糸井重里
・映画評論家の淀川長治さんが、かつて
『私はまだかつて嫌いな人に会ったことがない』
という本を出していた。
実は、現実の淀川さんは、
「嫌いな人に会ったことがない」わけではなかった。
なかなか複雑な人だったとも聞くし、
柔和な、機嫌のいいおじさんでもなかったらしい。
この本のタイトルの文は、淀川さんの願望であったという。
そう思うようにして生きよう、ということだった。
一昨日、「さとがえるコンサート」で帰国中の矢野顕子と、
めしを食いながらたいしたことない話をしていた。
「そういえば、おれは嫌いな人と会わなくて済んでるから、
それが、わりと元気でいられる理由かもしれない」
と、ぼくは言った。
「わたしもそうかも。嫌いなことしてないから、ぜんぜん」
「そうだろうと思うよ、それは、あっこちゃんを見てて」
これは、ものすごく幸せなことなんだよなぁと思った。
もちろん、ぼくだって嫌いな人がいないはずもないさ。
矢野顕子が、嫌いなことをしてないということもないよ。
でも、嫌いな人とがまんして会い続けてることはない。
自然に付き合いは薄くなるし、やめるからね。
ぼくは、そういうことができるように努力もしてきた。
矢野さんにしたって、どれほどの練習をしてきたか、
どうやって音楽をやってきたか、知らないわけじゃない。
感じたり考えたりしてきたことの厳しさもわかる。
「でも、そういうことがしたくて、たのしくてやってる」
というわけだから、嫌いなことはしていないのだ。
「みんなそうなんじゃないの?」と娘に言って、
それは非常識であると指摘されたこともあるそうだ。
「みんなそうだというわけじゃない」のも、わかる。
でもね、これは、ほとんど「主観」の話なんだよね。
同じ人に会ってても、「嫌いな人ばっかりだ」と思うのも、
その人の「主観」としてはあるだろう。
一日を「嫌いなことばかりしてる」と思う「主観」もある。
その「主観」の育て方もあるような気がするんだよねー。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
本日わたしは、勇んで零下6度とやらの場所に向かうのだ。
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