『全障連』No.44
last update:20220704
■しかく文字起こし
表紙
KSK No.44
全障連
全国障害者解放運動連絡会議
一九八四年一一月一五日発行(毎月二回一・一五の日発行)
一九四八年八月二〇日第三種郵便物認可
KSK通巻一三号
写真省略(校正者注:自然の中に建つ家の写真)
目次
11・11赤堀さんを生きて奪い返せ、全国総決起集会に結集しよう 1
うち続く面会禁止を許さず、署名・ハガキ活動を基礎に赤堀さんとの面会にかけつけよう 2
母子保健法の改悪に反対し、母子保健のあり方を考える全国集会に参加して 4
全逓新聞差別マンガ糾弾会 全逓労組が反省文を提出し、今後のとりくみにも合意を実現 6
資料―反省文三つ
全障連第9回大会分科会討論の報告 9
交通/生活/教育/労働/施設/生きる場/医療/赤堀闘争
全障連各ブロック連絡先 5
ショート時評シリーズ
身障福祉法改訂後施設生活はどうなる?A 大谷 強 20
時の雷鳴?H 楠 敏雄 3
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11・11 赤堀さんを生きて奪い返せ、全国総決起集会に結集しよう!
静岡地裁「差し戻し審」に勝利し、早期再審を宮城刑務所の獄中弾圧を許さず、面会・文通の強化を保安処分新設の国会上程を打ちくだく巨大な闘いを
強まる障害者抹殺攻撃の情勢
来る十一月一一日、赤堀中闘委主催による全国集会が決定されました。この闘いは、この間の宮刑当局によるすさまじい獄中の弾圧獄外との分断攻撃によって赤堀さんを痛めつけ獄中闘争を圧殺しようとすることに対する闘いであり、早期再審を実現するための闘いです。裁判状況も検察側がすでに破産した古畑鑑定の再度のつじつま合せに「新証言」を出す等、何としても赤堀さんを犯人として再審決定をはばもうとしており、決して楽観できません。更に、保安処分の国会上程をめぐる動向も、六月九日第二三回「意見交換会」をもって休止し、政府―法務省は正案作りをもって再
写真省略「静岡・島田市現地調査にて(ほうらい橋)」
会―上程しようとする状況にあり、来春上程を狙っているとみられています。
こうした攻撃の中で、精神病院では患者への虐待、虐殺の事実が明らかとなり糾弾、追及を受けても居直り続ける病院当局や、何らの責任もとろうとしない厚生省。それどころか、厚生省は、宇都宮病院における患者虐待、虐殺の事件を契機に「指導監督等の強化の徹底」として、「精神障害者」への隔離・抹殺の攻撃を強めようとしています。言うまでもなく、増々排除と抑圧の中で苦しめられ殺されようとしていのは「精神障害者」です。
障害者の生活実態に根ざした共生共闘で戦いの強化を
こうした厳しい状況の中で十一・十一赤堀全国集会は開かれようとしていますこの全国集会をもつて、赤
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堀さんへの獄中弾圧を許さず、再製開始をかちとり、保安処分立法化を阻止する巨大な闘いの新たな突破口としたいと思います。そして厳しい中でこそ問われる三者共闘の内実を深め、「病」者、障害者の生活実態に根ざした共生共闘を推進しこれを機に来春期へと闘いを築きあげていこうではありませんか。
全国集会への総結集を!
赤堀さんを生きて奪い返そう全国総決起集会
時・十一月十一日午前十一時―
所・静岡市ときわ公園(静岡駅より徒歩)
主催・赤堀中央闘争委員会 (校正者注:「赤堀さんを〜委員会」四角囲み)
うち続く面会禁止を許さず、署名・ハガキ活動を基礎に、赤堀さんとの面会にかけつけよう
全障連赤堀小委員会
仙台拘置支所に今なお閉じ込められている赤堀政夫さんに対して、当局は"懲罰"をちらつかせながら獄中での弾圧を強めてきています。赤堀さんは不眠・食欲不振・きつ音・ぢについて訴え、更に「肝心なことむずかしいこと・大事なことがうまく話せない」「手紙にも書けない、面会でも話せない、匂わすこともできないことがある」と訴えています。獄中での弾圧が強化されていること、そして新規面会禁止やOさんの面会禁止などの重圧が赤堀さんを手紙が書けない状態にまで追いこんでいます。私達は、弾圧に抗して不屈に闘う赤堀さんとの文通・面会を強化し、獄中弾圧を許さず、獄外にあっても赤堀さんの怒りを一人ひとが共有し、闘っていかなければならないと思います。
三月から始まった「三月十日以降に文通をはじめた」人に対する新規面会禁止六月二日新規面会禁止に抗議し理由説明を求めたOさん(赤堀さんが「おかあさん」と呼び、絶人な信頼関係をつくりあげてさた赤堀中央闘争委員会の委員長)への面会禁止、更には六月からやられた「赤堀の面会者に限って身体検査をやる拒否すれば面会させない」というボデイチェッチに対して説明を求めた三里塚空港粉砕闘争を現地で闘っている仲間への面会禁止が八月下旬に下されてきました。
九月に入ってボディチェックはなくなったものの、面会禁止の攻撃は続いています。
九月十日赤堀中央闘争委員会は新規面会禁止に抗議し、拘置所に対して全国から集まった署名をもって交
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渉要求を行ないました。この行動に全障連から十人の仲間が地元仙台を中心に関東・北陸・中四国からかけつけ面会を軸に共に闘い抜きました。
十日に先立ち九月八日交渉を要求する要請書を提出するためにおもむいたメンバーに対し「説明する必要はない。そちらの要求は受け付けない」と受取りを拒み10日も交渉には応じず門前払いの高姿勢を貫いています。更に許せないことには交渉を要求する私達に対して「全員面会禁止」恫喝を行なってきたのです。この日、午前中の面会で、八王子の仲間に対して「この前(八月)門前でさわいだ」として面会「不許」、Oさんに対して面会「不許」とし、更には全障害の仲間に対し「外でさわいでいるやからの仲間だから」という理由で面会妨害が行われました。
赤堀さんにとって文通・面会は再審闘争を闘う上で最も重要な獄中と獄外を結ぶ絆です。赤堀さんの無実を確信する新しい仲間や、これまでの信頼の上にたった仲間の面会は、共に限りなく赤堀さんを勇気づけるものです。これをすべて断ち切ってしまおうとする攻撃が今かけられてきているのです。全国の仲間達!新規面会禁止を撤回するための要請署名ハガキ活動を展開し、文通・面会を強化していこうではありませんか!
