微量PCB含有電気機器課電自然循環洗浄実施手順書


微量PCB含有電気機器
課電自然循環洗浄実施手順書
平成27年3月31日 制定
平成29年3月31日 改正
令和2年12月24日 改正
経 済 産 業 省 産 業 技 術 環 境 局 環 境 管 理 推 進 室
経 済 産 業 省 産 業 保 安 グ ル ー プ 電 力 安 全 課
環 境 省 環 境 再 生 ・ 資 源 循 環 局 廃 棄 物 規 制 課
目次
1.総則
(1)本手順書の位置づけ..................................................1
(2)本手順書の対象機器及び洗浄可能部位..................................2
(3)基本原則............................................................2
(4)課電洗浄の流れとその後の手続........................................3
2.課電洗浄
(1)事前手続等..........................................................4
(2)抜油作業............................................................4
ア)作業前準備........................................................5
イ)抜油作業..........................................................5
(3)注油作業............................................................7
ア)作業前準備........................................................7
イ)注油作業..........................................................7
ウ)対象機器の作業後の健全性確認......................................8
(4)課電の実施..........................................................9
ア)課電状況の確認....................................................9
イ)課電期間..........................................................9
(5)絶縁油中の PCB 濃度確認作業.........................................10
ア)事前準備.........................................................10
イ)採油作業.........................................................10
ウ)分析操作.........................................................10
(6)洗浄処理の完了.....................................................10
ア)洗浄処理完了判定.................................................10
イ)洗浄処理未完時の扱い.............................................10
ウ)洗浄に使用した絶縁油の扱い.......................................11
(7)作業全般に関するその他留意事項.....................................11
3.課電洗浄等の記録及び閲覧
(1)課電自然循環洗浄実施報告書の作成...................................11
