「専門家と障害当事者」
中西 正司
last update: 20151221
「専門家と障害当事者」
ヒュ−マンケア協会 代表
中西正司
19981103
自立生活国際フォーラム
第2分科会 当事者提供サ−ビスとコミュニテイケア
8月に名古屋で厚生省主催で障害者のケアマネジャ−・リ−ダ−養成研修会が開か
れ、講師として参加してきた。名古屋のリハビリテ−ションセンタ−が実務を行い、
全国都道府県より2名の代表が選ばれ、そのうち1名は県の厚生相談所(リハセンタ
−が併設された障害者の判定機関)から、1名は地域で障害者に接する仕事をしてい
る人から都道府県が選んだ。障害者の参加は4名にとどまった。
研修は5日間行われ、第1、2日目にはケアマネジメントの理念が講義され、自己
選択、自己決定、自立、エンパワメント、医療モデルから生活モデルへなどが語られ
、自立生活センタ−の活動と理念についても話す機会が与えられた。当初、これらの
理念が研修の参加者に理解され、ケアプラン作成という実際の場面で使えるものとな
ることが目的とされていた。
ところが、実際のケアプランを作らせる段になると、聞き取り調査シ−トの寡黙な
当事者の意見など無視して、たくさんしゃべった家族や配偶者の意見を中心にケアプ
ランを作る人がほとんどとなった。市のケ−スワ−カ−やリハビリテ−ションセンタ
−の職員として障害者を対象化してみる目を体の中に機構として組み込んでしまった
人に、当事者の意思を最後まで尊重しようとする姿勢を身に付けさせることは至難の
業だと思った。
リハビリテ−ションの専門家であれば自立生活の理念も頭には入っており、理解は
しているつもりではあるが、実際の場面で体で理解していないため行動できないとい
うのが現状である。
例えば、訪問調査で、ある障害者が新聞も読まない、字も書こうとしない、この人
は何もやる気のない人だ。デイケアに連れ出さなくては、と考える専門家と、新聞が
読めないのは眼鏡の度が合わないのかもしれない。筆圧がなく字が書けないのかもし
れない。という当事者への信頼から入るピアカウンセラ−との違いは大きい。
英国の学者であり運動家でもあるビック・フィンケルステインによると、リハビリ
テ−ション等の障害に関する専門家が生まれたのは施設の中である。彼らは閉じられ
た空間の中でベットからの移動、トイレでの機能測定等の業務に携わってきた。従っ
て地域ケアにおいては何のノウハウも持ち合わせていない。その彼らが今、地域ケア
の時代を迎え専門家として地域に出てこようとしている。
施設ができる前には重度障害者も地域に暮らしていた、そこにはそれを支えるコミ
ュニテイがある程度存在していた。ところが今度障害者が施設から出て地域で暮らそ
うとしている今、コミュニテイは崩壊し、それに変わる支援組織が必要となっている
。それが自立生活センタ−である。という説は学ぶべき点が多い。
2020年には障害者が福祉の前面に立ち、消費者コントロ−ルが世界の福祉のキ
−になっていることを願っている。