挿絵省略
時(とき)の雷鳴(らいめい)
全国副幹事・楠 敏雄
?H 今こそ共闘関係の内実を問い直そう
ここ数年、我が全障連は非常に積極的に共闘関係の拡大を企ってきた。
まず障害者運動の枠では障害連・視労協との関係について、これまでの単なる課題共闘から路線をめぐる討論にまでふみこんで運動の統一に向けた準備を開始している。
一方、反差別の視点に立った共闘では、部落解放同盟との関係を軸に名実共に広がりと深まりをめざしている。
さらに反権力の立場に立った闘う人民との共闘については様々な問題を含みながらも、三里塚闘争との連帯・共闘を継続している。
そして労働運動との共闘においては、やはり総評・自治労・日教組などとの関係を重視し、中央段階においては「障害者と労働者の連帯会議」の場を通じて各課題についてその内容の深化を企ようとしている。
こうして見てくると、我々の進めている共闘関係は
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まさに「多種多様」の一言につきる程実に幅広く進められている。この幅広さについては、私なりに十分評価しうるものと確信しているのだが、しかしこれは同時に当然のことながらきわめて多くの矛盾を内包することとなる。そして、それぞれの組織や団体が明確な路線と主体的な力量をもち合わせていない時、そうした矛盾はよりいっそう深刻化し、更には共闘関係の崩壊はもとより、その当該組織の存立をすら危うくしかねないこととなるのである
この様な中にあって、今我々にとって最も大きくクローズアップしてきている矛盾は、即に周知の通り、労働運動との共闘に関するものである。全逓新聞におけるあの差別マンガは論外としても、年金や介護保障に関する総評との間の考え方の相違や、大阪における労金労組との間に作られてしまった深い溝などは、ある意味では起こるべくして起こった問題といえよう。今この段階で個々の問題について詳しく述べることは差し据えるにしても、相方が何の為の何を目的とした共闘なのかを曖昧にしたままでの関係や、単なる「もたれあい」では、こうした矛盾の拡大はいかんともしかたなかったのかもしれない。その意味からいえば、相手側を批判する以前に、まず我々自身の総括が深刻に問われるのである。
いずれにせよ我々にとって、共闘のあり方を問い直すには、おそらく今がかっこうの時なのではないだろうか。
母子保健法の改悪に反対し、母子保健のあり方を考える全国集会に参加して
関東ブロック幹事・猪野千代子 (校正者注:「母子保健法〜千代子」四角囲み)
写真省略 (校正者注:母子保健法改悪に反対し、母子保健のあり方を考える全国集会の会場の写真)
去る10月13日(土)午後6時から東京都勤労福祉会館にて「母子保健法の改悪に反対し、母子保健のあり方を考える10・13全国集会」が行われた。主催は、全国障害者解放運動連絡会議(全障連)、82優生保護法改悪阻止連合会、障害児を普通学級へ全国連絡会、母子保健に従事する心理相談員の会、全日本自治団体労働組合(自治労)の5団体。この5団体の共闘により、母子保健法改悪の問題点を全国的によびかけをして、約一〇〇名が集まった。
母子保健とは、生まれる前から就学までの子供とその母親の健康を一体のものとして管理する施策。母子保健法は一九六五年に制定され、母親や乳幼児に対する保健指導・健康診断など
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を定めています。
ところが、今年の3月、社会党の上田哲氏の衆議院予算委員会での質問と、それに対する政府答弁により、85年を目途に法改訂されようとしていることが明らかになった。これについて、心理相談員の山本勝美氏が全障連ら5団体に対してはたらきかけ、5月以降半年近くにわたって討論を煮つめてきた。5月7日には社会党政策審議会で河野道夫氏と話し合い、5月11日には厚生省を交じえての懇談会も行われている。
この集会においては、現場からのアピールとして、医者・母親・保健婦の発言と、全障連の矢内氏からは、ヴァンサンカン差別記事糾弾闘争において、医者が若い人向けに差別を助長するような記事を書かせていたことが明らかになったと報告された。そして各団体のアピールとして、全障連の中川氏は「合成洗剤を使うと障害児が生まれるからよくないという主張は優生思想につながり、障害者を抹殺することになる」と発言した。
改悪攻撃の本質を見抜き反対運動にたちあがろう
今回改訂されようとしている主な内容は、?@行革の一環としての、検診の市町村移管、?A母子保健手帳を学校保健などにも拡げ、個人の生涯にわたる健康を管理すること、である。この問題点は、個人の健康に関する情報を市町村が統一的に把握することにより障害児を健常児から早期にふるい分け
※(注記)(校正者注:
※(注記)穴あけパンチで穴が空いて判読不能)特殊学級・養護学校へと隔離・管理していこうとすることである。そして母親の健康をも管理することによって、「障害児の発生予防」、つまり障害者は生まれてはならないという優生思想をおしつけるということだ。
母親を圧迫することによって障害児を産めなくし、産まれてからも「早期発見」をして障害児・健常児をきっちりふり分けようというのが狙いなのである。私たち障害者は自らがこの改悪によって殺されていこうとしている事実をしっかり認識しなければならない。今回の集会では、障害者の参加は数えるほどだったが、全ての障害者が自分で考え、討論・学習することによって、全障連として障害者の立場からこの改悪攻撃に反対していこう。
全国事務局/関東ブロック
東京都豊島区巣鴨3丁目34の3 フラワーコーポ303号 03(918)8572
全国出版部/関西ブロック
大阪市東成区中本1丁目3の6 ベルビュー森の宮215号 06(974)0791
東北ブロック事務所
仙台市小田原2丁目2の43 佐幸ビル403号 0222(95)8498
北陸ブロック事務所
富山市大町1区西部52 0764(91)3385
東海ブロック事務所
岐阜県羽島郡笠松町円城寺600 戸田方 05838(8)1864
中四国ブロック連絡先
岡山市谷万成2の2の45 中川方 0862(55)0099 (校正者注:「全国事務局〜0099」四角囲み)
