に聞いて頂きたく思い、日教組教育研究集会に、この間参加してきたのです。
しかるに、この度の教研集会では、私たちが主として参加する第一三分科会(障害児教育)において、あろうことか、リボン制の導入による人数制限が行なわれました。そもそも狭い会場しか用意せず、しかもこのような形で参加者を絞るということは、私たち障害者や共に生きようとする親を、意図して排除しようというもの以外の何物でもありません。一体「開かれた教研」はどこへいったのでしょうか?私たちは、今回、貴組合がとられたこのような措置に対し、強い怒りを覚え、抗議するとともに、明日からの分散会においては、即刻リボン制による人数制限をやめられるよう訴えます。
私たち障害者は、幼い時から、施設や養護学校へ隔離され、様々な社会経験や人間関係を奪われ続けて来ました。その私たちを、今また、共に連帯して頂きたい教育労働者の方々が、こうして排除する意味は極めて重大と言わざるを得ません。また、現に、リボン制による制限など知らずに、遠方より来ている仲間もいます。障害者が必死の思い
p15
で介護を探し、また差別的な街構造や乗車拒否と闘い、この場へ来ている事実の重みを、一体どう考えるのですか?
そのことを提起し、私たちの心の底からの抗議に代えます。
一九八六年一月二〇日
東京都豊島区巣鴨3-34−3 フラワーコーポ303号
全国障害者解放運動連絡会議(全障連)
全国代表幹事 中川一二三
日本教職員組合中央執行委員長 田中 一良 殿(校正者注:前頁「資料=〜一良殿」四角囲み)
(校正者注:以下、p13〜「1・19〜22 日教組教研集会に連続行動を行なう」の前頁「障害者が必死の思い」から続く文章)
を取り払うよう要請行動を行ないました。これに対し、なんと大教組(日共グループ)や全障研系教師がピケットをはり、暴力で排除してきたのです。会場が公共機関であり、使用している部屋はその中のほんの一部にも関わらず、玄関で排除しロビーすら使わせず、長時間寒い外で待たされているのにトイレすら使わせません。
私たちは五時間にも及ぶ抗議行動をつづけ、日教組本部の再検討を求めました。その結果、新たに三〇名の参加者の追加を勝ちとったのです。ところがハレンチにも、これまで私たちに「ルールを守れ。障害者の参加を認めるな」と、不当な排除を助け、「帰れ」コールまでしていた全障研の輩が、私たちの行動の成果をかすめとり、紛れて入り込んでいったのです。しかも、中で私たちが入場制限に抗議すると、「ヤジをするな。ルールを守れ。帰れ」と罵倒を浴びせるのです。
こうした、全障研グループの全く不当な行為は二一日・二二日にも続きました。しかし私たちはこの一〇年間の運動の成果を守り、差別発言には断固として糾弾し、障害者を隔離し生活を奪っていくような実践には強く抗議していきました。こうした私たちの行動は、分科会での討論の中でもはっきりと成果をもたらし、これまでの実践を自己批判する教師、共に生きる教育実践を感動をもって報告する教師を作りだしています。いや、全体的に見ても、私たちと共同する教師グループが一挙に広がり、レポート数も大きく伸びています。全障研グループも、もはやあからさまには隔離体制を全面に出せず、「統合」「共同」という言葉を並べてきているのです。しかし「全面発達」を取り下げることもでき
p16
写真省略「広がりをもった親の交流集会(1・19) 」
ず、混乱した論理と、ますます人間性を失った「実践」に埋没してきています。
この行動を通して、私たちは全障研=日共の腐敗した運動をかいま見たといわざるをえません。「ルールを守れ」と言いながら、私たちが入場制限を取りはらうような成果をあげると、それにのかって厚顔で入場する。「ヤジをするな」と言いながら、自分達の意見を批判する助言者には露骨な誹謀・中傷を行なう。しかも抗議する私たちに対し「処分しろ」とまで言いきる。これが彼等の本質なのです。〈処分!〉まさにそれが彼等の運動の実態であり、教育の荒廃を深める彼等の実践なのです。
全障研の障害児教育独裁の状況は、もはやくづれさろうとしています。その危機感とあせりが、今年の日教組教研に端的に現われていると思います。私たちの真の実践を広げ、深め、彼等を完全に追いつめていき、地域で共に生きる教育を勝ち取り、公教育を変革していきましょう。
