少子化時代のジェンダーと母親意識
編者:
目黒依子、矢澤澄子
著者:岡本英雄、
江原由美子、船橋惠子、
山田昌弘、直井道子、村松泰子、松信ひろみ
2000年10月30日 新曜社 3800円
last update: 20170426
この本の紹介の作成者:田中亜実(立命館大学政策科学部3回生)
掲載:20020703
序章 「女性のライフスタイルに関する意識調査」の概要
?T 現代社会のジェンダー意識
第1章 女性の高学歴化とジェンダー革命の可能性
?U 少産化に向かう母親意識
第2章 母親たちのダブル・バイレンド
第3章 「幸福な家庭」志向の陥穽――変容する父親像と母親基範
第4章 「よりよい子育て」に追い込まれる母親たち
?V 子育て支援・子育て情報をめぐって
第5章 家意識と祖母の育児
第6章 子育て情報と母親
?W 就業とジェンダー役割
第7章 日本型雇用慣行の変化と母親意識――周辺化する女性労働力
第8章 就業女性にとっての職業と子育て――「子育てよりも仕事」は本当か?
?X 女性であること・母親であること
第9章 「母」の変容と女性の人生設計・自立の困難
付表 「女性のライフスタイルに関する意識調査」
◆だいやまーく?T 現代女性のジェンダー意識◆だいやまーく
第1章 女性の高学歴化とジェンダー革命の可能性
1.はじめに
女性を主婦、母親と位置付ける社会規範とそれを前提とする社会のしくみの中で、若い
女性の結婚観・家族観が大きく変化。しかしこの変化の方向は、必ずしも女性の自立を前
提とすることで可能となる「ジェンダー役割の流動化」に向かっているとはいえない。
(p.9-10)
2.結婚・出産観
女性の就業が生活保障に充分な報酬をもたらさない。これが、女性が生活保障を結婚に
期待することにつながる。(p.11)
妻に課せられた家事責任――ジェンダー分業(性別役割分担)意識の「夫は外で働き、
妻は家庭を守るべきである」という考え方に反対する傾向が強まった。(p.12)
3.生き方の損得感
女であることの得―女性の社会進出が肯定され、就業も当たり前となったが、日本社会
の構造上あくまでも男性は稼ぎ手であり、男性中心の産業構造であることに変わりない。
よって、女性は社会人として一人前ではないという位置付け。これを「得」だと認識する
かどうか。(p.14)
生き方が選択できて得か?―女性の生き方の多様化によって、生き方が選択できるよう
になったこと。
女であること損―ジェンダー分業、自己決定、性暴力―性別役割分業において女性が担
う領域とされる家事、育児の責任を負わされることが損かどうか。(p.14-17)
4.リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)感
出産と妊娠の決定権―この決定権が産む本人である女性にあることとする意見に約3分
の2が賛成(女性に関する意識調査による)。(p.20)
5.性と生殖意識の分離
性と生殖に関する意識と属性変数
性と生殖の分離
6.おわりに
25〜39歳の女性のジェンダー意識―「『男性は稼ぎ手、女性は主婦』というジェンダー
役割を固定的に規定する社会の仕組みの規範のなかで、若い世代の女性たちのジェンダー
意識には高学歴の影響が大きく、高学歴ほど、女性であるということで生き方が定められ
ることや現存のジェンダー役割に不満をもち、多様化したかに見える選択肢もメリットと
は思わないという傾向」(p23-24)
◆だいやまーく?U 少産化に向かう母親意識◆だいやまーく
第2章 母親たちのダブル・バインド
1.「自分たちの生き方も大切にしたい」が「自分で子育てしたい」母親たち
女性の生き方は多様化し、結婚しない生き方や子どもを持たない生き方などを肯定する
意見は若年層ほど強い。妻・母として生きるだけでなく、自分自身のために生きたい。こ
れは母親についても同じ。このような考え方が強まっているからといって、母親は子育て
を他の人に任せたいのではなく、多くの人は「自分自身の生き方を大切にしたい」と考え
