日視連・弱視部会 令和5年度委員総会 報告書
【開催日】
第1回 令和5年4月15日(土) 9時30分〜10時30分
第2回 令和5年8月 5日(土) 9時30分〜10時15分
【場所】
日本視覚障害者センター 研修室 オンライン(Zoom)
調査報告書のデータ
報告書は下記よりダウンロードができます。
(1)「日視連・弱視部会 令和5年度委員総会」 報告書 PDF版(1.35MB)
(2)「日視連・弱視部会 令和5年度委員総会」 報告書 テキスト版(82.8KB)
目次
●くろまるはじめに
●くろまる第1章 令和5年度第1回委員総会
●くろまる1 開催内容
●くろまる2 議事
●くろまる3 意見交換
●くろまる4 「白杖を持つこと」に寄せられた意見
●くろまる第2章 令和5年度第2回委員総会
●くろまる1 開催内容
●くろまる2 議事
●くろまる3 令和4年度事業報告
●くろまる4 令和5年度事業計画
●くろまる第3章 令和5年度第2回委員総会 研修会
●くろまる1 開催内容
●くろまる3 研修2「道路移動でのトラブルに巻き込まれないために」
●くろまる4 質疑応答・意見交換
●くろまる第4章 資料集
●くろまる1 設置要綱
●くろまる2 細則
●くろまる3 委員名簿
●くろまる4 弱視部会が発行した資料等
はじめに
日本視覚障害者団体連合(以下、本連合)は、視覚障害者の生活が向上するために様々な働きかけを行う視覚障害者の全国組織である。昭和23年(1948年)の結成以降、日本各地の視覚障害者からの要望を集約し、国や関係機関への働きかけを行っている。
近年、これらの要望を集約する中で、弱視(ロービジョン)に関する要望等が増えてきている。しかし、要望を集約するのは容易ではない。まず、弱視者(ロービジョン)は人によって見え方や行動が大きく異なることから、弱視者(ロービジョン)の要望は多種多様である。また、多くの弱視者(ロービジョン)は、自らが視覚障害者であることを打ち明けることができず、困り事があっても声に出すことができない者もいる。
そのため、本連合は全国の加盟団体の協力を得る形で令和元年に弱視部会(以下、本部会)を設置し、弱視(ロービジョン)に関する様々な活動を行い、弱視者(ロービジョン)の声を集めている。令和5年12月末現在、全国より62名の委員が本部会に参加しており、様々な意見が寄せられている。そして、集められた声を本部会で集約し、本連合の陳情活動等に反映させている。
また、ここ数年、本部会の活動にご理解をいただいた加盟団体及びブロックでは、弱視(ロービジョン)に関する講演会や意見交換会の開催、弱視(ロービジョン)に関する問題の協議等を行っている。弱視(ロービジョン)に関する活動を進める上では、全国各地で草の根の活動を行うことも重要である。この動きは今後も全国に広めたい。
そして、本報告書は、令和5年4月と8月に開催した委員総会の開催内容をまとめたものである。また、8月に開催した第2回委員総会の終了後には研修会を開催したため、その研修会の内容も掲載している。
最後に、報告書は通算5冊目の発行となる。ここまで本部会が活動を続けられたのは、加盟団体及び参加する委員の協力によるものが大きい。この場をお借りして、加盟団体や参加する委員に御礼申し上げる。
第1章 令和5年度第1回委員総会
開催日時 令和5年4月15日(土)9時30分〜10時30分
開催場所 オンライン(Zoom)、日本視覚障害者センター
1 開催内容
まず、本部会の第2期委員の任期が令和5年3月31日までとなっていたことから、令和5年3月から4月にかけて委員の改選作業を行った。その結果、令和5年4月1日からの第3期委員は、加盟団体からの推薦者、本連合会長からの推薦者を併せて61名となった。なお、任期は2年であり、令和7年3月末までとなる。
そして、委員の改選に伴い、新たな常任委員の選任、部会長・副部会長の選任が必要となったことから、令和5年度第1回委員総会を開催することとなった。当日は委員総数61名の内、44名が参加した。主な開催内容は以下の通りである。
<議事>
第1号議案 常任委員の選任
第2号議案 部会長・副部会長の選任
第3号議案 設置要綱の改正
<意見交換>
今後の弱視部会について
なお、開会は三宅委員が司会を務め、その後、司会者より岡山県の片岡美佐子委員を委員総会の議事進行役にする提案を行い、委員全員より異議なく承認された。
【写真:ホスト会場の様子】
2 議事
1.第1号議案 常任委員の選任
(1)提案
本連合会長が推薦する以下の者を提案する。なお、推薦した者は、これまでの常任委員14名に、名古屋市の小池恭子委員を加えている。
神田 信 (横浜市)
伊敷 政英 (東京都)
渡邊 寛子 (福島県)
石原 純子 (埼玉県)
堀口 実樹 (埼玉県)
江見 英一 (東京都)
三宅 隆 (東京都)
佐生 秀一 (富山県)
小池 恭子 (名古屋市)
岸本 将志 (兵庫県)
岡崎 明美 (神戸市)
片岡 美佐子 (岡山県)
大場 敏史 (北九州市)
中野 泰志 (慶応義塾大学 教授)
氏間 和仁 (広島大学 教授)
(2)審議結果
過半数を超える委員からの賛同があり、本議案は可決した。
2.第2号議案 部会長・副部会長の選任
(1)提案
本連合会長より「部会長は神田委員、副部会長は伊敷委員が継続するのはどうか」との意見があり、多くの委員からも同様の意見があった。その結果、議長より「部会長は神田委員、副部会長は伊敷委員に選任すること」で決議を行うことを確認し、決議を行う。
(2)審議結果
過半数を超える委員からの賛同があり、本議案は可決した。そして、神田委員が部会長、伊敷委員が副部会長に就任することについて、両者から了解があった。
3.第3号議案 設置要綱の改正
(1)提案
本部会の副部会長を1名から若干名に変更するため、以下の設置要綱の改正を提案する。
・改正前
第6条 本部会には役員として部会長1名、副部会長1名を置く。
・改正案
第6条 本部会には役員として部会長1名、副部会長若干名を置く。
・備考
施行日は令和5年度第2回委員総会の開催日とする。
この提案は、かねてより本部会の役員会で議論を行っていたことであるため、伊敷副部会長から、役員体制を強化することで事業計画に記された内容を確実に遂行させていくこと、追加する副部会長は弱視者(ロービジョン)にすること等の補足説明を行った。
なお、設置要綱の改正は本連合の理事会での承認が必要であることから、今後の理事会で承認を受け、夏に開催する令和5年度第2回委員総会より施行し、施行後に副部会長の増員を行うことも説明した。
(2)審議結果
過半数を超える委員からの賛同があり、本議案は可決した。
【写真:再任した神田部会長(左)、伊敷副部会長(右)】
3 意見交換
令和5年度第1回委員総会では、本部会の活動を活性化するために、「今後の弱視部会について」というテーマで意見交換を行った。
1.オンライン意見交換会、研修会の参加方法について
オンライン意見交換会や研修会をさらに活性化させるために、役員会で議論した以下の内容を提案し、意見交換を行った。
オンライン意見交換会と研修会は決議を行わないため、今後は次の参加方法を認めるのはどうか。
・委員が欠席の場合、代理出席者の参加を認めること。
・委員より追加参加を希望した場合、1名の追加参加を認めること。
この提案は、多くの委員から賛同が得られたことから、今後のオンライン意見交換会と研修会で実施することを確認した。
<主な意見>
・ここ最近のオンライン意見交換会や研修会は有意義なテーマを取り扱っているが、欠席する委員も少なくはない。この場合、こういった有意義なテーマの情報を団体の中で共有することができない。本部会の取り組みを各団体に広めるためには、提案内容は大変よいと思う。
・本部会の活動がさらに広がってきたら、加盟団体の会員ではない人もオブザーバーとして入れるようにするのはどうか。こういった人が議論の輪に加わることで、日視連の会員拡大に繋がると思う。
2.オンライン意見交換会のテーマについて
令和5年2月に開催した第5回オンライン意見交換会では、「弱視者(ロービジョン)と歩行」をテーマとして様々な意見が寄せられたが、議論できなかった話題もあった。そのため、同テーマの意見交換を継続することを提案したところ、多くの委員から賛同が得られた。