二五〇人の結集で親の結束を広げた
第五回目の「障害児とともに生きる親の全国交流集会」が、一月一九日に兵庫県教育会館で開かれました。今年は、日教組教研集会が大阪で開催されることにともない、兵庫県で並行して行なわれたのですが、全国から二五〇人を越える参加が見られました。
集会の内容も、保育所入所、就学運動、普通学級での学習保障、高校進学問題、「生きる場」など地域でともに生きる運動、などと、生活と教育全体の課題が巾広く取り上げられました。そして一つ一つの課題について、各地の親から実践と現状での問題点の報告があり、発言が多くて時間があっという間に過ぎてしまいました。
この取り組みも六年目、五回行なわれる中で、参加者も広がり、毎回課題が明確になり、さらに地域で共に生きるための実践報告が多くなってきました。障害者自身の解放運動とともに、障害者とともに生きる親の運動が広がり独自の団結を作ることは、今後の障害者解放運動全体にきわめて大きな意味があるでしょう。
p17
2・13〜15
母子保健法改悪阻止闘争の報告
厚生省抗議行動に障害者の大部隊結集
全障連と全国青い芝の会の共闘が実る
母子保健法改悪阻止全国総決起行動が、二月一四日・一五日に行なわれました。
これに先き立ち、全障連は全国青い芝の会と共同で、二月一三日に東京都障害者福祉会館で独自学習会を開きました。参加者は五〇名を越え、母子保健法そのものの問題点、改悪の具体的内容、そして母子保健法改悪に関わる社会的状況(福祉政策、予算、遺伝操作等)について、報告と提起がなされ、障害者解放運動の立場でこの闘いをどう位置づけるかを学習しました。また並行して、国会議員への要請行動も行ないました。
この、全障連と全国青い芝の会の共闘はきわめて大きな成果をあげ、一五日の独自の厚生省抗議行動に続いたのです。
二月一四日には、午後六時から、社会文化会館で「母子保健法改悪に反対し、母子保健のあり方を考える全国連絡会」が主催して、第三回目の全国総決起集会が約四〇〇名の結集で開かれました。ここでは、産婦科医の立場、障害者の立場、女性の立場、自治体に働く立場、プライバシー保護の立場から、それぞれ報告と闘いの視点が提起されました。
障害者の立場で提起された二日市さんは、障害児と女性は独立した人格を持っているから、親が障害児を隔離するのをやめ、共に生きる運動をやっていこうと話されました。また、プライバシー保護の立場で提起された泰野さんは、女性管理・新生児管理は国民総背番号制に必ず結びつく、さらに企業の情報管理に移されると警告を出されました。
そして、二五日には厚生省抗議行動が展開されました。まず、全障連と全国青い芝の会が、午前一〇時から独自行動を行ないました。そこでは、養護学校義務化阻止闘争で展開された行動の再現かのように、車イスの障害者が四〇人を越え、障害者の部隊だけで一〇〇人をはるかにオーバーする大部隊を結集したのです。全障連からのアピール、全国青い芝の会からのアピール、各地の運動の報告、そして怒りのシュプレヒコール、私たちの闘いの
p18
声は小雨の降る厚生省前を覆いました。
一一時半からは、「全国連絡会」の部隊が合流し、二五〇名にも及ぶ人々が厚生省に抗議の声をぶつけていったのです。
厚生省を徹底して追いつめ廃案を勝ちとろう
写真省略「〈上〉厚生省に怒りのシュプレヒコール(2・15) この圧倒的な障害者部隊を見よ」
写真省略「〈下〉全障連・全国青い芝の会共同学習会(2・13) 」
その後、集約集会が続いて開かれ、各地の運動の報告がされました。ここでは、徐々ですが、運動が広がっており、着実に厚生省を包囲する陣型が作られている確信が持たれました。また、改悪阻止だけでなく、母子保健法そのもののもつ問題点を充分考え、母子保健行政の変革を作る運動の必要性が強く提起されました。
厚生省は、現在も改悪の国会上程を断念していません。しかし、私たちの運動におされて、今だに法案の作定もできていないのです。国会上程阻止、廃案まで共に闘いましょう。
p19
ショート時評シリーズ PART?U
ともに生きる自然界その3
反公害運動の立場から 鈴木紀雄氏
遺伝子工学は新たな差別を作る
挿絵省略
(3)遺伝子工学は大変な問題です。
