『働きすぎる若者たち』
阿部 真大 20070500 日本放送出版協会,p.204
■しかく阿部 真大 20070500 『働きすぎる若者たち――「自分探し」の果てに』日本放送出版協会,204p. ISBN-10:
4140882212 ISBN-13: 978-4140882214 700+税
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■しかく出版社/著者からの内容紹介
日販MARC
多くの若者が、報われない労働にのめり込んで燃え尽きてしまっている。「あり地獄」とも称されるケアワーカーの実態調査を通して、若き社会学者がロスト
ジェネレーションの労働問題の構造と本質を鮮やかに抉り出す。
■しかく著者について
阿部真大(あべ・まさひろ)
一九七六年生まれ。岐阜県出身。東京大学大学院後期博士課程を経て現在、学習院大学非常勤講師。専攻は労働社会学・家族社会学・社会調査論。二〇〇六年、
バイク便ライダー体験をもとに団塊ジュニア世代が直面する労働問題を考察した『搾取される若者たち』でデビュー。
■しかくもくじ
はじめに
バイク便ライダーとケアワーカー/ロスト・イン・ケアワーク/本書の概要
第一章 若者が介護で燃え尽きる!
一.ユニットケアの光と影
注目されるユニットケア/ワーカーにとってのユニットケア/分かっていてもやめられない!
二.ユニットケアのやりがい
工場のような集団ケア/利用者本位のユニットケア/「気づき」の労働/ケア労働の特異性
三.誘惑する職場
あるケアワーカーの事例/リミッターの解除/ベテランワーカー
四.バーンアウト
感情面でのつらさ/リフレーミング/仲間との「ガス抜き」/ブラックユーモア/身体的な辛さ/それでもそこに人がいる
第二章 若者を救うのは誰か?
一.ケア労働の歴史――なぜ問題化しなかったのか?
「主婦と若者」問題/ケア労働と主婦/日本型福祉社会論/予見された危機
二.「専門性」の罠
優秀な若年ケアワーカー/「人格」から「専門性」へ?/普通のサービス職としてのケア労働
インタビュー 前田拓也〜ケア労働に「専門性」は必要か?
三.複合的な職場に向けて
集団ケアのジレンマ/ボランティアとの共働/ある施設での取り組み
インタビュー 飯田大輔〜「生物体としての人間」のケア
コラム 格差社会とヤンキー文化
一.赤羽の変化
二.ヤンキー文化
三.バイク便ライダーの「健全な」姿
四.「夢」と不安定就業
五.地域の祭
特別インタビュー 日比野克彦〜「労働」から「文化」へ
第三章 「自分らしさ」志向は若者だけのものか?
一.「自分らしさ」志向
新たな下流集団/労働における「自分らしさ」志向についての三浦の仮説
二.統計からみる「自分らしさ」志向
フリーターの「自分らしさ」志向(男性)/フリーターの「自分らしさ」志向(女性)/若年の男性と年長の女性/ケアワーカーの調査と重ね合わせて/
「自分らしさ」志向の決定要因/「自己実現型フリーター」と「有閑型パート」
三.二重化する職場の問題
錯綜する不安定就業の問題/職場の複合差別を超えて
第四章 ロストジェネレーションが団塊世代の老後を食い尽くす!
一.パラサイトシングルの未来
友達親子の功罪/戦後日本経済の「ストック化」
二.個人主義的モデルの限界
ライフサイクルモデルと王朝モデル/先行研究の問題点
三.新たな「視座」
相続に介入する子どもたち/議論の脱規範化
四.ロストゼネレーションを考えるということ
おわりに
参考文献
謝辞
■しかく引用
「女性のケアワーカーは、全年齢を通して、仕事に対して情熱的であった。彼らは主婦層であることが多いため、あくまで「家計の足し」、または「おこづか
い」を稼ぐために働いているからである(ただ、唯一の例外は、シングルマザーのケアワーカーであった)。
結局、ケアワーカーの仕事に対してプラスのイメージをもっているのは、主婦と若年のパラサイトシングルだけであり、自力で稼がないといけない人にとって
は、「やりがい」どころの話ではない。彼らにとっては、(いくら興味のある仕事であるといっても)「割の悪い」仕事であることのマイナス面のほうが際立っ
てきてしまうと考えられる。
このことが、成人男性にとっての不安定就業と主婦にとっての不安定就業に対する意識の差となってあらわれるのではないだろうか。それが、表5でみたよう
な結果を引き起こしていると考えられる。」(p.165)
「ケアワークは非常に低賃金な不安定労働であるが、若いワーカーのなかには、労働条件を改善し、少しでも長く働けるような職場にしようと願う人も数多い。
「自己実現型フリーター」であるケアワーカーたちは、長く働こうと思えば、自分たちの労働条件についてシビアに考えざるをえない。それは男性において特
にそうである。しかし、こうした思いも、同じ職場で働く主婦のワーカーたちに共有されているとは考えづらい。「有閑型パート」である彼女たちは、経済的に
余裕があり、この仕事だけで食べていこうと思っているわけではない。若年層と主婦層は、労働条件に対するシビアさに温度差があるため、職場において「連
帯」することが困難である。」(p.170)