また、他のテーマとして「買い物に関すること」「拡大読書器やルーペに関すること」を取り上げてほしいとの意見があった。
<主な意見>
・ウィンドウショッピングのような買い物は、実は苦手な弱視者(ロービジョン)が多いと思う。何も買う予定がないのにお店に入っても、店員さんが色々と助けてくれるので、何も買わないでお店から出るのが悪いと思い、つい買い物をしてしまう。
・拡大読書器やルーペといった弱視者(ロービジョン)の見やすさを補助する機器を使っていない人は実は多い。便利な使い方等を知れば、これらの機器を利用する弱視者(ロービジョン)が増えるのではないか。
3.研修会のテーマについて
第5回オンライン意見交換会でテーマにした「弱視者(ロービジョン)と歩行」の延長として「弱視者(ロービジョン)の道路移動に関すること」を研修会のテーマにするのはどうかと提案したところ、多くの委員から賛同が得られた。
なお、道路移動に関連することとして、「白杖を持つこと」に関する意見交換を行ったところ、多くの意見が寄せられた。また、委員総会終了後もメーリングリストで様々な意見が寄せられた。そのため、「白杖を持つこと」に関する意見は、次項に整理して掲載する。
4.協議会移行について
令和4年度委員総会で議論を行った本部会を協議会に移行することについては、「日視連の協議会になった場合、どのような変化があるのか」「協議会になることは、時間をかけて、委員総会等で慎重に議論していく必要あるのではないか」等の意見が寄せられた。
【写真:委員総会中のZoomの画面】
4 「白杖を持つこと」に寄せられた意見
1.第1回委員総会での意見
(1)白杖を持つことの躊躇い
・弱視(ロービジョン)だった頃、外で白杖を出すことに躊躇いがあった。その時、皆さんが「どうやって白杖を使っているか」が気になっていた。
・私も白杖を持つことに抵抗があった。ただ、団体に入り、団体の先輩から白杖の使い方や効果を教わって、やっと白杖の価値が分かり、率先して白杖を持つようになった。
(2)白杖のメリット
・私は、白杖を持っていないと健常者に見えてしまうようなので、白杖を持つことで「私は目が見えにくい」ということをアピールしている。白杖を持つことに抵抗はあったが、周りの人から助けてもらうことの方が大切だ。視覚障害者にとって白杖は大切な存在だ。
・白杖を持つと周りの人が色々と助けてくれる。白杖を持ったことで、買い物は非常に楽になった。
・普段の生活の中では白杖を出さない時もあるが、夜や人混みでは白杖を利用している。白杖を使わないことで、周りの人が怪我をしてしまうことが一番怖いと考えているので、こういった時は意識的に白杖を出すようにしている。
(3)白杖を持つために必要なこと
・私の住む地域の弱視者(ロービジョン)は白杖を使っていない者が多い。そういった者に「杖を持つように」とアドバイスをしたいので、皆さんの経験等を知りたい。
・白杖を持たない視覚障害者には、積極的に白杖を持つメリットを伝えている。白杖を持ちたくないと思う者に対しては、白杖を使っている視覚障害当事者から伝えることが一番効果的だ。
・白杖を持っている・持っていないで、事故に遭った時の過失等は大きく違う。白杖を持っていないことのリスクを勉強することは必要かもしれない。
・子供のころから目に障害があった者の中には、大人から「白杖を持ってはいけない」と教えられた者もいる。理由は、その家に視覚障害者がいると思われたくない等の理由があるようだ。白杖を持つことは、視覚障害者自身の問題に加え、その視覚障害者の周りの人の理解も必要になると思う。
2.メーリングリストでの意見
(1)A委員(女性)からの投稿
年齢、ライフステージによって白杖への抵抗感は変わると思います。
私は、中途で視覚障害になりました。子供が小さい頃は、学校行事で学校へ行くと勝手が分からず困っていても、それを悟られないよう振舞っていたため、変なドキドキがいつもありました。また、子供の所属するスポーツ少年団のお手伝いに行っても、他の保護者のように状況判断がすばやくできないため、気まずい思いをしたり、仲間に入れなかったりしました。いつしか、周囲から「仕事を頼めない人」と思われ、周りと壁ができてしまった時期もありました。それでも、周囲にどう思われるかということが気になり、白杖を持つことができませんでした。なお、いつも傍らには夫がいてくれたので、我が家は、ご近所では「いつも一緒にいるおしどり夫婦」として有名でした。本当は私が見えないので、夫が目の代わりになっていたとは言えませんでしたが、今は中年に差し掛かり、羞恥心も白杖を持つ抵抗感も薄れてきたように思います。
白杖を持てない視覚障害のある女性の中には、「白杖を持つことで周囲に視覚障害を宣伝して歩いているようで、犯罪に巻き込まれるのが怖いから持たない」と考える人もいます。また、「家族が白杖を持つことを嫌がるので持てない」という人もいます。一方で、「白杖を持った方がよい」「白杖を持たないことは、自分にも回りの人にも不利益や危険が及ぶことがある」ということは、多くの弱視者(ロービジョン)が実は理解しています。ただ、白杖を持つ抵抗感は根深いものがあり、簡単には解決できない問題だと常々感じています。視力の変化で持たざるを得ない状況になったり、本人が白杖の必要性を感じるようになったり、この抵抗感がどのように変化するかは、十人十色かもしれません。周りで白杖を持とうか迷っている人がいたら、白杖の必要性を伝えつつ、持てない抵抗感にも心を寄せ、その時が来るまで見守ってあげることも大事ではないかと思います。
(2)B委員(女性)からの投稿
私も、実家の周りでは白杖を持てない時期がありました。
私は先天性の緑内障で、まだ弱視(ロービジョン)の時期の方が長いです。小学生の時、夏休みの間で両目の手術をするため、入院したことがありました。この時、「大学病院で見かけた」という噂が近所で立ち、私の家の前の人が妹に「お姉ちゃんは目が悪いのか」と聞いてきました。元々無口な妹は「分からない」と無視したそうです。こういったことは田舎では結構大変なことで、結婚後、他県ナンバーの車で実家に帰った際、白杖を持った私が降りてきたら、家の周りの人は「嫁に行った娘が見えなくなって帰ってきた」と言うだろうなと思っていました。そういったことがあり、全盲になってからも、実家の玄関から出るときは、白杖を持たないこともありました。
一方で、小学校の授業参観は、まだ歩行訓練を受けていなかったので、夫と歩いていたら「仲がよくていいね」と息子の同級生に思われていたそうです。夫は私の手引きとして一緒にいるだけなのに。また、PTAでのカレー作りをすることになった際は、初めての調理室だったので、どこに道具があるのか分からず、早く到着したのに何もできませんでした。気の利かない人と思われるのも嫌でしたが、全盲となり、こういった心配や悩みがなくなったことは、ある意味で楽になりました。
(3)C委員(女性)からの投稿
私は先天性の弱視(ロービジョン)で、現在は毎日白杖を携帯して歩いていますが、白杖を持てなかった歴は30年以上です。仲間や先輩からはよく「長すぎだよ」と笑われます。
白杖を持ちたくない理由は、人それぞれだと思います。ご近所に知られたくない、電車やバスで席を譲られたくない、白杖を持っていることで辛い体験をしたことがある等、人によって様々な理由があると思います。私の場合は、「友達から特別な目で見られるのがいや」「恥ずかしい」というのが主な理由だった気がします。学校生活のあれこれも影響して、白杖を持つかどうか悩んでいました。また、青年期になると、恋愛や仲間づきあい、進路や就職等の悩み比率が大きく、「白杖を出してしまうと、当たり前に恋をする大人、一人前の社会人として、対象に見てもらえなくなるのでは」と思ってしまい、悩んだ時期もありました。そして、職場でも、「白杖を持ってオフィスを移動すべきか」「慣れてきたら白杖を持たなくてもいいのではないか」といったことに悩みました。「白杖を持っていると、なんだか必要以上に見えにくいアピールをしているように思われてしまわないか」とか、いろいろと不安になります。
