『家族政策としての生活保護――生活保護制度における世帯分離の研究』
牧園 清子 19990715 律文化社,254+v.
last update: 20140618
■しかく牧園 清子19990715 『家族政策としての生活保護――生活保護制度における世帯分離の研究』律文化社,254+v. ISBN-10: 4589021560 ISBN-13: 978-4589021564 3150円
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■しかく内容
内容(「MARC」データベースより)
生活保護制度における家族政策として世帯分離を取り上げ、その規定および実態の検討を通して、生活保護制度のもつ世帯管理の機能を指摘、1950年代から90年代半ばまでの世帯分離の変容を描き出す。
■しかく目次
はしがき i
序章 ?T
1 意図と方法 ?T
2 家族政策 4
3 世帯と家族 10
?T 生活保護制度における世帯と世帯分離――世帯分離規定の変遷にみる――
第1章 生活保護制度における世帯 26
1 はじめに 26
2 生活保護制度における世帯概念 27
3 世帯認定の基準 30
4 世帯認定をめぐる問題 33
5 おわりに 40
第2章 生活保護制度における家族政策の展開 45
1 はじめに 45
2 世帯分離規定の4分類 48
3 世帯分離規定の変遷 51
(?@) 要保護者分類型 51
(?A) 入院・入所者分離型 56
(?B) 入院・入所者の出身世帯員分離型 69
(?C) 個別要件分離型 71
4 おわりに 75
第3章 世帯分離と世帯内修学 82
1 はじめに 82
2 世帯分離による修学 86
3 世帯内修学 93
4 おわりに 102
?U 被保護世帯と世帯分離の全国動向
第4章 被保護世帯の動向と世帯分離 110
1 はじめに 110
2 被保護世帯の動向 112
3 被保護世帯における世帯分離 122
4 被保護開始世帯における世帯分離 130
5 おわりに 136
?V 世帯分離の事例研究
第5章 被保護世帯における世帯分離の事例分析
1 はじめに 146
2 世帯の認定 148
3 世帯分離 154
4 おわりに 178
第6章 被保護世帯における子どもの進学――世帯内修学および世帯分離の事例分析―― 141
1 はじめに 181
2 被保護世帯における子どもの進路 183
3 世帯内修学 187
4 世帯分離 190
5 おわりに 195
終章 家族政策としての生活保護制度 198
1 はじめに 198
2 制度から 198
3 調査から 209
4 おわりに 215
付論 老人ホームへの入所措置における世帯分離 219
1 主題と方法 219
2 ケース記録 224
3 分析の結果(1) 228
4 分析の結果(2) 230
5 要約 234
資料 237
引用文献 242
あとがき247
索引 251
■しかく書評・紹介
◆だいやまーく桂 良太郎 2000 「 牧園清子著『家族政策としての生活保護--生活保護制度における世帯分離の研究』」『家族社会学研究』 12(1):131-133.
◆だいやまーく田淵 六郎 20000630 「〈書評〉牧園清子著『家族政策としての生活保護:生活保護制度における世帯分離の研究』」『社会学評論』51(1):166*-167.
◆だいやまーく杉村 宏 2000 「<書評>鎌田とし子編著『貧困と家族崩壊――「ひとり暮らし裁判」の原告たち』牧園清子著『家族政策としての生活保護――生活保護制度における世帯分離の研究』」『社会福祉研究』77:138-139.
◆だいやまーく土井武史・菅沼隆・牧園清子他 2000 「書評セッション 牧園清子著『家族政策としての生活保護――生活保護制度における世帯分離の研究』」『母子研究』20:106-122.
■しかく引用
「『生活保護手帳』は実施要領にかんする通達・通知を掲載した書物で、実施要領の変遷を跡づけることのできる唯一の資料であるとともに、実務に当たるワーカーの「事務必携」とされる書物である。なお、1956年創刊された雑誌『生活と福祉』においては、実施要領の改正のたびに厚生省社会局保護課が主な改正点とその解説を行っている。」(牧園1999:86)
「生活保護法は、1950年の新法制定以来50年近くを経過するが、大幅な改正は行われていない。したがって、成立時の基本方針には変更がないとみることができる。ところが、「保護の実施要領」をみると、毎年のように改正が行われており、その変化は著しい。そこで、本章では、顕著な変遷をみせている世帯分離の規定に着目し、世帯単位の原則の変容を明らかにし、生活保護における家族政策の変更点を見い出したい。
世帯分離に関する通達・通知は、これまで何回か全面改正されているが、現行の規定は以下のものである〈脚注6〉。
厚生事務次官通達1961年4月1日「生活保護法による保護の実施要領について」
厚生社会局長通達1963年4月1日「生活保護法による保護の実施要領について」
厚生省社会局保護課長通達1963年4月1日「生活保護法による保護実施の取り扱いについて」
これらの実施要領にかんする通達・通知を適時組み合わせて利用しやすくされたのが、厚生省が監修する『生活保護<0046<手帳』である|以下では‖‖『生活保護手帳』創刊の1957馬から95馬までを主要な資料として分析を行いたい〈脚注7〉|『生活保護手帳』は保護実施にあたるパーベワーニーにとっては「事務斌携」「バツブル」とされるもので‖生活保護実施の具体妬内容を把握することが出来る資料であるとともに‖世帯分離に関する通鍛‘通知の変郊を知ることのできる砧重な資料である〈脚注8〉|
