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画像:社長]
最近、認知症の高齢者が徘徊中に線路に立ち入って列車に衝突して亡くなられて、遺族が鉄道会社から損害賠償を請求された事件がニュースになっていましたよね。
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画像:弁護士]
最高裁の判決があった事件ですね。同居の妻と、別居の息子の監督責任が問題になっていました。その件で何かご相談でしょうか?
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画像:社長]
実は、個人的なことなんですが私の父も最近認知症の症状が出てきているんです。母も高齢で二人暮らしなので、人ごとではなくて。もし同じような事件になったら、母や私が賠償責任を負うこともありえるんでしょうか。
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画像:社長]
そもそも、こういう事故は本人の責任ですよね。なぜ家族が責任を追及されるのでしょう。
【民法上の責任能力】
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画像:弁護士]
まずそこをご説明しますね。おっしゃるとおり、自分の行為で他人に損害を与えた場合は本人の責任というのが原則です。しかし民法では、責任能力を欠く責任無能力者の場合には、その行為の責任を負わないとされているんです。
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画像:社長]
責任能力ってどういうことでしょうか?
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画像:弁護士]
民法上の責任能力は「自己の行為の責任を弁識する能力」と定められていて、自分の行為の結果が違法なものとして法律上非難されるものであることを弁識する精神能力であると解釈されています。具体的には精神上の障害により責任能力を欠く場合や、幼い子供の場合があります。認知症の高齢者の方であっても、それぞれの状況や症状によって個別に民法上の責任能力の有無の判断が異なります。
【監督義務者】
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画像:社長]
責任能力があれば本人の責任、なければ家族の責任ということになるんですか?
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画像:弁護士]
責任無能力者の家族だから当然に責任を負うということではありません。責任無能力者である本人が責任を負わない場合は、その人を監督する法定の義務を負う者が賠償責任を負うことになります。幼い子供など未成年者の場合はまず親権者が法律上の監督義務者とされますが、精神上の障害により責任無能力者とされる大人の場合は家族が監督義務者であるとする法律の規定はなく、法律上当然に監督義務者になるわけではありません。
もっとも、法定の監督義務者に準ずる者として賠償請求をされる場合があり、これに該当するかは、個別の事情によって判断されます。
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画像:社長]
どのような場合に家族が責任を負うんでしょうか。
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画像:弁護士]
列車事故の件の最高裁判決をみると、法定の監督義務者に準ずる者といえそうな人自身の生活状況や心身の状況、責任無能力者との親族関係や同居の有無など関 わりの状況と、責任無能力者の心身の状況や問題行の有無・内容、監護や介護の実態など諸般の事情を総合考慮して、その人に監督責任を問うのが相当といえる客観的事情が認められるかどうかという観点から判断すべき、と判断されていますね。
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画像:社長]
難しいですね。結局いろんな事情を総合するということですか。
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画像:弁護士]
この最高裁判決の事案では、同居の妻について、妻自身も当時85歳で左右下肢にまひ拘縮があって要介護認定を受けています。夫の介護も息子の妻に補助されて行っていたことから、認知症の夫の行為を防止するために監督することが現実的に可能とはいえないので、監督義務者にはあたらないと判断されていますね
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画像:弁護士]
息子さんは、自分の父母の家の近くに妻が住んで介護を補助しており、息子さん自身もたびたび父母の家を訪ねていたのですが、事故が起きるまで20年以上同居していなかったことなどから、監督義務者にあたらないと判断されています。
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画像:社長]
うちの母も足腰が悪くて...。私と家族は実家の隣に住んでいて、私か妻が毎日様子を見に行って、必要があれば家事を手伝ったりしています。
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画像:弁護士]
そもそもお父様の責任能力の有無が問題となりますが、仮に責任無能力者と判断されたとして、今お聞きした限りですと、お母様については列車事故の最高裁と同じような判断になるかもしれませんね。もっとも社長ご自身については、監督義務者と認定される可能性もあるかもしれません。
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画像:社長]
監督義務者と判断されると、必ず賠償責任が発生してしまうんですか?
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画像:弁護士]
責任無能力者の監督義務者とされても、その義務を怠らなかった時と、責任を怠らなくても責任無能力者の行為を防止することができなかった時は、賠償責任を負わないとされています。ただ、これらの事情は監督義務者自身が立証しなければならず、立証はなかなか難しいです。
【民法上の責任能力】
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画像:社長]
話は変わって、父に責任能力があるとしても、列車事故と同じように事故で亡くなってしまったらどうなるんでしょう?
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画像:弁護士]
その場合はお父様ご自身に賠償責任が生じ、相続されます。他の相続財産との兼ね合いもありますが、相続した財産では賠償金を支払えない場合は、相続放棄や限定承認という方法があります。
【おわりに】
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画像:社長]
なんだかどんどん不安になってきたな。こういう時に使える保険などはないんでしょうか。
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画像:弁護士]
ご本人や監督義務者の賠償責任は個人賠償責任保険で填補される場合もあるようですので、検討されてはどうですか。でも、まずはお父様に今後も穏やかに過ごしていただくことが第一だと思いますよ。
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画像:社長]
たしかにそうですね。今回のお話で心づもりはできましたので、父と母が余生を楽しめるように私も協力していきたいと思います。