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全逓新聞差別マンガ糾弾会
全逓労組が反省文を提出し、今後のとりくみにも合意が実現
写真省略(校正者注:糾弾会の会場の様子)
全逓新聞の差別マンガをめぐる第二回糾弾会が、九月二九日大阪の部落解放センターでもたれた。
全逓側は、阪本中央組織部長、塚本編集部長、岡本関西地連執行委員、藤原大阪地本副委員長と作者の鴨沢セリ氏が出席し、私たちも全障連・大阪青い芝の会りぼん社・全逓組合員の障害者をはじめ約四〇名が参加した。
まず最初に、阪本、塚本、鴨沢各氏から「反省文」が
資料?@
反省文
全逓信労働組合中央本部 組織部長 阪本信良
この度、全逓新聞マンガが欄におきまして、自民党、政府の農業行政批判の例として、脳性マヒの表現をつかい、この障害に苦しんでいる人達に深刻な衝撃を与えたことは、弁解の余地もないことであり、深く反省をしております。このことは、今日迄の全逓の障害者差別の理解・取り組みが不充分であったことを示しており、心からおわびを申し上げます。
全逓新聞は組合員、家族に、組織がどういう態度で諸課題に取り組んでいるか、諸情勢についてどう受けとめているかを周知、伝達を旨とする機関紙であり、誤った考えを流布したことについて、その与えた影響の大きさを痛感いたしております。
労働者の労働条件はもとより、政治・経済・社会などの改善を求めて闘っている組織として、今回の差別用語使用による差別拡大についてその責任を痛感しており、この反省の上に立って、今後、全逓として障害者問題の組織内への教宣、周知、そのための学習等、職場での実践を通じて、私達のもつ差別性の克服につとめてまいる所存です。
過日の8月11日の対話集会におきまして、いろいろいただきました御指使にもとづき、全逓の教宣を担当する責任者として、現時点で考えていることについておわびと反省文といたしま
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す。
29日には学習の場が設けられておりますので、そのことをうけて、さらに努力をいたします。
一九八四年九月二九日 (校正者注:「資料?@〜二九日」四角囲み)
(校正者注:以下、前頁「現時点で考えていることについておわびと反省文といたしま」から続く文章)
読み上げられ(後に掲載)全逓側の基本姿勢が述べられた。その後、全逓組合員でもある障害者仲間から、自らのおいたちの中で受けた差別実態が次々と出されまた他の仲間からも差別マンガを知った時の怒りと悲しみがとくとくと語られていった。
これに対し、全逓側も二度にわたる話し合いの中で深く反省し、今後組織としてできる限りのとりくみを進めていきたいとの決意が述べられ、今後の基本姿勢についての話しに進んでいった。
私たちは、?@全逓各機関で障害者差別についての学習を実現し、?A全逓新聞を始めとして、組合員・家族への啓発活動にとりくみ、?B反差別・人権確立のプロジェクトチームの編成の中で障害者自身の意見・要求を十分反映させてもらう。?Cまた、全逓組合員でもある障害者の組織化の方針を打ち出してもらい、?D今後障害者解放運動との課題共闘を積極的に進めてほしいと要求した。
これに対し、全逓側も各項目について基本的に合意し、とりわけ?Cの全逓組合員でもある障害者の組織化については早速に大阪から具体化していく決意が出された。
以上の合意にたち、今後代表者間で具体的につめていくことを確認していった。
この糾弾会に参加した障害者仲間からは「全逓はこの差別マンガで障害者を殺そうとしていた。この糾弾会でようやく共に生きる姿勢を出していたが、言葉だけで終わるのではないか心
資料?A
反省文
全逓新聞編集部
塚本洋治
私は、先日の貴団体との話し合いのなかで多くの苦悩のご意見をお伺いし、事の重大さをひしひしと感じるとともに、無意識のうちに障害者を差別してしまっていた現実を思い知らされあまりにもこの問題に無知でありすぎた自分白身が情けなく思ったことを素直に申し上げたいと思います。
それは脳性マヒ者のみなさんがこれまでの人生において、いかなる苦しみ、いかなる差別にも耐えて、しかしそれでも必死になって全障害者の解放と、障害者差別の根絶のために立ち上がっているその真しな気持にうたれたからであります。
私は今日まで障害者の問題について無関心でありましたし、むしろ避けてとおってきたことに対して深く反省し、この機を境にして今後新聞の編集はもちろんのこと、日常生活のなかにおいても、みなさまの運動をほんとうに理解し、ともに活動でさるよう努力して参りたいと思います。
また、新聞の校正段階では、どうしても字句に重点を置いてしまい、結果としてこのような障害者差別マンガを見過ごしてしまった
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責任については、
※(注記)(校正者注:
※(注記)穴あけパンチで穴が空いて判読不能)く弁解の余地のないところであり編集部一同深く深く反省するとともに、心からお詫びを申し上げ、今後、編集部は一層学習を深め、差別意識の払拭に努めていきたいと思います。
一九八四年九月二九日 (校正者注:前頁「資料?A〜二九日」四角囲み)
(校正者注:前頁「言葉だけで終わるのではないか心」から続く文章)
配だ」との声もあった。しかし、障害者解放運動と労働運動の共闘、障害者と労働者が共に生きる運動がまた一
※(注記)(校正者注:
※(注記)穴あけパンチで穴が空いて判読不能)広がった闘いであり、ここにまた一つの大きな成果がかちとったと考える。
挿絵省略
資料?B
反省文
鴨沢セリ
私の差別マンガに端を発しました今回の出来事は、障害者の心を深く傷つけてしまった事件として、私の心から終生ぬぐい去ることは出来ないでしょう。
8月11日の話し合いでは、障害者に対する自分の対応が如何に観念的なものであったか...ということを思い知らされ、ショックでした。そして果して将来、自分がどれだけ障害者の心情を理解し得るのか、不安と申し訳けなさでいっぱいでした。
ただ、何かを得て帰京したことは確かです。それは自分がマンガを描く立場にありながら、自分自身の中に「たかがマンガ...」という安易な気持ちがあったことに気付いたことです。また、「おれは差別なんかしてないぞ...」と、言いきかせること自体が差別であることをも知りました。