人間がかってに遺伝子を操作して自分の好きな生物が作れるんです。一番考え、られるのは生物兵器です。病気を広めるバクテリアをばらまく。しかし、ばらまくと敵も味方もやられてしまう。そこで大腸菌に病原性をもたせ、その人から出てきたら生きていけない様に遺伝子を操作して大腸菌を作ります。そうすると他の人には感染しないで敵だけを殺せる、そういうのを考えています。
大腸菌は遺伝子操作がやりやすいので一番簡単に作れます。どうやらソビエトやアメリカでできているらしくて、実験が失敗して菌がもれておかしか病気が起こっている様です。こんな研究は絶対させてはいかんのです。人間がかってに生物を作る必要はないんです。自然の状態が一番いいんです。
そういうと、「遺伝病が治せる」と言ってきます。遺伝病はあるし、場合によっては治療は必要です。しかし、そこには「イカン人間だ」という発想がある。「イカン人間」というのはないんです。
精子銀行というのができています。ノーベル賞は人脈で取れるのに、「ノーベル賞級の人が世の中の良いこと、悪いことを決める」と言っています。自分達が世の中を支配するといった発想です。そういう人達が精子銀行を奨励しています。しかし、さっきのイネの話しの様に、こういう社会は絶対にダメになります。いろんな人がお互いに助け合って生きていく社会がいいのに、自然の教えてくれることに、遺伝子工学は逆行していくんです。特定の人間が世の中を支配する、この考え方は根強くあります。この考え方を発展させると「障害者」の差別はもっと激しくなります。
もう少し言いますと、米はコシヒカリとかの一種か二種しか作っていない。他の米はダメになっています。科学肥料で管理しているからうまくいくが、気象条件が変われば絶滅します。今は綱渡りをしています。冷害に強いとか、干伐に強いとか、品種はたくさ
p20
んあった力がいいのです。「遺伝子工学でまた都合のいい品種を作りましょう」と言っている。
しかし私も、一つ悩みがあります。ガンの治療に使うインターフェロンや、不足しているホルモンをバクテリアに作らせると言われると、考えてしまう。「病気になるというのは自然でホルモンが不足していていい」と考えられるのかどうかです。治療に遺伝子工学は必要だと言われると、ぼくの反論は迫力がない。しかし他のことに関しては確信を持ってダメだと言えます。これについては後で論議してほしいと思います。
環境工学は人間性を奪っていく
挿絵省略
(4)次に、環境工学についてですが、環境工学は環境を〈もの〉として考えてしまっている。昔はよく川で子供が泳ぎました。そこには貝がいて、石を拾ったり、魚を追いかけたりしました。今は川が汚いので整備し、コンクリートで固めてあります。そしてプールを作る。プールには石ころはない、魚もない、遊ぶものがなにもないので、風呂の様に水を使って泳いでいるだけです。おまけに親が監視している。昔は親なんていなかった。これは、浮袋を使って浮いているだけで、自然とのつながりがないし、管理しないと人間も育たなくなっているということだろう。
環境工学は人間も管理の対象にしてしまい、人間性がないのです。子供は花が育つと感動します。土を掘ったら虫が出てくる、そんな経験がないんです。喜びが感じられない。人間疎外が起こっているわけです。ものとか、生物とか、人間とか、全てを工学的にとらえることが間違いです。その結果、共存共栄がなくなり、人間の健康、人間性も消失していっています。
(1)〜(4)の工学的な考え方をなくしていくことが、「障害者」差別をなくしていく根本的な問題を含んでいると思います。「有害物質で『障害者』になったらあかん」とわざわざ言う必要はないんです。
*このシリーズは全障運解放講座八四での鈴木氏の講演を出版部の責任で編集したものです。次回が最終回になります。
出版物案内
KSK全障連(全国機関誌)月刊200円
年間定期購読(送料込)2500円
KSKP全障連関西ブロックニュース月刊150円
年間定期購読(送料込)1950円
全障連第10回全国交流記念大会
基調・分科会基調・レポート集1000円
〈郵便振込 大阪6-57342 全障連全国出版部〉
全障連全国出版部 大阪市東成区中本1-3-6 ベルビュー森の宮215号 ??(06)974-0791
「章ちゃんの青空」
新屋英子・一人芝居(新作)
障害児と共に生きる親の叫び!
