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資料の来歴

栄井 香代子 20070331
栄井香代子・竹村正人・村上潔『「平成18年度京都市男女共同参画講座受講生参考資料(女性解放運動関係)収集調査」報告書』,NPO法人京都人権啓発センター・ネットからすま,pp.2-3

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last update: 20201025


資料は、1976年から1982年に京都に存在した女のスペース〈シャンバラ〉に保管されていたものを中心としている。〈シャンバラ〉運営部の資料整理グループがこれらを収集した。『スペース通信』第3号(1979年7月1日発行)の活動紹介には、「資料整理グループ――リブのこの10年の流れをビラやパンフでつづられた歴史として整理しシャンバラの貴重な資料とすべく進行中」という記載がある。解散後、シスターズ(〈シャンバラ〉の会員制度)メンバーが新たに立ち上げたグループに引き継がれ、そこで集められた資料も含まれているが、年代的には80年代の前半までを一つのくぎりとして、整理作業が行われた。以下に、資料保管者からのメッセージを記載して、来歴の補完とする。
1985年の2月頃、私はある集会で『死刑廃止運動』のパンフレットを販売している女性と出会いました。彼女は、自分はリブのグループにも関わっていて、毎週1回Meetingをしているから、よかったら遊びにおいで、と私に言いました。私は、とてもびっくりしました。「えっ?この時代にリブ?もはや『女性解放』という言葉すら敬遠され、『女性学』が主流になろうとしているのに?」と。けれども私は、あえて、今「リブ」の名乗りをあげている女性たちにとても興味を持ちました。「とりあえず、通信を送ってあげるね」と言われたので、楽しみに読むようになりました。通信に描かれるメンバーの姿や主張は、さまざまに動きながら、考え、また、隣に困っている女がいれば共に怒り、それを表現している人々だということを伝えていたので、そんな女たちがスペースを持ち、毎週集まっているというそのことだけでも、勇気づけられたような気がしたものです。そして、ごく自然に私は彼女たちのMeetingにも足を運ぶようになりました。
お茶を飲みながら、ゆったりとくつろいで、話しをし、時には議論し、互いに問いかけ合うその集まりは、学生時代、圧倒的に男が多く、堅苦しく、時にはすでに結論の決まっている会議を経験してきた私にとって、とても新鮮で、心から解放される空間と時間を得ることができました。メンバーは、私より6歳から14歳年上の女たちでした。会合に出席するようになり、私は、そこに集う人々が、かつて〈シャンバラ〉という女のスペースを運営していた「シスターズ」のメンバーだったことを知らされました。
しかし、そのスペースも、メンバーたちの進路がそれぞれ分かれていく状況下で、名義人の引っ越しもあり、閉じることになりました。閉じるに当たって、私と、もう一人私と同じ世代のメンバーに、資料などが託されることになりました。おそらく〈シャンバラ〉を直接知ることのない「若い」メンバーに女たちの思いが託されたらよい、と考えられたのでしょう。
資料は、20年近く押入に眠っていましたが、ふとした出会いから「若い」研究者がリブの運動に興味を持っていることを知り、この京都の地でかつて女たちが集ったスペースがあり、また、全国にネットワークをはって資料を集めたという「実績」を広く共有しろさんかく2/3▽することの必要性に思い至りました。〈NPO法人京都人権啓発センター・ネットからすま〉が啓発事業に携わっていることを知り、その整理をお願いするべく、資料を供託することにしました。資料が大切に保管され、なおかつ、必要な人々がいつでも閲覧でき、当時の女性たちの解放を希求する熱い思いが、今に確かに伝わっていくことを願っています。
(冬木 花衣)

しかく関連/参考

◇滝川マリ・冬木花衣・ぶんた(聞き手:村上潔) 20070731 「[インタビュー]八〇年代京都におけるリブ運動の模索――〈とおからじ舎〉へ、そして、それから。」,『PACE』03:36-49 【Web掲載:20200927】


*作成:村上 潔(MURAKAMI Kiyoshi)
UP: 20201025 REV:
フェミニズム (feminism)/家族/性...女性の労働・家事労働・性別分業社会運動/社会運動史×ばつ社会アーカイブの構築全文掲載
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