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『認知心理学1 知覚と運動』

乾 敏郎 編 19951115 東京大学出版会,300p.


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しかく乾 敏郎 編 19951115 『認知心理学1 知覚と運動』 東京大学出版会,300p. 3400 ISBN-10: 4130151010 ISBN-13: 978-4130151016 2940 [amazon]/[kinokuniya] (注記)

しかく目次
序文 「知」を知る時代
序章 知覚と運動 乾 敏郎
0.1 感覚・知覚系
0.2 認知系
0.3 身体・空間知覚および認知地図
0.4 運動系
0.5 価値判断・感情系
0.6 統合された知覚運動プログラム
0.7 総合的アプローチ
0.8 他の巻との関係

第1章 立体視 竹市 博臣
1.1 計算論的アプローチの枠組み
1.1.1 2・1/2次元スケッチ
1.1.2 視覚のモジュール性
1.1.3 説明の水準
1.2 脳のモジュール性に関する神経科学的知見
1.3 両眼立体視
1.3.1 対応問題
1.3.2 適合性・一意性・連続性の制約条件
1.3.3 適合性の制約と照合素
1.3.4 一意性の制約と多重照合
1.3.5 連続性の制約と不連続性の知覚
1.4 計算理論以後の展開
1.4.1 一般原理

第2章 恒常性 野澤 晨
2.1 恒常性とは何か
2.2 恒常度指数
2.3 大きさの恒常性の理論
2.4 空間知覚に対する新しい視点――網膜像依存説からの脱却
2.4.1 ギブソンの生態学的視覚論
2.4.2 ヨハンソンの実験現象学的
2.4.3 マーの計算論的視覚論
2.5 明るさ(色彩)の恒常性の問題

第3章 聴覚による認知 津崎 実
3.1 環境の中における聴覚の位置づけ
3.1.1 聴覚刺激の成立
3.1.2 聴覚系にたいする入力と符号化
3.2 音脈分凝
3.2.1 原始的分凝とスキーマ依存的分凝
3.2.2 分業にたいする規則性の役割
3.2.3 音源位置情報の役割
3.3 聴覚的誘導
3.3.1 聴覚的誘導(パルセーション閾)
3.2.2 文脈依存的連結と音韻修復
3.4 共通の変化による群化
3.4.1 調波性による群化と周波数変調効果
3.4.2 同期性の重要性
3.4.3 共通の振幅変調の効果
3.5 むすび

第4章 異種感覚情報の統合 森 晃徳
4.1 自己移動感における異種感覚の統合
4.2 空間知覚における異種感覚の統合
4.2.1 奥行き知覚
4.2.2 大きさ知覚
4.3 異種感覚の統合の神経生理学的基礎
4.3.1 上丘における視覚・聴覚・体性感覚の統合
4.3.2 海馬における異種感覚の統合

第5章 視覚パターン認知 行場 次朗
5.1 視覚パターン認知の基礎過程
5.1.1 図地分化
5.1.2 固有的輪郭と非固有的輪郭
5.1.3 パターンの分節・補完と一般像抽出の原則
5.2 視覚パターンの内部表現と処理過程
5.2.1 鋳型表現
5.2.2 特徴表現
5.2.3 構造記述
5.2.4 並列分散処理モデルによる表現
5.3 三次元物体の視覚表現
5.3.1 マーのアプローチ
5.3.2 視点非依存的アプローチ
5.3.3 視点依存的アプローチ

第6章 顔の認識 吉川 佐紀子
6.1 はじめに
6.2 顔の知覚
6.2.1 部位の顕著性
6.2.2 部分と全体、および方向特異性
6.2.3 顔の示差性:似顔絵研究からの示唆 6.3 顔の認識過程
6.3.1 ブルースとヤングのモデル 6.3.2 モデルの仮定を支持する証拠 6.3.3 モデルと関連する最近の研究 6.4 画像処理技術を応用した顔の認識研究
6.5 顔の認識とコミュニケーション――これからの課題

第7章 視覚的注意 横澤 一彦
7.1 視覚的注意とは
7.2 アイコニックメモリーと前注意過程
7.3 特徴統合
7.4 注意のメタファー
7.5 注意を向けなかった情報の運命
7.6 視覚的注意の脳内機構

第8章 空間視とその発達・障害 積山 薫
8.1 空間視の身体性
8.2 乳児における空間視の発達
8.3 空間認知の障害

第9章 運動制御と視覚・自己受容感覚 今水 寛
9.1 生体の運動制御への計算論的アプローチ
9.2 弾道運動と修正運動
9.3 弾道運動を可能にするメカニズム
9.4 運動軌道の普遍性と軌道計画

第10章 運動系の発達 河合 優年
10.1 はじめに
10.2 発達心理学の問い
10.3 運動機能を支える生理学的機構と初期発達
10.4 リーチングの発達的変化とその意味
10.5 初期運動発達を考える
10.6 手指運動発達のこれから