(2)課電洗浄後に行う未測定の部位に対する測定時の扱い...................11
(3)記録の保管.........................................................11
(4)記録の閲覧.........................................................12
(様式第1)
ポリ塩化ビフェニル含有電気工作物の課電自然循環洗浄実施報告書.............13 11.総則
(1)本手順書の位置づけ
本手順書は、
(2)に掲げる対象機器及び洗浄可能部位(以下それぞれ「対象機器」及
び「洗浄可能部位」という。
)について、微量ポリ塩化ビフェニルに係る課電自然循環洗
浄法による洗浄処理(以下「課電洗浄」という。
)を行う場合の、電気保安及び環境保全
を確保した具体的な洗浄手順を定め、安全かつ確実な処理を図ることを目的とする。
なお、本手順書において、
「微量 PCB 汚染絶縁油」
「微量 PCB 汚染物」は「ポリ塩化ビ
フェニル汚染物等の該当性判断基準について(通知)」(令和元年 10 月 11 日 環境省)に
則り判断する。
また、
本手順書に定める以外の安全対策や機器により必要な追加作業、手続き等については、確実に実施することとする。
本手順書に基づき適正に課電洗浄を完了した後に、課電洗浄が完了していない洗浄可
能部位(以下「未洗浄の洗浄可能部位」という。)、使用されている絶縁油に含まれるポリ
塩化ビフェニルの濃度(以下「PCB 濃度」という。
)が 10mg/kg を超える部位(以下「濃
度超過部位」という。
)及び PCB 濃度を測定していない部位(以下「未測定の部位」とい
う。
)がいずれもないものと認められる対象機器については、電気事業法(昭和 39 年法
律第 170 号)に規定するポリ塩化ビフェニル含有電気工作物又はポリ塩化ビフェニル含
有原子力発電工作物(以下「PCB 含有電気工作物等」という。
)に係る「電気関係報告規
則」
(昭和 40 年通商産業省令第 54 号)
又は
「原子力発電工作物に係る電気関係報告規則」
(平成 24 年経済産業省令第 71 号)
(以下「報告規則等」という。
)に基づく「ポリ塩化
ビフェニル含有電気工作物廃止届出書」又は「ポリ塩化ビフェニル含有原子力発電工作
物廃止届出書」
(以下「廃止届出書」という。
)による廃止届出などの所定の手続を経た上
で、PCB 含有電気工作物等並びにポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関す
る法律(平成 13 年法律第 65 号。以下「PCB 特措法」という。
)及び廃棄物の処理及び清
掃に関する法律(昭和 45 年法律第 137 号。以下「廃棄物処理法」という。
)に規定する
ポリ塩化ビフェニル廃棄物(以下「PCB 廃棄物」という。
)に該当しないものとなる。
また、
課電洗浄を完了した後に、
未洗浄の洗浄可能部位、
濃度超過部位又は未測定の部
位のいずれかが残る場合は、報告規則等に基づく「ポリ塩化ビフェニル含有電気工作物
変更届出書」又は「ポリ塩化ビフェニル含有原子力発電工作物変更届出書」
(以下「変更
届出書」
という。)による変更届出を行い、
PCB 含有電気工作物等として管理を継続する。
その後は、次のそれぞれの場合に応じて必要な手続等を行う。
使用中に未測定の部位の PCB 濃度を測定した場合は、その都度変更届出を行うが、測
定の結果、
未洗浄の洗浄可能部位、
濃度超過部位及び未測定の部位が残らない場合は、廃止届出を行う。
使用を止めて PCB 含有電気工作物等が廃棄物となった場合は、未測定の部位の絶縁油
中の PCB 濃度を測定した上で、0.5mg/kg を超える部位は PCB 廃棄物として適正に処理す 2る。
(2)本手順書の対象機器及び洗浄可能部位
次に掲げるア)の条件を満たす機器、かつ、イ)の条件を満たす部位とする。
ア)対象機器
対象機器は、銘板絶縁油量(総量)が 2,000L 以上の使用中の大型変圧器であるこ
と。
なお、対象機器を構成する部位の名称は、次に掲げるものとする。その際、次の2
から5までの部位については、変圧器本体の絶縁油と同系統となっている場合には、
