『腎臓病と人工透析の現代史――「選択」を強いられる患者たち』
有吉 玲子 20131114 生活書院,336p.
[English]
last update:20140204
■しかく有吉 玲子 20131114 『腎臓病と人工透析の現代史――「選択」を強いられる患者たち』,生活書院,336p. 3200+160 ISBN-10: 4865000178 ISBN-13: 978-4865000177
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◆だいやまーくhttp://www.seikatsushoin.com/bk/117%20jinzobyo.html
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「生きる」ために人工透析という手段が普及したにもかかわらず、患者が選択する/選択されるという事象が、今、起きているのはなぜなのか?
生きることが可能となる医療技術を、誰がどのように享受するのか、享受するための仕組みをどのように作るのか。その問いを突きつけるものとしての人工透析の歴史──技術の導入と制度・政策の構築過程、患者たちが直面する現状がいかに形成されてきたか──を検証し明らかにする。
■しかく目次
はじめに
序文
これは腎臓病何十万人のため、のみならず、必読書だと思う 立岩真也
序 章
1 本書の背景と目的
2 本書の構成
3 研究方法
4 本書で用いる用語についての説明
第1章 人工腎臓で生きる人々の現状
1 人工腎臓、利用したくてもできない事情
2 人工腎臓にかかる費用
3 人工腎臓の利用/非利用──日本の動向
4 人工腎臓の利用、日本と世界の様子
5 人工腎臓、生存のための手段
第2章 人工腎臓の歴史と現況
1 腎機能代替療法の歴史
2 日本における人工腎臓の研究
第3章 希少な人工腎臓と選択される患者たち
1 「神様委員会」による選択──アメリカ
2 「お金の切れ目が命の切れ目」──日本での経緯
第4章 患者会の成立──医療を享受するために
1 病院単位の組織から組織拡充への動き
2 全国組織の成立
第5章 公費獲得までの道程
1 厚生省との交渉
2 身体障害者福祉法──更生医療と内部障害者
3 自治体への働きかけ──すべての人が制度を利用できるために
4 公費獲得の成立過程を振り返って
第6章 1970年代の医療供給/費用配分のスキーム
1 医療保険制度とその矛盾
2 医療供給のための諸施策
3 高額療養費制度の創設──給付率の偏りの補完の策として
4 1970年代に形成された医療供給のスキーム
5 医療機関存続の手段
6 せり出す費用負担者の懸念
第7章 腎移植の普及と頓挫──1980年代
1 腎移植──もう1つの生存の手段
2 腎臓移植の推進と限界
3 希少性を有する腎移植
第8章 人工腎臓の供給抑制──医療費用配分の一環として
1 医療供給のコントロール
2 人工腎臓への費用配分の変遷
第9章 人工腎臓の利用/非利用──決定の要因
1 欧米の傾向
2 日本における利用/非利用の決定要因
3 宮崎県透析拒否事件
4 医師の裁量と患者の意向
5 流れはつくられる
終 章
謝 辞
文献表
資 料
■しかく引用
◆だいやまーく立岩 真也 2015年11月01日
「今般の認知症業界政治と先日までの社会防衛 連載 117」
『現代思想』43-(2015-11):-
「[...]引用だけしておく。『腎臓病と人工透析の現代史――「選択」を強いられる患者たち』(有吉[2013:176])に引用されていたのを、その本になったもとの論文に関わったはずであるにもかかわらず、このたび――正確には一度偶々見つけ、忘れ、また――発見したものだ。一九七〇年四月六日、第六三回国会参議院予算委員会一六号における厚生大臣内田常雄の答弁。
「スモン病というものはむずかしい病気ではありますけれども、必ずしも結核でありますとか、あるいは精神病患者、さらにはまた、らい病のように、何といいますか、反社会的な要素をおびておるものということにも断定をいたしておりませんので、したがって、公費でこれだけの病気を対象にして診療するという制度は、なかなか確立いたしにくいところでございます。ガンのようなものでも、患者にとりましては非常に大きな負担でございますけれども、研究には力を入れておりますが、公費負担の制度をとっておりませんことは御承知のとおりであります。そうではありますが、いま中沢さん(議員)からお話のとおりの悲惨な家庭の状況もございますので、研究費の中におきまして薬剤費のごときものは、実際はまかなっておる。したがって、本人あるいは家族の負担というものも、さような限度におきましてはできるだけ研究費の中でかぶる場合もある」
一九七〇年のことである。所謂「難病」政策はスモン病から始まっている。それはキノホルムによる薬害だったから、それが今でいう難病、そして難病対策の始まりであったと、今では想像できない。何があったのかを探ればまた別の長い話になるが、当時、当然に政府の責任が問われた。政府は自らの責任を認めないながらも、何ごとかはせざるをえないと考え、その対応策としてまずスモン病が難病対策の対象にされたとも考えられる。そしての時期、スモンの会他幾つかの疾病・障害別の患者会ができており、公費負担が求められる。引いたのはその件に関わる質疑に対する応答である。その仔細は調べたらよい、ぜひ調べるべきだと思う。ただ、ここで見ておきたいのは第一文だ。」
■しかく紹介・言及
◆だいやまーく2015年10月07日
https://twitter.com/ShinyaTateiwa/status/652301964202536960
「有吉玲子『腎臓病と人工透析の現代史』http://www.arsvi.com/b2010/1311ar.htm再読。1970年前後からの難病政策をたどる上でも必読。pp.174-184。種々がごたごたし難病に入ったり入らなかった様が描かれている。長くはないがこれだけの記述もこれまでなかったのでは。」
◆だいやまーく2015年10月05日
https://twitter.com/ShinyaTateiwa/status/650839703592169472
「有吉玲子『腎臓病と人工透析の現代史』関係者必読http://www.arsvi.com/b2010/1311ar.htmに引用:スモン病は「結核[...]精神病患者[...]らい病のように[...]反社会的な要素をおびておるものということにも断定をいたしておりません」(1970年4月参議院予算委員会厚生大臣答弁)」
◆だいやまーく立岩 真也 2013年12月16日 「これは腎臓病何十万人のため、のみならず、必読書だと思う・3――連載:予告&補遺・28」,
生活書院のHP:
http://www.seikatsushoin.com/web/tateiwa.html
◆だいやまーく立岩 真也 2013年12月09日 「これは腎臓病何十万人のため、のみならず、必読書だと思う・2――連載:予告&補遺・27」,
生活書院のHP:
http://www.seikatsushoin.com/web/tateiwa.html
◆だいやまーく立岩 真也 2013年12月02日 「これは腎臓病何十万人のため、のみならず、必読書だと思う・1――連載:予告&補遺・26」,
生活書院のHP:
http://www.seikatsushoin.com/web/tateiwa.html
◆だいやまーく立岩 真也 2013年12月01日
「『造反有理』はでたが、病院化の謎は残る――連載 96」,
『現代思想』41-(2013-11):-
◆だいやまーく立岩 真也 2013年11月14日
「これは腎臓病何十万人のため、のみならず、必読書だと思う」,有吉[2013]
◆だいやまーく立岩 真也 2018
『(題名未定 2018b3)』,青土社