資料としてはこのほかに、厚生省監修の『生活保護百問百答』を用いる。これは1947年から61年までに18輯が出版されている〈脚注9〉。さらに、厚生省監修の『生活保護手帳(別冊問答集)』(1968年、71年、76年、82年、88年、93年の6冊)と雑誌『生活と福祉』である。『生活と福祉』は1956年に創刊され今日まで継続して発行されているので、95年までを資料として用いたい。毎年4月号もしくは5月号に厚生省社会局(1993年から社会・援護局)保護課「実施要領の改正」として世帯分離規定の変更や趣旨や意図を解説している〈脚注10〉。」(牧園1999:46−47)
脚注(牧園1999:78−79)
6)厚生省社会局・援護局保護課/厚生省社会・援護局監査指導課監修『生活保護手帳』(全国社会福祉協議会 1995年)p.91
7)木村孜『生活保護行政回顧』(社会福祉調査会 1981年 pp.31〜96)によれば、、実施要領は1950年の新生活保護法以来、56年をのぞいて毎年改正されているが、「世帯の認定」が規定されたのは57年である。
また、『生活と福祉』(1957年6月号 p.12)の柳瀬孝吉「実施要領の改定について」は、、1957年の改定の要点を、?@生活保護実施上の取り扱いの基本的事項の規格化、?A特殊的需要についての保護内容の充実合理化、?B収入認定、資産能力の活用についての取扱いの統一化、標準化、簡素化及び合理化、の3つにまとめている。とくに、?@については、改定前の実施要領では最低生活費の認定と収入の認定の2つの面からのみ規定されていたが、今回の改定においては、「全国的に統一した実施」のために、世帯の認定、居住地の認定、資産の活用、扶養義務の取扱い、他方他施策の活用、および家庭訪問の6項目が新しく挙げられた。以上のように、世帯に関する実施要領が規定されたのは1957年とみてよいであろう。」
8)1957年に創刊された『生活保護手帳』における厚生省社会局長安田巌による「推奨のことば」には次のように書かれている。「すでに、今日まで、関係法令集といったもの<0078<が二‖姉出版されているようであるが‖関詣者各位‖特に地区痴当員の諸系が北問調査時等において利用するには‖あるものは厖大に過ぎ‖あるものは部分妬である等不備があったようだ|今回出版された『生活保護手帳』は[...]生活保護関詣の基本妬法橘は勿論‖各般の関詣施策にわたる法令をめぐらし‖その内容は‖実際妬‖且つ系統妬そして正確である|しかも‖携帯に至便なポパット版にして創明美麗でもある|敢えて画期妬な『事務斌携』と称して差し支えなかろう|『生活保護』という尊い行政に携わるお互いにとって‖本書は‖その責を十分に果たすためのバツブルとなることを仁じて疑わない|」
9)厚生省社会局保護課『生活保護の運用(生活保護百問百答第十輯)』は1957年3月発行されているが、監修のことばに「新年度から実施要領を改正したいと考えていた」とある。『生活保護手帳』は1957年6月の発行であるから、57年の実施要領の考え方はこの『百問百答』に示されていると考えられる。
10)全国社会福祉協議会『生活と福祉』1956年4月〜95年12月号。小川政亮『権利としての社会保障』(勁草書房 1964年 p.286)はこれらの資料について、つぎのように解説をしている。『百問百答』については、「これは半ば通牒類と同じ程度の性質をもっているものと都道府県段階以下の行政担当者には受けとられているのが実態である。」また、『生活と福祉』については、「保護課が、その編集に強力な発言権を持っている定期刊行物」であるとしている。
■しかく言及
「生活保護制度を家族政策の一つして位置づけて論じた牧園清子は、生活保護が「経済的機能の援助・強化をはかる家族政策」と、「規範的統制機能をもつ家族政策」の二つの機能を一つの制度が内包しているとする(牧園 一九九九:八)。前者は金銭やサービスなどの経済的給付であるのに対し(以下給付機能とよぶ)、後者は望ましい家族や人生のあり方についてのモデルを提示する、文字通り規範的な機能(以下規範的機能とよぶ)である。
ただし、厳密に言えば、規範的機能は生活保護法本体というよりは民法が担っている。家族に関する法規範を定めているのは民法であり、生活保護法はその第四条(保護の補足性)で「民法に定める扶養義務者の扶養」を優先する、という形で民法を参照する構造をとっているためである。また、金銭やサービスの機能も、歴史的に見れば、生活保護の枠内だけでなく、その枠外で経済的給付を伴わない形で実施されるものでもあった。したがって、<0048<本章では‖公妬扶助(生活保護)を姉つの要素‘機能からなり‖家族に働きかけるプベテムとして定義する|より詳しくいえば‖給付機能を痴う公妬扶助法‘救貧法という要素‖橘範妬機能を痴う民法‖パーベワーハ機能を痴う現業員‘民生委員という要素である|」(埋橋編2013:48-49, 第3章 公的扶助への社会学的接近――生活保護と家族モデル [菊池英明]47-54, ◆埋橋 孝文編 20130330
『福祉+α?C 生活保護』,ミネルヴァ書房,277p. ISBN-10: 4623065405 ISBN-13: 978-4623065400 2800円
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*作成:
中村 亮太