本手順書においては変圧器本体として取り扱う。
1 変圧器本体(変圧器本体に付属する共油型ブッシングを含む。)2 負荷時タップ切換装置(以下「LTC」という。
)及び浄油機
3 エレファント
4 感温部
5 中間室
6 共油型以外のブッシング
イ)洗浄可能部位
変圧器本体及び当該変圧器本体に付属し変圧器本体の絶縁油とは別系統となって
いる次に掲げる部位(以下「別系統部位」という。
)であって、初回の課電洗浄を実
施する前の絶縁油中の PCB 濃度が 0.5mg/kg を超え 10mg/kg 以下である部位。
1 LTC 及び浄油機
2 エレファント
3 感温部
4 中間室
(注記)未洗浄の洗浄可能部位、濃度超過部位又は未測定の部位が残る場合においても、課電
洗浄の実施を妨げるものではなく、絶縁油中の PCB 濃度が 10mg/kg 以下の測定済みの
部位については洗浄可能部位とする。ただし、当該変圧器本体に共油型以外のブッシ
ングが付属している場合、共油型以外のブッシングは洗浄可能部位としない。
(3)基本原則
本手順書において定める課電洗浄を実施するにあたっての基本原則は、次に掲げると
おりである。
ア)作業員の安全確保
イ)周辺環境への PCB の飛散・流出等の防止
ウ)対象機器の電気的健全性確保 3エ)洗浄手順の確実な実施とその記録
(4)課電洗浄の流れとその後の手続
課電洗浄実施時における一連の流れを図1に示す。
洗浄処理を完了し、
洗浄実施報告書を作成した後の流れは、
条件によって工程が(A)、
(B)又は(C)と分かれるため、注意すること。
図1 課電洗浄フロー図
対象機器・洗浄可能部位であることの確認(1.(2)参照)
事前手続き等(2.(1)参照)
洗浄可能部位の抜油(2.(2)参照)
洗浄可能部位への新油を注油(2.(3)参照)
課電洗浄(2.(4)参照)
洗浄処理完了(2.(6)参照)
洗浄実施報告書作成(3.(1)参照)
絶縁油中のPCB濃度分析
(2.(5)参照)
微量PCB汚染絶縁油の搬出
保管又は処理
油中濃度
>0.3mg/kg
油中濃度≦0.3mg/kg
未洗浄の洗浄可能部位・濃度
超過部位・未測定の部位の有無
電気事業法のPCB含有電気工作物等の廃止届出
PCB非含有機器として継続使用
機器の廃止時
・PCB特措法の届出対象から除外される。
・廃棄物処理法の特別管理産業廃棄物とは扱われない。
電気事業法のPCB含有電気工作物等の変更届出
PCB含有機器として継続使用
機器の廃止時
・電気事業法のPCB含有電気工作物等の廃止届出を
行う。
・未測定の部位については、絶縁油中のPCB濃度を
測定の上、0.5mg/kgを超えるものを廃棄物処理法の
特別管理産業廃棄物として適正に処理する。
・洗浄済みの洗浄完了部位及び0.5mg/kg以下の部位に
ついては、廃棄物処理法の特別管理産業廃棄物とは
扱われない。
・PCB濃度が0.5mg/kgを超える部位に関して、PC
B特措法の届出対象となる。
(注記)
未洗浄の洗浄可能部位、
濃度超過部位及び
未測定の部位なし
未洗浄の洗浄可能部位、
濃度超過部位又は
未測定の部位あり
(注記)
残る未洗浄の洗浄可能部位
又は未測定の部位を
洗浄する場合
(A) (B)(C)未測定の部位の濃度を測定した場合 42.課電洗浄
(1)事前手続等
課電洗浄の作業の実施に先立ち、以下の事前手続等を行う。
ア)課電洗浄を行う洗浄可能部位の絶縁油中の PCB 濃度の確認
課電洗浄を行う洗浄可能部位の絶縁油中の PCB 濃度が 10mg/kg 以下であることに
ついて、
過去に報告規則等に基づき届け出た
「ポリ塩化ビフェニル含有電気工作物設
置等届出書」又は「ポリ塩化ビフェニル含有原子力発電工作物設置等届出書」
、及び
当該設置等届出書の届出をする際に絶縁油中の PCB 濃度を分析した第三者分析機関
が発行した分析結果報告書(写しを含む。)(以下「設置等届出書等」という。
)及び
当該設置等届出書等の届出後に PCB 濃度を分析した場合の分析結果報告書(写しを
含む。
)により確認する。
イ)課電洗浄を行う機器について
1 初回の課電洗浄の扱い
本手順書で対象となる使用中の変圧器本体、
別系統部位及び共油型ブッシン
グのうち、絶縁油中の PCB 濃度が 0.5mg/kg 以下のものは課電洗浄を実施する