何よりも感動させられたことは、障害者かいきどおりを懸命にこらえ、対応して下さった優しい心根でした。これまで生きて来た五十有余年の自分は、一体何をして来たのだろう...。或はごま化しと逃避で過ごしたのかも知れない...、そう思うと心が重くなる一方でした。
私のマンガがどれ程障害者の人権を侵害してしまったのか、健常者の私には到底想像も出来ませんが、罪の意識は重くのしかかって参ります。
今はただひたすら反省し、謝罪するしかありませんが、まず、身近な障害者をはじめ、家族や友人と偏見そして差別について話し合いたいと思っております。そして少しでも障碍者の立場を理解する努力をすることが、つぐないであると念じております。
しかし、行うことは大変です。そしてどこまで理解出来るかも疑問です。ただ、しなければ...という気を持ち得たことは、これからの私の人生にとって大変な収獲でした。
不十分とは思いますが、私の反省とさせていただきます。
一九八四年九月二六日 (校正者注:「資料?B〜二六日」四角囲み)
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全障連第9回全国大会 分科会討論の報告
交通*生活*教育*労働*施設*生きる場*医療*赤堀闘争
この分科会討論の報告は総括全体会で報告されたものを編集しました。
交通分科会
報告=藤井 彰 (校正者注:「交通〜藤井彰」四角囲み)
交通分科会は、基調と基本要求要綱案の読み合わせを行った後、各地域のレポート報告をしました。
レポートは、大原闘争を支援する会、富山の梅次さん、山口のバス闘争実委、東京の足を奪い返す会からありました。
討論の課題としては、第一点は、点字ブロック設置を徹底させること。安全ベルト着用強制の行政指導に対する差別糾弾を行うことです。
第二点目は、乗車料金割引制度をただしていくべきである。これは介護者や周辺の人々に「障害者は得をする」という差別的意識をうえつけている。ただし、一方で障害者の生活保障の補てんという面もあり、障害者の生活保障の闘いや、周辺の差別意識の変革闘争が並行して必要であるということです。
第三点目として、?安全ベルト着用の行政指導に対して強い反感があること。
写真省略(校正者注:分科会の会場の写真)
?障害者自身が乗車するにあたって安全運転を要求することを根底にする。?ベルト強制の背景には、交通機関の労働強化がある。
第四点目として、優先座席については障害者と地域とのコミュニケーションを奪っていくという意味では良くない。
以上が一日目の討論です。二日目は、国鉄の労働者を交えて、障害者と交通労働者の連帯した行動をどう作っていくのかについて論議した。最底考えられるものとして、今後一年の間に全障連として交通労組の中央へも討論集会をよびかける
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ことを確認しました。
最後に、基本要求要綱案については採択されたことを報告します。
生活分科会
報告=八柳卓史 (校正者注:「生活〜卓史」四角囲み)
一日目の午前中は、基調の読み上げとレポートの発表を行いました。
レポートは、?@京都の児童扶養手当のそ及支給を求める会から、行政が障害者に知る権利を奪っておきながら、制度を知った時に申請しても、本来もらえるはずの当時からさかもどっては支給しないという形で権利を奪っている現在の日本の役所のしくみを明らかにしている運動の報告がありました。ここからは、全障連全体として支援の要請と、福祉制度についてすべての障害者が知る権利を行使できるよう行政の義務として運動をしていただきたいと要請がありました。
次に、徳島の差別調査「要援護者名簿」糾弾闘争の報告が徳島障害者の権利を守る会と徳島赤堀さんと共に闘う会から出されました。これは民生委員が「精神障害者」を調査し、様々な差別的項目で地域の中で管理していこうという姿勢で行ったもので、民生委員の差別的実態を白日の下に露わした闘いの報告でした。
他にレポートとしては、門真市障害者の会、障害者の足を奪い返す会、関西ブロック生活小委から出されましたが、共に生活・住宅・介護のレポートでした。
午後からは討論で、主に基調の内容の一番最後にありました「障害者解放センターを作っていく時の克服すべき課題」のところに問題があると出されました。そこで話された内容の一番大きなこととして、介護者の位置決定の問題で、まだまだ障害者自身の中で認識しきれてない情況もあるし、位置を決めるということが逆に社会や周りに押しつけられて介護をうける権利を狭められている現状をあいまいにするという発言がありました。
次にヘルパー有料化とヘルパー派遣協会や委託についてどう反対するのかという立場が問われました。これに対しては、例えばヘル
写真省略 (校正者注:分科会の会場の写真)
パーによっては有料世帯にだけサービスがうけられ、無料世帯はサービスが低下されるとか、申請権者が本人から世帯主にさせてしまうという問題点が指摘されました。
また、個人のケースでは
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他人介護料を受けている障害者が結婚した場合に打ち切られてしまうということで、これに対し山形や大阪での闘いの報告がされました。
いずれにしても、現在の介護保障制度がまだまだ介護に障害者が合わせていく現状があるということで、核になる介護者をどこに作り上げていくかが、今回の基調の中で触れられてないと批判が出ました。
それに続いて、基調の中に差別の実態とか問題を入れるべきだと要求があり、全体的には「克服すべき課題」については一応問題提起に終えるということで承認を得ました。
二日目は実質的討論を行い、全障連として三つの柱、介護保障要求者組合作り、実態調査、地域での障害者解放センターの建設について提起がありました。
大阪青い芝の会では四年前に「要求調査」という形で障害者と健全者が共同して作業をやっていく中で健全者の意識変革を進めつつ在宅障害者の掘りおこしもやってきた。その中で労働と生活の問題がクローズアップされ、そこから障害者解放センターという名称で運動を進めようとしていると報告されました。
