last update:20111006
■しかく上野 千鶴子 20110815 『ケアの社会学―当事者主権の福祉社会へ』,太田出版,497-?Cp. ISBN-10:4778312414 ISBN-13: 9784778312411 2993円
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[kinokuniya] ※(注記) c04,s,a02
■しかく内容
内容紹介
――超高齢社会における共助の思想と実践とは何か?!
――「ケア」関係における当事者主権とは何か?!
社会の高齢化が進む中で、今後ますます重要性を増してくる「ケア」の問題は、これまで十分に冷静な議論がなされてきたとは言えない。介護労働者が不足し、そのニーズが増す一方で、彼/彼女らの労働環境は、現在も低水準が維持され続けている。さらに「ケア」は家族の心情や道徳意識に強く働きかける領域であるが故に、主婦などの無償の奉仕労働として扱われがちである。こうした問題の批判的検討に加えて、本書はこれまでもっぱら「ケアする側」の立場から語られてきたこの問題を「ケアされる側」の立場から捉え返し、介護現場における「当事者主権」とは何かを明らかにする。
『家父長制と資本制』で切り開かれた家事労働論・再生産論をさらに先へと押し進めた、上野社会学の集大成にして新地平!!
調査期間10年、総計500ページ超!
■しかく目次
初版への序文
第I部 ケアの主題化
第1章 ケアとは何か
1 なぜケアを語るのか
2 ケアとは何か
3 ケアの定義
4 ケアワークとは何か
5 ケアの概念化
第2章 ケアとは何であるべきか――ケアの規範理論
1 ケアへの規範的アプローチ
2 ケアの規範科学
3 「ケアの本質」
4 ギリガンの「ケアの倫理」
5 ギリガン以後の「ケアの倫理」論争
6 臨床哲学の「ケア」論
7 ケアリングをめぐって
8 ケアの文脈化
9 ケアの人権アプローチ
第3章 当事者とは誰か――ニーズと当事者主権
1 当事者とは誰か
2 ニーズの帰属する主体
3 当事者概念のインフレ
4 潜在能力アプローチ
5 一次的ニーズと派生的ニーズ
6 当事者であることと当事者になること
7 おわりに
第II部 「よいケア」とは何か
第4章 ケアに根拠はあるか
1 なぜ高齢者をケアするのか
2 介護は再生産労働か
3 階層問題としてのケア
4 家族介護とは何か
――再び再生産費用の分配問題をめぐって
5 援助は正当化されるか
6 家族に介護責任はあるか
7 まとめにかえて
第5章 家族介護は「自然」か
1 はじめに
2 「家族介護」とは何か
3 「家族介護」はいつから問題となったか
4 「家族介護者」とは誰か
5 「家族介護」は福祉の含み資産か
6 家族介護者のストレス研究
7 家族介護とジェンダー
8 「家族介護」はほんとうによいか
9 家族介護はのぞましいか
第6章 ケアとはどんな労働か
1 ニーズとサービスの交換
2 ケアワークの概念化
3 ケアは労働か
4 ケア労働と家事労働の比較
5 サービス商品と労働力商品
6 ケアの値段(価格)
7 ケアとはどんな商品か
8 ケアワークと感情労働
9 ケアワークはなぜ安いのか
第7章 ケアされるとはどんな経験か
1 ケアされること
2 介護されるという経験
3 要介護者の誕生
4 障害者運動に学ぶ
5 高齢者運動はあるか
6 障害者運動の歴史
7 利用者満足とは何か
8 高齢者と障害者の比較
9 当事者と家族の比較
10 利用者によるサービス評価
11 認知症高齢者の経験
12 被介護経験のエキスパート
13 ケアされる側の作法と技法
第8章 「よいケア」とは何か――集団ケアから個別ケアへ
1 「よいケア」とは何か
2 ユニットケアとは
3 ホテルコストとは
4 ユニットケアの起源
5 ハードとしてのユニットケア
6 ユニットケアの効果
7 ユニットケアの現実――実証データから
8 ユニットケアと感情労働
9 ユニットケアは「家族的」か
10 施設から住宅へ――施設の住宅化
11 新しい雑居部屋への動向
12 おわりに
第III部 協セクターへの期待
第9章 誰が介護を担うのか――介護費用負担の最適混合へ向けて
1 家族でなければ誰が