必要は無く、絶縁油中の PCB 濃度が 0.5mg/kg を超えるもののみ課電洗浄を実
施する。
また、課電洗浄の実施に当たり、その時点で課電洗浄に着手できる洗浄可能
部位は、原則、一括して洗浄を実施することが望ましい。
2 2回目以降の課電洗浄の扱い
課電洗浄の結果、2.
(6)ア)の洗浄処理完了判定を満たさず、再度課電洗
浄を行う場合は、
当該洗浄処理完了判定を満たさない洗浄可能部位のみ課電洗
浄を実施する。
ウ) 洗浄実施計画書の作成
事業者は、
課電洗浄を確実に実施するために、
事前に課電洗浄に係る計画書を作成
する。
エ) 消防法等の関係法令手続
消防法(昭和 23 年法律第 186 号)をはじめとするその他の関係法令に基づき、必
要な申請・届出等の適切な対応を行う。
(2)抜油作業(洗浄可能部位から微量 PCB 汚染絶縁油を抜き取る作業)
抜油作業は、電気主任技術者(電気事業法(昭和 39 年法律第 170 号)第 43 条第1項
の規定に基づいて選任された主任技術者であって、
同法第 44 条第1項第1号から第3号
までに掲げる種類の主任技術者免状を有するものをいう。)及び特別管理産業廃棄物管理
責任者
(廃棄物処理法第 12 条の2第8項に規定する特別管理産業廃棄物管理責任者をい 5う。
)の双方の管理の下で、対象機器の取扱いに習熟した者が行うものとする。
ア)作業前準備
抜油作業前に以下の事前準備を行う。なお、本手順書に定めの無い事項について
も、
作業員の安全確保、
周辺環境への PCB の飛散、
流出等の防止等の観点から必要な
事項については、確実に実施する。
なお、抜油作業において抜油した微量 PCB 汚染絶縁油の収集運搬を伴う場合、当
該抜油作業は、当該絶縁油の収集運搬に係る特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可
を有する者が行うこととする。
1 危険(作業)区域の設定
作業にあたっては、作業の安全性、周辺設備への影響等を踏まえ、必要に応
じて危険(作業)区域を設定する。また、関係者以外立入禁止とし、危険物の
取扱い及び貯蔵に関する必要な表示を行う。
2 抜油貯蔵タンク、送油ポンプ、防油堤等の設置等必要な措置
専用タンク、ドラム缶等の抜油後の微量 PCB 汚染絶縁油を貯蔵するタンク
(以下「抜油貯蔵タンク」という。
)は、抜油量に応じた容量のものを準備して
設置する。抜油貯蔵タンクや送油ポンプは、万一の漏洩による地下浸透防止及
び周辺環境への PCB の飛散、流出等の防止の観点から、オイルパン、防油堤等
(単管パイプと耐油シートで作製した簡易なものでも差し支えない。
)の内側
に設置する。あわせて、ウエス、油吸着マット、消火器などを備え置く。
十分な換気が行える場所であることを確認し、これが行えない場合は、排気
装置(必要に応じ活性炭吸着装置等が接続されたもの)を設置する。
抜油作業中は、
微量 PCB 汚染絶縁油が大気に触れる面積及び時間を最小限に
する。
3 対象機器の外観点検
対象機器の外観点検を行い、バルブ周辺の損傷、フランジ部等からの漏油等
異常の無いことを確認する。
4 油温・油面位置の記録
対象機器の油量を把握するため、油面が油温により変化することを考慮し、
油面及び油温を測定・記録する。
5 保護具の装着
直接、微量 PCB 汚染絶縁油が人体に触れないよう耐油性ゴム手袋、保護メガ
ネ、保護マスク等、適当な保護具を着用する。
イ)抜油作業
1 洗浄可能部位、送油ポンプ、抜油貯蔵タンクとホース、配管の接続
(a) 洗浄可能部位の各種バルブが閉じていることを確認する。 6(b) ホース、
配管、
ポンプ等の接続の際は、
ガスケットの装着状況やボルトの緩
みの無いことを確認する。
(c) 接続部を有する場合は、微量 PCB 汚染絶縁油の漏洩が生じない構造となっ
ていることを確認する。また、その接続部の周囲をビニールで覆い、接続部
下部にオイルパンを設置する等の漏洩防止対策を講じる。
(d) 洗浄可能部位に専用の抜油バルブがなく、上部からホースを挿入する場合
は、ホースの先端が確実に洗浄可能部位の底部に届いていることを確認す
る。その際、洗浄可能部位の内部部材に傷を付けないようにする。
