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『まるで原発などないかのように――地震列島、原発の真実』

原発老朽化問題研究会(編) 20080915 現代書館,253p.

last update:201100329

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しかく原発老朽化問題研究会(編) 20080915 『まるで原発などないかのように――地震列島、原発の真実』,現代書館,253p ISBN-10: 476846971X ISBN-13: 978-4768469712 2415円 [amazon]/[kinokuniya] (注記)

しかく内容

私たちは、原発は、頭脳の臨界線にはあるのだが、眼には入らないような電力生活をしている。しかし、原発は稼働し、事故を起こし、地震を恐れ、老朽化に蝕まれている。その現実を、もう原発は建造物自体が老朽化で危険な事を柔らかく・誰にも分かるように解説。

[著者紹介・編集担当者より]
原発は一部の怖がり屋が恐怖をあおっているわけではない。現実に地震列島にたてられていることが問題なのだ。地震は必ずくる。その時老朽化した原発はどうなるのか。そこを実証的に解明した本です。改めて、原発を考えるのに最適な一冊。(宮)
(出版社のサイトより http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-6971-2.htm)

しかく目次

まえがき

第一章 はびこりはじめた「安全余裕」という危険神話 田中 三彦
1 まるで原発などないかのように
2 「安全率」とは何だろう?
3 原発はこんなに「不確実」
4 「三つの安全余裕」のでたらめぶり

第二章 材料は劣化する――大惨事の温床 井野 博満
1 材料劣化で原発事故が起こった
2 ステンレスの応力腐食割れは防げない
3 中性子照射で圧力容器は脆化する
4 地震で材料は強くなるという珍説
5 工学は価値中立的か

第三章 原発の事故はどう起こっているのか 上澤 千尋
1 柏崎刈羽原発を地震が襲った
2 原子炉臨界・暴走、制御棒落下事故
3 発電用タービンの破壊
4 その他の事故について

第四章 中越沖地震と東京電力柏崎刈羽原発 武本 和幸
1 中越沖地震
2 起こるべくして起こった柏崎刈羽原発の地震被害
3 中越沖地震で起こったこと
4 海底活断層と復興ビジョン
5 基準地震動
6 幸いだった「小さな地震」と「余震の少なさ」

第五章 東海地震と中部電力浜岡原発――運転差し止め一審裁判の概要 只野 靖
1 なぜ、日本は世界有数の地震国であると言われているのか?
2 浜岡原子力発電所は東海地震の震源真上に建設された
3 耐震設計とは
4 中央防災会議による東海地震の地震動
5 では、どのような地震を考えるべきか
6 では、原発のどこが危ないのか?
7 中部電力の「余裕論」と田中三彦氏の証言
8 請求棄却判決の非科学性
9 アスペリティの位置はどのように定められたかについての溝上証言の信用性
10 最後に

第六章 原発は正しい選択だったか 山口 幸夫
1 原子力とは
2 原子力ルネッサンスか?

日本の原子力発電所一覧

あとがき

◇引用


だいやまーくまえがき おだやかな日々が一瞬の間に、修羅の場になることがあります。逃げる間がない。からだの自由が奪われてしまった。ようやく逃げようすると、道路がふさがっている。

「天災は忘れたころにやってくる」と、室戸台風(一九三四年)の大きな被害のあと、物理学者の寺田寅彦は書きのこしました。
「おびたたしく大地震ふること侍りき。そのさま、よのつねならず。山はくづれて河を埋み、海は傾きて陸地をひたせり。土裂けて水湧き出で、巌割れて谷にまろび入る。」としるしたのは、十三世紀、鴨長明です(『方丈記』)。
一九八六年、よもやと思われた大惨事がチェルノブイリでおきました。ヒロシマ・ナガサキにつながっています。科学技術文明が高度に発達した現代では、自然災害に人為的というべき事故がかさなったらどうなるでしょうか? はてしない恐怖がひろがります。
原発の老朽化はとくに心配なことの一つで、そう考える有志があつまって研究会をつくっています。そのうちの何人かで著わしたのが本書です。
わたしたちは、日常的に電気の恩恵にあずかっていて、原発のことなどは忘れがちでしょう。しかし、もしかしたら、とお考えの方に本書をおすすめしたいとおもいます。内容によって、さっと読める章と、そうでない章とがあるかもしれません。気に入ったところからお読みいただいてかまいません。かんたんに言うと、つぎのような内容です。
第一章:原発には十分な「安全余裕」があるという、本当のような神話。
第二章:原発でじわじわと進行しているひび割れと放射線による材料の劣化。
第三章:じっさいにおこった日本の原発事故の、ヒヤッとする事例。
第四章:去年の中越沖地震と柏崎刈羽原発におこった事実の深い闇。
第五章:やがてくる東海大地震にたいして住民がおこした運転差し止め訴訟。
最後の章は、原子力という選択は正しかったのか、これからどうすればよいのか。

