『われらの内なる反国家』
大沢 正道・内村 剛介 編 19701010 太平出版会,288p.
last update:20110626
■しかく大沢 正道・内村 剛介 編 19701010 『われらの内なる反国家』 太平出版会,288p. sm02 1vie beh
■しかく出版社/著者からの内容紹介
■しかく目次
?T はじめに―――日本の自由の根について 大沢 正道
?U 背く「日本精神」の構造と伝統
「籠り」の思想 松永 伍一
習合の論理と習俗 大沢 正道
北一輝・辻潤・大杉栄 桶谷 秀昭
少女ナロードの出発と回帰 堀本 吟
高神村事件 秋山 清
?V 「根づき」への試み―――土着と自立に挑む手記
1 開拓農民の闘い 別所 孝三
2 山岸会の実践のなかで 渡辺 操
3 声なき声の10年 小林 トミ
4 「イオム」通信の5年間 向井 孝
5 労働者の苦闘の中から 高島 洋
6 企業の町から労働者の町へ 小林 収・渡久地 政司
7 開いた共同体 岸田 哲
8 「国境解体」のたたかいへ 高橋 立男
9 農村から出た一文学グループのこと 草階 俊雄
10 大衆的すわり込み運動の視点 金井 佳子
11 わが友ポール 彼は反戦脱走米兵 鈴木 正穂
12 「無名」へのこだわり 河野 信子
13 「法」による秩序と「掟」による秩序 前田 俊彦
?W 対談 日本民衆の光と闇 宮本 常一・内村 剛介
?X おわりに―――権力は弱点の総和である 内村 剛介
■しかく引用
■しかく金井佳子「大衆的すわり込み運動の視点」(210−219)
●くろまる羽田空港入り口での佐藤訪米抗議座り込み
「目の上いっぱいに広がった青空の中へ飛しょうしていく自分を、11人が同時に感じて感動した。抵抗の中味とか、失われている言葉とか、未来に望み得る世界とかを、この一瞬の静寂の中で11人はかい間見た。つね日ごろ、安息する場所などどこにもないと思い、落ちつかない目をギロギロさせていたこの人たちは、佐藤訪米という緊迫した緊張関係のところに、最高に安息する自分を見つけたのだ。そこに、国家とは全く対立する言葉があり、行為があり、空間があり、思想があることを知った。それは、形としては持続できなくても、そこで知ったことは、それ以降、はん濫する言葉の中から、人間関係の中からどれが自分にとって重要かという基準になった。」(211)
「私たちのグループ、非暴力の反戦行動は、アメリカがハノイを爆撃した日にできた。その時、即時に、なにをおいてでも、アメリカ大使館の前で、抗議のすわりこみをした人たちによって出発した。
グループは、いろいろなところで抗議のすわりこみをした。首相官邸前で、羽田の道路で、アメリカ大使館の前で、沖縄、嘉手納の正面ゲートで、数寄屋橋の大すわりこみの中で。すわることだけが唯一というのではないが、すわることによって抵抗を釘づけにする思想を育てたかった。」(211−212)
「B52常駐に対して、嘉手納空軍基地の第1ゲート前で、沖縄の労働者と学生と、数人の本土の私たちで、抗議のすわりこみをした。米兵が、カービン銃をこちらに向けて、友人のすわりこみの前に立ちはだかった。私は死んでもいいと思った。
今から思えば、彼らは、本土の人間を思いやってくれたのかもしれない。與儀公園ではじめて会った、私の思いつめたような、すわりこみの意志を、そくざに引き受けた、彼ら、労働者。そして宿舎で会った学生。沖縄ベ平連の人たち。本土から思いつめて出かけて行った人間たちに対して、その罪意識みたいなものを少しでも軽くしてあげよう、という優しさみたいなものに包まれて、私はすわった。
沖縄の人たちにとって、そこで生きていることがすでにあらゆる抑圧者に対しての抗議になるのだから、差迫って、いちばん危険な、空軍の正面ゲートにすわらなくてもよかったのかもしれない。
私は、沖縄になにもしてあげられないで、逆にばく大なお土産をもらったような気がする。つばでも引っかけられて不信を表明されるより、この方が私には苦しい。
あれから沖縄は、基地労働者によって、もっとも具体的に沖縄の姿を私たちに見せた。東大闘争にあった自己否定の何十倍の自己否定を私たちに知らせた。この鋭い矛盾に対応するものが私にあるだろうか。沖縄の重たさが私の中に住むなどと思えない(断片ならある)私から沖縄はますます遠くなって、届かない。」(215−216)
■しかく書評・紹介
■しかく言及
*作成:
大野 光明