そして、親の立場になると、「視覚障害のある自分のことを、子供にどう思われるだろうか」「子供が周囲のお友達からどう思われるだろうか」「ママ友、パパ友の輪に入れるだろうか」といった葛藤も生じます。また、少し違う話ですが、学校等に保護者が集まって作業等を行う際、その場に集まった保護者が臨機応変に動いている姿を見るのは辛かったです。他の保護者の皆さんが忙しそうに動いている様子はなんとなく見えます。そして、作業の方法を教えてもらえばできることもあります。ただ、誰に聞いたらよいか分からず、結局、周りに声をかけられず、一人で困ってしまう弱視(ロービジョン)の保護者は多いと思います。
これらのように、それぞれの年代やライフステージによって、葛藤も困り事も少しずつ変化します。これまでの白杖葛藤人生の中で、更年期の今が、実は一番楽かなと思ってしまいます。羞恥心が薄れてきたせいでしょうか。そして、私の経験を踏まえると、「白杖を持つ、持たない」の葛藤はなかなか根深く、この葛藤に苦労している弱視者(ロービジョン)は多いと思います。ただ、その一方で、この葛藤を語りあい、聞いてもらう機会はあまり多くないと思います。
「白杖を持った方がよい」「白杖を持たないことは、自分にも回りの人にも不利益や危険が及ぶことがある」ということは事実です。ただ、葛藤している間は、なかなかこういった事実を受け入れることができません。そのため、「なぜ白杖を持ちたくないのか」という気持ちを気兼ねなく話し合える環境が必要だと、私は思っています。人によっては「単なる愚痴の言いあいで、意味があるのか」と思う人もいるかもしれませんが、こういった小さな語らいは非常に大切です。
そのため、シニアの弱視者(ロービジョン)となった今、若い世代の弱視者(ロービジョン)からの話を聞く時には、とにかく「まず聞く」を大事にしています。聞いてもらえれば、自然と気持ちが整理され、どうしたいのか、何を選べばよいのかが、おのずと見えてくるような気がします。そして、様々なアドバイスを素直に受け入れるようになり、自分の意志で決めることができるようになります。もし、皆様の身近に「白杖が持てない」「白杖を持たないといけないのは分かっているけど・・・」と悩む方がいらしたら、ぜひお話を聞いてあげてください。
3.備考
本項に掲載したテーマ「白杖を持つこと」は、本部会では過去より様々な意見交換を行っている。その一部は令和3年10月に発行した「弱視者の困り事 資料集 第4号 障害者手帳を取得するまでの困り事」にまとめている。該当資料は下記のURLで公開している。
●くろまる弱視者の困り事 資料集
http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/201201-jimu-2/
第2章 令和5年度第2回委員総会
開催日時 令和5年8月5日(土)9時30分〜10時15分
開催場所 オンライン(Zoom)、日本視覚障害者センター
1 開催内容
令和5年6月27日に開催した本連合の令和5年度第4回理事会において、令和5年度第1回委員総会で決議された本部会の設置要綱の改正が承認された。これにより、副部会長を若干名置けることになったことから、令和5年度第2回委員総会を開催することとなった。当日は委員総数62名の内、38名が参加した。主な開催内容は以下の通りである。
<議事>
第1号議案 副部会長の選任
第2号議案 令和4年度事業報告(案)
第3号議案 令和5年度事業計画(案)
なお、開会は三宅常任委員が司会を務め、その後、司会者より富山県の佐生秀一常任委員を委員総会の議事進行役にする提案を行い、委員全員より異議なく承認された。
【写真:ホスト会場の様子】
2 議事
1.第1号議案 副部会長の選任
(1)提案
役員会での協議の結果として、岸本将志常任委員を副部会長に加えることを提案する。提案理由は、令和4年度の事業計画に掲載していたSNSや動画を活用した情報発信ができなかったことから、これらのことに知見のある岸本将志常任委員を役員に加え、令和5年度の事業計画を推進させるためである。
(2)審議結果
過半数を超える委員からの賛同があり、本議案は可決した。なお、岸本常任委員は、第2回委員総会は所用のため欠席であったため、事務局より同委員が副部会長に就任することの了解があった旨を報告した。
2.第2号議案 令和4年度事業報告(案)
(1)提案
20ページに掲載した資料を提案する。部会長からは「コロナの影響はあったが、オンライン意見交換会の開催、資料集の発行、加盟団体が主催するイベントへの委員派遣等は実施できた」「弱視に関する相談の受付体制、SNSや動画の活用は検討が進まなかった」との補足説明があった。
(2)審議結果
過半数を超える委員からの賛同があり、本議案は可決した。
【写真:新任の岸本副部会長】
3.第3号議案 令和5年度事業計画(案)
(1)提案
23ページに掲載した資料を提案する。部会長からは「これまでも実施している、オンライン意見交換会の開催、資料集の発行、加盟団体が主催するイベントへの委員派遣には力を入れる」との補足説明があった。
なお、一部の委員より「就労中の弱視者(ロービジョン)は会社の理解がなく、困っていることが多い。そのため、こういった会社の理解を促す活動もした方がよいのではないか」との意見があり、部会長から、「令和2年に作成したリーフレット(見えにくいことは はずかしいことではありません!)を利用した周知活動等を検討する」との回答があった。
(2)審議結果
過半数を超える委員からの賛同があり、本議案は可決した。
【写真:委員総会中のZoomの画面】
3 令和4年度事業報告
日本視覚障害者団体連合 弱視部会
令和4年度 事業報告
1.情報収集活動の強化
(1)弱視者(ロービジョン)の困り事等の情報収集
オンライン意見交換会を3回、委員総会の研修会の中での意見交換を1回開催し、全国の委員から弱視者(ロービジョン)の困り事等の情報を収集した。また、同意見交換会の開催前にメーリングリストでも情報収集を行った。情報収集を行ったテーマは金融機関、デジタル化、歩行や道路移動等であり、一部の内容は「弱視者の困り事 資料集」に掲載した。
(2)弱視(ロービジョン)に関する相談対応の検討
本連合総合相談室において弱視(ロービジョン)相談を令和5年度に開始することを目指し、役員会及び常任委員会で実施方法等を議論した。しかし、具体的な実施方法の検討、テスト開催の実施等はできなかったため、令和5年度は担当役員を設置し、早期の開設を目指す。
2.日視連加盟団体の弱視者(ロービジョン)対策の強化
(1)加盟団体への各種協力
加盟団体が主催するイベント等において、本部会の役員を派遣し、弱視(ロービジョン)に関する講演や啓発イベントに協力する。本年度は、名古屋市視覚障害者協会が開催したイベントへの講師の派遣、関東ブロック大会の分科会への助言者の派遣を行った。
また、第4回オンライン意見交換会では「加盟団体での弱視(ロービジョン)に関する取り組み」をテーマとし、弱視者(ロービジョン)が参加するイベントの開催等、各団体が実施する有効事例を共有した。
(2)委員への各種支援
オンライン意見交換会や研修会の開催、各種資料の発行を通して、全国の委員が弱視(ロービジョン)、障害福祉や各種バリアフリーに関する最新情報を得て、地域での活動に役立つように支援を行った。委員総会の研修会では「デジタル庁の取り組み」をテーマとし、デジタル関連の最新情報を学んだ。
なお、全国の委員が本部会の活動に参加しやすくするための試みとして、第4回オンライン意見交換会は平日の夜に開催した。また、オンライン意見交換会や委員総会の研修会に委員以外の者が入れるようにすることを検討した。
3.弱視者(ロービジョン)に関する情報発信の強化
(1)日視連の運動への反映
情報収集した内容を基に、国や関係機関に対して弱視者(ロービジョン)の要望等を働きかけた。金融庁に対する陳情では、「弱視者の困り事 資料集第5号」に掲載した「金融機関における困り事や活用事例」を例示しながら、具体的な困り事の解決を要望した。また、国土交通省が進める鉄道や道路の移動に関する検討に対して、これまで集められた情報を基に弱視者(ロービジョン)の安心安全な移動の確立を求めた。