2 抜油
(a) 上記1の作業の完了を確認し、バルブ操作を行い、抜油を開始する。なお、
送油ポンプの起動前に大量の微量 PCB 汚染絶縁油が流出するおそれがある
ため、慎重に操作を行う。
(b) ドラム缶に微量 PCB 汚染絶縁油を回収する場合は、
ドラム缶の容量を超え、
油が漏洩しないように注意して、作業を行う。
(c) 抜油作業中は、
対象機器及びその周囲に異常が無いことを確認する。
万一、
微量 PCB 汚染絶縁油の漏洩等の異常を発見した場合は直ちに抜油を中止し、
漏油の状況に応じてウエス、
油吸着マット等を使用し、
微量 PCB 汚染絶縁油
の飛散、流出等を防止するなど適切な処置を講じる。
(d) 抜油の終了は、洗浄可能部位の下部の抜油バルブより抜油を行う場合は油
の排出が止まることで確認する。
また、
上部からホースを挿入して抜油を行
う場合は、
ホースを洗浄可能部位の底部まで到達させて、
ポンプからの油の
排出が止まることで確認する。
3 抜油量の確認と記録
変圧器本体及び別系統部位からのそれぞれの抜油量を計量し記録する。抜油
量の計量方法については、
抜油貯蔵タンクの油量計による計量、
抜油貯蔵タンク
の抜油前後の重量差による計量、抜油貯蔵タンクの液面高さによる計量等があ
り、実施可能な方法を適宜選択して行うこととする(液面高さによる計量を行う
場合、油温による体積変化に留意する)。また、実際の抜油量と銘板油量等を比
較し、抜油が適切に行われたことを確認する。
4 洗浄可能部位、ポンプ、抜油貯蔵タンクからのホース、配管の取り外し
(a) 取り外しの前に、各種バルブが閉じていることを確認する。
(b) 取り外しの際は、接続部下部にオイルパンを設置する等の漏洩防止対策を
講じる。
5 抜油した微量 PCB 汚染絶縁油及び微量 PCB 汚染物の扱い
洗浄可能部位から抜油した微量 PCB 汚染絶縁油並びに微量 PCB 汚染絶縁油が 7付着したウエス及び保護具等の汚染物は、
廃棄物処理法に基づき、
適切に保管し、
無害化処理認定施設等にて処分する。
(3)注油作業(洗浄可能部位に新しい絶縁油を注油する作業)
ア)作業前準備
注油作業前に以下の事前準備を行う。なお、本手順書に定めの無い事項について
も、
作業員の安全確保、
周辺環境への PCB の飛散、
流出等の防止等の観点から必要な
事項については、確実に実施する。
1 注油する絶縁油の規格適合性の確認
注油する絶縁油が対象機器の電気絶縁油として適切な規格に適合しているこ
とを確認する。
2 危険(作業)区域の設定
作業にあたっては、作業の安全性、周辺設備への影響等を踏まえ、必要に応じ
て危険(作業)区域を設定する。また、関係者以外立入禁止とし、危険物の取扱
い及び貯蔵に関する必要な表示を行う。
3 絶縁油貯蔵タンク、送油ポンプ、防油堤等の設置等必要な措置
(a) 絶縁油貯蔵タンクや送油ポンプは、万一の漏洩による地下浸透防止及び周
辺環境への PCB の飛散、流出等の防止の観点から、オイルパン、防油堤等
(単管パイプと耐油シートで作製した簡易なものでも差し支えない。
)の内
側に設置する。あわせて、ウエス、油吸着マット、消火器などを備え置く。
(b) 十分な換気が行える場所であることを確認し、これが行えない場合は、排
気装置を設置する。
4 保護具の装着
直接、微量 PCB 汚染絶縁油が人体に触れないよう耐油性ゴム手袋、保護メガ
ネ、保護マスク等、適当な保護具を着用する。
イ)注油作業
1 洗浄可能部位、送油ポンプ、絶縁油貯蔵タンクとホース、配管の接続
(a) 洗浄可能部位の各種バルブが閉じていることを確認する。
(b) ホースや配管、ポンプの接続の際は、ガスケットの装着状況やボルトの緩
みの無いことを確認する。
(c) 注油により、洗浄可能部位の内部の絶縁油が流出する恐れがある接続部に
ついては、
周囲をビニールで覆い、
下部にオイルパンを設置する等の漏洩防
止対策を講じる。
2 空気逃がし口の確保
(a) 必要に応じて洗浄可能部位の吸湿呼吸器(ブリーザー)などを利用して空気 8の排気口を確保する。
(b) 排気には機器内に残った PCB が含まれる可能性があるので、換気を十分に
行う。また、これを行えない場合は、排気装置を介して排気する。
3 注油
