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『居るのはつらいよ――ケアとセラピーについての覚書 』

東畑 開人 20190225 医学書院,347p.

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last update: 20190708

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しかく東畑 開人 20190225 『居るのはつらいよ――ケアとセラピーについての覚書 』,医学書院,347p.ISBN-10: 4260038850 ISBN-13: 978-4260038850 2000+ [amazon]/[kinokuniya] (注記)

しかく内容

amazonより

「ただ居るだけ」と「それでいいのか?」をめぐる
感動のスペクタクル学術書!
京大出の心理学ハカセは悪戦苦闘の職探しの末、ようやく沖縄の精神科デイケア施設に職を得た。
しかし、「セラピーをするんだ!」と勇躍飛び込んだそこは、あらゆる価値が反転するふしぎの国だった――。
ケアとセラピーの価値について究極まで考え抜かれた本書は、同時に、人生の一時期を共に生きたメンバーさんやスタッフたちとの熱き友情物語でもあります。
一言でいえば、涙あり笑いあり出血(!)ありの、大感動スペクタクル学術書!


出版社からのコメント

主人公の若き心理士は、ようやく見つけたデイケアの職場で、上司からいきなり「トンちゃん」と命名され、こう言われた。
「とりあえず座っといて」
座ってみる......。凪の時間......。
トンちゃんは1分と間が持たない。そこで隣で新聞を読みふけっているおばさんに話しかけてみた。
「あの......何を読んでおられるんですか?」
「新聞だけど」
そりゃそうだ、見りゃわかる。
「......なんか面白いことありますか」
「別に。ただのスポーツ新聞だけど」
「......ですよね」
心理学ハカセの専門性ははかなく砕け散った。
しかし、甲子園に出た興南高校をテレビで一緒に応援したり、朝夕ハイエースでメンバーさんを送迎したり、レクの時間に一生分のトランプをすることによって、やがて「ただ居るだけ」の価値を見出していく。
それにしても、なぜこの「ただ居るだけ」の価値が人々に伝わらないのだろうか。
トンちゃんは、「居場所」「暇と退屈」「愛の労働」「事件」「遊び」「中動態」「会計」「資本主義」などの概念を足がかり、探求を始めた。
この探求の旅は、彼自身の一身上の変化とともに、意外な方向に転換する。なぜこの「善きケア」がときにブラック化していくのか、という問いが彼を衝き動かしたのだ。
一般社会で居づらい人たちのためのアジール(避難所)が、なぜアサイラム(収容所)に転化するのか?
それは偶然の出来事なのか?
ケアという行いに内在した構造的な原因があるのか?
そして、いったい何がケアを損なうのか?
トンちゃんは血を吐きながら(実話)、じりじりと真犯人を追いつめていく。
――本書の価値は、これらの考察が、見事な物語として展開しているところにあります。
主人公をとりまくハゲ、デブ、ガリの看護師三人組にはケアの何たるかを教えられ、強気の事務ガールズのヒガミサと「ケアのダークサイド」に挑み、月の住人ユウジロウさんには内輪受けのギャグで心底癒されます。
そして最後、主人公がこのデイケアを去るとき、やくざに追われ続けて20年のヤスオさんとのキャッチボール風景はじつに感動的です。ここでは詳細は書けませんが、代わりに著者の言葉を引いておきましょう。
「ただ居るだけ」の価値を、僕は官僚や会計係を説得する言葉にすることはできない。
だけど、僕は実際にそれを生きた。だから、その風景を、そのケアの質感を、語り続ける。
本書はケアとセラピーについて考え抜かれた思想書であると同時に、沖縄で知り合った人々との魂の交流を描く、極上の物語です。

しかく目次

プロローグ それでいいのか?

第1章 ケアとセラピー
ウサギ穴に落っこちる
第2章 「いる」と「する」
とりあえず座っといてくれ
第3章 心と体
「こらだ」に触る
第4章 専門家と素人
博士の異常な送迎
幕間口上
時間についての覚書
第5章 円と線
暇と退屈未満のデイケア
第6章 シロクマとクジラ
恋に弱い男
第7章 治療者と患者
金曜日は内輪ネタで笑う
第8章 人と構造
二人の辞め方
幕間口上、ふたたび
ケアとセラピーについての覚書
最終章 アジールとアサイラム
居るのはつらいよ

しかく著者略歴

amazonより

東畑開人(とうはた・かいと)

1983年生まれ。2010年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。
沖縄の精神科クリニックでの勤務を経て、2014年より十文字学園女子大学専任講師。
2017年に白金高輪カウンセリングルームを開業。
臨床心理学が専門で、関心は精神分析・医療人類学。
著書に、『美と深層心理学』京都大学学術出版会、『野の医者は笑う』誠信書房、『日本のありふれた心理療法』誠信書房、監訳書に『心理療法家の人類学』(J.デイビス著)誠信書房がある。

*著者より
「この本は僕の青春物語です。夢見る青年が現実と出会って、完膚なきまでに打ちのめされるお話だからです。そのほろ苦い、いや苦杯を一気飲みするようなきつい敗北を経て、僕は友情と知を得ました。ですから、沖縄のデイケアで人生の一時期を共に生きた人々の物語、そしてケアとセラピーという心の援助をめぐる中核的問題についての僕なりの答えが、この本です」――東畑開人

しかく引用



しかく書評・紹介



しかく言及





*作成:岩?ア 弘泰
UP: 20190708 REV:
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