また、引き続き日本眼科医会と連携し、本年度は同会のホームページ「ロービジョンケア」を通して、全国の眼科医に対して本部会が発行した各種資料の周知を行った。
(2)情報の資料化及び情報発信
収集した情報を資料化し、「弱視者の困り事 資料集」の第5号と第6号、運営通信の第7号から第9号、さらに令和4年度委員総会報告書を発行した。これらは、本連合のホームページへの掲載、加盟団体や全国の委員への情報提供を行い、幅広く周知を行った。
しかし、令和4年度事業計画において企画していた動画やSNS等の誰にでも受け入れられる媒体を利用しての情報発信、本連合のホームページに弱視(ロービジョン)関連のまとめページを作ること等は、役員会及び常任委員会で議論したものの、実施には至らなかった。そのため、令和5年度は担当役員を設置し、早期に実施することを目指す。
4.本部会に関する動き
(1)委員の就任状況
令和5年3月末の時点で委員数は58名となり、前年度より1名増えた。
(2)会議の開催
1委員総会
第1回 令和4年8月6日
2オンライン意見交換会
第3回 令和4年6月4日
第4回 令和4年10月27日
第5回 令和5年2月18日
3常任委員会
第9回 令和4年6月4日
第10回 令和5年2月18日
4役員会
第10回 令和4年5月28日
第11回 令和4年7月14日
第12回 令和5年1月10日
第13回 令和5年2月3日
(3)資料の発行
1「弱視者の困り事」資料集
第5号 令和4年8月9日
第6号 令和5年2月7日
2委員総会報告書
令和4年度 令和5年1月14日
3運営通信「ロービジョンの風」
第7号 令和4年4月28日
第8号 令和4年9月15日
第9号 令和5年3月31日
4 令和5年度事業計画
日本視覚障害者団体連合 弱視部会
令和5年度 事業計画
1.情報収集活動の強化
(1)弱視者(ロービジョン)の困り事等の情報収集
メーリングリストでの情報募集、オンライン意見交換会の開催により、弱視者(ロービジョン)の困り事及び成功例等の情報収集を行う。特に、道路や踏切、鉄道等での移動、情報のバリアフリー、就労、教育等において、最新の課題を優先的に集めることにする。なお、オンライン意見交換会は、本年度中に3回開催する。
(2)弱視(ロービジョン)に関する相談対応の検討
弱視(ロービジョン)に関する情報収集を恒常的に行う場として、本連合総合相談室において弱視(ロービジョン)相談の開設を目指す。また、この取り組みを通して、弱視(ロービジョン)に関する情報収集を充実させるだけでなく、相談者の個別的な困り事の解決も目指していく。そのため、担当役員と総合相談室担当者が協議を行い、本年度中にテスト開催を行う。その上で相談対応の常設化を目指す。
2.弱視者(ロービジョン)に関する情報発信の強化
(1)日視連の運動への反映
情報収集した内容を基に、国や関係機関に対して弱視者(ロービジョン)の課題の解決に向けて働きかけていく。特に、道路や踏切、鉄道等での移動、情報のバリアフリー、就労、教育等については重点項目として、積極的に働きかけていく。
また、日本眼科医会や他の視覚障害関連団体と連携し、スマートサイト(ロービジョンケアネットワーク)の普及、弱視(ロービジョン)を含む中途視覚障害者への支援の実現に向けて、本部会で収集した情報を基に、取り組みを進めていく。
(2)情報の資料化及び情報発信
収集した情報を資料化し、幅広く情報発信する。特に、弱視(ロービジョン)であることを打ち明けられない人に有効な情報を届けるため、これまでに作成したリーフレットや資料集を再活用し、動画やSNS等の誰にでも受け入れられる媒体で情報発信をすることを目指す。そのため、担当役員を中心に、情報発信に向けた実作業、情報発信の母体の一つとなる本連合のホームページの整備の検討を進める。
3.日視連加盟団体の弱視者(ロービジョン)対策の強化
(1)加盟団体への各種協力
加盟団体が主催するイベント等において、本部会の役員を積極的に派遣し、弱視(ロービジョン)に関する講演や啓発イベントに協力する。この協力により、加盟団体での弱視(ロービジョン)関連の取り組みの強化、弱視(ロービジョン)の会員の獲得を目指していく。
また、本部会の協力によるイベント開催の効果等を整理し、オンライン意見交換会等のテーマにすることで、効果的な開催方法等の共有化も行う。
(2)委員への各種支援
オンライン意見交換会や委員総会における研修会の開催、各種資料の発行を通して、全国の委員が弱視(ロービジョン)、障害福祉や各種バリアフリーに関する最新情報を得て、地域での活動に役立てられるように支援を行う。
なお、オンライン意見交換会や委員総会における研修会では、委員以外の人も参加できる方法を検討し、実施する。
(3)今後の弱視(ロービジョン)に関する運動を進めるための検討
本部会は、将来的には、全国の弱視者(ロービジョン)が集い、活発な意見交換、情報収集、情報発信を行う場になることが求められている。その方法の一つに本連合の協議会に加わることが議論されている。そのため、作業部会等を設置し、これらのことを幅広く議論する。本年度は課題整理を行い、次年度以降、本部会が目指す組織体の在り方を議論する。
第3章 令和5年度第2回委員総会 研修会
開催日時 令和5年8月5日(土)10時30分〜12時00分
開催場所 オンライン(Zoom)、日本視覚障害者センター
1 開催内容
まず、本部会は、これまで委員総会の開催に併せて研修会を開催してきた。開催内容は、その時のメーリングリストやオンライン意見交換会の中で話題となっていた内容が多く、本年度は「弱視者(ロービジョン)の道路移動に関すること」をテーマとして、以下の内容で開催した。
<開催内容>
研修1「弱視者(ロービジョン)と道路移動」
講師 警察庁交通局交通規制課 課長補佐 大川 広、同 係長 水野 喜仁
研修2「道路移動でのトラブルに巻き込まれないために」
講師 おおごだ法律事務所 弁護士 大胡田 誠
意見交換「道路移動に関する困り事」
また、令和5年4月に開催した令和5年度第1回委員総会では、研修会やオンライン意見交換会で「委員以外の者の参加を可能とし、委員の代理または追加の者の参加を認める」旨の確認があったことから、本研修会よりこれらの者が参加できるように開催方法を変更した。その結果、委員37名、委員の代理者3名、追加参加者14名、合計54名が参加した。また、テーマが視覚障害者の歩行に関することであることから、日本歩行訓練士会より古橋会長、堀内事務局長がオブザーバーとして参加した。
【写真:ホスト会場の様子】
2 研修1「弱視者(ロービジョン)と道路移動」
【写真:説明をする大川課長補佐】
研修1は警察庁交通局交通規制課の大川課長補佐より、「弱視者(ロービジョン)と道路移動」をテーマにご講演をいただいた。以下には説明時に使用した資料を掲載する。なお、質疑応答の内容は35ページに掲載する。
1.道路交通法における視覚障害者が関係する条文
(目が見えない者、幼児、高齢者等の保護)
道路交通法第14条第1項
目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ。)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。
道路交通法第14条第5項
高齢の歩行者、身体の障害のある歩行者その他の歩行者でその通行に支障のあるものが道路を横断し、又は横断しようとしている場合において、当該歩行者から申出があつたときその他必要があると認められるときは、警察官等その他その場所に居合わせた者は、誘導、合図その他適当な措置をとることにより、当該歩行者が安全に道路を横断することができるように努めなければならない。
(運転者の遵守事項)
道路交通法第71条
車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
同条第2号
身体障害者用の車が通行しているとき、目が見えない者が第14条第1項の規定に基づく政令で定めるつえを携え、若しくは同項の規定に基づく政令で定める盲導犬を連れて通行しているとき、 〜中略〜 一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること。