また東京では、在宅障害者たちが家族に依存し自分は作業所に通うような情況が強くなり、「生きがい対策」にからめており、意識変革が必要だと提起されました。また介護が均等に受けられる様に障害者自身が集まって自分たちのグループを作っている実践が報告されました。
福岡では、在宅訪問活動の中で親の様々な妨害に対してどのように闘っていくのかという活動が出されました。
神戸からは「えんぴつの家」というセンターを作って、そこで自然食品のバンを作る作業を通して障害者差別と闘う力をつけていくなど、各地の運動の報告がされました。
そういう意味では、全障連が提起している解放センターは、各地の闘いが先行的に行っている中で提起されているものと考えます。
最後に基調採択ですが、基調全体が行政文書の様で難しいので判りやすく書いて欲しいという要請がありました。また問題箇所はあるが、今回の議論をみんなで確認しつけ加えることで採択することになりました。
みんな頑張っているな
送られてきた通信からとりあげてみました
*「とうなす」87号=とうなす会 *「大阪赤堀さんと共に闘う会ニュース」*「歯動」=兵庫県社会福祉労働組合=岩永さん解雇撤回闘争 *「全国『精神病』者集団ニュース」=同事務局=赤堀さんと共に。地域活動報告。宇都宮病院糾弾闘争報告。 *「ひまわり通信」1号=梅次春美=職安交渉について *「たんぽぽ通信」=足立・教育と福祉を考える会=裕美ちゃん、がんばって。直史君と新田の子供達。 *「労安対ニュース」=尼崎労働者安全衛生対策会議 *「おたより」=兵庫県スモンの会 *「障害の地平」=視覚障害者労働問題協議会=雇用促進法の抜本改正に向けて運動しよう。カイ
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ロプラクティックの電話帳単独分類の問題。 *コロニー裁判を闘う会=10・2裁判へ。 *「わらび通信」=福岡わらびの会=福岡の精神医療の状況などについて。 *「リハビリテーション」=鉄道身障者協会 *「研究所通信」=部落解放研究所 *「IYDP情報」=国際障害者年日本推進協議会=障害者関係映画祭(10・24〜26) *「積木」=豊能障害者労働センター1=追悼梶さん *「百人委員会ニュース」=刑法改正・保安処分に反対する百人委員会=シンポジューム「宇都宮病院と保安処分」報告。 *「創りだす会だより」「障害者」の生活と教育を創り出す会=宗教と障害者差別。第4回親の交流会(11・18)。特定郵便局交渉。*「歩歩」=障害者の教育と生活を町で進める会 *「ゼンコロ」*「創る会ニュース」=介護人派遣セ
教育・保育分科会
報告=楠 敏雄 (校正者注:「教育〜敏雄」四角囲み)
今年の教育分科会は二つの分散会に分かれて行なわれました。その一つは就学
写真省略 (校正者注:分科会の会場の写真)
闘争で、もう一つは従来と少し方法を変えて障害児教育とは何かと原点をもう一度問い直す分散会にしました。
第一分散会では、主には今静岡の地で6年間、就学闘争をやっている石川重朗君の飯田東小学校への転校闘争を軸に報告がされました。今、非常に厳しい県教委の攻撃の中でまだ転校が実現できていない、この壁をどうして打ち破っていけばいいのかを、親の想い、支援の闘いの報告を通して討論を進めました。
その他、山口県の吉田臨太郎君の就学闘争、三里塚の小川明夫君の就学闘争、更には神戸の阿部裕
※(注記)(校正者注:
※(注記)穴あけパンチで穴が空いて判読不能)君の保育所入所の勝利、京都の椿本君の就園闘争など各地の具体的とりくみが報告されました。
こうした中で、特に金井・梅谷の闘いで勝ちとった成果をどのように石川闘争など他の就学闘争に反映してきているのかが問われ、これが不充分なのではないかという指摘がなされました。また、闘いを進める上での親と支援者、親ご教師の関係についてもっとしっかりと問い直さないと強い闘いが組めないのではないかという提起も出ました。
いずれにしても、今、就学闘争は静岡・岡崎・長崎・宮崎など多くの地で暗礁にのり上げて非常に厳しい闘いを強いられているわけですが、なんとしてもこれらの闘いの壁を突破するた
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めに全国の人たちの多くの支援が求められていると確認されました。
次に第二分散会ですが、親の立場から石川善朗さん、障害者の立場から滋賀県で養護学校を卒業したばかりの杉本君、また関西大学の山下先生から研究者の立場で、そして豊中の教職員組合の山口先生の四人からの報告をうけました。
石川さんからは、最初盲学校に幻想を持って行ったけれども、その期待をみごとに裏切られ、自分たちが重朗君の現実をちゃんと認めて、それと向き合って生きていくこと抜きに教育はありえないと確信した。そして地域の健常児との関係をどう作っていくのか、盲学校へ行って関係が完全に切れてしまったという反省の上に立って、今転校闘争を続けているという報告でした。そして地域で生きるとはやはりしんどい、あたり前なんだけれども現実はあたり前にならない、そのしんどさから逃げずに立ち向かっていくことが、実は親・障害者本人に差別に負けない強さを培かっていくことにつながっていくと提起されました。
次に、杉本君からは、自分が訓練と治療という名の下で施設をタライ回しにされ、やっと養護学校に行くと今度は教師から人間性、主体を無視されて、ある特定政党を支持せよと強制された。支持しなければいっぺんに態度が変わるという、普通の学校では考えられないひどいことが公然と多くの養護学校の中でやられている実態。また、かろうじて地域とつながってき障害者をむりやり寄宿舎に入れさせる実態に非常に怒りを感じていると報告されました。
山下先生からは、文部省が今進めている特殊教育がただ反動的だという問題ではなくて、国や資本に都合のよい人間を作っていくために、障害者も一番下の部分として特殊教育に閉じこめる攻撃の質を見抜く必要がある。また、全障研の言う「発達保障」は、実は人間の無限の可能性をのばすというのではなくて、逆に人間の可能性や多様性を抑圧する実態になっており、これをハッキリ見て批判していかなくてはならない。そして、私たちがあえて"発達"という言葉を使うのであれば、それは自分たちの主体をもったやり方で、仲間ととも生み
※(注記)(校正者注:
※(注記)穴あけパンチで穴が空いて判読不能)した成
