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国連の障害分野の動き(3)
長瀬 修
『JDジャーナル』98年10月号
一、リンドクビスト氏にノーベル平和賞を
国連「障害者の機会均等化に関する基準規則」(機会均等基準)の特別報告者であると共に、長年にわたり障害者運動に携わってきたスウェーデンのベンクト・リンドクビスト氏を今年のノーベル平和賞に推薦する動きが、世界盲人連合や、国際育成会連盟(インクルージョンインターナショナル)からあった。確かに、同氏は障害分野でノーベル平和賞にふさわしい一人である。
本稿執筆時点(十月九日)では未発表であるが、受賞はむずかしいというノルウェー政府関係者の話がある。障害、障害者という国際政治で目立たないテーマが不利なのは明かである。しかし、実現すれば、障害に関する国際的取り組み、ひいては各国内の動きへの大きな刺激となるのは間違いない。あくまで朗報に期待をかけたい。
二、国連人権委員会決議「障害者の人権」
今年の三月一六日から四月二四日にかけて開催された国連人権委員会で、障害と人権が議論され、「障害者の人権」と題する「決議一九九八/三一」が四月一七日に採択された。
リンドクビスト特別報告者はこの決議を「歴史的意義がある」と高く評価している。同委員会によって招かれて、障害と人権について報告をした同報告者は、この決議によって「障害者問題は人権委員会の議題として永続的に取り上げられることになった」と、本年八月下旬にオランダのハーグで開かれたインクルージョンインターナショナルの世界会議で述べている。ちなみに、同報告者の所属は国連の社会開発委員会であり、人権委員会とは異なっている。
背景にあるのは、国連をはじめとする国際社会の場で、障害者問題は社会開発の問題、すなわち社会福祉の問題として認識されてきた経緯である。DPI(障害者インターナショナル)をはじめとする障害者団体が障害者問題を「人権」の場に持ち出そうとした際に、政府のみならず、NGOと呼ばれる民間団体も戸惑いを当初、見せた。
しかし、八四年に任命された人権と障害に関する特別報告者のレアンドロ・デスポイが九一年に提出した『人権と障害者』(邦訳は中野善達編『国際連合と障害者問題』エンパワメント研究所)の功績などもあり、障害者問題は人権分野に根をおろしてきた。
決議はまず、第一パラグラフで、国連の「機会均等基準」に反する不平等や差別は障害者の人権侵害であるとした。社会開発分野で策定された「機会均等基準」が人権分野での文書として認定されたことになる。
第六、第七パラグラフでは、「経済的、社会的、および文化的権利に関する委員会」(以下、「社会権規約委員会」)が人権委員会内部での障害者の人権担当として位置づけられている。社会権規約委員会は本誌で九六年四月号から九月号にかけて翻訳、掲載された「一般的意見第五号・障害者」をまとめた委員会であり、各国の報告書を検討する委員会でもあり注目される。
なお、延び延びになっていた日本政府の社会権規約に関する第二回定期報告書(提出期限は九二年六月末)は今年の八月に提出された。希望者は外務省人権難民課(電話〇三ー三五八一ー四九九五、ファクス〇三ー三五八〇ー九三一九)から入手できる。
第一二パラグラフは各分野の特別報告者が自らの任務を遂行するにあたって障害者の状況、人権を考慮するよう求めている。第二〇パラグラフは、事務局長に対して総会で二年毎に障害者の人権に関する報告を行うよう、要請している。
三、機会均等基準の普及
民間団体が中心となって機会均等基準の普及を進める動きが高まっている。DPI、情報プロジェクトであるDAA(Disabil-ity Awareness in Action)は共に今年から機関誌で機会均等基準の記事を常設化した。スウェーデンの全国知的障害者協会(FUB)は知的障害者向けに読みやすくした機会均等基準の英語版を今年作成した。日本でも「全日本手をつなぐ育成会」が分かりやすい機会均等基準の作成を検討中である。
REV: 20161229
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