2.一般的な外出時の注意点
(1)薄暮・夜間時間帯
●くろまる薄暮時間帯(日の入り時刻の前後1時間)は、周囲の視界が徐々に悪くなり、自動車や自転車、歩行者などの発見がお互いに遅れ、距離や速度が分かりにくくなるため、例年、交通事故が多発
●くろまる平成30年から令和4年の5年間の死亡事故発生状況
・時間帯別では、17時台から19時台に多く発生
・7月から年末にかけて薄暮時間帯の死亡事故が増加傾向
×ばつ歩行者」事故は、薄暮は昼間に比べて約3.3倍多く発生
●くろまる薄暮時間帯や夜間に交通事故に遭わないためには、明るく目立つ色の服の着用やカバン、靴、つえなどに反射材やライトを活用することが効果的
(2)踏切横断時
●くろまる踏切手前で必ず立ち止まって、安全を確認
●くろまる踏切の状況を判別できない場合は、周囲に協力を求めて横断
3.視覚障害者の交通事故の現状(平成30年から令和4年)
歩行中の視覚障害者における交通事故死傷者数
(以下、表の内容)
<死亡>
H30(2018) 3
R1(2019) 3
R2(2020) 1
R3(2021) 2
R4(2022) 1
H30-R4 10
・うち信号機のある横断歩道横断中
H30(2018) 1
R1(2019) 0
R2(2020) 0
R3(2021) 1
R4(2022) 0
H30-R4 2
・うち信号機のない横断歩道横断中
H30(2018) 0
R1(2019) 0
R2(2020) 0
R3(2021) 0
R4(2022) 0
H30-R4 0
<重傷>
H30(2018) 6
R1(2019) 7
R2(2020) 3
R3(2021) 3
R4(2022) 1
H30-R4 20
・うち信号機のある横断歩道横断中
H30(2018) 3
R1(2019) 2
R2(2020) 1
R3(2021) 0
R4(2022) 1
H30-R4 7
・うち信号機のない横断歩道横断中
H30(2018) 0
R1(2019) 0
R2(2020) 1
R3(2021) 0
R4(2022) 0
H30-R4 1
<軽傷>
H30(2018) 14
R1(2019) 13
R2(2020) 14
R3(2021) 11
R4(2022) 13
H30-R4 65
・うち信号機のある横断歩道横断中
H30(2018) 3
R1(2019) 5
R2(2020) 0
R3(2021) 2
R4(2022) 1
H30-R4 11
・うち信号機のない横断歩道横断中
H30(2018) 1
R1(2019) 2
R2(2020) 0
R3(2021) 3
R4(2022) 1
H30-R4 7
<合計>
H30(2018) 23
R1(2019) 23
R2(2020) 18
R3(2021) 16
R4(2022) 15
H30-R4 95
・うち信号機のある横断歩道横断中
H30(2018) 7
R1(2019) 7
R2(2020) 1
R3(2021) 3
R4(2022) 2
H30-R4 20
・うち信号機のない横断歩道横断中
H30(2018) 1
R1(2019) 2
R2(2020) 1
R3(2021) 3
R4(2022) 1
H30-R4 8
4.交通安全施設等の整備について
警察では、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に基づき、高齢者や障害者の方々が道路を安全に横断できるように、各種設備を整備している。
【交通安全施設の紹介】
ア 音響信号機
音響等により歩行者信号が赤か青かといったことを知らせる機能を持った装置が備わった信号機(主に3種類)
1 視覚障害者用付加装置
2 音響式歩行者誘導付加装置
3 歩行者支援装置
イ 横断時間の確保
歩行者の存在を感知したり、押ボタンを押下したりすることにより歩行者信号の青時間を延長する機能を備えた装置
1 歩行者感応
2 高齢者等感応
ウ 横断歩道の視覚障害者用誘導表示(エスコートゾーン)
横断歩道上に設置され、横断時に横断方向の手がかりとする突起体の列
5.今後の取組
●くろまるバリアフリー対応型の交通安全施設は、高齢者や障害者等の方々が道路を安全かつ円滑に通行できるようにするため計画的に整備を推進中
●くろまる市町村が策定するバリアフリー基本構想で設定されている重点整備地区の生活関連経路を構成する道路においては、高齢者や視覚障害者の方々の利用状況等を踏まえ、音響信号機やエスコートゾーン、視認性に優れた道路標識、道路標示を優先的に整備
3 研修2「道路移動でのトラブルに巻き込まれないために」
【写真:説明をする大胡田弁護士】
研修2はおおごだ法律事務所の大胡田弁護士より、「道路移動でのトラブルに巻き込まれないために」をテーマにご講演をいただいた。以下には説明した内容を掲載する。なお、質疑応答の内容は35ページに掲載する。
1.はじめに
私は、障害者の事故に関する裁判の弁護を受けることがあり、今も重要な事件の裁判の弁護を受けている。一例を紹介すると、平成30年、大阪市生野区の聴覚支援学校に通う聴覚障害の児童が、通学中に歩道に乗り上げたホイールローダーに接触し、死亡する事故が発生した。その後、児童の遺族は、運転手と勤務先の会社に対して損害賠償を求める裁判を起こし、令和5年2月27日に大阪地方裁判所で判決が下された。この裁判の中では、児童が将来得られるはずだった収入にあたる逸失利益の算出方法が大きな争点となった。遺族側は労働者全体の平均賃金をもとに算出するよう求めていたが、被告側は労働者全体の平均賃金のおよそ6割にとどまる聴覚障害者の平均賃金で算出すべきと求めていた。判決は労働者全体の平均賃金の85%が妥当との判断になっていた。つまり、障害者は健常者よりも収入が得られないとの判断になった。
この裁判を私なりに解釈すると、障害者差別の最たる例だと思っている。遺族は、子供を亡くしたということに加え、判決でも障害者差別を受けており、この判決は到底納得できるものではない。そのため、原告は高裁に上告しており、逸失利益が100%になるよう、私を含め様々な弁護士が引き続き動いている。
2.視覚障害者の接触事故「相手を怪我させたケース」
(1)駅ホームでの接触事故1
東京都豊島区・巣鴨駅のホームを全盲の男性が白杖を使用して歩行していたら、その白杖に高齢の女性の足が引っ掛かり、女性が転倒し怪我をした。その後、高齢の女性側が治療費や慰謝料を求める裁判を起こし、全盲の男性に過失(注意義務違反)があったかどうかが争点となる裁判になった。新潟地方裁判所長岡支部が平成25年9月10日に出した判決は、全盲の男性側に過失はないとの判断だった。全盲の男性が、歩行訓練で教わった歩行方法で歩いていたことが実証され、視覚障害者としてできる限りの注意を払いながら歩行していたことが決め手となった。
なお、この裁判の中で、原告の高齢の女性は「電車に乗ろうとしていて、電車側を見ていたので、白杖を見ていない」と証言している。このことは興味深い事実だと思う。このことを踏まえると、白杖を使いながら歩く視覚障害者は、周りの人の中には「白杖を見ていない人」がいることを想定しながら歩く必要がある。そのため、視覚障害者が加害者または被害者にならないためには、音を立てて歩くとか、白杖に反射板を付けるとか、周りの人に白杖を使用して歩いていることを知らせる等の対策が必要になるだろう。
(2)駅ホームでの接触事故2
神戸市内の地下鉄のホームで、白杖を使用して点字ブロックに沿って歩行していた全盲の男性が、逆側から歩いてきた盲導犬を利用して歩行していた視覚障害の女性とぶつかり、女性が転倒し怪我をする事故があった。その後、女性が被害を訴え、男性に損害賠償を求める裁判になった。この裁判でも、白杖を使用する男性側の過失があったかどうかが争点となった。その結果、男性側に過失があったことが認められた。男性は白杖を地面に着けず、浮かせるような形で持ち、かつ時速7km程度の速さで歩いていた。裁判所側は、白杖の持ち方は指摘しなかったが、ホーム上では相手の存在を把握した時点で直ちに停止できる速度で歩かなければならないと考え、早足で歩いていた全盲の男性に過失があったことを認めた。その結果、平成29年2月4日の神戸地方裁判所の判決では、男性に790万円の損害賠償が下された。