全国の学校で上演して下さい
問い合わせば全障連全国出版部まで(校正者注:「出版物〜出版部まで」四角囲み)
p21
近況
国庫補助金の補助金率カットにより「福祉切り捨て」が深刻に
政府―厚生省を糾弾するとともに、今こそ自治体闘争を徹底強化しよう
挿絵省略
【福祉切り捨てが一挙に】
政府―厚生省は、八六年度予算案で、「福祉切り捨て」の一貫として「高率国庫補助金」の大幅カットを大々的に行なってきました。それは、今年度予算に際して、単年度だけという条件で一割カット(8/10↓7/10)をしたものに、来年度は多くの制度で1/2にしようというものです。これによって、厚生省の社会局(身体障害者の制度の多くはここにあります)・児童家庭局の予算削減はなんと一八七〇億円にもなるのです。内訳は表の様になっていますが、あくまで「福祉切り捨て」=政府―厚生省の責任放棄であることを基本におき、詳しく分析していきたいど思います。
【治安対策としての福祉】
まず、多くの制度が1/2にカットされていく中で、今年度と同様7/10に据え置かれている項目があります。結核医療費補助金・精神衛生等補助金・生活保護費補助金・特別障害者手当負担金・児童扶養手当負担金です。この項目を見ると、最低生活(本質は人間としての生活保障ではない)の維持、子育ての最低の手当であり、これらはあくまで社会防衛的制度他なりません。
つまり、治安対策=社会防衛政策に関しては国=政府が抱えこまざるをえないと考えているのです。裏返せば、軍事費と同様に国家防衛のための金は政府がだし、政府が責任をもつということです。だから、「最低生活をしたいなら国家の方針に従え」という出し方と言えます。その中に精神衛生等補助金が含まれているのを見る時、保安処分新設攻撃の本質を改めて見るし、精神衛生法改悪の動向の本質も見えてくるのす。
【自治体の財政が圧迫し、サービスが打ち切られる】
次に、この7/10から1/2にカットされたら、私たちの生活にどんな影響が出るか考えます。国庫補助金の補助率が減ったからといってすぐに実際の制度が変わるわけではありません。補助率が減った分は各自治体が負担することになっており、各自治体がカバーすれば制度は維持されます。
ところが三割自治と言われるように、各自治体の財政基盤はきわめて弱く(税制度が悪いのです)、とてもカバーするどころではありません。ちなみに大阪府の場合はこの予算案でいくと七六億六千万円以上の負担増になります。したがって各自治体はこの負担を逃れるために、私たちにしわ
p22
よせしてくることも明らかです。
施設での問題は前号で分析しました。それと同様に、まず窓口で施策を受けられる人(対象者)に多くの制約をつけ、減らそうとしてくるでしょう。この間、生活保護で露骨な制限をされてきたことを考えてください。日常生活用具にしても、ホームヘルパーにしても、申請する時に様々なチェックがされると思わ
(校正者注:以下、各補助金の補助率や86年度の減額についてまとめてある。箇条書きにて表す。)
(事項)結核医療費補助金、(補助率)59年 8/10 60年 7/10 61年 7/10、(86年度の減額) 空白
(事項)精神衛生等補助金、(補助率)59年 8/10 60年 7/10 61年 7/10、(86年度の減額) 空白
(事項)生活保護費補助金、(補助率)59年 8/10 60年 7/10 61年 7/10、(86年度の減額) 空白
(事項)身体障害者保護費補助金、(補助率)59年 8/10 60年 7/10 61年 1/2、(86年度の減額) 122億5,165万円
(事項)老人保護費補助金、(補助率)59年 8/10 60年 7/10 61年 1/2、(86年度の減額) 538億6,205万円
(事項)婦人保護費補助金、(補助率)59年 8/10 60年 7/10 81年 1/2、(86年度の減額) 4億30万円
(事項)世帯更生費補助金、(補助率)59年 空白 60年 6/10 81年 1/2、(86年度の減額) 8億5,933万円
(事項)児童保護費等補助金、(補助率)59年 8/10 60年 7/10 81年 1/2、(86年度の減額) 1、131億496万円
(事項)身体障害児援護費等補助金、(補助率)59年 空白 60年 7/10 61年 1/2、(86年度の減額) 7億7,860万円
(事項)母子保健衛生費補助金、(補助率)59年 8/10 60年 7/10 61年 1/2、(86年度の減額) 2億3,710万円
(事項)福祉手当給付費補助金(特別障害者手当負担金)、(補助率)59年 8/10 60年 7/10 61年 7/10、(86年度の減額) 空白
(事項)児童扶養手当負担金(60年8月から)、(補助率)59年 10/10 60年 8/10 61年 7/10、(86年度の減額) 13億4,851万円
