『ポスト・リベラリズムの対抗軸』
有賀 誠・伊藤 恭彦・松井 暁編 20071208 ナカニシヤ出版,251p.
■しかく有賀 誠・伊藤 恭彦・松井 暁編 20071208 『ポスト・リベラリズムの対抗軸』,ナカニシヤ出版,251p. ISBN-10:4779501954 ISBN-13: 978-4779501951 2940
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■しかく内容(出版社HPより)
論争の最前線に突き進み、現代規範理論の核心に迫る!
グローバリゼーション、民族紛争やテロ、貧困や環境問題の深刻化など、地球的問題群への打開のための有効性を説く。
■しかく編者
有賀 誠(ありが・まこと)
慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。
政治思想・政治理論専攻。
防衛大学校准教授。
伊藤恭彦(いとう・やすひこ)
大阪市立大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。
博士(法学)。現代政治哲学・政治思想専攻。
静岡大学教授。
松井 暁(まつい・さとし)
一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。
社会経済学・社会哲学専攻。
専修大学教授。
■しかく目次
第1章 リベラリズムの普遍性をめぐる対抗
――グレイとベイツ――(伊藤恭彦)
1 はじめに
2 普遍主義的リベラリズムの解体――ジョン・グレイ――
3 普遍主義的リベラリズムの再建――チャールズ・ベイツ――
4 おわりに
第2章 リバタリアニズムの左右対決
――ノージックと左派リバタリアン――(松井 暁)
1 はじめに
2 右派リバタリアニズムの論理
3 左派リバタリアニズムの論理
4 右派リバタリアニズムからの批判の反論
5 左派からの批判
6 おわりに
第3章 コミュニタリアニズムの政策論
――エッチオーニとガルストン――(坂口 緑)
1 コミュニタリアニズムの四潮流
2 自律と秩序の調和
3 自律性か多元性か
4 コミュニタリアニズムと新保守主義の異同
5 コミュニタリアニズムの共同性
第4章 現代のコミュニズムをめぐる係争
――ネグリとジジェク――(向山恭一)
1 はじめに
2 〈帝国〉の諸相
3 〈帝国〉をめぐる係争
4 〈帝国〉の奪還のために
5 「分かち合い」の倫理へ
第5章 熟議民主主義の進化
――J・ハーバーマスとJ・ドライゼック――(山崎 望)
1 はじめに――民主主義の逆説――
2 ハーバーマスの熟議民主主義論
3 ドライゼックの熟議民主主義論
4 おわりに
第6章 「アーキテクチャ」の問い直しと民主主義
――レッシグとアンガー――(有賀 誠)
1 インターネット空間と民主主義
2 「アーキテクチャ」を開くことの必要性
3 「人工物としての社会」というビジョンの射程
4 闘技民主主義の「ゲームのルール」を超えて?
第7章 ポストモダン的思考を超えて
――アガベンとデュットマン――(竹島博之)
1 はじめに
2 ホモ・サケル
3 例外状態
4 アウシュヴィッツ
5 〈はざま〉の場所から
6 おわりに
第8章 グローバルな正義をめぐる対抗
――センとポッゲ――(
神島裕子)
1 はじめに
2 グローバルな正義への接近方法としての「開発」
3 グローバルな正義への接近方法としての「分配」
4 おわりに
第9章 多文化共生社会の二つの構想
――ミラーとヤング――(施 光恒)
1 はじめに
2 リベラルな文化主義
3 ネイションを軸とするミラーの世界構想
4 ネイション概念を用いないヤングの世界構想
5 争点――ネイションや国民国家の行方――
6 おわりに
第10章 フェミニズムにおける「政治」像をめぐる対抗
――オーキンとバトラーとヤング――(田村哲樹)
1 はじめに
2 オーキンと国家としての政治
3 バトラーと権力としての政治――撹乱と再意味づけ――
4 ヤングと意思決定としての政治
5 おわりに
第11章 「ケアの倫理」と「正義の倫理」をめぐる対立の諸相
――ギリガンとキッティ――(樋口明彦)
1 はじめに――ケアという問題圏――
2 「ケアの倫理」の導入――キャロル・ギリガン――
3 「ケアの倫理」と「正義の倫理」の交錯
4 「ケアの倫理」の展開――エヴァ・フェダー・キッテイ――
5 おわりに――ケアをめぐる新たな社会構想――
第12章 環境をめぐる規範理論の対抗
――シンガーとリーガンとキャリコット――(田上孝一)
1 はじめに
2 環境に対する人間中心主義的態度
3 シンガーの動物解放論
4 シンガーへの批判
5 キャリコットの動物解放論批判
6 キャリコットへの批判
7 おわりに
◆だいやまーく神島 裕子 20071208 「グローバルな正義をめぐる対抗――センとポッゲ」,有賀・伊藤・松井編[2007]
◆だいやまーく樋口 明彦 20071208 「「ケアの倫理」と「正義の倫理」をめぐる対立の諸相――ギリガンとキッティ」,有賀・伊藤・松井編[2007]
cf.
ケア
◆だいやまーく田上 孝一 20071208 「環境をめぐる規範理論の対抗――シンガーとリーガンとキャリコット」,有賀・伊藤・松井編[2007]
cf.
Singer, Peter
■しかく引用
「キムリッカは......第三の「権利の主張 対 責任の受容」の背後に、「道徳的要求の根拠として主観的苦痛を採るのか、それとも客観的不公正を採るのかという真の対照が存在している」と述べる。言い換えれば、「ケアの倫理」は他者が感じる主観的苦痛や失意に敏感に反応する責任に道徳の源泉を見出す一方、「正義の倫理」は自己の選択には責任が伴うというリベラリズムのもと、共約不可能な諸利害の公正な取り扱いにこそ重心を置くのだ。とはいえ、「ケアの倫理」が主観的苦痛に道徳的要求の根拠を置くとすれば、無計画性や怠惰など他者の不適切な選択の結果にまで責任を負わねばならない自己責任問題、他者の苦痛に応じて無限の責任を負うことになる過剰負担問題、不遇な状況に適応して苦痛を感じなくなった者たちへの責任が空洞化する適応的選好問題など、多くの限界も存在する。」(: 212)