第11章 エコロジカル・アプローチ 佐々木 正人
11.1 リアルな運動の単位
11.2 運動と知覚情報の同調

学会・ジャーナル案内 乾 敏郎
人名索引
事項索引

【トピック】
1・1 立体視研究に用いられる刺激
2・1 大きさの恒常性の測定実験例
2・2 ヨハンソンの光点の運動軌道の観察例
2・3 色彩の恒常とランドのレティネクス
3・1 マスキングと聴覚フィルターモデル
3・2 ホルマント構造と周波数変調の関係
3・3 クックの聴覚情景分析にたいする計算論的アプローチ
4・1 統合の法則
5・1 多重解像度表現
6・1 相貌認知障害をもつAさんの顔の記憶
7・1 部分報告法
7・2 視覚探索
8・1 視覚情報による音声の認知
9・1 中枢神経系において軌道は計算されているか
10・1 中枢神経系の成熟に関する指標


しかく引用・まとめ
太字見出しは、作成者による。

驚くべきことに、生後1カ月以内の乳児でさえ原初的な模倣行動である共鳴動作(co-action)を行なう。たとえば、舌の出し入れや口の動き、指の運動までもその動きを見る(静的な状態ではなく運動の観察が重要な情報となる)と模倣することが確認されている(Vinter, 1986)。すなわち、視覚によって他者の動作が認知され、自らの身体の運動に対応させることができるのである。(p.5)0.2

0.3 身体・空間知覚および認知地図
対象の位置表現
自己中心座標系・観察者中心座標系
観察者中心座標viewer-centered coordinate
?@頭部中心座標系head-centered coordinate
?A眼球中心座標系oculocentric coordinate
?B身体各部中心座標系body-part centered coordinate

身体自体の位置関係の把握手段
自己受容器propioceptorの出力信号
自らが発した運動指令信号――コロラリー放電corollary discharge
知覚の情報と体性感覚somatic sensation情報の統合
アクティヴタッチ
認知地図cognitive map

第1章 立体視 竹市 博臣
計算論的アプローチ
「見ることのみかけの単純さにまどわされて」、視覚の重要な問題の多くは1980年前後まで看過されがちであった。それらは計算論的アプローチと呼ばれるマシンビジョンの工学的な研究の中で指摘され、視覚は網膜画像から外界の構造を推定する情報処理、計算(computation)、あるいは数学的な問題であり、この問題を解く鍵は、視覚系の視能力や感覚量の測定を中心とする感覚生理学や心理物理学よりむしろ物の形や運動を規定する物理学や幾何学にあるという認識から、視覚研究の中心が実験実証より理論構成に移っていった。(p.15)

2・1/2次元スケッチ
初期視覚・高次視覚
ランダムドットステレオグラム
両眼立体視

モジュール
両眼立体視のような、特定の情報だけを処理する過程をモジュールと呼ぶ。視覚系は、明るさ、色、両眼視差、運動、テクスチャー(肌理)など、さまざまな情報の処理のためのモジュールをもっていると考えられている。(p.20)

有効手がかり・実働手がかり
脳の機能局在―脳のモジュール性

脳のモジュール性の考え方は、全面的に受入れられているわけではないが、人間では色、運動の知覚や顔の認知に限局した障害(第6章参照)が生じうることともあわせて、少なくとも大ざっぱには成り立つと考えられている。(p.27)

対応問題
制約条件(拘束条件)・自然制約条件
適合性、照合素
一意性、パヌームの限界状況Panum's limiting case、多重照合multiple match
連続性、両眼間非対応領域

知覚学習、初期視覚に携わる低次の領域の成体での可塑性

第2章 恒常性 野澤 晨
恒常性
大きさの恒常性
明るさの恒常性

表面色・平面色・開口色

ヘルムホルツ‐無意識的推論

古典的行動主義‐S-R関係
ウッドワース・新行動主義‐S-O-R関係 コフカ、遠刺激・近刺激
全体空間の枠組み
ゲシュタルト説
トランザクショナル説
確率論的機能主義

ギブソン、肌理の勾配、不変項
オプティカルフロー・光学的流動

形の恒常性

色彩の恒常性
ヘルムホルツの無意識的推論説―へリングの記憶色説

第3章 聴覚による認知
耳に与えられる信号は音が大気中を伝わる圧力の変化であるという性質から、複数の音源からやってくるものが折り重なっている人間の聴覚系の仕事はこの折り重なった信号を分解し、それを再合成して適切な対象すなわち音源の存在を認知することである(p.71)