(校正者注:以下、p11〜「みんな頑張っているな 送られてきた通信からとりあげてみました」の前頁「*「創る会ニュース」=介護人派遣セン」から続く文章)
ターを創る会=介護専従体制について考える。趣意書。 *「共に闘う会ニュース」=仙台・赤堀さんと闘う会=赤堀さんの近況。宮刑による弾圧強化を許すな。 *「がっこ」=教育を考える会=各地で就健反対の集会が。第20回日本臨床心理学会総会への招待(11・3〜4)。 *「すたこらさん」=おおさか・行動する障害者応援センター=阪神電鉄の障害者乗客に対する態度についての意見書。リビングハウスだより。 *「けんぶんろく」=グループ西遊記 *「とうきょう青い芝」=障害基礎年金の成否、次期通常国会に。 *みつびし長崎造船労組機関紙
挿絵省略
p14
(校正者注:以下、前頁「仲間ととも生み
※(注記)(校正者注:
※(注記)穴あけパンチで穴が空いて判読不能)した成」から続く文章)
果を全体のものに返していく、つまり差別をなくす闘いの主体として成長していく、それがまさに"発達"の中味なんだということを話されました。
それから、山口さんからは、教育内容について問い直す必要があるとまず提起されました。つまり、単に障害児と健常児が一緒に学ぶという仲良し学級を作るのではなく、どんな学級集団を作り、授業をするのか、どんな人間に育てていくのかがもう一度問われない限り教育内容の創造はできないということです。その中で東京と大阪のある団体間での論争が紹介されました。東京のある団体は「障害児健常児の教育はあくまで同一空間(普通学級)で同一時間(ずっと)を使ってやるのが絶対的に必要で、たとえ
※(注記)(校正者注:
※(注記)穴あけパンチで穴が空いて判読不能)の中でほとんど解らない子がいたとしてもその子なりに存在しているのだからそれを大事にすべきだ」という主張をしていた。これに対して大阪の方では「同一空間・同一時間は基本的に同意できても、同一教材という形ではたしていいのか。やはり障害をもった子、差のある子に応じた教材を作っていくのが大事ではないか」という論争があるので、全体で深めていく必要があるのではないかという提起でした。
また、地域で生きると言うけれども、どうも形態だけになっていて、親も教姉も障害者自身が地域の中でどんな生き方をするのかをもっと問わなければ、地域保障の意味がない。さらに進路保障についても、単に中学卒業後の受け皿作りに終始していては非常に危険で、やはりどんな生き方をするのかを問う必要がある。また、全障連に対する要請として、もっと親や学校にいる障害児に働きかけをしてほしいという提案がなされました。
まとめとしては、障害児
写真省略(校正者注:大会の壇上の様子の写真)
の為の教育ではなく、障害者差別をなくす教育を追及する。また普通教育そのものを具体的に変えていく闘いを提起していく。そして一人ひとり自分たちの生き方を変革していき、「養護学校か地域か」という形態だけでなく、内容・方向性を吟味することが問われていると確認されました。
最後に分科会基調は、要望として日教組に対する評価について、日教組も方針を前進させてきているのでより具体的に記述してほしいとの意見が出されました。要求要綱についても具体的意見がが多く出されましたが、これはもう一度もち帰って論議し補強する方向で、とりわけ保育所と幼稚園に関する項目について要求を明らかにする必要が確認されました。
p15
労働・解放作業所分科会
報告=岡田徳太郎 (校正者注:「労働〜徳太郎」四角囲み)
労働の第一分散会は就労の問題をやり、まず最初に依然として出たのは、障害者に対する職業安定所の職員の対応が非常に悪いということです。
第二には能力判定が職安の命令で行われる実態で、これによって障害者を企業に紹介する選別になっている現実が明らかにされました。
その為これからの方針として、特に行政交渉の強化と、能力判定や職安のしくみに関する学習会を各ブロック労働小委員会でやっていくことを確認しました。
また要求要綱では、障害者の就労後の連絡機関につ
写真省略 (校正者注:分科会の会場の写真)
いて書かれてないとの意見があり検討課題にしました。
また各地で行われている障害者と健全者の共闘関係で、根っこの共同作業所などの例が報告され・討論されました。
第二分散会では解放作業所についてですが、労働省へ最低賃金法の適用除外や身障雇用促進法の職種除外規定などの差別規定について、障害の重い者の要求に応じて働けるようにするため、なくしていく闘いを作る。また、雇用率を達成していない企業名を公表し、社会的制裁を加える要求をし闘っていく方針が確認されました。
次に厚生省へは、元来労働能力のいかんを問わず障害者が人として等しく働き生活する権利を保障すべき労働省にその責任を問い働きかけるとともに、厚生省として障害者が地域で自立して生活できるよう現行法体系を根本的に改めるよう要求し闘っていくことを確認しました。
施設分科会
報告=栗山文治(校正者注:「施設〜文治」四角囲み)
施設分科会では、最初と終りだけ全体で討論し、一日目は施設小委員会・準からの経過説明が行なわれました。
第一分散会では
※(注記)(校正者注:
※(注記)穴あけパンチで穴が空いて判読不能)に施設障害者の外出の自由化をどうすればかちとれるか、また行政改革にあって自己負担が打ち出されていることをどう考えるかについて話されました。
p16
第二分散会では、"福祉労働者の障害者解放"とい
写真省略(校正者注:分科会の会場の写真)
うテーマが話され、福祉労働者の組織化をはかっていったのですが、充分にかみ合わず次回に継続することになりました。
二日目の全体会議では、基調については行政闘争に取り組むことをつけ加えて採択しました。そして、今後の施設小委員会は中四国ブロックで活動を行っていき、やがて全国の仲間を結集していくこととしました。
生きる場交流会
報告=平井誠一 (校正者注:「生きる〜誠一」四角囲み)
今年始めて生きる場交流会をやったわけですが、集った地域は、海谷尚司君の運動に関わっている奈良の方、大阪の松原で運動をしている方、大阪青い芝の会、滋賀の方々など様々におられました。
