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諸塚ダム
2010年05月13日 Thursday 22:38

堤高59m
HG/P 1961年 九州電力

2010年3月21日見学


九州唯一の中空重力式コンクリートダム。それがこの諸塚ダムである。
塚原ダムの下流数キロの地点から、耳川水系柳原川に沿って峠道を進む。

この峠に限らないが、宮崎の地元車両はとても速い。
農協のキャップを被った軽トラのオベ・アンダーソン(古い)や、割烹着を着たワゴンRのミシェル・ムートン(やはり古い)がぶっ飛んでいくので、宮崎の山道は注意が必要だ。

国内にわずか13基しかない貴重な中空重力式、その中でも諸塚ダムは独自のルックスの持ち主だ。それは下流面に鋭く、そして深く刻まれた5本のスリット。



中空重力式は、コンクリートの使用量を極力少なくする為の形式である。
堤体内部は、六角形の平面形状を持つ幾つかの大空間に仕切られている。

この特徴的なスリットは隣り合う空間の間仕切り部分にあたるとにらんでいる。
通常はこの様な窪みを設ける事は無いが、省コンクリートをより追求し、極限まで肉をそぎ落とした結果がこのスリットなのではないだろうか。



スリットばかりに注目してしまうが、クレストのゲートピアも、特徴的なデザインとなっている。
幾何学的な形状の内部構造を持つだけに、外部に露出する部分も直線的なクールな造形を魅せている。
天端通路の下、扶壁側面のドアーはラジアルゲートへ繋がっているのだろう。

天端の高欄の下からバケットカーブ無しに始まる下流面も、ホローグラビティらしいディティールだ。



天端は立入禁止だが、仕方ないだろう。
管理棟は、天端を渡った対岸にある。



ダムサイトから少し離れて、なるべく正面から望める場所を探したが、この角度からの眺望が限界であった。

手前に見える建物は、ダム関連の宿泊施設として使われていたのだろうか。
この場所にも行ってみたのだが、木々に阻まれ、堤体はあまり良く見えなかった。



高倍率ズームレンズの望遠端で観察すると、左岸のフーチングが、スリットの中まで入り込んでいるのが見える。
巡視用の階段からの通路が、スリット内に通じているようだ。
スリットの奥にはホローへの入口が隠されているのではないだろうか。



希少なダム形式に加え、このルックス。
下流の真正面から見上げる事が出来たら、卒倒するほどスタイリッシュな堤体のはずだ。

極限まで肉をそぎ落とした発電用ダムは、ボクサーのような男らしさを秘めていた。

諸塚ダム
★★★★

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