る一方、「少なくとも子どもが小さいうちは母親自身が子育てにあたるべきだ」と考えてい
る。(p.29)
子育てへの専心―子どものために自分が犠牲になることは仕方ないという考え方を大半
の女性は受け入れていない。現実は、子育てにほとんどの時間を奪われ、「大切にしたい
自分の生き方」を実現する時間はほとんどない。ここに、矛盾が生じる。(p.30-31)
2.子どもを愛するからこそ「自分の生き方も大切にしたい」
伝統的母親観―「自己犠牲や献身を母親の愛情の証し」自分を犠牲にすることで自分自
身に自信を持つようになること。
1970年代―母親たちの「子育て」と「自分の生き方」との葛藤が明確化・育児ノイロー
ゼが一般化
現代の母親たちの意識は、70年代の母親意識をそのまま引き継いでいる。(p.33-37)
3.選択としての「母親専業」と「3歳児神話」
3歳児神話―3歳までは母親が育てた方が良いという考え方。合理的な根拠なし。しか
し、この考えを強く支持するのは、母親よりもその親の世代の女性、また女性より男性に
強い。「子どもにとってよい」という意見以外に、「母親に子育ての責任を負わせておい
たほうが自分にとって都合がよい」という意味も含まれる。また、3歳児神話は、母親専
業を選択した女性の心理的安定を維持する機能を担う。(p.39-44)
4.少産化に向かう母親意識
ダブル・バインド―「子育て」と「自分の生き方」との間の葛藤。これは、現代の社会
状況などによってつくられた。
ダブル・バインドから逃れるために、子どもを持たない女性が増えても当然。
(p.45-46)
第3章 「幸福な家庭」志向の陥穽――変容する父親像と母親規範
1.はじめに
2.揺らぐ父親像とジェンダー
「父親も子育てを」―父親の育児参加は、日本であまり進んでいない。(p.48-49)
3.揺らぐ母親像とジェンダー(p.52-54)
赤ちゃんを預ける抵抗感
保育園に対する偏見―保育園に通わせるのは「かわいそう」と考える女性が多い。
保育園は困っている人が利用する「福祉施設」
4.職業と育児のジェンダー・バランスの3類型(p.56‐62)
両性平等志向―「両親とも職業と育児を両立」 ←1番支持されている。
幸福な家庭志向―「父親は両立、母親は育児優先」←2番目に支持されている。
性別役割分業―「父親は職業優先、母親は育児優先」←1割程度の支持
新・性別役割分業―「父親は職業優先、母親は両立」←不人気
5.「幸福な家庭」志向の陥穽
「性別役割分業」志向と較べた「幸福な家庭」志向の新しさの3つの特徴(p.62)
?@脱家意識的
?A女性の性における主体性を自覚している。
?B男性の育児責任を強調している。
「新・専業主婦志向」との一致(p.63)
女性をケア役割にからめとる「幸福な家庭」志向―子ども・夫・老親への「愛情」とい
う口実で、女性が自らを家庭に束縛し、ケア・ジェンダーの罠にからめとられてしまう陥
穽(p.64)
6.少子化問題を冷静にとらえる
少子化問題をとらえる4つのレベル―?@家族レベル ?A地域社会レベル ?B国家社会レ
ベル ?C地球レベル(p.65)
第4章 「よりよい子育て」に追い込まれる母親たち
1.豊かな親がうける規範的圧力
「よりよい子育て」―親自身へのプレッシャーに転化し苦しめることになりかねない。
(p.69)
「よりよい子育て」の基準―?@同年齢のほかの子どもと比べる場合 ?A親である自分と
の比較(p.69)
「世間並み」の水準が上昇(p.70)
「親をしのぐ」ことの難しいさ―親自身が豊かな環境の中でそだってきた。(p.70)
2.専業主婦は子どもへの期待が高い
本人の学歴が比較的高く、夫は大卒で職業威信、収入ともに高い専業主婦グループに、
子どもへの期待が高い。(p.72-76)
3.高学歴主婦のアイデンティティ
⇒子育て内容の水準上昇と「自分らしく生きる」ことが結びついて「よりよい子育て」
専業主婦の高学歴化ー女性差別の雇用慣行が背景にある。高学歴女性の夫も高学歴の傾
向。これは、学歴の高い男性ほど専業主婦の妻をもつことのできる経済力が得られる可能
