ヒップフラクチャーセンター
ヒップフラクチャーセンターでは、総合内科が整形外科と連携し、大腿骨近位部骨折に対応します。
大腿骨近位部骨折は大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折の総称で、9割は転倒で起こり、高齢者に多い骨折です。転倒の原因となる状態や疾患があるだけでなく、骨折を契機に更なる問題が明るみになることも少なくありません。手術をすれば骨折はいったん治りますが、老年症候群やロコモーティブシンドロームなどの治療・ケアや調整は難題です。
転倒の原因は、大きく分けて内因性、薬剤の影響、環境要因の3つです。
1:内因性の要因には、糖尿病・脳卒中・心疾患・神経疾患・認知症などの疾患やフレイル・サルコペニアなどの身体的機能低下があります。これらの疾患が複数組み合わさるマルチモビディティ(多疾患併存状態)となっていることも少なくありません。したがって、これらの病態や疾患を総合的にかつ包括的に治療しケアすることが必要になります。
2:薬剤の影響としては、ポリファーマシー(4剤以上の処方)が転倒に大きく関係しています。特に、抗てんかん薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンに代表される鎮静薬、オピオイドは転倒のリスクを増やします。これらの薬剤は、単に中止するのではなく、一貫した基準に沿って必要性と有害性を吟味し、チーム体制で調整していくことが必要です。
3:環境要因としては手すりや階段の不備、暗い照明、障害物、滑りやすい床面、歩行補助器具の不適切な利用などがあげられます。家庭医やリハビリテーションの知識・技量が必要になる領域です。これらの3つの要因・課題を十分考慮してケアすることなく、「骨折の治療は終了した」というだけでは、不十分となります。
総合内科では、マルチモビディティやポリファーマシーに多職種と連携して取り組んできました。総合内科が大腿骨近位部骨折の診療に加わる意義も患者さんを中心とした医療を行うことにあります。当院では2019年4月から、ヒップフラクチャーチームの一員として総合内科医が主治医を務め、整形外科、救急科、麻酔科、周術期ケア部門、リハビリテーション科、薬剤科、栄養科、メディカルソーシャルワーカー(MSW)、入退院支援科と連携して、質の高い大腿骨近位部骨折診療を行っております。
ヒップフラクチャーセンターセンター長
総合内科主任部長 石丸 直人
ヒップフラクチャーセンター副センター長
整形外科部長 脇 貴洋
整形外科から
ヒップフラクチャー(大腿骨近位部骨折)は早期手術・早期離床・早期リハビリテーションが望ましく、当院では早期手術を目指した体制を麻酔科と連携して構築しており、来院後平均約24時間以内で手術を行っています。しかし、高齢者の方は体力・筋力が低下し、多くの疾患を有していることが多いため、早期離床やリハビリテーションが困難な場合があります。そのため、総合内科と連携したヒップフラクチャーセンターで、総合内科医が入院後早期から患者さんの病態把握と内服薬の調整、内科的治療を行うことによって、手術待機期間の短縮、早期離床・早期リハビリテーションが実現し、患者さんのQOL 向上と予後改善につながっています。
ヒップフラクチャーセンターではAMC Hip Fractureテンプレートを導入しています
当センターでは過去の文献・ガイドラインに基づき、病院総合医が整形外科医と連携するために必要な項目を抽出し、周術期リスク層別化を含むAMC Hip Fractureテンプレートを導入しました。
AMC Hip Fractureテンプレートの使用は合併症発生率低下と関連することを報告しております。
原著論文:https://link.springer.com/article/10.1007/s43465-024-01112-8
フルテキスト閲覧限定用リンク:https://rdcu.be/dz05k
以下よりテンプレートファイルをダウンロードできます。皆様の大腿骨近位部骨折診療にご活用いただければ幸いです。
AMC Hip fracture template.xlsx