一日目は、討論の設定の仕方にも問題があったのですが、何を柱にして話してよいか判らず、まず自己紹介と自分たちがやっている運動報告をしました。その中で、働くこと(共同作業所)と生きる場とはやはり違うのではないか、また運動と生活が必ずしもキチンと立てられていないのではないかということになり、今運動をやっている人たちが本当に地域で生きていると言えるのかという疑問も含めて話しになりました。
その中で、全障連や青い芝の運動が一〇年になり、重度の障害者がアパートを借りて自立する運動がここまで進んできたわけですが、この一〇年間の運動の成果をふまえつつ総括をしなければならない時期にきているのではないかと考えられます。
その中で、大阪においても、これまで普通学校に障害児を入れる運動をやってきたわけですが、義務教育段階を含めて障害者と健全者が共に生きていく場を地域で作りながらやっていく方向でとりくみがなされてきています。
全国どこででもあると思いますが、学生の時だけ障害者に関わって、学校を卒業すると障害者と全然関係ないところで生きていくこともあり、障害者が持ち続けてきた健全者に対する不信感ないし不安感の中で、運動が一方で進み、一方で自分の生活の中に不満や不安が残るという形が続いている人も多いと思います。そんなことがこれまでの大会では「生きる」とか、日
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常生活の中のドロドロした問題などやはり話しができなかったし、そんな分科会もなかったが、今回生きる場交流会の中でそういうものを出し合いながらやっていけたと思います。
まとめとしてはキチッと
写真省略(校正者注:分科会で話し合う様子の写真)
なってないんですけれども、生きる場というのは、自分がそこに住んで生活することで、自分の住んでいる地域の人々の意識を変革し、地域の変革をし、そして人間本米の姿を追及する場としてあるのではないかということです。運動と地域で生活することとにギャップを感じてきていた者にとっても今回の交流会の中でもっと話しをしていけたということ、また共通した問題・課題を今後模索しながらやっていきたいと思います。来年は各地で実践されている生きる場・生きるそのものの運動の報告を受け、連絡をとりながらもっと内容を深めたいと思っています。
医療分科会
報告=犬塚和子 (校正者注:「医療〜和子」四角囲み)
全障連はそもそも優生思想との対決、障害者抹殺との闘いを行っているので、今大会の医療分科会では優生思想、優生保護法との対決という事に討論の焦点をあてて行いました。
一日目は自己紹介から始めて、参加者一人一人の考えを述べあい自分の中にある優生思想を点検しましたその中で出された物を二、三、述べます。一つは、「早期発見・早期治療」について、看護学生の立場から出してもらい論議をしました。次に、女性障害者の立場から、今の医療技術や装
写真省略(校正者注:分科会の会場の写真)
置に危険を感じるが今の技術・装置により出産すると自分の命が危うくなると知り中絶したという報告がなされました。また別の女性障害者からは、出産の体験で医療装置が優生思想に基づいているということを知
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り、自分は安産すると胆にすえて生きるしかないのではないかという提起もありました。こうした生々しい医療による差別や非人間的実態を、実際受けた体験によって明らかにしていったわけで、一つ一つの事例にそれは良いとか悪いとかといった問題とは別のものと考えます。
一方、最近の医学界の重要な動向としてある遺伝子工学の問題・人口受精についても論議されました。これについては、単に障害者抹殺だから反対というのみにとどまらず、社会的背景や動向にも目を据えていく必要があるということです。それは、この三月に七ヶ国サミット賢人会が行なわれ、エネルギー危機・食料・人口抑制政策問題など総大なテーマを論じているのですが、その中で「劣った者が生まれないようにする」と、ダウン症の子が生まれたら三日以内に生命を抹殺せよ」と恐ろしいことを言っています。それを肯定的に紹介しているのが『世界』六月号なわけです。こうしたことから、世界的に行なわれている障害者抹殺の動向について具体的行動をしていくために、全障連として抗議文を送ろうと分科会で確認しました。
同時に、最近のマスコミでは次々と「障害者は劣った血」とかいう書さ方がされていますが、その一つ一つにもきちっと内容を調べて抗議をしょうと確認しました。
そして、一人一人の内にある優生思想を点検しながら、優生保護法改悪とか、母子保健法改悪の攻撃と、闘う視点を明らかにする必要が述べられました。
最後に、今回は要求要綱等について採択はできませんでしたが、話し合いの場を作れたと考えます。今後も話し合いを深め、各地で学習会をもち、次回は要求要網案をきちっと決めることにしました。
赤堀闘争分科会
報告=平松幹子 (校正者注:「赤堀〜幹子」四角囲み)
今回は始めての形式で講座をもち、仙台赤堀さんと共に闘う会、厚見中放火事件を考える会、そして全国「精神病」者集団の大野さんからの提起を受けました。
まず仙台赤堀さんと共に闘う会からの提起です。差し戻し審から一年たった今この差し戻し審で赤堀さん自身の主張を確信に差別裁判糾弾の質でかちとっていく必要がある。また、宮刑での新規面会禁止や大野さんへの面会禁止などの獄中弾圧に対して、これが獄中と獄外をたち切るものだからどんなに細いパイプであってもつないでいくために文通・面会を強化していく闘いが必要で、それとともに宮刑への、抗議署名運動にとりくもうと提起されました。
厚見中放火事件を考える会の人は、今年の五月二八日に、無罪判決確定と思われた名古屋高裁で逆転判決(有罪)が出された。これに対し、山内さん自身の怒
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りと、裁判所が実際ありえない放火方法を認定して差別判決を下したことへの怒りをこめ今後の闘いを提起されました。
そして、大野さんからは現在進められている刑法改悪・保安処分新設攻撃の歴史的流れと攻撃の本質を明らかにしていただきました。この攻撃は国家社会の体制維持のために反社会的行為をする人を排除・排外・抹殺または強制医療による抹殺をしていくものであるとし、そして保安処分ならず養護学校義務制にも貫れている保安処分思想を説明されました。また個人の生活体験を含めて、家庭内や社会的な保安処分攻撃にも言及され、とりわけ赤堀さんが家庭や友人・地域社会から排外され放浪生活を余儀なくされていき、その放浪