性が高いため(ダグラス・有沢の法則)。(p.78-81)
4.子どもへの期待と未婚化・少子化
「幼児教育は必要」(p.81-82)
「よりよい子育て」ゆえの未婚化・晩婚化―親自身の学歴・生活水準の上昇の結果
(p.82)
5.まとめ
「よりよい子育て」からの開放を―児童問題の中心テーマは少子化・育児不安・それに
ともなう児童虐待など。⇒いずれも高学歴専業主婦のアイデンティティ問題に帰着。
「『よりよい子育て』にとらわれない女性が多い国ほど、子ども数が多く、育児を楽しん
でいる女性が多い。」(p85-87)
◆だいやまーく?V 子育て支援・子育て情報をめぐって◆だいやまーく
第5章 家意識と祖母の育児
1.はじめに
家意識とは―「明治時代に民法や学校教育の修身のなかで具体化され、敗戦まで継続し
た『家(イエ)規範』を基盤とした意識のこと」(p.91)
家規範の特徴―?@血統集団であること ?A家長が支配し、家族員がそれに服従すること
(川島武宜による)
この章のテーマ―?@家意識のどのような要素がどの程度現在の若い世代の女性に残って
いるのか ?Aそれが「子ども」に関する意識にどのように影響しているのか
2.家意識の子ども
若い世代の女性に家意識は残っているのか―家意識的な考え方は項目によって差異があ
るが、現代の若い女性でも3分の1程度の人には残っている。高齢女性と若い世代の女性
との間には、ほとんど差がない=家意識は長く残存している(p.92-94) 結婚後、家規
範に反発。 比較的若い未婚女性、中卒・高卒の女性に残っていて、家意識に反発してい
るのは、既婚女性(特に子供がいいない女性、高学歴の女性である。(p.96)
3.祖母の育児
若い世代の女性は祖母の育児に好意的か―おおむね好意的といえる(文化や家風が伝わ
る、優しい気持ちが育つため)。仕事などの理由により、育児を頼む可能性が大きい女性
か、これまでに育児を頼んだことが多かった女性が、祖母の育児に好意的である。(p.99
−102)
「祖母の育児」に好意度に関連―家意識よりもむしろ、育児をひとりで背負い込まな
い、ほかの人に預けてもよいといった意識、仕事を継続したい意識(p.104−106)
4.結論と考察
家意識と関連―学歴・婚姻状況・親との同別居など
同別居や「祖母の育児」高感度―「伝統・近代」の軸にそって理解されるような価値意
識、支援などの便宜的側面との双方に関連(p.106−108)
「育児という緊急の課題が、家意識のしこりを超えて世代間の協力をうながし、『共同
の仕事』に取り組ませている」(p.108)
第6章 子育て情報と母親
1.はじめに
この章のテーマ―パーソナル情報、メディア情報が母親たちにとってどのような意味を
持っているのか。
2.子育てについての情報源
(1)メディアの使い分け
3大情報源―近親者・友人・育児雑誌。パーソナル情報派、メディア情報派に分かれる
のではなくどちらも利用(p.112)
パーソナル情報源―近親者と友人に集中し、経験を重ねるにつれ友人に。子育てについ
て情報交換できる友人が増え、親、きょうだいよりも同世代の友人を頼る傾向(p.114−
115)
メディア情報源―テレビ・新聞より雑誌・本。育児雑誌についで育児書が主な情報源で
ある。
育児雑誌:若い母親、子どもが少ない、第1子の年齢が低いほど利用。 育児書:子ど
もの数が多いほど利用数が少なくなる傾向があるが、本人、子どもの年齢による差異はな
い。(p.117)
新聞・テレビの利用者層―母親の年齢が高くなるほど、また子どもの人数が多いほど利
用者が増えている。(p.120)
(2)メディアに求めるもの―?@普通の人の経験談が聞きたい。?A読者から雑誌への発信
?B読者の共感と相互交流の場(p.120-123)
(3)メディア情報の受け止め方―利用者はもともと持っている価値観に合致した情報を
集め、安心感を得ている。(p.123-125)
(4)育児雑誌の持つ意味―「具体的な子育ての知恵やノウハウを得るとともに、疑問・