この事例を振り返ると、白杖を使用していたとしても、すぐに止まれるスピードで歩くことが重要なことが分かる。白杖を持っている時こそ、ゆっくりと注意深く歩くことが求められるのかもしれない。
なお、白杖をシンボル的に持つことは、混んでいる駅等ではよくあるとことだと思う。混んでいる状況で地面に杖を付けて検索しながら歩くことは、かえって危ない場合がある。そのため、裁判の判例でも、シンボル的に持っていることは問題ないとの判断があった。
3.視覚障害者の交通事故「自動車事故」
もし、歩行者が道路を横断していて車と接触した事故があった場合、一般的には車の方が悪いと思う人が多いだろう。しかし、様々な条件が重なると、歩行者側に過失があると判断されることがある。
例えば、横断歩道があるのに、近道をするため横断歩道がない道路を横断した場合、歩行者の過失割合が発生し、その割合は5%〜30%になる。このことは付近の信号の色等の諸条件によって変わるのだが、仮に損害賠償請求をしたとしても、本来貰える額の70%に減額されることを意味している。
また、信号を渡るタイミングによっても過失割合は変動する。例えば、歩行者側の信号が青で、車が信号を無視して横断歩道に侵入した場合は、車の方に100%の過失がある。ただ、歩行者側の信号が点滅し始めた状態で信号を渡った時に車と接触したら、歩行者の過失割合が10%程度発生する。さらに、歩行者側の信号が赤の状態で信号を渡った時に車と接触したら、歩行者の過失割合は70%になる。なお、信号機がない横断歩道で歩行者が事故に遭った場合は、歩行者の過失割合は10%〜20%になる。地方等はこういった横断歩道が多いと思うが、事故に遭った時点で歩行者側にも過失割合があることを覚えてほしい。
ただ、視覚障害者が事故に遭うケースでは、この過失割合が修正されるケースがある。視覚障害者の中には信号の色が分からない人、近くに横断歩道があることが分からない人がいる。こういったことを踏まえ、視覚障害の歩行者が先程説明したような事故に遭った場合、過失割合から5%〜20%を引くことがある。例えば、歩行者側の信号が赤の状態で信号を渡った時に車と接触したら、先程、歩行者の過失割合は70%と説明をしたが、この歩行者が視覚障害者だった場合、70%から5%〜20%を引くことになり、50%程度になることもある。しかし、この場合、視覚障害者側も果たすべき義務があり、それこそ、道路交通法によって定められている白杖を利用していることや、盲導犬を連れていることがポイントとなり、白杖を持っていなかったら修正は受けられない。弱視(ロービジョン)で「自分は白杖を持たなくても歩ける」として、白杖無しで横断歩道を渡り、事故に遭ったとしても、過失割合の修正が受けられない可能性がある。
4.通勤災害
労働災害のうち、通勤による傷病を「通勤災害」と呼び、通勤時に事故に遭った場合、補償が受けられることになっている。この通勤災害の条件は「通勤中であること」であり、具体的には以下の三つである。
・住居と就業の場所との間の往復
※(注記)一例 自宅から職場への移動
・就業の場所から他の就業の場所への移動
※(注記)一例 午前と午後で職場が異なり、その際の移動
・住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
※(注記)一例 単身赴任先の家から、家族が住む家への移動
また、この条件にある移動は「合理的な経路及び方法」でないと対象外になってしまうことがある。例えば、理由もなく遠回りする、危険な経路を辿っている等は対象外になる。なお、通勤経路から逸脱した場合または中断した場合は、それ以降の経路は対象外になることがある。例えば、仕事終わりに友人と飲みに行くとか、日用品や食料品以外のものを買いに行く等は対象外になる。ただし、夕飯を買って帰る、職業訓練等を受けに行く、選挙に行く、通院する、介護で親の元に行く等は対象外ではない。
5.保険に加入する重要性
これらの事例を踏まえると、視覚障害者はいつ、どこで事故に遭うか、また他者をいつ、どこで事故に遭わせてしまうのかのリスクがある。
そこで、私は「個人賠償責任保険」に加入することを薦めている。この保険は、傷害保険の特約・オプションとして販売されており、「傷害保険」であれば自分が怪我を負った場合に保険金が支給され、「個人賠償責任保険」は他者に怪我を負わせた場合に保険金が支給されるものである。視覚障害者にとってはメリットがある保険だと思う。
6.備考
5で紹介した「傷害保険」「個人賠償責任保険」については、講師より終了後に資料提供があった。この資料は39ページに掲載する。
4 質疑応答・意見交換
神田部会長、伊敷副部会長が司会進行し、研修1と研修2に対する質疑応答、参加者との意見交換を行った。主な意見は以下に記載する。
1.質疑応答
(1)信号機の音の大きさ
私が住んでいる市内の音響式信号機が、近隣住民から騒音だとの意見があり、信号機の音量が下げられてしまった。その際、所管の警察から私たちの団体に相談があり、音量を下げるかどうかを確認するため、現場検証に立ち会ってほしいと依頼された。そこで質問なのだが、音響式信号機を設置するにあたり、音の大きさの基準はあるのだろうか。視覚障害者としては、必要以上に音量が下がることは避けたいので、知識として備えておきたい。
↓
【警察庁交通局交通規制課】
各都道府県警では、音響式信号機を設置するために、信号機メーカーに発注するための内部的な仕様書があり、音響出力は45db〜100dbと定められている。ただ、この音量は、「(道路)環境」、「車線」、「微調」の三つの条件をそれぞれ勘案して設定している。この情報は、各都道府県警が音響式信号機を設置する際の目安の一つであると考えてほしい。
【日本歩行訓練士会】
視覚障害者にとって重要な音サインは、実はJISになっていて、日視連のホームページ「音サインの現状」(※(注記)1)でも紹介されている。地域で音サインの充実を求めるのであれば、こういったJISを根拠にして運動をすることも有効だと思う。
(※(注記)1)音サインの現状
http://nichimou.org/impaired-vision/barrier-free/sound-sign/
(2)音響式信号機の修理1
近所の音響式信号機を利用していたが、1年前に落雷により音が鳴らなくなってしまった。所管の警察に相談したが、修理するための部品が無いとのことで、なかなか修理をしてくれない。また、修理の予算が限られていることも理由と聞いた。音響式信号機の修理については、何らかの基準があるのだろうか。また、都道府県によって修理対応の違いはあるのだろうか。
↓
【警察庁交通局交通規制課】
修理は、基本的には各都道府県警の裁量によって判断される。財政状況もあるだろうが、どのくらいの速さで修理するかは地域実情等によって変わるだろう。
なお、ご指摘の部品のことは、恐らく半導体不足による影響のことで、全国の都道府県警の中でも問題になっている。そのため、各都道府県警では、部品を確保するために工夫しているところもある。例えば、故障した信号機の修理に、他の地区で稼働している信号機の部品を転用する等の工夫をしている。
(3)音響式信号機の修理2
信号機の部品や代わりの信号機の予備品をストックしておき、修理が必要になったら、これを使うようにするのはどうか。ビルのエレベーターは部品をストックしていて、すぐに修理できるようにしていると聞いたことがある。
↓
【警察庁交通局交通規制課】
信号機の部品等をストックすることは、各都道府県警が信号機の業者に委託して保管させている。そのため、一般的な信号機が故障した場合、すぐに修理対応できるようにしている。ただ、この修理対応は、一般的な信号機の対応であり、音響式信号機の修理だと説明通りに修理が行われていないこともあり得る。
(4)信号機の色・明るさ
最近、LEDの信号機が増えているが、私たちの周りの弱視者(ロービジョン)の中では、この信号機が見づらいと感じる者が多い。中には、昔の電球タイプの方が見やすいと感じる者もいる。今後、信号機はどのようなタイプのものが設置されるのだろうか。
↓
【警察庁交通局交通規制課】