下記のとおり注油を行う。なお、注油の際に気泡が発生し、洗浄可能部位の内
部に残存することにより、
絶縁性能の低下が発生するなど、
対象機器の健全性が
損なわれる可能性があるため、注油の際には十分に注意する必要がある。
(a) 1、2の完了を確認し、注油を開始する。
(b) 注油作業中は、対象機器周囲に異常が無いことを確認する。万一、微量 PCB
汚染絶縁油の漏洩等の異常を発見した場合は、
直ちに注油を中止し、
漏油の
状況に応じてウエス、油吸着マット等を使用し、微量 PCB 汚染絶縁油の飛
散、流出等を防止するなど適切な処置を講じる。
4 注油量の確認と記録
変圧器本体及び別系統部位の注油量を計量し記録する。注油量の計量方法に
ついては、
絶縁油貯蔵タンクの油量計による計量、
絶縁油貯蔵タンクの注油前後
の重量差による計量、
絶縁油貯蔵タンクの液面高さによる計量等があり、
実施可
能な方法を適宜選択して行うこととする(液面高さによる計量を行う場合、油温
による体積変化に留意する)。
5 洗浄可能部位、ポンプ、絶縁油貯蔵タンクからのホース、配管の取り外し
(a) 取り外しの前に、各種バルブが閉じていることを確認する。
(b) 絶縁油が流出する恐れがある部位の接続部については、周囲をビニールで
覆い、下部にオイルパンを設置する等の漏洩防止対策を講じる。
6 微量 PCB 汚染物の扱い
漏洩等により、
微量 PCB 汚染絶縁油が付着したウエス、
保護具等の汚染物は、
廃棄物処理法に基づき、適切に保管し、無害化処理認定施設等にて処分する。
ウ)対象機器の作業後の健全性確認
1 外観点検
対象機器の外観点検を行い、
注油後において異常の無いことを確認する。
特に、
バルブ周辺の損傷、漏油が無いことを確認する。
2 健全性確認
対象機器の健全性については、
「電気設備に関する技術基準を定める省令」(平成 9 年通商産業省令第 52 号)及び「原子力発電工作物に係る電気設備に関する
技術基準を定める命令」
(平成 24 年経済産業省令第 70 号)への適合及び自主保
安の観点から、以下の確認を行う。
(a)注油後の洗浄可能部位の油量が十分な量であること 9(b)その他外観検査、保安装置試験、絶縁耐力試験、負荷試験等、事業者が作業
実態に応じて電気の保安上必要と判断するもの(必要に応じ(4)において
実施)
(4) 課電の実施
本手順書において、課電とは、負荷の有無に関わらず対象機器の定格電圧に応じた公
称電圧を印加することをいう。
ア)課電状況の確認
1 課電洗浄開始日の記録
対象機器の課電開始日を課電洗浄開始日として記録表に記録する。
なお、
健全
性確認試験から引き続き課電を継続する場合には、
通常運転開始
(確認試験終了)
時点を課電洗浄開始日として扱う。
2 課電状況の確認・測定
課電の開始にあたっては、対象機器の課電に関連する開閉器(断路器、
遮断器
等)の開閉状態を確認するとともに、課電期間中は、関連する開閉器が動作する
ごとに、その動作後の状態を現場又は制御所等において確認する。また、
課電時
に負荷があり、
電力量計が設置されている場合には、
1ヵ月に1度対象機器の電
力量を測定する。
3 課電状況の記録
2により確認した課電に関連する開閉器(断路器、遮断器等)の開閉状態(課
電期間中にあっては動作日を含む。
)及び電力量の測定値(課電時に負荷がある
場合に限る。
)を記録するとともに、対象機器が洗浄終了前に点検、故障等によ
り、
停止せざるを得ない場合については、
洗浄期間から除外するため当該停止期
間を記録する。
イ)課電期間
課電期間は、
その他作業による対象機器の停止等を除いて、
実課電期間が表1に定
める期間以上となるようにする。
なお、
課電中であることが作業者以外にもわかるよ
う、課電実施中は、課電実施中である旨及び課電期間の掲示を行うこととする。
表1 洗浄可能部位において初回の課電洗浄を実施する前の絶縁油中の PCB 濃度と課電期間
洗浄可能部位において初回の課電洗浄を
実施する前の絶縁油中の PCB 濃度
課電期間
0.5mg/kg 超〜5mg/kg 以下 90 日
5mg/kg 超〜10mg/kg 以下 120 日 10(5)絶縁油中の PCB 濃度確認作業
ア)事前準備
必要に応じて分析実施者と測定法等の打合せを行う。