悩みを持つのは自分ひとりではないという安心感、『これでよい』という自己確認を得る
手段」(p.126) 父親の姿が今までよりは登場←まだまだ少ない。育児雑誌の多くが、
育児の担当者は母親という考えで情報を提供しているため、母親にそれをきちんと果たす
のが「よい母親」というメッセージを繰り返し送っていることになるのではないか。この
イデオロギーが母親の悩みの背景にあり、「よい母親」をめざし育児雑誌を購入する。こ
れはメディア経営的に好都合な循環が作り上げられていることになる。メディアの情報に
よって、母親が自信を持ち自己肯定ができる状況が広がると、少子化をとめる方向に作用
するだろう。(p.127‐128)
◆だいやまーく?W 就業とジェンダー役割
第7章 日本型雇用慣行の変化と母親意識――周辺化する女性労働力
1.はじめに(p.131-132)
就業面での女性の不利益―?@就業率の低さ ?A短期雇用が多い ?B給与が低く昇進も遅
い など
家族責任モデル―「家族責任、すなわち家事や育児の担い手であることがどのように女
性の就業に影響をおよぼすかを分析する立場」
職務モデル―男性については家族責任を問題とせず、「職務モデル」のみをあてはめ
る。ここにジェンダー的な差別あり。
2.雇用システムの変化と女性の就業
(1)人事管理システムの変化―労働力の流動化=「その時々で必要な労働力を企業の内
部だけでなく、外部からも調達するほうが効果的だと考えられるようになり、採用と解雇
を随時行う。」(p.132-133)
(2)人事管理の変化が女性のキャリアにおよぼす影響
プラス効果:?@長期雇用でなくても不利にならない。?A勤続年数が昇給・昇進の前提
でなくなる。?B最終行での雇用の機会の増加の期待 ?Cチャンスが男性と変わらない。
(p.134)
マイナス効果:?@短期雇用に女性、長期雇用に男性が中心になるおそれ ?A発展性の
あるコースは男性、行き止まりコースは女性 ?B女性は教育・訓練を負担しなければなら
ないこともある(p.135)
3.母親意識と就業
変わる夫婦と変わらぬ親子―性別役割分業一般の影響、妻役割と母親役割が女性の就業
に与える影響は違う。(p.139-140)
職場と家庭の変化のゆくえ―職場では、グローバルスタンダード(つまりアメリカ流シ
ステムの導入)を手本に人事システムの再編成が進められている。これは女性のキャリア
にとってプラスになると考えられるが、労働力の流動化、労働と報酬の短期的なバランス
などには部分的にしか導入されていない。また家庭においては、男女の分業意識が弱まっ
ているが、母親意識は弱まってはいない。職場における差別、意識面の問題などが背景に
あり女性の就業はそれほど進んでいない。(p.146-148)
第8章 就業女性にとっての職業と子育て――「子育てよりも仕事」は本当か?
1.はじめに
本章のテーマ―就業している女性たちが、職業へのかかわりと出産・子育てへのかかわ
りに対してどのような意識をもっているのか。(p.149-150)
2.就業女性の職業と子育てに関する意識(本書「女性のライフスタイルに関する意識調
査」により考察)
それぞれの職業で要求される働き方の違いが、職業と子育てへのかかわり方に影響を及
ぼすと考え、職業が専門職(医師、弁護士、公認会計士、記者、芸術家など)の女性の着
目して考える。
職業を持つ女性のほとんどが「理想」も「将来の予想」も子ども数は2〜3人と平均
的。専門職女性が子どもを欲しくないと考えているわけではない。専門職女性は子育て優
先の傾向、準専門職女性は仕事と子育ての両立志向が高い。専門職女性は、母性意識の存
在にも関わらず、子育てを前提としない「高い職業のコミットメント」が求められ、周り
の男性は仕事中心の生活。(p.150-163)
3.女性の就業と少子化の関連性
少子化の要因に女性の職業進出があげられるのは、女性が出産・子育てよりも職業を優
先しようとするからではない。男性中心の職場で要求される仕事中心の職業と、「子育て