(事項)児童手当国庫負担金(61年6月から) 、(補助率)59年 空白 60年 空白 61年 空白、(86年度の減額) 40億6,317万円 (校正者注:「(事項〜万円」四角囲み)
れます。それは障害者への監視体制・管理体制が強められることにもなります。
それから「受益者負担」が一挙に強化されるでしょう。すでにある制度(自治体独自のも含む)で、自治体負担が増えるわけですから、財源を作るためには利用者から金を取るのが一番早いからです。そこで障害基礎年金が取り出されます。つまり「年金制度が変わって金が多く入るのだから、福祉施策を受けたいのなら金を出せ」というわけです。介護人制度の有料化、在宅福祉の有料化がさかんに言われていますが、これからの福祉は金で買わなければならなくなります。そこで貧富の差、障害の程度による格差が大きくなります。
さらに、すでにある福祉制度の切り捨てが考えられます。特に自治体が独自に先進的にやってきた制度が維持できなくなり、民間委託(当然有料化で)や実質的廃止になっていくでしょう。そうでなくても、財政的事情をタテに、これから積極的な政策の推進は行なわれないと考えられます。すると、これまで自治体に対して要求闘争を行ない、わずかではあっても自立生活の保障をさせていた運動はどうなるのでしょうか。
【自治体の責任で地域での自立を保障させよう】
ところで、「在宅福祉」については、1/3から1/2に補助率がアップするといっています。すなわち、「施設政策と在宅政策を平等にし、在宅政策に重点を移す」と言っています。
ところが、政府―厚生省の言う「在宅政策」とは、ショート・ステイ、デイ・サービス事業をさし、それは施設の地域利用を内容としているのみです。これでは私たちのいう「地域での自立」とはかけはなれています。
しかし、私たちの運動にとって、この「政策転換」は一つの土台になるとも考えられます。そもそも「地域福祉」という言葉でさえ、私たちの運動の実績の上に出させたのですから。すなわち、これまで各地自治体に差別糾弾を行ない、地域での自立のための政策を確立するように迫った時、自治体は「政府(補助金のこと)の裏付けがないからできない。政府に要求するから」と言って逃げてきました。しかし、もうそんなことは言えなくなったのです。
まず、国―厚生省と各自治体の負担率は1/2ずつですから、その分だけ自治体の決定権が大きくなります。また、施設政策と在宅政策が同じ国庫負担率ですから、自治体の裁量で在宅政策が積極的に行なう条件ができたのです。こうなると、金がない自治体、しかし政策方針とその具体化を
p23
決定するのも自治体となります。
【自治体闘争の強化にむけ全障連方針を実践しよう】
本来、人間の生活の最低条件(生活権)を保障するのは国の責任です。その国が責任を放棄してきました。このことは決定的に糾弾されねばなりません。しかし、身近な生活に関わる福祉施策は自治体が担うのも当然です。その自治体に大きな責任あ、逃れらえれなく出てきたのです。
私たちは、この機会に、自治体闘争を改めて考える必要があります。今、徹底して自治体を追求し、私たちが要求する「地域で自立する」政策を真剣に実現させていく機会なのです。そのためにも、この間全障連が方針化してきた、地域闘争、差別行政糾弾闘争、またその闘いと連動した「差別実態白書づくり」を全力で闘うことが求められていると考えます。
58号の目次
3月、実力糾弾闘争の総力を、静岡へ!
・石川重朗君の飯田中学校入学実現! あらゆる戦術を駆使し、長期実力闘争を 2
・赤堀再審―無罪判決を勝ち取れ!ハンスト闘争に合流し、3月集会に決起を 5
いよいよDPI・日本会議結成へ 4
「竹中直人の放送禁止テレビよくやった」糾弾闘争が始まる 7
1・19〜22、日教組教研修会に連続行動を行なう 13
第5回、障害児と共に生きる全国親の交流集会に250人結集 16
2・13〜15、母子保健法改悪阻止闘争の報告 17
ショート時評シリーズ・?U
ともに生きる自然界〜反公害運動の立場から〜 その3 鈴木紀雄氏 19
近況 国庫補助金の補助率カットにより「福祉切り捨て」が深刻に 21 (校正者注:「58号の〜深刻に21」四角囲み)
編集後記
挿絵省略
3月、まさに戦さの月がくる。石川闘争は、全障連はじまって以来の激戦をも覚悟している。若い仲間は、よく、義務化阻止闘争(文部省1週間)、金井闘争(1ヶ月)の経験がないことで気おくれしていると言っていた。今こそ、この闘いに想いをこめてほしい。出版部は、大会報告集も追い込み中。いそがしや、と一つグチ。
全障連
全国障害者解放運動連絡会議
No.58
全国機関誌 発行日/86・02・22
連絡先/大阪市東成区中本1丁目3-6 ベルビュー森の宮215号
TEL 06-974-0791
月1回発行 頒価 200円
年間定期購読 2500円(郵送料込)
郵便振込 大阪6-57342 全障連全国出版部
作成:
山口 和紀