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オープニング・スピーチ
長瀬 修
(立命館大学生存学研究センター客員教授) 2015年11月30日
障害学国際セミナー 2015
in 北京
[English]
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last update: 20151130
本日、北京で開催される、東アジアを対象とする障害学国際セミナーの冒頭において発言させていただき、大変光栄に存じます。
本セミナーは、日韓の交流として2010年に開始され、昨年のソウルの会議以来、中国の皆様の参加も得られるようになりました。ここ北京で今回、集うことができて私どもは、心から喜んでおります。ホスト役のワンプラスワン、また、ハンディキャップインターナショナル、とりわけ、そのカントリーディレクターのアレサンドラ・アルスーさん、またマギー・サンさんに心より御礼申し上げます。
ご承知のように、日中韓の3カ国の政治指導者、習主席、朴大統領、安部総理がようやく顔を合わせました。うれしく思っています。しかし、政治指導者が会合を持てるから、私たちも会えるということではありません。政治指導者が会わないときですら、私は会わなければなりません。いやむしろ、政治指導者が会わない時にこそ、私たちは会う必要があります。
私が北京を最初に訪れたのは、1988年でした。当時の北京は今日の北京とはまったく違っていました。私は自分の髪の毛について話すのはあまり好きではありません。しかし、30年前に、私の髪は今日の私の髪とまったく異なっていました。脱線していますが、言いたいのは、北京は本当に発展したということです。
忘れることができない北京訪問があります。それは1992年の1月でした。父親である?ケ小平を資本の走狗であると槍玉に挙げていた紅衛兵に迫害され、車椅子生活となった中国障害者連合会主席の?ケ朴方氏にお会いしたのです。当時、私は障害者インターナショナル(DPI)のアジア太平洋議長である、八代英太参議院議員に仕えていました。
その八代氏の名代として、?ケ朴方氏が中国政府に対して、アジア太平洋障害者の10年提案を行うように説得するための北京訪問でした。その成果として、アジア太平洋障害者の10年は実現し、権利に基づくアプローチをアジア太平洋で推進するために大きな役割を果たしてきました。
アジア太平洋障害者の10年があったから、条約のバンコク草案という形で、私たちは障害者権利条約交渉過程に貢献することができました。アジア太平洋障害者の10年があったから、権利を実現するインチョン戦略があります。しかし、アジア太平洋障害者の10年の初期には、障害学そして障害学が生みだした社会モデルへの理解はアジア太平洋においては、あまりありませんでした。
国際的には、1980年代のはじめから、障害学と社会モデルは影響を及ぼし始めました。たとえばDPIは、1981年に社会モデルに基づく規約を掲げて結成されています。南アフリカから亡命したヴィック・フィンケルシュタインは、社会モデルの理論家であり、英国の障害学の創始者ですが、彼がDPIの規約を社会モデルに基づくものにすべく、奮闘したのです。
日本での障害学の組織化は1999年に開始されました。『障害学への招待』を石川准と私が共編で出したのです。もちろん立岩真也教授が一章を書いています。この本が韓国語に翻訳され、賞を得ていることを私は誇りに感じています。なお、石川准教授は障害者権利条約の政府報告を審査する、障害者権利委員会に立候補しています。当選すれば、東アジアからは韓国と中国に続き、3人目の委員となります。
東アジアでは、障害学へ関心が向いてきています。日本の障害学会は2003年に発足しました。今年、韓国障害学会が誕生したことは本当にうれしく思います。台湾など東アジアの他の地域でも、障害学に取り組む新たなグループが生まれています。そうしたグループが将来、この東アジアの障害学セミナーに加わってほしいと願います。
障害学はその社会モデルを通じて、障害者権利条約の形成に大きな影響を及ぼしました。現在、条約の実施を通じて、私たちが望むようなスピードではありませんが障害学と社会モデルは政府の政策に影響を及ぼしています。
日本では、2011年の障害者基本法改正において、障害者の定義が「社会的障壁」を含むようになりました。これは、条約と社会モデルに従ったものです。現在では、政府の文書が社会モデルに言及するようになりました。わずか5年前には考えられなかったことです。こうした変化は心強いことです。しかし、社会モデルを実践に移すこと、たとえば、今回の会議のテーマである、社会サービスの提供や、障害者の権益保護において実践することはたやすいことではありません。そして、まさに困難であるからこそ、私たちは取り組み続けなければならない。確かに困難です。だからこそ、私たちはお互い共有し、お互いから学びあい、お互い助けあわなければなりません。だからこそ、私たちは北京に集い、以前からの友人と再会し、新たな友人を作っているのです。
締めくくるにあたり、北京のホストの皆様に再度、御礼申し上げます。北京開催を実現するためにマギーさんは本当に骨を折ってくださいました。私はこのセミナーに加わり、東アジアの同僚たちと議論を交わすことをとてもうれしく思っています。今日の議論、そしてこれから続く議論を楽しみにしております。
ありがとうございます。カムサハムニダ、謝謝、
*作成:
長瀬 修
UP: 20151130 REV:
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