=女の役割」という母親意識の存在が仕事を続けたい女性に、子どもをもつことを躊躇さ
せてしまうからではないか。
だからといって、全ての職場を「女性にとって仕事と子育ての両立が可能である職場環
境」が整えば問題解決になるのではない。「子育て=女の役割」という「母親意識」を取
り払い、「父親・母親の双方にとっての職業と子育ての両立支援策」が必要とされる。
(p.164-167)
◆だいやまーく?X 女性であること・母であること◆だいやまーく
第9章 「母」の変容と女性の人生設計・自立の困難
1.はじめに
今日、若い女性にとって子どもを持つことは古式的な熟慮や計画を必要とし、希望や期
待の的、不安やストレスの元となりつつあり、女性と家族、子どもの関係は流動化してい
る。(p.171)
2.若い世代の女性のジャンダー意識と「幸せな家庭」幻想
(1)揺れるジェンダー意識と自立意識―晩婚化・賞賛かの担い手世代の女性間のジェン
ダー意識の変容(p.172) 若い世代の女性の自立意識は結婚や出産に到るまでの「生き
方の選択」どまり=男女の自立についての意識のジェンダー・バイアスはかなり大きい。
(p.173)
(2)「幸せな家庭」コールの危うさ―「母」と「女」の間で揺れる女性の、「私」をめ
ぐるジレンマや困難が予想されるため(p.175-176)
(3)女性たちのアイデンティティの多元化―家庭の外へ広がる関心(p.177-178)
3.少子化時代の若い世代の女性たち
(1)若い世代の女性たちの人生選択と子ども―自由な選択(結婚する/しない、結婚相
手の選択、子どもを産む/産まない)を手に入れた。(p.177)
(2)アイデンティティ(自らが抱く自己意識、自分らしさ)の揺らぎ―ジェンダー化さ
れた時間構造のなかで、女性は結婚や出産をきにアイデンティティの調整や再構築を迫ら
れる。しかしそこには制度的な矛盾と困難が生じている。(p.180-182)
4.少子化社会の家族と「母」の変容
(1)日本の「禁断家族」と「家族の戦後体制」
戦後広まった日本の近代家族(p.182‐183)
母の主婦化―1960年代 雇用者の妻を被扶養者(専業主婦)として税制上等で優遇す
る制度を導入(p.183―184)
「主婦と働き蜂」に変化なし―ジェンダー分業の撤廃を促す法制度上の改善はいくつ
か実現したが、家庭や地域におけるアンペイドワークを「主婦化」した既婚女性にゆだ
ね、「働き蜂」の男性の長時間労働を過労死寸前まで放置する、企業社会の実態には大き
な変化なし。(p.184―185)
(2)現代家族―安らぎが家族規範に。(p.185) 情緒的きずなの危うさ(p.186) 女
性にゆだねられた愛情労働(種々の家事サービス、無償労働)(p.186―188)
母親の変容―長時間の道具化された「愛情労働」を担う女性は、安らぎたいが安ら
げない家庭でストレスの多い生活、育児の孤立化による児童虐待の増加(p.188―189)
5.おわりに――女性の人生設計の困難と可能性
親密性の変容とジェンダー・バイアス―親密性の変容には、男女の親役割や自立意識の
ジェンダー・フリーへの変容も含む。しかし、女性の自立意識のジェンダー・バイアスは
依然として根深く、夫婦間や親子間の感情規範・感情表現のゆがみや葛藤に直結しかねな
い危険な面もある。また、少子化時代に問われている家族像、母親のアイデンティティ、
人生設計をめぐって「志向」の分岐、多元化やジレンマ、困難などが見られた。
この少子化時代に求められる社会政策上の対応―?@若い世代の母親たちの「個」として
の生き方の自由や自己実現への欲求を強めている多様な実像を受け止めること ?Aそのう
えで、家族責任をもつ多くの働く男女が求める「仕事と子育て」の両立を社会経済システ
ムとしトータル保障する体制づくり
21世紀社会の政策は、男女とも仕事と子育て、個人の生活を充実させ、対等なジェンダ
ー関係の中で生きられるような、豊かな選択肢ち可能性を広げることを中心に据えなけれ
ばならない。
......以上。コメントは作成者の希望により略、以下はHP制作者による......