蝸牛・基底膜

音脈分凝
音脈化効果
一連性境界
分裂境界

原始的音脈分凝
スキーマ依存型の分凝

両耳間マスキング・レベル差
オクターブ錯覚

聴覚的誘導
連続聴錯覚
短音性誘導
異音性誘導
対側性誘導

文脈依存型連結
音韻修復現象

調波的構造
共通の周波数変調
ホルマント

共通の振幅変調
共変調マスキング解除

第4章 異種感覚情報の統合 森 晃徳
オプティカルフロー→自己移動感
視野周辺部
拡大率最大

輻輳角
行動空間
一時的地図...約8秒間有効
視角

視空間と聴覚空間の統合
感覚間の情報統合
視空間と体性感覚の統合

視覚・聴覚・体性感覚などの異種感覚情報の集まる場所は、上丘のみならず海馬、扁桃体などいくつか知られている。海馬は、出来事を構成する事物の連合(中期記憶)に関係しており、扁桃体は、価値判断(事物と報酬の統合)に関係しているといわれている。(p.114)

第5章 視覚パターン認知 行場 次朗
図地分化figure-groung segregation
ルビンに始まる実験現象学的およびゲシュタルト心理学的研究により、図や地になりやすさを規定するさまざまな刺激要因が明らかにされてきた。それによると、より明るい領域、より面積の小さい領域、閉じた領域、より規則的な形をした領域は、そうでない場合に比べて図になりやすいとされている。最近、図の処理には解像度が高くてスピードの遅い視覚チャンネルが、地の処理には解像度は低いがスピードの高い視覚チャンネルが関与している証拠が示され(図5・1(b)参照)、これらのチャンネルの特性から、上述した図地感覚の諸側面を説明する試みがなされている(Weisstein et al., 1992;行場, 1991)。(p.118)

固有的輪郭、隠蔽、非固有的輪郭

T型接点

補完
分節
一般抽出原則
したがって、視覚系は、ある網膜像が与えられたき、その像を一般的にもたらすであろう外界構造を選定する作業(最大事後確率推定)を行なっていると捉えることができる。(p.121)
逆光学・逆生態学的光学

視覚失認

視覚パターンの内部表現と処理過程
鋳型表現
鋳型template
鋳型照合template matching
前処理
二次元フーリエ変換:空間波形→空間周波数

特徴表現
パンデモニアムモデル
示差特徴:垂直、水平、斜め線分、閉曲線、交点
顕著性

大域特徴

構造記述
創発特性emergent property
スキーマ
ボトムアップ‐トップダウン
知覚循環

並列分散処理parallel distributed processingモデル
入力層‐中間層‐出力層
ユニット間の結合の強さ...シナプスウェイト
逆伝播法

計算理論
1980年代に入って、視覚研究は新しい強力な視点を得たということができる。それは、マー(Marr, 1982)の計算理論(computational theory)である。彼は、視覚系の計算目標を、網膜に投影された二次元画像から外界の三次元構造を復元することにあると捉え、そのためにはどのような下位段階の計算が必要になるのかを明確化した。(p.131)

不良設定問題
原始スケッチ→2・1/2スケッチ(観察者中心座標系)、視点不変性に対する説明の問題→三次元モデル表現(物体中心座標系)、一般円錐・一般円筒
視点非依存アプローチ
ジオン
基本カテゴリー
ジオンによる構造記述表現

視点依存アプローチ
典型的景観canonical view

行動のためのパターン処理と認識のためのパターン処理の独立


第6章 顔の認識 吉川 佐紀子

顔の示唆性distinctiveness
既知性判断課題

顔の認識モデル:顔の記憶表象(顔認識ユニット)→個人情報ノード

顔のプライミング効果
顔のプライミング効果とは、ある人物の顔を知覚することにより、後に提示される同一人物の顔、あるいはその人物に関連する別の人物の顔の認識(既知性判断)が促進されるという現象をさしている。(p.159)
反復プライミング効果と連想プライミング効果

相互活性化モデル
ユニットの集合

第7章 視覚的注意 横澤 一彦
視覚的注意とは、視覚情報の選択機能である。ここではまず、視覚的注意を必要としない過程である前注意過程から取り上げる。視覚探索やテクスチャー分離などの研究にもとづく前注意過程との比較から、視覚的注意の重要な機能が、さまざまな特徴を局所的に統合すること、すなわち特徴統合にあることがわかる。(p.169)

視覚的注意≠注視

損失利得法cost benefit method

前注意過程
アイコニックメモリーiconic memoryとアイコンicon
部分報告法partial report method
250ミリ秒残存
アイコニックメモリーと残像(保持時間数秒から数十秒)
アイコニックメモリー(非常に短い持続時間、無限容量、位置情報依存)と視覚短期記憶(比較的長い持続時間、限界容量、位置情報と独立)

視覚探索課題
ポップアウト
テクスチャー分離

特徴探索
結合探索

特徴統合理論

結合錯誤

誘導探索モデル

注意のメタファー:スポットライト、ズームレンズ、のり、のぞき穴

サッケート、コウソクサッケード

半側空間無視unilateral spacial neglect



*作成者 篠木 涼
UP:20080527 REV:20081115
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