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国連での障害分野の動き(2)

長瀬 修
『JDジャーナル』98年8月号



@「機会均等基準」日本初の専門家選出
前回(六月号)で触れた「機会均等基準」の実施に関する専門家会議に、日本から初めての専門家として全日本ろうあ連盟副理事長の高田英一氏が四月に選出されている。
五月に来日した、機会均等基準に関する特別報告者のベンクト・リンドクビスト氏に会う機会を得た。特別報告者の任期は二〇〇〇年まで三年延長されたが、これが特別報告者という形態での活動として最後の三年間になるだろうと語っていた。
なお、延期された本年の会合は十月にWHO、ILOなど国際機関の本部の多いスイスのジュネーブで予定されている。
@子どもの権利委員会の日本への見解
日本政府が一九九四年に批准した「子どもの権利条約」に関して、日本政府が九六年五月に提出した第一回報告書に基づく、国連子どもの権利委員会の審査が終了し、六月に見解が出された。そのうち、障害関係の部分だけを紹介する。全四九段落のうち、五段落で障害、障害を持つ子どもに直接、言及している。
ご覧頂ければ分かるように、取り上げられているのは、(1)障害児からの苦情に関するデータの収集不足、(2)差別、子ども最善の利益、子どもの意見の尊重という原則を法律、行政施策で生かす必要、(3)障害に基づく差別、(4)障害者基本法、機会均等基準にもかかわらず、障害児の社会への統合不足、の各点である。
C.主な懸念事項
九、委員会は、子どもからの苦情の登録に関するデータ、および子どもの状況に関する他の情報、特に障害を持つ子ども、施設に入っている子ども、少数民族に属する子どもなど、最も脆弱な集団に属する子どもに関するものを含む、細目別の統計データを収集するためにとられた措置が不十分であることを懸念を持って留意する。
一三、委員会は、差別の禁止(第二条)、子どもの最善の利益(第三条)、および子どもの意見の尊重(第一二条)の一般原則が、とりわけアイヌ、韓国・朝鮮人のような少数民族に属する子ども、障害を持つ子ども、施設に収容されている子ども、自由を奪われている子ども、婚姻外で生まれた子どものように、特に脆弱な範疇の子どもに関連して、子どもに関する立法政策およびプログラムに十分に取り入れられていないことを懸念する。(後略)
一四、委員会は、法律が条約により規定された全ての理由に基づく差別、特に出生、言語、障害に関する差別から子どもを保護していないことを懸念する。(後略)
二〇、障害を持つ子どもに関して、委員会は一九九三年の障害者基本法に定められた諸原則にもかかわらず、これらの子どもの教育への効果的なアクセスを確保し、社会への全面的インクルージョンを促進するために締結国によりとられている措置が不十分である。
D.提案および勧告
四一、障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議四八/九六)に照らし、委員会は締結国に対して、現行法を現実に実施する、障害を持つ子どもの施設収容以外の措置を実施する、障害を持つ子どもの社会へのインクルージョンを進め、障害を持つ子どもに対する差別を減らすための啓発キャンペーンを計画する、それぞれのために一層の努力をするよう勧告する。
以上は未編集版のテキストに基づき、訳は基本的に外務省のものを用いたが、不適切な箇所は適宜、変更してあることを申し添える。
なお、同「見解」の原文、仮訳、また、九六年に日本政府が提出した「第一回締結国報告書」は外務省人権難民課(電話〇三ー三五八一ー五一一一、ファクス三五八〇ー九三一九)より入手できる。条約の四十二条に規定されている「条約広報義務」によって無料で送付してもらえる。同じ課でも、障害関係の資料を依頼すると、時には切手を張った返信用封筒の送付を求められることがあるのと大違いである。


REV: 20161229
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