日韓のALS患者と意思伝達装置の歴史と状況
安孝淑 2011年01月12日
◆だいやまーく背景
ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは
筋萎縮性側索硬化症は、身体を動かすための神経系(運動ニューロン)が変性する病気である。変性というのは、神経細胞あるいは神経細胞から出て来る神経線維が徐々に壊れていってしまう状態をいい、そうすると神経の命令が伝わらなくなって筋肉がだんだん縮み、力がなくなる。しかもALSは進行性の病気で、今のところ原因が分かっていないため、有効な治療法がほとんどない予後不良の疾患と考えられている。(出所:JALSA)
ALSと意思伝達装置
1.ALS介護に意思伝達装置の必要性
ALS患者は体の筋肉や舌、のどの筋肉まで弱くなって自分の意思を伝達しにくくなる。しかし、患者の意識ははっきりしていて、考えてもそれを表現できなくかって、極端な場合、自分の体の悪さを伝えることができなくなり、命に脅威を感じる場合が多い。
したがって、ALS患者の命を守るのと、QOLを高めるためにも意思伝達装置は必要となる。
患者と介護者とパソコン
2. ALS患者が急に社会から離れるときの心理的な支援と自己開発プログラム
筋肉を少しでも動ける初期の患者は絵や、楽器、など、できることがあるが、重度のALS患者はパソコンを使って何かをすることしかできない場合が多い。
重度ALS患者のためのパソコンのプログラム開発が望ましい。
3. そのために必要なこと
(1)透明文字盤、ナースコール
ほかの人たちとの円滑なコミュニケーションのために
als患者ハングル文字盤 ALS患者日本語文字盤
ナースコール(韓国語)
(2) 福祉用具
パソコン−意思伝達および生活用、(仕事または趣味)
目的
1.日韓におけるALS患者のための意思伝達装置の状況を把握する。
2.調査した内容を元に問題点を把握する。
3.問題点から改善策についての提案を行う。
データ
日韓に関する情報収集を実施して、新聞の記事を中心に内容を把握した。
方法
まず、ALS患者のコミュニケーションの必要性を確認し、それに必要なことと日韓での状況を新聞記事を通じて把握して整理した内容を、 @nifty TimeLine を用いて、タイムラインとして可視化した。また、ALS患者たちと実際にかかわっている人とのインタビューを行った。
結果
1. 日韓を中心としたALSと関連したIT装置の歴史と近況
* ALS意思伝達装置関連 time line
(1)日本の場合、患者が使用できる装置が90年代から継続的に開発され、使われてきたが、韓国の場合はALS患者用の意思伝達装置がないといっても過言ではない。(目玉マウス→高くて、一時的。)
(2)ここ2年間、日韓および、アメリカでも意思伝達装置と関連した話題が増えている。
5.ALS患者にスイッチを提供しているスイッチ研究会の人のインタビュー(Hさん)
一般のALS患者が意思伝達をするためには次のような段階に変化する。
* ALS患者の闘病生活と意思伝達装置の導入段階
als患者と意思伝達装置
ただし、今の福祉制度では、実際に患者が動ける部分が少なくなったときに新しい装置に慣れるためにはまた、時間が必要になるので、装置になれる時点でその措置が使えなくなる場合が多い。そのため、進行が進んでない時期から意思伝達装置を利用して慣れる必要がある。
また、これから国際的な情報提供も非常に重要なことであり、難しい問題からこそ関係者が力を集める必要がある。ALS患者にとって意思伝達装置は声であり、身体の一部である。それがあるからこそ社会人として生きることができる。
最近アメリカで行ったEYE WRITER PROJECTは今後、スイッチ研究会でも製作を予定している。
考察
結果から見ると全世界的にALS患者と関連した意思伝達装置の開発はあまり進んでないのが現状である。しかし、ALS患者は最後まで意識がはっきりしている特徴があって、最後まで意思を伝達しなければ自分に必要なことを得ることができない。ただ、最近身体を利用したゲーム機器が次々と開発され、その技術と原理を理解できる人たちが増える現象もあり、その人たちの工夫で改造され、ALSなどの重度障がい患者の意思伝達装置に利用される傾向が強い。ALS患者の平均寿命が伸びているところもあり、また、重度障がい患者の関心が治療法から、闘病生活の質に移って、QOLに関しても議論しはじめたと見られる。
課題
今回調査は日韓を中心にして調査されたので、欧米などの調査があまりできなかった部分がある。欧米などの情報も調査できるなら、重度障がい患者にもっと適切な機械の開発が期待される。そして、患者をよく理解して、関心を持ち続けてくれる技術専門家の支援も必要である。そのモチベーションできるチャンスを増やす必要がある。これからも各国のIT関係者と連携してもっと効果的な意思伝達装置を開発して、ALS患者のQOLを高めて、治療剤が出るまで、最高の闘病生活ができるように研究と企業の支援を高める必要がある。そのためには各国の研究も重要であるが、各国間の情報交換も不可決である。そして、日韓は重度障がい患者の病気について理解し、患者が実際に意思伝達できるように今の制度を見直す必要がある。
*作成:
安孝淑