報告者らが運営するNPO法人ゆに(京都市北区)は、大学等で学ぶ障害学生の支援を活動の中核とする民間団体である。理事長で筋ジストロフィーの当事者である佐藤は、学業や生活において多くの学生ボランティアの協力を得ながら大学で学んだ経験を有する。本法人は、佐藤が自らの学生生活を通して築いてきた仲間とのつながりを後に続く障害学生の支援に生かすとともに、そうした仲間たちの活動の幅を広げることを目指して、2011年に設立した。当初は肢体不自由学生の居宅へのヘルパー派遣を中心に活動していたが、今日では、障害学生の在籍する大学等への介助者の派遣、PCテイクや遠隔情報保障等による聴覚障害学生の支援、修学旅行で京都を訪れる障害のある中高生の支援、ヘルパーや情報保障者の養成、各種調査やコンサルティング等にも取り組む。また、学生のみならず地域の障害者の生活支援も行う。活動には障害当事者や学生が多数スタッフとしてかかわり、遠隔情報保障においては全国各地に居住するスタッフがインターネットを介して参加している。
本報告では、まずこうした本法人の設立から今日に至るまでの活動の内容を紹介する。そのうえで、それら活動の障害学生支援における成果として以下の4点を提示する。すなわち、?@制度の谷間や突発的なニーズにも対応する柔軟な取り組みを行ってきたこと、?A障害学生の教育と生活の包括的支援を実施してきたこと、?B障害学生支援にかかわる資源やノウハウの蓄積と共有の機能を果たしてきたこと、?C障害学生支援分野での就労や、障害学生支援を切り口とする学びの機会を創出してきたことである。以上の成果や、障害分野における近年の制度政策の動向を手がかりとして、NPOである本法人が障害学生支援においてこれから担いうる役割を検討する。