昨年、昔の電球タイプの信号機の電球を作っている電機メーカーが、その電球を生産しないと発表した。そのため、今後、電球タイプの信号機を設置することは難しく、徐々にLEDの信号機に変わっていくことになる。LEDの信号機が見えにくいということは、警察庁内の技術部門の担当者に伝える。誰にとっても見えやすい信号機を設置することが望ましいと思う。
(5)自転車の交通マナー
私が住んでいる地域では、自転車が歩道を走っていて、非常に怖い思いをしている。そのため、以前から自転車が歩道を走らないようにしてほしいと思っている。警察庁では、自転車に関する対策は何か行っているのか。
↓
【警察庁交通局交通規制課】
自転車は、法律上では車道を走らなければならないが、広い歩道の場合は、「自転車歩道通行可」の交通規制をかけたり、自転車専用の通行帯を整備することもあります。一方で、全国的に自転車の走行マナーが問題になっていることは、警察庁も認識している。そのため、制度面やハード面で歩行者の安全性を確保しつつ、同時に自転車に乗る人の走行マナーを高めることが必要だと思っている。もし、自転車が歩道を走っていて困っている場所があるのであれば、所管の警察に相談してほしい。
(6)電気自動車
私は、道路を歩くとき、車のモーター音や走行音を聞くことで周りがどうなっているかを判断している。ただ、電気自動車は音がしないので非常に困っている。郵便局のバイクも最近は音がしない。車やバイクは音が出るように、制度を変えることはできないのか。
↓
【警察庁交通局交通規制課】
電気自動車のことは国土交通省の管轄となるため、警察庁では分からない部分が多い。ただ、音サインが重要なことは警察庁としても認識している。
なお、国土交通省では、電気自動車の静音性に関するガイドラインを設けており、そのガイドラインに従って、自動車メーカーは車を作っていると承知している。
(7)自動車の駐車
一人歩きをする視覚障害者から、「駐車している車にぶつかって、車を傷付けるのが怖いので、道の端を歩いている」と聞くことがある。車に杖が当たることは不可抗力だと思っているが、法律的には問題があるのだろうか。関連で、歩道等には看板や植木鉢が置いてあり、視覚障害者がそれらを壊してしまった場合、どのような問題が発生するのだろうか。
↓
【大胡田弁護士】
もし、歩道上に自動車が駐車していて、その車に杖が当たって車を傷つけた場合は、歩行者に過失はない。「道路法」という法律では、そもそも歩道には許可なく物等を置いてはいけないことになっている。また、歩道上に車を駐車した時点で違法駐車の対象となる。ただし、路肩に駐車している車の場合は考えが異なり、難しい部分があるものの、通常の歩行速度で歩いている限りは、視覚障害者に過失はないと思っている。繰り返しになるが、視覚障害者は適切な歩行方法、歩行速度で歩くことが大切だ。
(8)同行援護の歩き方
同行援護のヘルパーから「利用者と歩くときは右側通行が必須なのか」と聞かれたことがある。何らかの法律で右側通行が規定されているのだろうか。
↓
【警察庁交通局交通規制課】
道路交通法第10条(通行区分)には「歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。」との規定があり、右側通行が基本になっている。
2.意見交換
(1)白杖を持つこと
・今回の研修会を聞いて、改めて「弱視者(ロービジョン)こそ白杖を持つべきだ」と感じました。私自身、実は、4月の第1回委員総会の後にメーリングリストに寄せられた情報(※(注記)2)を読んで、初めて白杖の大切さを知り、これまで使っていなかった白杖を購入しました。こういった話題は、他の弱視者(ロービジョン)にも積極的に教えてあげたほうがよいと思う。
(※(注記)2)この情報は本報告書の11ページに掲載している。
(2)歩行訓練
・白杖は持っているだけでもシンボルになるが、今日の研修会に参加して、改めて歩行訓練が大切だと思いました。今後は、周りの弱視者(ロービジョン)に白杖を持つことに加え、歩行訓練の大切さも伝えていきたい。
(3)視覚障害者自身が心がけること
・弱視者(ロービジョン)は、その時の環境や自身の見え方によって、突然、周りが見えなくなったりする。そのため、弱視者(ロービジョン)こそ慎重に歩いた方がよいと思っている。ただ、意外と重要視されていないことは、不安になったら周りに援助を求めることだ。このことは弱視者(ロービジョン)ほど軽視されているような気がする。弱視者(ロービジョン)も、恥ずかしがらずに声を出すことが重要だ。
・今回の研修会に参加して、視覚障害者は被害者でもあり、加害者にもなる可能性があることを痛感した。弱視者(ロービジョン)は、こういった歩くことについてプラスのこと、マイナスのことを予め学んでおくべきだと思う。
5 参考資料 傷害保険・個人賠償責任保険について
リスクに備える
被害者となり怪我をしたときのために傷害保険への加入
加害者となりケガをさせたときのために
傷害保険の特約・オプションとして個人賠償責任保険に加入
1.傷害保険
傷害保険は、想定外の怪我に備えるための掛け捨て保険です。「急激・偶然・外来」な怪我が原因で生じた、入院・手術・通院などに対して保険金が支払われます。
(1)対象となるケガ
例えば、転倒による怪我・交通事故などによる骨折は保険金が支払われますが、しもやけ・靴ずれ・喧嘩による怪我などは支払いの対象外になります。適用の条件は次の通りです。
1急激な事故
突発的に発生した事故で、長期間にわたって発生したケガは対象外です。
2偶発的な事故
予知できない事故であり、結果を予測できるケガは対象外です。
3外来的な事故
身体の外からの作用での事故であり、身体内からの病気などは対象外です。
(2)カバーできる範囲
1仕事中のケガ
2交通事故によるケガ
3家庭内でのケガ
4旅行中のケガ
5スポーツ中のケガなど
(3)補償される内容
1通院補償
2入院補償
3手術補償
4死亡または後遺症補償
なお、傷害保険には健康状態による加入の制限はなく、保険料も大きく変わることはありません。健康状態の告知義務はありません。
(4)傷害保険の種類
1普通傷害保険
2家族傷害保険
3交通事故傷害保険
4国内旅行傷害保険
5海外旅行保険
6積立傷害保険
7スポーツ傷害保険
普通傷害保険は、最も基本的な傷害保険で、さまざまなシーンでのケガを補償してくれます。家庭内や職場・スポーツ・旅行中・交通事故・海外旅行中など。したがって総合的な補償を望む人は、加入すべき保険といえるでしょう。
交通事故傷害保険は、交通事故によるケガの補償に特化した保険です。
2.個人賠償責任保険
傷害保険は、自分が加害者になってしまうケースに備えて、個人賠償責任保険を附帯したほうがよいでしょう。個人賠償責任保険とは、誰かを怪我させてしまったり、誰かの保有物を壊してしまったりして、損害賠償責任が発生した場合に備える保険です。
※(注記)個人賠償責任特約
偶発的な事故で他人にケガをさせた場合や他人の物を破損した場合に保険金が支給される。個人賠償責任は、火災保険・自動車保険・クレジットカード契約時にすでに加入していることも。
第4章 資料集
1 設置要綱(令和5年6月27日現在)
日本視覚障害者団体連合
弱視部会 設置要綱
平成31年4月1日制定
令和5年6月27日最終改定
【弱視部会の設置】
第1条 本要綱は社会福祉法人日本視覚障害者団体連合(以下、本連合)の定款第28条に基づき「弱視部会」(以下、本部会)を設置するものである。
【名称】
第2条 本部会の名称は「弱視部会」とする。但し、通称名として「ロービジョン部会」と称することができる。
【目的】
第3条 本部会は、弱視者(ロービジョン)の日常生活及び社会生活における困難を解決するとともに、全盲や弱視(ロービジョン)の区別なく視覚障害者が安心して暮らせる社会の実現を目指すことを目的として活動する。
【委員】
第4条 本部会は、本連合の構成団体所属の会員から推薦された委員と有識者をもって組織する。
2 本連合の構成団体は、1名の委員を推薦することができる。
3 本連合の会長は、委員として有識者を含む若干名を推薦することができる。