お読みになったうえで、忌憚のないご意見、ご批判をいただければ幸いです。

二〇〇八年 残暑のきびしい候
執筆者を代表して 山口 幸夫


だいやまーくあとがき
二〇〇二年の夏、一技術者の内部告発がきっかけになって、東京電力の原子力発電所で大がかりなデータの隠蔽、改ざん、偽造がおこなわれていた、という事件があかるみに出ました。業界の最大手の電力会社のウラの顔というべき現実を知って、多くの人たちが仰天しました(『検証東電原発トラブル隠し』原子力資料情報室、岩波ブックレット、二〇〇二年十二月)。その後も、電力各社の隠蔽が続きました。放射線はこわいものという認識は、十九世紀末に放射線が発見されてから徐々に深まってきて、現在は、どんな微量の放射線でも避けられるかぎり避けようという慎重な考えかたになっています。
医療の現場などでは、メリットとデメリットの判断が患者個人の意志によってなされ、ある程度はやむなし、ということがあります。しかし、原発では、そこに働く人々が選択の余地なしで、相当程度の放射線の影響をうけています。「被曝労働者問題」は深刻で、いのちを失った幾人もの人たち、あびた放射線の恐怖におびえている人々が存在しています。同時に、事故がなくとも平時で周辺の住民は、なにがしかの影響を受けているおそれがあります。だれかが、そのくらいは大丈夫ですと許容する問題ではありません。原発を持つ事業者はいっさいの隠し事をせずに、正直にすべてのデータを公表する義務があるはずです。
本書では、あわや、という事故をふくめ、それに違反する例がいくつも紹介されました。本書の各章で、原発を進める立ち場に身をおいてしまうと、客観的とはほど遠い判断がされ、しかもそのことが隠されてしまう実際が明らかにされています。政府の政策にしたがう御用学者は、結局のところ、住民・市民の安全と安心をないがしろにしていることがよく分かるかとおもいます。「ゲンパツ」というと、しちめんどくさそうだと敬遠されがちです。それでは住民・市民がそれと知らずに被害を受けることになってしまう。歴史をひもとけば、それをしめす例は数えきれない。そう考えて研究会の仲聞のあいだで、中学生にも分かるゲンパツの本を書こうと話しあっていたのは、もう何年も前のことです。
内容を議論し執筆分担をし、意見を交換しながら筆を進めたのですが、なかなかできあがりません。原発が次々に、事故や不祥事をおこし、わたしたちがその対応に追われたのが最大の理由です。加えて、この十数年、マグニチュード7前後の地震が頻発し、研究会の本来のテーマである「原発老朽化」と「地震」の両方を相手にせざるを得なくなってしまいました。第四、五章で述べられたように、柏崎刈羽と浜岡とは、司法が行政に追従しているとしか考えられません。そしていま現在、真実を隠して「原発こともなし」、まるで原発など心配することもないかのような、世論がつくられようとしています。教育現場へも、地球温暖化にとって原発はやさしいエネルギー源だ、というキャンペーンが滲透しつつあります。
こういう雰囲気を感じて、担当者が全力を傾けて執筆した結果、専門家対象のような内容になったところもあることは否めません。いつのまにか、中学生が読んで解るレベルを超えてしまったかもしれません。しかし、中学生にたいしても十分な価値あるものとして世に送り出すことができたのではないかと、秘かにおもっています。できるだけ沢山の読者の目にふれてほしいと願っています。
だいやまーくおわりに

「原発老朽化問題研究会」についてひとこと申しそえます。この「研究会」は工学、科学、法律などいろんな分野の専門家、研究者が原子力資料情報室を中心にあつまり、二〇〇二年五月に発足しました。これまでに、『老朽化する原発――技術を問う』(原子力資料情報室、二〇〇五年〉を公刊しています。本書はそれに次ぐものです。ちなみに、一九七五年に設立された原子力資料情報屋は、脱原発をめざし、政府や産業界とは独立に原子力にかんする資料・情報をあつめ、分析し、発信しているNPO法人です。「研究会」は、高木仁三郎市民科学基金から二度にわたって研究助成を受けました。ここに記して、感謝の意を表すしだいです。そして、現代書館の菊地泰博さんは執筆陣の遅筆を督励し、辛抱強く待ってくださいました。あつくお礼を申しあげます。

原発老朽化問題研究会 山口幸夫

原発老朽化問題研究会
【連絡先】 郵便番号162-0065
東京都新宿区住吉町八−五 曙橋コーポ2階B 原子力資料情報室気付
TELO3-3357-3800
FAXO3-3357-3801


*作成:箱田 徹
UP:201100329
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