写真省略(校正者注:分科会の会場の写真)
生活の中で赤堀さんがデッチあげられていくことの中に、「精神障害者」への差別実態、人民の中にある差別意識につけこんで警察がデッチあげた実態を分析され、だからこそ一人一人が「精神障害者」との共生共闘の関係を考えていく必要が述べられました。
そして三者共闘の原則の中でとりわけ差別構造の中で対立させられている、障害者・部落民・朝鮮人の構造をうち破っていく理念をもった三者共闘を進めていこうという提起がありました。最後に戦争とファシズムにむかおうとする時に出てくるのが優生思想であり保安処分思想で、この思想を打ちくだいていこうと結ばれました。
二日目は、二つの分散会に分けて討論をしました。第一分散会では、とりわけ徳島から、赤堀さんとの文通・面会の重要性について自分たちが地域の「病」者との係りの実態を報告され自分たちが思っている以上に文通・面会が重要なんだと強調されました。また仙台からは、文通・面会について赤堀さんの近況を聞きながらやって欲しい。また文通の際はその最後に必ず赤堀さんに負担がかからない様に「返事はいりません」と書いて欲しいと要請がありました。
東京の聴覚障害者の裁判を支援する人から、東京拘置所では手話を認めようとしない攻撃があり、面会の時に少しずつ手話を入れて認めさせていこうとしているとの報告がありました。さらにレポートとして出された野田事件について、現在文通も面会も少ないわけですが、青山さんはひらがなが読めるので文通を増やしていこうと確認しました。また厚見中放火事件を考える会の闘いには支援カンバをし、全国的な連絡体制をしていく方針を確認しまし
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た。
第二分散会では、「精神病」者が主体となった闘いを強化していく方向が出されました。そして青森のロボトミー裁判に対し被告側がロボトミーの権威者を出廷証言し、裁判の引きのばしを企っている状況と、「これから近代的なロボトミーが可能だ」といって宇都宮病院事件と関連させて精神医療の強制が行なわれる可能性があると報告されました。そして精神衛生実態調査阻止の闘いの成果をふまえ、今後「精神障害者」との共闘を強めながら保安処分新設阻止の闘いに全力をあげることを確認しました。
挿絵省略
ショート時評シリーズ
身障福祉法改定後の施設生活はどうなるか?A
大谷 強氏
従来は障害別、程度別、目的別に施設が定められていた。厚生省の指導も、個別に通達が出されていた。今回の改正により「身体障害者更生施設等の設備及び運営について」と、更生施設、授産施設、療護施設を一括して、運営の基準と施設の最低基準がまとめられた。各施設にまたがる共通事項も定められ、施設の統一的運営がすすめられようとしている。
更生訓練では「その有する能力を活用することにより」社会参加ができるよう、訓練が行われることが、うたわれている。リハビリテーションを重視した施設運営が考えられているかのようである。
療護施設でも、「その身体的及び精神的条件に応じ、機能を維持し、又は機能の減退を防止するための訓練に参加する機会を与えるように努めなければならない」と定められた。
障害者個人の障害の状態に対応して訓練する方向が明確に打ち出されている。リハビリをしても効果がないと判断された障害者は、施設の中でも合法的に取り残されてしまう。逆にリハビリ訓練をうけた障害者は幸福だろうか。訓練を終えて社会で生活できるようにもしなったとしても、雇用を含めて生活できる場が保障されてない実態が、いぜん存在している。施設のなかでは訓練の効果はあがっても、地域社会でその成果が生かせないのでは、リハビリテーションの意味はない。身障福祉法はこの点では何も実効力をもっていない。
施設内で職員も障害者もリハビリテーションのことには、これまで以上につき合わされるだろうが、むなしさだけが蓄積されると思われる。
運営の適正化は障害者施設でもすすめられよう。入所・退所にあたって総合診断の会議はかつてかち義務づけられていたし、その他随時開かれることになっていた。今後、厳しく会議が義務づけられ、入所期間も通達などで定められた通りに運用するよう指導されよう。施設からの"追い出し"が奨励されることも考えられる。地域での受け皿づくりが早急に課題となってくるであろう。
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全国闘争の案内
11月11日 赤堀さんを生きて奪い返そう!全国集会
午前11時〜静岡・常磐公園
11月12日 差別と闘う共同体連合、厚生省・労働省交渉
午前9時30分厚生省玄関前
11月16日 全国障害者職よこせ集会
午後6時〜自治労会館
*刑法改悪―保安処分新設粉砕、拘禁2法上程阻止全国総決起集会
午後6時〜日本教育会館
11月17日 障害者職よこせ行動=労働省交渉
午前10時〜衆議員第2議員会館
*第4回障害者と労働者の全国連帯集会
午後1時〜労金会館(お茶の水)
12月1日 全国幹事会
12月2日 ノーマライゼーション研究会シンポジューム
12月7日 世界人権宣諸実行委員会東京集会
12月10日 同 大阪集会
12月16日 石川重朗君の飯田東小学校転校実現全国集会(予定)
挿絵省略 (校正者注:「全国闘争〜挿絵」四角囲み)
編集後記
日本では中曽根が、アメリカではレーガンが政権を維持した。そして、資本主義国と社会主義国は、政治的には対立を強めながら、経済的には「協力・援助」を増してきている。また、日本政党の「中道」といわれる各政党は自民党と政権連合を組もうとしている。
何もかもが現政治・社会体制を前提に、金(経済)を中心に動いているようだ。
私たちの反差別・人権の闘いとは、今一度生きる誇り・人間として生きる姿を追及してやまぬ質が問われる。
全障連
全国障害者解放運動連絡会議
No.44
全国機関誌発行日/1984年11月15日
連絡先/大阪市東成区中本1丁目3-6 ベルビュー森の宮215号
TEL 06-974-0971
年1回発行 頒価 150円
年間定期購読 1,950円(郵送料込)
郵便振込 大阪6-57342 全障連全国出版部
作成:
山口 和紀