4 本部会の委員は、本連合の構成団体及び本連合の会長から推薦された者から本連合の理事会において選任する。
【組織】
第5条 本部会には、委員全員による委員総会と若干名による常任委員会を置く。
2 常任委員は本連合の会長が推薦し、委員総会において決定する。
3 委員総会は、年1回ないし2回開催する。
4 常任委員会は、必要に応じて開催する。
5 委員総会及び常任委員会は、部会長が招集する。
6 委員総会及び常任委員会は、委員の過半数以上が出席し、出席委員の過半数をもって決議する。
【役員】
第6条 本部会には役員として部会長1名、副部会長若干名を置く。
2 部会長及び副部会長は、委員総会において委員の互選により決定する。
3 部会長は本部会を代表し、会務を統括する。
4 副部会長は部会長を補佐し、部会長に事故があるとき、または部会長が欠けたときはその職務を代行する。
【委員及び役員の任期】
第7条 委員及び役員の任期は、任命後の最初の4月1日から2年とする。但し、再任を妨げない。
【議事録及び庶務】
第8条 委員総会及び常任委員会を開いたときは、議事録を作成し、本連合の事務局に備え置くものとする。
2 本部会の庶務は、本連合の組織部団体事務局において行う。
【その他】
第9条 この要綱に定めるもののほか、本部会の組織及び運営に関して必要な事項は委員総会において決定する。
附則
1 この要綱は、平成31年4月1日から施行する。
2 この要綱は、令和元年10月1日から施行する(団体名変更に伴う改正)。
3 この要綱は、令和3年11月26日に施行する(部会名変更、任期の変更等に伴う改正)。なお、現時点で任命されている委員及び役員の任期は、令和5年3月末までとする。
4 この要綱は、令和5年8月5日に施行する(副部会長の人数の変更に伴う改正)。
2 細則(令和3年10月9日現在)
日本視覚障害者団体連合
弱視部会に関する旅費の取扱い(細則)
平成31年4月1日制定
令和3年10月9日最終改定
(趣旨)
第1条 本細則は、日本視覚障害者団体連合弱視部会設置要綱(以下「設置要綱」という)第4条に基づく本部会委員に対して支払う旅費について必要な事項を規定するものである。
(旅費の支給対象委員)
第2条 旅費の支給は、設置要綱第5条の2に規定する委員にのみ支給する。
(旅費)
第3条 交通費は、日本視覚障害者団体連合旅費規程に準じ、その実費を支給する。
(旅費の対象となる業務)
第4条 旅費の対象となる業務は、設置要綱第5条の5(委員総会及び常任委員会)にかかる業務とする。
(改正)
第5条 この規程の改正は、委員総会において行う。
附則
1 この細則は、平成31年4月1日から施行する。
2 この細則は、令和元年10月1日から施行する(団体名変更に伴う改定)。
3 この細則は、令和3年7月3日から施行する(第2条の改定)。
4 この細則は、令和3年10月9日から施行する(部会名の変更等)。
3 委員名簿(令和5年8月5日現在・62名)
1.常任委員 15名
神田 信 (横浜市)【※(注記)】 部会長
伊敷 政英 (東京都) 副部会長
岸本 将志 (兵庫県) 副部会長
渡邊 寛子 (福島県)
石原 純子 (埼玉県)【※(注記)】
堀口 実樹 (埼玉県)【※(注記)】
江見 英一 (東京都)【※(注記)】
三宅 隆 (東京都)【※(注記)】
佐生 秀一 (富山県)
小池 恭子 (名古屋市)
岡崎 明美 (神戸市)
片岡 美佐子 (岡山県)
大場 敏史 (北九州市)
中野 泰志 (慶応義塾大学 教授)【※(注記)】
氏間 和仁 (広島大学 教授)【※(注記)】
2.委員 47名
葛山 ひろ子 (北海道)
小山内大輔 (札幌市)
大久保友芳 (青森県)
金野 守 (岩手県)
河嶋 真 (秋田県)
渡邉 雅史 (宮城県)
狩野 和哉 (仙台市)
鈴木 浩行 (山形県)
小林 茂敏 (茨城県)
藤野 洋子 (栃木県)
和泉 俊子 (群馬県)
大井田弘子 (埼玉県)
須合 俊子 (千葉県)
上田 元彦 (千葉市)
小澤 恒二 (神奈川県)
星川 暁 (横浜市)
仲西 洋卓 (川崎市)
吉村 圭子 (山梨県)
小川 晃 (新潟県)
坂田 和代 (長野県)
米島 芳文 (石川県)
西川 佳宏 (福井県)
片平 考美 (静岡県)
中西 利宗 (愛知県)
青木 静男 (岐阜県)
奥野 忠 (三重県)
大橋 博 (滋賀県)
吉川 典雄 (京都府)
川越 利信 (大阪市)
土屋 昭男 (堺市)
辰已 壽啓 (奈良県)
諸家 昌司 (鳥取県)
小笠原年康 (島根県)
橘高 則行 (広島県)
赤瀬 修 (広島市)
安田 和正 (山口県)
道久 整路 (香川県)
白戸 美由紀 (愛媛県)
中島 正美 (高知県)
大石 龍介 (福岡県)
梅津 幸子 (福岡市)
中島 正太郎 (佐賀県)
村瀬 辰久 (長崎県)
黒木 明吉 (熊本県)
稲尾 康信 (宮崎県)
新澤 竹三郎 (鹿児島県)
田場 上 (沖縄県)
3.任期
自 令和5年4月1日
至 令和7年3月末日
4.備考
・【※(注記)】が付いた委員は本連合会長が推薦した委員、それ以外の委員は本連合の加盟団体が推薦した委員である。
4 弱視部会が発行した資料等
本部会が発行した資料等は、本連合ホームページで公開している。なお、PDF版の他にテキスト版も掲載している。
1.「見えづらい・見えにくい人のくらし」弱視に関する懇談会 報告書
(1)紹介ページ
http://nichimou.org/notice/190122-jimu/
(2)資料について
本部会の前身となる「弱視に関する懇談会」での議論をまとめた資料。弱視(ロービジョン)の見え方や行動が多様であることを紹介し、移動、仕事、生活等の困り事を整理し、改善策等を掲載している。
なお、本部会は、この報告書をきっかけに全国組織を立ち上げていることから、この資料が本部会の基礎となっている。
2.弱視(ロービジョン)の方向けリーフレット
「見えにくいことは はずかしいことではありません!」
(1)紹介ページ
http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/200303-jimu/
(2)資料について
視覚障害者の中で弱視者(ロービジョン)は全体の8〜9割と言われている。しかし、自分から弱視(ロービジョン)であることを言えず、困難を抱えながら日常生活を送っている者が大変多いとされている。
そのため、このような者が弱視(ロービジョン)の困難さを感じずに日常生活を送れるよう、「困ったことがあれば相談すること」を周知するため、本リーフレットを発行した。
3.弱視者の困り事 資料集
(1)紹介ページ
http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/201201-jimu-2/
(2)資料について
本部会の活動の一つである情報収集の中で、委員向けメーリングリスト、オンライン意見交換会、常任委員会等で集めた情報を整理した資料集。各号ではテーマ別に弱視者(ロービジョン)の困り事を整理しており、弱視者の特性を理解するための資料となっている。なお、これまでに以下の資料集を発行しており、今後も継続して発行することになっている。
1第1号(令和元年12月発行)
・移動に関する困り事
・弱視の父母の子育てでの困り事
2第2号(令和2年3月発行)
・スマートフォンの活用
・男性ならでは、女性ならではの困り事
3第3号(令和2年11月発行)
・新型コロナウイルスの影響で困ったこと
4第4号(令和3年10月発行)
・障害者手帳を取得するまでの困り事
5第5号(令和4年8月発行)
・オンライン会議における困り事や活用事例
・金融機関における困り事や活用事例
6第6号(令和5年2月発行)
・ウェブサイトやアプリ等に関する困り事
・日視連加盟団体での弱視(ロービジョン)に関する取り組み
4.委員総会 報告書
(1)紹介ページ
http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/220307-jimu-1/
(2)資料について
本部会における重要事項を検討する委員総会の開催内容、委員総会に併せて開催した研修会や意見交換会の開催内容を掲載している。