2 官/民/協/私の福祉多元社会
3 二元モデルの限界
4 三元モデルの批判的検討――福祉ミックス論の系譜
5 もうひとつの三元モデル
6 ケアの脱家族化と脱商品化
7 官/民/協/私の四元モデルの採用
8 ケアの社会化と協セクターの役割
第10章 市民事業体と参加型福祉
1 はじめに
2 参加型福祉
3 「市民」か「住民」か
4 地域とは何か
5 有償ボランティアの不思議
6 介護保険とNPO
7 NPOの優位性
8 NPO批判
9 福祉経営
10 おわりに
第11章 生協福祉
1 生協福祉とワーカーズ・コレクティブ
2 介護保険と生協の福祉事業
3 生協福祉への期待と自負
4 ワーカーズ・コレクティブ成立の背景
5 生協福祉の三類型
6 ワーカーズ・コレクティブの前史
7 ワーカーズ・コレクティブの成長
8 介護保険前夜のワーカーズ・コレクティブ
第12章 グリーンコープの福祉ワーカーズ・コレクティブ
1 はじめに
2 アクション・リサーチという手法
3 ワーカーズ・コレクティブの担い手たち
4 ワーカーズ・コレクティブの参加動機
5 ワーカーズ・コレクティブの労働と報酬
6 ワーカーズ・コレクティブの利用者と利用料金
7 ワーカーズ・コレクティブの経営コスト
8 経営コストと時間費用
9 経営コスト比較
10 ワーカーズ・コレクティブのサービスの質
11 ワーカーズ・コレクティブの創業支援システム
12 介護保険以後の生協福祉事業の展開
13 「プライドの値段」
第13章 生協のジェンダー編成
1 はじめに
2 生協のジェンダー意識
3 生協の「男女共同参画」
4 活動と労働の二重構造
5 生協組織の歴史――二重構造から三重構造へ
6 配送は「男の仕事」
7 パート労働の導入
8 生協版フレックス労働化
9 ワーカーズ・コレクティブの成立
10 労働のフレックス化と組織再編
11 ふたたび生協とフェミニズムをめぐって
第14章 協セクターにおける先進ケアの実践――小規模多機能型居宅介護の事例
1 NPOが支える小規模多機能型居宅介護
2 介護保険「改正」における小規模多機能型居宅介護事業
3 協セクターにおける社会福祉法人の位置
4 富山型小規模多機能共生型デイサービスの展開
5 「このゆびとーまれ」の施設概要と歴史
6 創業資金
7 小規模多機能共生型のケア実践
8 共生型の効果
9 利用者と家族
10 ワーカーとボランティア
11 「家族的な介護」とは何か
12 福祉経営から見た「富山型」
第15章 官セクターの成功と挫折――秋田県旧鷹巣の場合
1 官セクターと協セクターの境界領域
2 「日本一の福祉」をめざした町
3 「ケアタウンたかのす」の背景と概要
4 「ケアタウンたかのす」のケア実践――ハード面
5 「ケアタウンたかのす」のケア実践――ソフト面
6 「ケアタウンたかのす」の利用者
7 「ケアタウンたかのす」のワーカー
8 「ケアタウンたかのす」のケアの質を可能にした条件
9 業務改善委員会報告
10 鷹巣の挫折の検証
11 ネオリベ改革に翻弄された鷹巣福祉
12 鷹巣の挫折から何を学ぶか
第16章 協セクターの優位性
1 協セクターの競争優位
2 労働条件と人員配置
3 「生協らしい」福祉とは
4 「生協らしさ」とワーカーズ・コレクティブ
5 労働の自己決定の逆説的効果
6 地域特性
7 おわりに
第IV部 ケアの未来
第17章 ふたたびケア労働をめぐって――グローバリゼーションとケア
1 ケアの人材崩壊
2 ケアワーカーの賃金はなぜ安いか
3 労働とサービスの商品化・非商品化
4 労働と労働力
5 不完全に商品化された労働力
6 グローバリゼーションとケアワーク
7 グローバリゼーションのインパクト
8 再生産領域のグローバル化とケア労働の国際移転
9 ふたたび「ケアの値段」をめぐって
第18章 次世代福祉社会の構想
1 「市場の失敗」「家族の失敗」「国家の失敗」
2 福祉多元社会の責任と負担の配分
3 連帯と再分配
4 ニーズ中心の福祉社会へ――「社会サービス法」の構想
5 老・障・幼の統合へ
6 誰と連帯するのか
7 当事者運動へ向けて
あとがき
ケア関連年表
参考文献
人名索引
■しかく引用
■しかく書評・紹介
■しかく言及
*作成:
大谷 通高