この際、
分析に必要な試料容
量、採取用具の入手方法などを確認する。分析実施者は第三者分析機関とする。
イ)採油作業
「絶縁油中の微量PCBに関する簡易測定法マニュアル(第3版)(平成 23 年5
月環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課)」
(以下
「簡易測定法マニ
ュアル」という。)「1.4 資料の採取」に記載された方法により採油する。
1 採油口の開栓
耐油性ゴム手袋などを着用し、採油口を開栓する。
2 採油
測定分の絶縁油を採取する。なお、採取した絶縁油中の PCB 濃度が 0.5mg/kg
を超えている可能性があるので厳重に保管する。
3 採油の記録
採油日を記録する。
4 採油口の閉止
採油作業終了後、採油口を閉じる。
ウ)分析操作
1 分析
分析は第三者分析機関に依頼し、分析事業者は、必要量を分取し、簡易測定法
マニュアルに記載の簡易定量法又は「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃
棄物に係る基準の検定方法」
(平成 4 年厚生省告示第 192 号)別表第2に定める
方法により測定する。
2 分析結果の記録
絶縁油中の PCB 濃度を記録する。なお、第三者分析機関発行の分析結果報告
書を保管しておく。
(6)洗浄処理の完了
ア)洗浄処理完了判定
実課電期間が表 1 に定める期間以降での絶縁油中の PCB 濃度が、0.3mg/kg 以下で
あることが確認できれば、課電洗浄完了とする。
イ)洗浄処理未完時の扱い
実課電期間が表 1 に定める期間以降での絶縁油中の PCB 濃度が、ア)の洗浄処理
完了判定を満たさない場合は、新たな絶縁油による課電洗浄の実施について検討す
る。なお、再度課電洗浄を実施する場合の作業実施にあたっては、本手順書の2.課 11電洗浄に基づき実施する。
ウ)洗浄に使用した絶縁油の扱い
洗浄可能部位の洗浄に使用した絶縁油は、当該機器において継続的に使用するこ
とができるものとする。
(7)作業全般に関するその他留意事項2.(2)〜(6)に掲げる作業の実施にあたっては、以下の点に留意して行う。
ア)微量 PCB 汚染絶縁油に触れるホースや送油ポンプなどは、汚染の拡大を防止する
ため、
PCB に汚染される恐れのないものと区別して扱う
(注油作業時に微量 PCB 汚染
絶縁油が逆流する恐れがあるなど、
PCB による汚染の可能性があるものについても、
PCB に汚染される恐れがあるものとして扱う。)イ)屋外設置機器の場合、天候・気象状況を踏まえて、作業の実施可否を判断する。
特に、降雨、降雪時には、周辺環境への PCB の拡散防止を確実に行うとともに、変
圧器内に水分を浸入させないように注意する。
3.課電洗浄の記録及び閲覧
(1)課電自然循環洗浄実施報告書の作成
課電洗浄終了後、変圧器(変圧器本体、LTC 及び浄油機、エレファント、感温部、中間
室並びにブッシングを含む。以下「課電洗浄完了機器」という。
)ごとに、様式第1に従
って作成した報告書(以下「課電洗浄報告書」という。
)を作成する。また、課電洗浄報
告書には、次に掲げる資料を添付するものとする。
ア)設置等届出書等
イ)2.
(1)ア)及び2.
(5)ウ)2に掲げる分析結果報告書の写し
ウ)課電洗浄を行った洗浄可能部位以外の部位について PCB 濃度を測定している場合
にあっては、当該部位の PCB 濃度を証する書類の写し
エ)変圧器本体、LTC 及び浄油機、エレファント、感温部、中間室並びに共油型以外の
ブッシング並びに中間室の部位が分かる図面等
(2)課電洗浄後に行う未測定の部位に対する測定時の扱い
図1において(B)の工程の後段に掲げる未測定の部位の濃度を測定した場合にあっ
ては、その後、
(A)の工程に掲げる電気事業法の PCB 含有電気工作物等の廃止届出又は
(B)の工程に掲げる電気事業法の PCB 含有電気工作物等の変更届出を行う際に、2.
(5)に準じて測定した分析結果報告書の写しを添付するものとする。
(3)記録の保管 12ア)課電洗浄完了機器の設置者(課電洗浄を実施した機器を譲り受け設置している者
を含む。以下同じ。
)は、課電洗浄報告書及び3.
(1)ア)及びイ)及びウ)の書類
並びに報告規則等に基づき PCB 含有電気工作物等を洗浄した旨の届出(PCB 含有電
気工作物等に係る廃止届出又は変更届出)をし、当該届出書の控え(届出先機関の
受理印が押印されたもの)
(以下「課電洗浄報告書等」という。
)を、課電洗浄完了機
器が廃棄物として排出又は資源の再生利用(注)のために売却された日から5年を
経過する日まで保管するものとする。
(注)資源の再生利用とは、変圧器としてリユースする場合を含まない。
イ)課電洗浄完了機器の設置者は、課電洗浄完了機器を他者に譲渡(廃棄物として排
出又は資源の再生利用のための売却を除く。)する場合には、
課電洗浄報告書等を添
付するものとする。
(4)記録の閲覧
関係都道府県市町村及び地域住民から求めがあった場合には、事業者は課電洗浄報告
書等を閲覧させることが適当である。 13(様式第1)
ポリ塩化ビフェニル含有電気工作物の課電自然循環洗浄実施報告書
「微量PCB含有電気機器課電自然循環洗浄実施手順書」に基づき洗浄を行い、下記の結果となりました。
事業場の名称
事業場の所在地 〒
連絡先
実施責任者氏名
対象機器設置場所
対象機器の名称 変圧器
洗浄可能部位の名称 変圧器本体LTC及び浄油機
エレファント 感温部 中間室
洗浄可能部位の有無 有・無 有・無 有・無 有・無 有・無
定格容量 - -
銘板油量(L)
製造者名
型式・表示記号等
製造年月
製造番号
元油濃度(mg/kg)
抜油日(年/月/日)
注油日(年/月/日)
課電洗浄開始日(年/月/日)
課電確認日(年/月/日)
絶縁油採取日(年/月/日)
課電期間(日)
課電洗浄完了日(年/月/日)
洗浄後絶縁油の濃度(mg/kg)
添付資料番号
備考
(注記)本報告書は、変圧器本体及び付属する全部の部位の絶縁油中
の PCB 濃度が規定値以下となる場合は、報告規則等の廃止届
出書に添付すること。ただし、未洗浄の洗浄可能部位、濃度
超過部位又は未測定の部位が残る場合は、報告規則等の変更
届出書に添付すること。
(注記)本報告書に関する必要な書類については、対象機器が廃棄物
として排出又は資源の再生利用のために売却された日から 5
年を経過する日まで保管すること。 14ブッシング
ブッシングの有無 有 ・ 無 構造種類 共油型・共油型以外
共油型以外のブッシング
製造者名 製造番号
型式・表示記号等 元油濃度(mg/kg)
製造年月 添付資料番号
(注記)記入欄が足りない場合には、適宜、列や用紙を増やして記入すること。
(注記)洗浄可能部位の名称の欄における LTC 及び浄油機、エレファント、感温部並びに中間室については、変圧器本
体の絶縁油と同系統の場合であっても、1.
(2)ア)なお書の規定に関わらず、部位ごとに記載すること。
(注記)銘板油量の欄における LTC 及び浄油機、エレファント、感温部並びに中間室については、当該洗浄可能部位の
油量が変圧器本体の銘板油量に含まれている場合には、
「変圧器本体の銘板油量に含む」と記入すること。
(注記)抜油とは使用中の変圧器等から微量 PCB 汚染絶縁油を抜き取る作業をいい、注油とは使用中の変圧器等に PCB
を含まない新しい絶縁油を入れる作業をいう。
(注記)洗浄可能部位において初回の課電洗浄を実施する前の絶縁油中の PCB 濃度は、本報告書中では「元油濃度」と
表す。元油濃度及び洗浄後絶縁油の濃度の欄には、絶縁油中の PCB 濃度を、有効数字二桁で記入すること。
(注記)元油及び洗浄実施後の絶縁油中のポリ塩化ビフェニル濃度分析値は、分析機関による報告書を添付し、添付資
料番号を記入すること。
(注記)課電期間中に変圧器の運転停止があった場合は、その年月日と期間(日)を備考欄に記入すること。
(注記)課電期間とは、
課電洗浄開始日から絶縁油採取日までの期間
(日)
で、
変圧器の運転停止期間を除いた期間
(日)
を指す。
(注記)課電洗浄完了日とは、抜油及び注油し、表 1 に定める期間以上課電した後に採油した絶縁油中の PCB 濃度が
0.3mg/kg 以下となったことが確認された日をいう。
(注記)添付資料として、変圧器本体、LTC 及び浄油機、エレファント、感温部、中間室並びに共油型以外のブッシング
の部位が分かる図面等を添付すること。
(注記)共油型とは、ブッシング中の絶縁油が変圧器本体と共通した構造のブッシングを指す。それ以外とは、絶縁油
が密封構造のもの又は密封構造と共油構造が共存しているものを指す。
(注記)共油型である場合は、共油型以外のブッシングの欄の記載記入は不要。
(注記)PCB 含有原子力発電工作物を本実施手順書に基づき洗浄した際は、
「ポリ塩化ビフェニル含有電気工作物の課電
自然循環洗浄実施報告書」を「ポリ塩化ビフェニル含有原子力発電工作物の課電自然循環洗浄実施報告書」に
読み替えること。

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